私は鳥羽美佐。
25年前に命と金塊と島を奪われた母、鳥羽美鶴・・・から離れて過ごしてきた女子高生よ。
だから今回、復讐ってムードが仲間の5人とギャップがあってね。
だって、復讐したところで得られるのはその一瞬の満足だけ。
その後に残るのは虚しさだけよ。
私、仲間の皆には一瞬の幸せじゃなくて、ずっと幸せになってもらいたい。
だから復讐をやめてほしいの。
復讐したところで、傷つくのは私たちの方なのよ。
って、美悠にも伝えるつもりなんだけど・・・
愚痴言っていい?
コミュニケーションの取り方が分からない。
だってお姉ちゃん、お母さんの恨みを聞いて育ったから、価値観が全然違うの。
他の5人の仲間も聞く耳持ってくれないし・・・
どうにかして5人を幸せにしてあげたい。
この25年前の惨劇の呪いを・・・大団円に終わらせたい。
どうすればいいの・・・
『諦めるな』
『私たちがついてる』
その時、次元の壁を超えるような、不思議な声が私に届いたわ。
絶対に出会うことのない、監督の違う、媒体の違う、そんな場所から来たような男の人達が、私の前に現われたの。
1人は車椅子に乗ったサングラスの男の人。もう1人はなんだか画風がまた違う感じの、別の、いや本家の世界から来たような男の人。
誰?悪い人たちには見えないけど・・・
「貴方たちは・・・誰?」
「私は伊東末彦。自分たちが納得いかないであろう真実に辿り着くことにかけては大先輩の男さ」
「納得いかない真実?」
「ああそうさ。キミの仲間は復讐に目がくらんでいるけれど、いつかはその虚しさという真実に到達しなければならない。その方法を私が教えてあげよう」
伊東さんは車椅子を少し傾けて、私に穏やかな笑みを向けてくれたわ。
「そして俺は六星竜一。おそらく権利的な問題から、出ることが出来なかった男さ」
「権利?それに、竜一さん?仇の5人のうちの1人と同じ名前ね」
「なら小田切進と呼んでくれていい。母親から故郷への復讐だけ教えられて育てられてきた、キミのお姉さんと同じ境遇の、気持ちの理解できる男さ」
小田切さんは画風の少し古い感じの笑顔を見せてくれたわ。
2人とも・・普通に怪しいけれど、私にはどこか安心感を覚えさせてくれる。
「でも小田切さん、貴方はお姉ちゃんと同じ家庭環境で育ってきたかもしれないけれど、私は一般家庭。それでもしっかりと気持ちがわかるようになるかしら?」
「その点は大丈夫。何故なら俺は高校教師として誰にも気付かれずに潜伏できるほどのレクチャー力の持ち主なんだ。さらには殺すつもりの女子高生を口説いて愛し合ってホテルに連れ込めるほどのモテも持ち合わせているんだ。ハートキャッチ小田切とでも呼んでくれ」
「お姉ちゃんも私もたしかに女子高生だけど・・・純情な乙女に向かって“ホテル”とか言うの、コンプライアンス的にどうなんですか?」
私がド正論で責めると、小田切さんはそれ以上余計な事を言わなくなったわ。
「さて私の提案だが。真実に辿り着くには、探偵を呼ぶのが一番さ。経験上、これは自信を持って言えるよ」
「探偵さん?でも私、探偵のコネなんて・・・」
「そうかい?調べたところキミの中学の頃の同級生の金田一一という子が、様々な事件を解決しているそうだよ」
そうだ。金田一くんがいる!伊東さん、小田切さんと違って安心感が熱い!
「それと、探偵の招集は私に任せてくれ。とは言っても、キミの仲間の作戦を少し利用するだけなんだけどね。『観光客が行方不明になる事件が起きている』『同じ夕闇島だけど別の夕闇島だった』というキャッチーな噂を流すのさ。そうすれば探偵がホイホイ来てくれるって算段だよ」
なんて完璧なアイディアなの!
こうして2人と知り合った私は、小田切さんからレクチャーを受けながら、伊東さんの言う通りに噂を流して、ついにその日を迎えたわ。
(小田切さんと伊東さんは、役目を終えるとスーっと消えていったわ。まるで最初からそこにいなかったみたいに。本当に、ありがとうございました)
これから私は復讐者仲間の1人として。
そして、仲間を救うため。
夕闇島を名乗る、もう1つの夕闇島に潜入するの。
私の役目はもう1つの島の方で、仇の5人を誘拐するサポート。
当然そんな事には賛成できないから、皆を説得して回ったわ。
だけど当然、復讐に憑りつかれた【殺すマン】こと浅見京太郎さんには通用しなくて、むしろ逆上されて殺されそうになっちゃったの。
仕方なく私は身を隠したけど、浅見さんの標的が今度は金田一くんに向いてしまったわ。
それだけは駄目!
そこで私は金田一君が郷土資料館に入った時に彼を眠らせて、密かに夕闇島に移すことにしたの。
きっと、金田一くんなら夕闇島を25年の呪いから解放してくれるはず。
私は催眠ガスを彼に嗅がせて、虚ろな彼に「夕闇島を救って」と呼びかけながら、さらに手紙をポケットに入れて、彼を運ぶことにしたわ。
『・・・・で、隣にいるおじさんは誰?』
金田一くんの隣には、見たことのないおじさんが。金田一くんの知り合い?ただの観光客?
(その時、私の中の小田切さんの幻影っぽいのが『俺もこの人は知らない』って言っていたわ)
誰にせよ、ここにいたら浅見さんに殺されちゃう。助けなきゃ。
私は炭鉱を通って船着き場まで、2人を運ぶことにしたわ。
女子高生が
男子高校生と、大人のおじさんを
無理でしょ。
男の子を短い距離運ぶだけでも女の子の力じゃ無理なのに、ここは足場の悪くて少し長い炭鉱。金田一くんだけでも無理なのに・・・おじさんまで・・・
だけど、このままじゃ浅見さんに殺されちゃう。
どうしたらいいの!
『諦めてはいけません!』
その時、次元の壁を超えるような、不思議な声が私に届いたわ。
絶対に出会うことのない、監督の違う、媒体の違う、そんな場所から来たような男の人が、私の前に現われたの。
そう、まるで小田切さんや伊東さんみたいに。
「自分は三等海上保安正・倉田正明。海上保安官です。困っている人を助けるために出動しました」
「自衛隊さん? でも、この現れ方・・・まさか、貴方も私を助けに?」
「自衛官とは違いますが・・・ですが、その通りであります。さぁ、お二人を任せてください」
そう言うと倉田さんはテキパキと金田一くんとおじさんを抱えて、船着き場まで運んでくれたわ。さすが自衛官!日本を守ってくれるヒーローね。
だけど、どうしてここにいるんだろう?
そんな疑問を余所に、倉田さんは役目を終えると霧のように消えていったわ。
ありがとうございました、倉田さん。
さて、あとは金田一くんを夕闇島の町の外れに寝かしておくだけ。
と、おじさんも。
『・・・・このおじさん、何者?』
私はおじさんのスーツを少し調べたわ。すると警察手帳が出てきたの。なんだ刑事さんか、さらに頼もしいわ。
だけど、考えたら刑事さんって金田一くんの味方なのかしら?
探偵もののドラマでも、たまに警察って探偵のことを『素人が出しゃばるな』って煙たがるじゃない?
このまま2人を横に並べて寝かしておくのは・・・少しリスキーね。
ということで、私は刑事さんのほうを少し離れた場所に寝かしておくことにしたわ。
さて、一仕事終わったことだし、島に戻って復讐の邪魔の続きを・・・
そんな時、終わりは突然やってきたの。
仲間の1人、一之瀬恵子さんに見つかってしまった。
恵子さんに灯台に呼び出された私。
殺される・・・そんな予感はしていたわ。
だけど断れば、きっと金田一くんにも危害が及ぶ。それだけは防がないと・・・
こうして、私は殺された。
暗闇で光る腕時計を手に取った瞬間・・・
岩を頭にぶつけられて・・・
どうにかダイイングメッセージだけでも・・・恵子さんが犯人だって・・・メッセージを・・・
【けいこ】を表す【1+11=】を・・・腕時計に表示・・・させ・・・て・・・
『それは任せて』
その時、次元の壁を超えるような、不思議な声が私に届いたわ。
絶対に出会うことのない、監督の違う、媒体の違う、そんな場所から来たような男の人が、私の前に現われたの。
「私はリシ。映画もDVDも見てない人もいるかもしれないから、都合上少しだけしか出られないけどね。ダイイングメッセージだけ任せてくれ」
そう言うとリシさんは腕時計をポチポチと操作しはじめた。
だけど、計算式の【=】を入力したら、計算結果の12が表示されてしまうから苦戦していたわ。
悩んだあげく、油性ペンで【1+11=】って書いて彼は消えていったみたい。
ありがとう・・・リシさん・・・
最期に
金田一くん
そしてまだ見ぬ探偵さん
どうか夕闇島を
25年の呪いから
救って・・・・