劇場版名探偵コナンの犯人たちの事件簿   作:三柱 努

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それぞれの目的で夕闇島を訪れるコナンと金田一。だがその島では、過去と現在を結びつける壮大な謎が待ち受けていた。


めぐりあう2人の名探偵 =第3章= 【前編】

僕は浅見京太郎。

夕闇島の町長だった三井家の一人息子。そう、お坊ちゃんだった。

それが25年前、家族の命は奪われ、僕自身も生き埋めの寸前で助かったが、その時の轟音が今でも耳に残ってしまっている。

だから僕は恐怖を掻き消すため、この25年間、爆弾に精通していった。

全ては爆発させるため。

仇の奴らも、もう1つの島も、裏切り者も、邪魔する奴も・・・そして、夕闇島も。

 

 

 

なんて暗い気持ちで復讐なんてできるのか心配だった若い頃。

僕は心理カウンセラーの先生の元に足しげく通いつめ、とある自己療法を身に付けた。

それはポジティブシンキング。

どんな逆境も塗り替える奇跡の思考法。これが僕のもう一つの武器さ。

 

 

 

 

さて、今の僕の状況を整理しよう。

僕は拉致チーム3人組。でも1人は裏切り、1人はヘマして逮捕され。残るは僕1人。

つまり1人で残る有力者4人を誘拐しなきゃいけない。1対4の数的不利。町長にいたっては美容整形しているせいで正体すら分からない。

 

絶望的状況・・・だけど、こういう時こそポジティブシンキング。

行き止まりの人生も、僕にしか壊せない壁だと思えば、僕専用の壁になる。

大切なのは今までの25年ではなく、これからの25年だと考えれば、新しい人生の幕開けに見えてくる。

心の命ずるままに生きれば、何にも縛られずに生きていける。今日から僕は、自由だ!

 

よし、行ける気がするぞ!

 

 

 

標的は3つ。逮捕された仲間・一之瀬恵子、邪魔な名探偵・毛利小五郎、そして金塊の隠し場所・郷土資料館だ。

 

 

まず、一之瀬恵子は口封じのためにフェリーごと爆破するつもりだ。

港に着いたばかりの船に、名探偵のいる港に停まっている船に、密かに爆弾を仕掛けるのさ。

・・・大変そうだけど、僕自身の成長のための経験値になるぞ!

 

次は毛利小五郎を爆殺だ!

連続爆弾事件は名探偵ホイホイの定番手段だ。

フェリーを爆破したら次の爆破の予告状を送りつけて、海上レストランに呼び出して爆発の巻き沿いにしてやるんだ。

 

そして最後は郷土資料館の爆破。

ここには25年前に僕らの島から奪った金塊が隠されている。もちろん、そんな金塊は先に僕らがごっそり奪い返していたけどね。だからこそ、仇の奴らにその事実を衝撃的に発表してやるのが今日ってことさ。

 

 

 

 

さて、ここで直面する問題は1つ。

どうすれば名探偵ホイホイな爆破予告状になるのか?ってことさ。

ストレートな文章だと、罠だと見破られてしまう可能性が高いから、怪盗キッドみたいに暗号にしたい。

ただ難しすぎると爆破時間に遅刻されるし、そもそも僕にはそんな難解問題が思いつかない。と言って、丁度いい難易度の問題も思いつかない。

どうしよう。こればかりはポジティブではどうにもならないよ・・・

 

 

 

『そこは任せてくれないか?』

 

 

その時、次元の壁を超えるような、不思議な声が僕に届いたんだ。

絶対に出会うことのない、監督の違う、媒体の違う、そんな場所から来たような眼鏡のおじさんが、僕の前に現われた。

 

「誰ですか?あなたは」

「神海島で観光課長をしています、岩永城児と申します。真犯人ポジションなのに、他の悪党の所業がインパクトありすぎて影が薄くなってしまい悔しい想いをした者だよ」

岩永さんは何やら物騒な事を言いながら汗を拭いていた。

見知らぬ僕にこうも気安く話しかけるこの人は一体・・・

 

「どうやら脳トレぐらいの暗号作りでお悩みのようだね?俺は宝探しスタンプラリーゲームを企画した経験があるんだ。しかも対象年齢は小学生から対応のね」

どうして僕の悩みを!?この男・・・

だけど『脳トレ難易度』か。なんて今の僕にネセサリーなワードなんだ。

 

復讐を知られたからには殺すしかないけど、今この岩永さんの頭脳を利用しない手は無い。

岩永さんは僕からチェックポイントにする場所を聞くとすぐに暗号文をしたため始めて、手紙で用意してくれた。

 

 

 

例えば海上レストランだと

≪~25年前の惨劇を再び~ まだまだ、これで終わりじゃないぞ。さて、次の爆発場所は、どこでしょう?でも、頭を使わない子には、この暗号は解けませんよ。≫

≪「うどん」「みかん」「のらねこ」「うま」「えき」さぁ、答えが分かるかな?頭を使おうね、頭を・・・≫

って具合に。

 

炭鉱跡地の郷土資料館は

≪~25年前の惨劇を再び~ お楽しみはこれからだ! では、次の爆発場所を発表します! 次の爆発場所はここだ!≫

≪歯医者さんに抜いてもらわないと、ドカーンだぞ!「はたん」「こうは」「はあと」「はち」ちゃんと、歯医者に行くんだよ!≫

 

 

 

 

 

 

 

・・・・うん。

 

なんてエクセレントな脳トレーニングなんだ!

「あとはこの問題文に合う脅迫文の書き出しを、キミの方で用意してね。それじゃあ頑張ってね」

そう言い残すと、岩永さんはまるで最初からそこに居なかったみたいに消えてしまった。

殺す前に逃げられてしまった・・・どうしよう。

でも考え直してみれば、あの人だって今や共犯。よって僕にとって都合悪いことにはならないハズ!

 

 

 

さて、これで準備完了。ここからは僕のターンだ!

 

まずは港に着いたフェリーに爆弾をセットしに行くぞ。

港にはあの毛利小五郎もいる。慎重に行かないと・・・

 

あの、イケメンもいるんですけど。警視庁の明智警視が。

僕の25年間の爆弾修行を捜査しているっていう、あの人が・・・

嘘だろおい。

どうして。1犯人に1探偵だけでもキツイのに、1警察まで追加発注とか。

 

 

 

 

 

終わりだ・・・一之瀬恵子も、この2大怪獣を前に口を割ってしまうに違いない・・・

 

 

 

 

と心配していた僕の心配は全く心配いらなかった。

 

何故なら明智警視、港について早々にキャリアを越えるキャリアが発するキャリア波を放つのに夢中になってくれてんだから。

なんという権力の暴力という名の視野狭窄!

隣で爆弾魔がフェリーに爆弾仕掛けてるのにも気付かないなんて。日本の未来がノーフューチャーだ。心配だ。

 

 




その後、問題なくフェリーを爆破。


さぁ、みなさんお待たせしました。


ここからが僕のステージだ!

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