劇場版名探偵コナンの犯人たちの事件簿   作:三柱 努

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めぐりあう2人の名探偵 =第5章= 【後編】

眼鏡のガキを架空拉致の罠に嵌め、毛利小五郎を森に呼び出した僕・浅見京太郎。

ホテルを出て今、森に到着しました。

 

 

だけどもだけど。

毛利小五郎不在です。

前髪がカジキマグロみたいに尖がった女子高生が「コナンく~ん」と周囲を探し回っているだけです。

コナンくんが誰だか知らないけど、こんな何もない森の中で迷子にならないでくれよコナンくん。そしてちゃんと眼鏡のガキを探しに来てくれよ毛利小五郎。

 

 

いや、これは物事を冷静にイメージするチャンスじゃないか。

こんな森に来るコナンくん。女子高生が撫で声で呼んでいる以上、かなり年下の子供である可能性が高い。

名前もコナン。女の子の名前なら可能性あっても、くん付けなら男の子。つまりはかなりのキラキラネーム。つまり年下の子供の可能性が裏付けられる。

じゃあ考えよう。そんな小さな子供がこんな森に来るか?いや来ない。誰かに誘拐でもされていない限り。

 

ってことは、「コナンくん=眼鏡のガキ」である可能性が非常に高く、その子を探しに来ているこの女子高生は、毛利小五郎の代わりに俺に呼び出されていた可能性が高い。

つまり、この女子高生を始末することもまた、毛利小五郎の捜査を邪魔することに繋がるんだ。

どう?さっきまでの絶望が希望に変わったZE

これぞ前向きな者にしか訪れない、前向きマジック!

 

 

ならやるっきゃない。

背後から忍び寄って、女子高生の近くにある大きな穴に突き落としてやるだけ。簡単で楽なお仕事を実行するだけ。

 

 

 

 

『ちょっと待った!』

 

 

その時、次元の壁を超えるような、不思議な声が僕に届いた。。

 

絶対に出会うことのない、監督の違う、媒体の違う、そんな場所から来たような男が僕の前に現われた。

 

「ちょっと待った。そいつは危険な行動だぜ」

僕の腕をガシッとつかんで止めたのは、がっしりとした体格の男だった。

「貴方は?」

「俺は藤岡隆道。鎮魂歌に出られなかった鬱憤を晴らすために、同じ敵を相手にするお前をサポートしに現れた傭兵だ」

なるほど、いつものアレだ。これは。

ちょっと何の事を言っているのか分からないけど、傭兵を名乗っていることには嘘は無いと思える貫禄が藤岡さんにはあった。

 

「でも、危険って何が? ただ女子高生を突き落とすだけなのに」

「あの娘はそうは見えないだろうが、空手の関東大会で優勝する実力だ。その娘がキョロキョロと人探しをしている背後に気付かれずに近寄って、反撃の隙すら与えずに背中を押せるか?できなきゃ殺されるぜ」

あっぶね!かなりギリギリな状況だったことに気付いた僕の額にはジワッと汗が噴き出てきた。

逃げるしかない。でも、この滅多にないチャンスを放置して逃げるのも勿体ない気もする。自分よりレベルの高い敵を倒した時に得られる経験値って多いでしょ?EXP大量ゲットのチャンスだと考えれば!いやでも、慎重プレイしないとゲームオーバーして全部チャラになるし・・・

 

「そこで俺の出番だ。俺は似た状況であの娘の背後を取って両手に漆を塗ったことがある」

漆の状況がよくわからない。そんな僕が呆けている間に、藤岡さんは女子高生の背後に迫りドーンと押して穴に突き落としてくれた。

ありがとう、藤岡さん。

でも、お礼の挨拶を口に出している暇も無いんだ。

急いでホテルに戻って、僕自身の潔白シチュエーションを作らなきゃいけない。

 

 

 

僕は、この島特有の工事だらけの悪路を、障害物競走ですか?ってくらい走りにくい大道路を走りホテルに戻った。

調理場の奥の食糧庫に戻って、手足を縛られた状態のフリをして待機するだけ・・・

 

 

 

手足を縛るだけ・・自分で?

どうやんのこれ?

そりゃできなくもないけど、自分で自分を縛るのって下手にやるとモロバレ。だからって上手に縛るのも難しい。時間がかかる。

こうしている間にも、明智警視がホテル中を捜索して、犯人探しをしているはず。この調理場に来るのも時間の問題だ。

どうしよう!

 

 

 

 

 

『お困りのようやな』

 

 

その時・・・

もう何度も来ているから割愛。

 

「ワシは阿知波研介。阿知波不動産の社長で浪速の不動産王、百人一首の団体・皐月会の会長で爆弾魔仲間や」

自慢が長いので割愛。

 

 

 

阿知波に手足を縛ってもらってすぐ、明智警視が僕を見つけた。これで僕の身の潔白は証明された。

 

 

その後、捜査に戻っていく明智警視の背中に「ここにいるよ」と心の中で『犯人ここにいるよ状態』を言いたい気持ちを我慢して見送った矢先・・・

「ねぇ、お兄さんって浅見京太郎じゃない?ボク、明智警視の友達なんだ」

眼鏡のガキ(コナンくんの可能性あり)が入ってきた。

はい?

言いたいこと4つほどあるけれど、とりあえず割愛しようか。

 

いや無理! どうやって203号室から脱出したんだよ。どうして僕の名前知ってんだよ。明智警視の友達って何?今回やること多すぎて、証拠の木箱を隠滅する暇もない!

 

 

 

 

 

【数十分後】

 

殺人事件現場のパーティ会場に参加者の面々が電話で呼び出されていた。

この流れ、『謎は全て解けた』的なものだと思うけど・・・犯人がハブられているよ!

 

疎外感に堪えられなくなった僕は、隠れて様子をうかがうことにした。

 

皆を呼び出したのは会場でコナンくんらしき子供と一緒にいた女子高生。ただ、張本人のくせに何故かキョトン顔。

なんか話が見えてこないうちに、女子高生は「え・・・あれ・・・?」と呟いて眠るように座り込んでしまった。

 

 

 

「と、冗談はこのくらいにしましょうか。被害者となった土田幸恵さんと水川英二さん。あの2人を殺した犯人は・・・あなたですね!土田明美さん!」

ファイ!?

すっごい所からストレートパンチが飛んできたよ。僕には当たってないけど。

 

そこから咲き乱れる、美雪とかいう女子高生の名推理。毛利小五郎並みの推理力。

ホント、ここ最近驚かされてばかりだ。ポンコツ警視に影武者使いの名探偵、関東最強の空手女子高生に、名推理女子高生。化け物揃いじゃないかこの島。

まぁそれでも僕に届いていないから、恐るるに足らないけどね。

 

 

 

 

こうして、謎は9割、解かれた。

 

 

 

「助けて・・・日暮さん・・・助けて・・・」

意気消沈の明美は僕に助けを求める始末。ちなみに日暮は僕の偽名さ。

そして、「日暮」の言葉に狼狽しはじめる2人の仇。

そう。この日暮ってのは今や名も残らない、この島の本当の名前。夕闇島の名前を奪った仇たちの恐怖を煽るためのチョイス。

 

怖いくらい上手くいってる。もうこれもはや面白い見世物だよ。

「アハハハハハハハ!」

あっ・・・笑っちゃった。

コナンくんらしき男の子にめっちゃ怪しまれてる。

仕方ない。正体を明かすとしますか!

 

 

 

そこから咲き乱れる僕のネタバラシ。

「ある時はウェイターの浅見京太郎。そして、ある時は、事件を裏から操る男、日暮。そして、ある時は、島を恐怖のどん底に叩き落す連続爆弾犯!」

しかしてその実体は、正義と真実の使徒、藤村大造だ!

って言えたらカッコイイのにな。

えっ?チョイスが古い?25年前は夕闇島の子供たちに流行ったネタだよ。

 

 

 

 

その後、僕を逮捕しようとする明智警視には爆弾をチラつかせて脅し、その正体である閃光弾を炸裂させて目くらまし発動!

さぁ、皆が怯んでいる間に、水川と土田を拉致して退散しますか。

 

 

 

 

 

大人2人を?

1人で?

土田のBBAと、水川の夕闇島の金塊で食ってきてブクブク太ったボディを?

 

 

これは筋トレ!限界を超えろ僕の筋肉!

なんて言ってる場合じゃない。

どうしよう・・・どうしよう!

 

 

『何してるんだ? 早く行こうぜ』

 

 

 

その時、割愛して僕の前に現われたのは「俺は本上和樹」だった。

 

 

「ホテルなんて大嫌いだ! おしゃべりしてる時間があったら、早く出るぞ!」

イライラした様子の本上さんは、足早に水川を拉致してくれた。

重くない?3桁はあると思うけど。

そんなにホテルから出たかったんだ・・・理由は触れちゃいけなさそうな気配があるから聞かないけど。

 

 

 




その後、水川と土田を夕闇島に運んだ僕。
水川の服のポケットに“バッジ”くらいの大きさのゴミが入っていて、運ぶ時にチクチクして痛かったけど、まぁ復讐達成まであと少しという高揚感を前にしたら小事だ。




さぁ、あとは最後の標的、日沖竜一町長。
そして嫌な思い出だけが巣食う、2つの島を爆破だけだ!

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