劇場版名探偵コナンの犯人たちの事件簿   作:三柱 努

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めぐりあう2人の名探偵 =第6章= 【後編】

俺は団長・日沖竜平

 

演技素人だけの夕闇借金まみれ団が、世界一の指揮指導を受けて、本物の暴動を演技できるようになった。

そう、我ら夕闇歌劇団!

 

 

 

演目は【町長に不満を持つ炭鉱労働者たちの町長邸襲撃】。

 

暗闇に松明の明かりを燃え立たせ、屋敷を囲む殺気溢れる労働者たち。

その鬼気迫る様たるや、獲物に喰らいつく瞬間を狙っている野犬の眼差し。

 

えっ?金田一たちを招き入れたのが朝なのに、暗闇はおかしいって?

そう、もう夜。色々と時間がかかってんだ。

さすがに金田一や剣持も怪しんできている。そろそろ水川殺さないと、2人の我慢も持たないだろう。

 

 

いや、暴動の方は準備万端なんだよ。

 

問題は水川が全然目を覚まさないことだ。

夕闇島に運ぶときに眠らせて、起きた所をサプライズ殺害する計画なんだが・・・

浅見、睡眠薬嗅がせすぎ!

 

 

【翌朝】

 

水川が起きたのは一晩明けてから。

その間、俺は監視カメラでヤツの様子を監視しっぱなし、暴動は声あげっぱなし、使用人たちも演技しっぱなし、金田一と剣持はゆっくりお休みタイム。

 

どうよ?こういうドッキリ番組って、裏方の負担がデカいんだぜ?年末の笑えない番組、俺好きだけどさ、今年は裏方さんたちの苦労を思うとマジで笑えないかもしれない。

 

トリックって、アイディアよりもフィジカルよりも、大事なのは『忍耐&仕掛け人の真面目さ』

ほんとこれに尽きるな。

 

 

 

水川が起きたことで、俺は自然な流れで金田一たちを隠し部屋に誘導。

あとは水川が計画通りに怯えてくれていれば成功だが・・・

「くるな!近づくな!」

扉ごしに響く水川の悲鳴に、俺は心の中でヨッシャと拳を握った。

ドッキリ大成功!

 

 

あとは金田一に扉を叩いて呼びかけ続けるように頼めば、扉の向こうの金田一たちが水川を殺しに来ていると錯覚させることができる。

その間に俺は屋敷の屋根を渡って、この隠し部屋の窓から出ようとしている水川の喉をナイフでサクッと切り裂いて殺害。

密室殺人の完成となる。

 

ドン☆

 

 

って達成感に浸ることができればいいんだけど・・・・さすがに25年放置した建物の屋根の耐久性は不安しかない。途中で少しでも屋根壊れたら下まで真っ逆さま。労働者たちが見守る中、プルプル足震わせて、中年のオッサンがコレやるの。

復讐の1つを俺自身の手で達成できたってのに、全然テンション上がんないのよこれ。

 

 

こんな時こそ浅見直伝のポジティブシンキング!

『喜べるときに喜ぶべし』

復讐で荒んだ心を癒やすには、成功を素直に成功と喜び、その余韻に浸る寛容こそ重要なのさ。

 

 

 

 

そんな矢先・・・さっそくアクシデンツ。

金田一が、次の標的の、土田を、物置小屋で、見つけちまったぁ。

 

 

ここから巻き起こる土田ネタバラシ旋風。

日暮島で有力者が次々に神隠しに遭って、夕闇島に運ばれている可能性があることも。

俺の顔が夕闇島の日沖町長の若い頃の顔と似ていて、苗字が同じなことも。

 

 

 

金田一が真実に近づきすぎていく足音が聞こえてくる。

 

 

 

これは非常にマズイ。

早く土田を殺さないと。

 

 

 

【翌朝】

 

俺は当初の計画通り、物置小屋に土田を呼び出した。

待たせたな。土田文子。俺は25年も待った。己の罪を悔いながら、25年前にお前がしたのと全く同じ方法で、三井和子として死ぬんだ!

 

 

 

「待てっ!」

 

 

その時、次元の壁を超えない、不思議でもなんでもない声が小屋に響き渡った。

 

絶対に出会える、監督は一応同じ、媒体は同じ、そんな場所から来た金田一が、俺の前に現われた。

 

 

 

えっ?金田一と剣持?どうしてここに?

「こっちは昨日の晩から、ずっとお前を待ってたんだよ!」

剣持警部の豪語に俺は驚いた。

刑事もののドラマでよく見る“張り込み”ってやつですか!?こんな小屋の中で?たしかに昨日の晩から『なんか2人見ないなぁ』って不思議に思ってたけど。

 

「この屋敷内での殺人を企んでいた張本人は・・・あんただろ?日沖竜平!」

 

 

バレてた。

一応は俺の得意のおとぼけを炸裂させてみたけど、なんか金田一、すっとぼける犯人に慣れてるのか全然通用しない。

 

 

 

 

そして咲き乱れる、咲き乱れ慣れた金田一の名推理。

 

 

謎は全て解かれた。

 

 

だが、俺にはまだ切り札が残っている!

召喚!炭鉱労働者!

俺の合図と共に、屋敷の扉から次々と雪崩れ込む肉弾戦車のマッチョマンたち。

金田一と剣持を追い出して、そのどさくさに俺は土田を殺してやった。

 

追い詰められた時の筋肉って、ほんと裏切らない。

トリックって、最後はフィジカル・・・というか、パワーだな。これほんと正解。

 

 

 

 

こうして復讐を5人中4人達成した俺達。

残すは俺の父、日暮島町長の日沖竜一だけ。

 

 

そして、その前に念には念を入れて。

物置小屋に逃げ込んだ金田一を・・・小屋の中にプレゼントしておいた浅見特製の爆弾で・・・爆殺するだけ!

俺、永遠の好敵手である金田一の事は結構気に入ってたんだけどな。今は私情よりも復讐。

 

 

 

じゃあな。アバヨ・・・金田一。

 

 

 

 

BOOOM!!!

 

 

 

 

 

 




こうして

爆発の轟音を背に

金田一を殺した俺は

最期の復讐に向け

日暮島に渡った
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