ついに日沖竜平の事件簿も最終回だ。
復讐の大半を達成し、好敵手・金田一を爆殺した俺は、最後の標的である父親・日沖竜一を殺すために夕闇島に向かっていた。
もちろん、こっちの島で残した仕事を片付けてから。炭鉱で生き埋めにされた夕闇島民の遺骨を弔ってからだ。
この遺骨は借金まみれのクズどもを金で雇って掘らせていたもの。当然、最初から遺骨発掘なんて不気味な仕事だとは教えず、宝物の発掘だと思わせておいたものだ。
だから、現在悲惨な有様。
気付いたら、暴動が本物になってた。
炭鉱労働者のマッチョたちが「日沖を探せ!」ムードになってんだよ。
騙したのは悪かった。
ゴメン。
オヤジ殺したら謝罪に戻るから。
その後、美優が久々に顔を見せて「復讐ヤメテ」と俺を説得したがスルー。
そして俺は炭鉱の船着き場に遺骨を全島民分運んで、木箱に詰めて船に乗せた。
・・・・ん?
遺骨が全島民分ある?
つまり、あのクズどもは発掘中に最初の遺骨を掘り当てた後も、律儀に発掘作業をし続けて、全部見つけてくれていたってことだよな?
「日沖を探せ!」って怒り狂う気持ちを、遺骨にぶつけたりしないで・・・
良い子たちじゃないか!
感謝!圧倒的感謝!
彼らの優しさに気づいた後、船への遺骨積み込み作業は至福の雑用へと変貌していた。
クズ呼ばわりして、本当に申し訳ありません!
だが、そんな至福の時間はガラガラと音を立てて崩れ落ちた。
リアルにガラガラと音を立てて・・・
「誰だっ!? 誰かそこにいるなっ!」
俺の大声に、その物音の主・金田一はヌッと姿を現した。
金田一!?
幽霊?いや足はある。
ってことは、あの爆発を受けて生きていたってことか。
死なないのか?殺しても死なないのか?
本人も「ゴキブリ並みにしぶといって評判」と豪語しているけど、限度ってもんがあるだろ。
その後、俺は遺骨を見せて「復讐に行かせてくれ」と説得したが金田一は聞く耳を持たず。
さらに殴りかかってきたから殴り返してやった。
金田一、防御力と推理力は化け物だけど、腕力は弱かった。衝撃的事実。
【数時間後】
ついに日暮島に辿り着いた俺は船着き場で遺骨と金塊を積み替えた。
そしてオヤジを炙りだすために、古くからの島民を「日沖」の名前でホテルに呼び出した。
なんせオヤジ、罪を追求されるのを恐れて整形してやがって、実子の俺ですら誰が実父なのかわからなくなってんだ。
だが、この最近の連続事件で夕闇島民を心理的に揺さぶっている今なら、罪の意識から誰かがオヤジの正体を告白してくれるはず。
それかもしくは、この島に来ている名探偵の毛利小五郎が暴き出してくれるはずだ!
その後、俺の狙い通り。
オヤジの正体を明かそうとした島の警官のシゲさんが、口封じのためにオヤジに殺され、その事件の解決と共にオヤジの正体が露見した。
安定のクズオヤジ。25年前に惨劇を暴露しようとしたオフクロの事も殺しただけのことはある。
そして事件は金田一と眼鏡の子供が解決してくれた。
金田一、お前は殺人事件のある所にどこでも出没するんだな。
いやむしろお前が行く先々で殺人事件が誘発されるんじゃないか?
その後、俺は金田一たちを拳銃で脅して強引にオヤジを誘拐。
炭鉱の船着き場に連れてきて、その目の前でオヤジが家族の命より優先してきた金塊を乗せた船を爆破して沈めてやった。
「金塊が・・・私の金塊が・・・」
爆破され、海の中に沈んでいく金塊を眺め、オヤジは狂ったように崩れ落ちた。
これでようやく1つのケリがついた。
2つの島を狂わせ、多くの島民の殺し合いを引き起こし、俺達の人生をも狂わせた惨劇の復讐。
あとはオヤジを殺せば、全ての決着がつく!
「待てよっ!」
その時、船着き場に響いた金田一の声。
今さら俺を止めようってのか?
「夕闇島と日暮島、双子島にまつわる悲しい真実。そして双子島で起きた25年前の惨劇。その惨劇への復讐心が巻き起こした今回の一連の事件。あんたたちが企んだ計画の全ては、俺には全部わかってるんだ!」
金田一の豪語に俺は少し興味が引かれた。
今さらオヤジを殺すことを止めるつもりはないが・・・聞かせてもらおうか!
その後、咲き乱れる金田一の解き明かした真実。
金田一は全てを理解してくれていた。今まで誰も気付いてくれなかった真実を。
だが、来るのが遅かった
金田一、お前は来るのが遅すぎた
25年前に来てくれたら、惨劇から俺たちを救ってくれたかもしれないのに・・・
もう遅い。
俺はオヤジの頭に拳銃を突きつけた。
金田一はそれを止めようと再び口を開いた。
「日沖!あんたのしていることは惨劇の復讐なんかじゃない!あんたのしていることは、惨劇そのものなんだ!25年前の惨劇はまだ続いてるんだよ!あんたがやめない限り、この惨劇はずっと続くんだ!あんたを苦しめ続けたこの惨劇止められるのは、あんただけなんだぞ!」
金田一は俺の心の迷いまで見抜いているようだ。
俺が本当に復讐に狂っているなら、夕闇島で金田一と剣持を放置せず、関係ない人間を巻き込んだ復讐をしていなかったはずだと。
「あんたは心のどこかで気付いてるんじゃないのか?自分のしていることの虚しさを。あんたは心の何処かで願っているんじゃないか?誰かが自分の復讐を止めてくれること」
金田一の説得に止まらない俺の動揺。
そこに、最期に参戦したのは、美悠だった。
彼女は妹の美佐が残した言葉を俺に伝えてくれた。
復讐で得られるのは一瞬の満足だけ。復讐で傷つく俺達を見たくない。家族同然の俺達には苦しむのではなく、幸せになって欲しいのだと。
そこに加えて金田一が見せてくれたのは、美佐の残したメッセージ。
『夕闇島を25年の呪いから解放して』
死者からの説得まで、俺を追い詰めている。
俺は思い出していた。どこかで聞いた言葉を。
『もっともよい復讐の方法とは、自分まで同じような行為をしない事』
そうか・・・俺の本当の復讐は・・・ここにあったのか。
オヤジには生き続けて、永遠に後悔してもらう。
許すこと。
それが俺のするべきことだったんだ。
これでよかった。
最期に金田一と、美悠と美佐が、俺を止めてくれたんだ。
こうして、謎は全て解かれた。
だが、1つだけ心残りがある。
それは海に沈んだ金塊だ。
海に沈んだところで金が無くなるわけじゃない。価値が無くなるくらい腐食するのにも時間がかかる。
そう遠くない未来、この島に沈んだ金塊の噂を聞きつけたトレジャーハンターやら、欲に駆られた島民が現われるだろう。
そうなってしまえば、この島は再び金塊を巡って、血で血を洗う惨劇の舞台となってしまう。それだけは何としても防がなければならない。
隠しても命を狙われ、使おうにも所有権やら所得税やら扱いが難しい。
その後始末を金田一や美悠、他の島民に押し付けるのは心苦しい。
どうすればいいんだ!
『ヌフフフフ』
その時、次元の壁を超えるような、不思議な声が俺に届いた。
絶対に出会うことのない、監督の違う、原作者の違う、媒体の違う、そんな場所から来たような男が、海の中からヌッと顔を出した。
金田一や美悠は気付いていない。
その“3人組のダイバー”に気付いているのは俺だけだ。
「俺らは・・・まぁ名乗るのはヤボってもんだな。まっ、ICPOから追われる”お尋ね者”ってところだ」
サル顔の男が海から拾い上げたであろう金塊にキスをして、ニヒヒと笑みを浮かべながら俺に語りかけた。
「話は聞かせてもらった。まぁお前の心配する通り、こういう厄介なお宝は綺麗な島にゃあ似合わねェ。悪党どもが押し寄せてこないうちに、誰もが諦めつく形で消えちまったほうがいい。そういう恨まれ憎まれ仕事こそ、俺ら“泥棒の仕事”なんだよ。ウンウン」
サル顔の男はニヤリと笑みを浮かべると、仲間の男たちと賑やかしく消えていった。
あれが何だったのか分からない。
だが、俺は救われたようだ。
こうして全てが終わった。
全ての元凶であるオヤジは魂が抜けたように放心状態で病院に入り、日暮島の島民たちは過去の罪を世間に打ち明けた上で夕闇島の復興に尽力することを約束してくれた。
俺と美悠は大人しく逮捕されることを選び、浅見と共に罪を償うことを決めた。
もしいつかやり直すことができるその日が来た時は、3人で双子島のために生きようと思う。
こんな清々しい気持ちにさせてくれた全ての人に感謝したい。
剣持、子供たち、炭鉱労働者の皆。
そして
金田一一
まったく、大した男だったよ。
【完】
=あとがき=
短い間でしたが、本作にお付き合いいただきありがとうございました。
多くの方に閲覧・感想・評価をいただき、それらをモチベーションにここまで執筆を頑張ることができました。
今後も、「名探偵コナン」と「犯人たちの事件簿」を皆で楽しみましょう。
それではまたいつか