劇場版名探偵コナンの犯人たちの事件簿   作:三柱 努

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紺青の拳 【後編】

さて、昨日はキッドにフルボッコにされて、私の警備会社の信頼がガタ落ちになって、ついでに3つの課題を1つも解決できなかったわけだが。

今日は大丈夫。だってもう裏切り者の秘書は始末しておいたから。

 

死体はスタジアムの地下金庫の、宝石台の下に隠しておいて。これでよし。

えっ? 何でここに隠したかって?

なんとなく・・・だけど。

 

えっ? 『秘書が毛利探偵と3時に待ち合わせているから、それを知ったキッドが同じ時間に秘書に化けて宝石を盗みに来るはず。そうすれば目撃情報から罪をキッドになすりつけることができる』って?

そんなの、キッドがその情報を手に入れるってことを私が知ってなきゃ、ただの無謀な賭けじゃないか。

あのね、犯人だって出来ることと出来ないことがあるんだよ。

知りえない情報で犯行はできないの!

 

 

まぁいいじゃないか。これで運よくキッドは殺人犯。

シンガポール警察は日本警察と違って、殺人鬼は発見次第射殺OK。

あとは警察に任せておけばOKというわけさ。

なにこの運命の女神様のきまぐれミックスサラダ。

私の日頃の行いが良かったから? それともキッドの日頃の行いが悪かったから?

 

 

さて、私は次の作戦に入ろうじゃないか。

次の標的は敵ゴリラ・京極真だ。

大会中に精神的動揺を誘って、デート中に恋人を襲って、ミサンガを巻いて。

この3連コンボでゴリラの大会棄権を誘発成功さ。

 

ああ、なんて楽なんだ。これでもか! ってくらいとんとん拍子。

だってさ、最後のミサンガなんか私も巻いてあげながら「こいつマジ?」って思ったもん。

恋人との約束ならまだしも、昨日会ったばかりのオッサンの勝手なアドバイスを真に受けてくれたんだよ?

純粋すぎでしょ。可愛すぎでしょ。私が女だったら惚れてたぜ。

 

 

無事に問題解決したし、海賊もシメておいたし、ゴリラも優勝したし。

私の完璧な計画は全て成功さ。

 

だけどウチのゴリラ、京極ゴリラと戦いたかったみたいでめちゃくちゃ怒ってた。

これ、もし数日中に私が命を狙われたりしたら・・・犯人はゴリラで確定だな。

 

 

 

さて、あとは今夜シンガポールがぶっ壊れるのを眺めるだけ・・・

 

 

「ね、眠りの小五郎!?」

シンガポール再生の特等席、マリーナベイ・サンズの屋上に到着した私の前に。

まさか先回り。名探偵・毛利小五r・・・う?

 

眠りの小五郎が、眠っていた。

 

 

めっちゃ焦った。でも大丈夫。

さぁシンガポールがぶっ壊r・・・

 

 

リシくん?

 

拳銃を構えて、どうやら私の計画を止めに来たようだ。

 

 

盲点。まさか彼にそこまでの推理力があったなんて。

 

 

 

 

こうして謎は全て解かれた・・・

 

 

 

 

 

「失礼ですが、少し腕が鈍ったんじゃないですか? 世界を動かしていたのはあなたじゃない、僕さ!」

 

 

 

まさかのリシくんが急に黒幕っぽくなってきた。

 

え? どゆこと?

 

と、思った矢先にリシくんの拳銃が弾き飛ばされて、空からアーサーくんとキッド降臨。

 

え? どゆこと?

 

 

「下手な芝居はやめるんだな、リシ・ラマナサン。アンタが黒幕だってことは分かってる」

 

そこから咲き乱れるアーサーくんとキッドの推理の数々。

 

え? リシが黒幕ってのは共通認識でいいの? この一連の画策だけでリシは「世界を動かしていた」って言ってんの?

 

 

でもってさ。形勢逆転してんだけど。

海賊が屋上に到着してくれたから、キッドもアーサーくんも毛利探偵も全員制圧完了・・・

と、思ったのも束の間。

 

「この宝石さえ手に入れば、もうお前に用はねえ」

 

海賊は所詮海賊。私との約束破って、さらにはリシくんと一緒になって私を追い詰めてきた。

どうやらホテルの財閥令嬢を誘拐する案を提案して、海賊を懐柔していたらしい。

 

え? リシはお父さんの正義感にどう顔向けするつもりなの?

 

 

 

もう何が何やら。

 

そこいらの私の疑問へのマトモな説明も解説もないうちに乱闘が始まるし。銃の乱射も始まるし。ゴリラ戦争も始まるし。

 

 

もう誰も私の事なんて見てないでしょ。忘れてるでしょ。

 

 

宝石はキッドに盗まれたり返されたりだし。ビルの崩壊に巻き込まれるし。逮捕もされるし。

もう踏んだり蹴ったり。

 

 

 

とほほ。もう犯罪なんてこりごりだ。

(そこ。オチのセンスが古いとか言わない)




いかがでしたでしょうか? 紺青の拳
シンガポールをぶっ壊せたから私の最初の目的は達成できたよ。
だけどさ、その再生事業は例の財閥令嬢のお爺ちゃんがちゃっかり請け負ってんだよ。


まぁ今回の事件で私は損ばっかりだったけど、ドヤ顔だけはキープできたから、そこだけは褒めて欲しいな。


いやほんと、敗因は「部下に恵まれなかった」。それに尽きますね。


だってウチのゴリラ。京極と戦いたかったと言っておきながら、最後は恋人を背負ったままの超ハンデを相手にして負けて。
もし仮に勝てたとして、それはお前の満足いく戦いだったのか?
第一、普通なら「コイツを倒すのは俺だ」って共闘ムードで海賊を倒すって展開でもよかったんじゃないか? 私にとっては不都合だが。


秘書にしてもシェリリンにしても。自分たちも悪事に加担したくせに、情報漏洩しまくりで。
普通、あの状況で裏切ったら私に殺される展開だろ。どこに助かる要素を見出して裏切ったんだ?


あとはリシよ。アイツさえ出しゃばらなければ全て上手くいったのに。
お父さんの顔に泥を塗るような落ちぶれ方して、殺人1つもしてないのに真犯人面のドヤ顔。



犯罪心理学を極めた私ですら想定できなかった部下たちの心理。それが敗因ですね。

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