俺はただいま絶賛潜伏中。ここは八丈島の海上施設パシフィック・ブイ。
今日はここに特別なゲストを呼んでいるぜ。
バーボン&ベルモット。
と、おっと? 他にもお客さんが来たようだな。自己紹介よろしく。名前は何て言うんだい?
へぇ、白鳥任三郎かぁ。渋い名前じゃないか。
白鳥はどこから来たんだい? 東京かぁ。あんまり知らないけど。
あと白鳥、キミの隣にいる子はひょっとして息子さんかい? 君は警察の仕事でこの機密施設に来ているんだろ? プライベートと仕事は分けなきゃ。
おっと失礼。違うのか。
へぇ、江戸川コナンっていうんだ。いい名前じゃないか。
おっと、子供の可愛らしさに気を取られて忘れるところだった。
そろそろバーボンとベルモットが海の中から入ってくる時間だな。
ハッキングしてハッチを開けて、2人を中に入れてあげよう。指先だけでできる簡単な仕事さ。
俺はもうここのシステムを完璧に把握しているからな。この程度朝飯前ならぬコーヒー前。
コナンくんから白鳥たちがコーヒーいくつ欲しいかを聞いてきてもらいながらでもできるんだぜ。
えっとコナンくん。白鳥たちが欲しがっているコーヒーの数はいくつだい?
親指と人差し指でLの字・・・1つかな? と思ったら直美がこの指は2つのことだって教えてくれたぜ。サンキューな直美。まぁ今から拉致するんだけど。
ということでバーボンとベルモットが直美を拉致してくれたぜ。
ただ白鳥たちが優秀すぎたせいか、すぐに監視カメラを調べられてバーボンたちの姿をばっちり確認されちまった。おいおい。
まぁそれでも問題ねぇ。作戦2が成功したということで、あとは俺も脱出するだけ・・・
と思っていた矢先にウォッカから連絡が入ったぜ。
『組織から逃げ出したシェリーを見つけたから一緒に捕まえよう』ってお誘いだ。
・・・おいおい、シェリーといえばジンが血眼になって追いかけているって聞いているが。
それをジンの相棒のお前が、俺を誘うのか?
たしかにシェリーを捕まえれば出世できるけど・・・それを俺が実行したら俺がジンより出世することになるし。なによりジンの面目丸つぶれ。
なんだよウォッカ。お前もジンのこと実は嫌いだったのか。
いいじゃねぇかシェリー拉致作戦。一緒にやろうぜウォッカ。
ただ問題が2つある。
1つは、その拉致する予定のシェリーがシェリーじゃねぇってこと。
ウォッカに会って早々に小学生くらいの女の子の写真見せられた俺の気持ちになってくれよ。
説明されたよ。この女の子が老若認証システムでシェリーと同一人物だって。
だから俺、時系列考えてないウォッカに聞き返したよ。この女の子が大人になった姿がシェリーってことだろ、って。それかまさかシェリーが子供になったって信じているのかって? どうやって子供になったんだ、って。
そうしたらウォッカはこう答えた。「分からねぇ」って。「科学者だから何かそういう方法があるんだろ」って。「ふしぎなメルモみたく若返りのキャンディーみたいなものがあるんだろう」って。
お前・・・マジで言ってる?
まぁ老若認証システムのことは組織の中では俺が一番よく知っている。システムに間違いはない。どういうカラクリか分からないが、それはシェリーに直接聞き出せばいいだけの話。
それよかもう1つ問題がある。
俺、めっちゃ眠い。
もうさ、連日働き詰めなわけよ。グレイスを観察したり、ユーロポールに侵入したり、ハッキングしたり、普通の仕事をするフリをしたり。
で、やっと眠れるかなぁって時間に今からシェリー拉致だろ?
もう眠気限界。しかもシェリー拉致した時にもきっと防犯カメラに撮られているだろうから、その証拠映像を消すためにパシフィック・ブイにハッキングしなきゃいけないだろ?
ブラック企業で出世するためとはいえ、かなり体調不良。
でも俺頑張る。ジンを出し抜くために!
さて、そんなこんなで到着したのは八丈島のホテル。めっちゃ目と鼻の先にいたよシェリー。
皆が寝静まった夜。俺も眠たいけどベッドをスルーしてシェリーの部屋へ。
部屋の前に立ったら、シェリーが向こうから開けてくれたよ。ピッキングする手間が省けた。
サクッと拉致してあとは車で帰るだけ。
うん。思ってたより楽。もっと抵抗されると思ってた。
あとは車に乗りこんだらウォッカに運転してもらって、組織の潜水艦に行くだけ・・・
「はぁあああああ!」
闇夜の中から何かが落ちてきた。シェリーと同じくらいの年頃の女? 俺の目には一瞬そう映った。
でもシェリーじゃねぇな。だって髪の色が黒っぽいし。長いし。頭にツノガイみたいなのを乗せてるし。
それよりなにより。この女・・・車に風穴開けなかった? いやマジで。女の拳が車にめり込んでるように見えるんだけど。
しかも「哀ちゃんを返しなさい!」って俺に襲い掛かってきてるんだけど。
でもってめっちゃ強い!
俺が体調不良なのを差し引いても強すぎ。首にイイのを貰っちまったぜ。
でもって全然助けてくれないウォッカ。
いや一応、役割分断的にウォッカは車の準備をしているはず。それにこの程度は俺一人で制圧しろっていう信頼の証なんだろ?
よし撃退。まぁ女にトドメは刺せていないけど、後始末はキャンティの仕事。
俺は車に乗って逃げるだけ・・・
パァン!
乾いた音と共に撃ち抜かれる車のサイドミラー。
キャ、キャンティ? いや、まさかあの女の遠距離攻撃?
でも追撃は無い。キャンティがちゃんとあの恐ろしい女を仕留めてくれたんだろう。
これで今度こそ車で逃げるだけ・・・
?
なんか今度はビートルが追いかけて来てるんですけど。
何この島。八丈島民。拉致を聞きつけると島民総出の戦力で誘拐犯を追いかける習慣でもあるの?
まぁそんなスイッチ入った一般人程度の追跡。ウォッカが華麗なドライビングテクニックで撒いてくれたぜ。
とはいえ、このカーチェイスもばっちり監視カメラに映っているよな。消すのクソ面倒。
ということで無事に潜水艦に到着。ウォッカの案内のおかげで、安心して魚雷発射管から入れたぜ。
っつうかウォッカ、説明が上手で丁寧! どこのボタンを押せばいいとか、どこのレバーを引くと危ないとか、あとは自動的に入れるから何もしなくていいとか。事細かにレクチャーしてくれた。
ウォッカお前、俺にジンを出し抜く機会をくれたり、信頼してくれたり、安心させてくれたり。至れり尽くせり。
ウォッカ、今度から俺と組もう!