劇場版名探偵コナンの犯人たちの事件簿   作:三柱 努

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昨日までのあらすじ
エッグ盗まれた。キッド撃ち落とした。エッグと一緒に海に。
はぁ・・・・なんてことをやっちまったんだ・・・

今朝のあらすじ
エッグは無事だったヤッホー!
コナンくんという子供がエッグを回収していたそうだヤッホー!

エッグを確保してくれた江戸川コナンくんに感謝。圧倒的感謝!
欲を言えば、私の所に届けてくれれば満点だったんだけどね。それでも大手柄よ。
何かお礼をしてあげたいな。誰か殺してほしい人とかいないのかな?無料でヤッてあげるのに。


世紀末の魔術師 【後編】

昨夜、怪盗キッドはエッグを盗んだ後、何者か(スコーピオンこと私なんだけどね)に撃たれ海に落ち、警察による懸命の捜索も虚しく生死不明。

エッグは傷が無いか確かめるために、急遽展示を取りやめ、鈴木財閥の船で東京へと持ち運ばれることとなったの。

商談に来ていた私達も一緒に乗っていいってさ。豪華客船に。よっ、会長。太っ腹!

しかもコナン君(とオマケの探偵とお姉さん)と一緒に。もうこれ私への誕生日プレゼントよね。

 

 

ちなみに同乗があと2人。香坂夏美というパティシエとその執事。

『何故お菓子屋さんが?』と私は思ったけど、すぐに納得したわ。

彼女の曽祖父がファベルジェの工房で細工師職人をしていて、メモリーズエッグの図面が祖母の遺品から見つかったらしいの。

これは素晴らしい!ラス様グッズ持参なら大歓迎よ。

ただ…真ん中が破れてるし(ぞんざいな扱い!)、そもそも図面のエッグと実物のエッグが微妙に宝石の有無が違ったり(パチもんじゃないの?)ちょっと怪しいんだけどね。

 

ところがどっこい、そこは私のコナンくん!

「エッグは2つあるんじゃない?」

最初は私も聞いて「子供らしい無邪気な発想」って笑ったけど、よく見たら図面の2エッグの輪郭が合わない。

つまり元々は大きな紙に2個描かれていて、真ん中の大部分が破れているから、1つのエッグに見えたんじゃないか説が濃厚になったの。

『ちょっと、大事なラス様グッズの管理不行き届きは許さないわよ!』って内心叫んだけどね。聞いてる、お菓子屋?

まぁ、エッグ2のニュースはすごくテンション上がるから今回は許してあげるけどね。

 

そんな私のテンションは、またまたコナンくんによって乱高下することになったわ。

なんとコナンくんがエッグを弄って、底の鏡を取ってしまったの。

『エッグが!!!コナンこの小僧!』

思わず懐の拳銃を取り出しそうになったけど、会長の娘が言うには簡単に外れる構造の鏡なんだって。

『でもそれはそれ。私の心臓へのダメージの慰謝料は高いわ』

って思った自分を後で呪いたくなったわ。

何故なら、コナンくんが部屋を暗くして鏡にライトを当てた瞬間。私の目の前に衝撃の光景が映ったの。

それは鏡に反射した光が映した横須賀のお城。(この現象はハエ2号が『日本古来の技術の魔鏡だ』って解説していたけど、アンタの手柄はどうでもいい)

 

キタわね。これ確実に、そういうことでしょ?エッグはここにあるよって。

「夏美さん、二つのエッグはあなたのひいおじいさんが作ったものじゃないでしょうか?あなたのひいおじいさんは、ロシアの革命の後で、夫人と共に作った2個のエッグを日本に持ち帰ったんです。恐らくこの2個目のエッグについていた宝石のいくつかを売って、横須賀に城を建て、このエッグをどこかに隠したんです。そして、城に隠したというメッセージを魔鏡の形で別のエッグに残したんですよ」

毛利探偵が前後関係までまとめて説明して、私の思っていた事を全て代弁した。というより、思ってたよりずっと言われた…流石、名探偵と言われるだけはあるわね。

ちなみに、お菓子屋は図面と一緒にあった古い鍵も取り出した。

『これ確実に2個目のエッグの隠し場所の鍵じゃん。最初から出してよ。出てれば私だって…私だって…』

 

その後、お菓子屋の提案で毛利探偵がお城に同行。話の流れでハエたちも同行したいと群がり、お菓子屋はあっさり快諾。もちろん私の同行も。

 

と、全てがとんとん拍子に私に都合よく突き進んでいった。

本当に最高!人生初の豪華客船でのクルージング。しかも豪華な個室付き。見晴らしも最高。

『あとはラス様の写真を台に置いて。これで私の部屋って感じね』

私が写真立てとオーシャンビューに満足していると、部屋のドアをノックする音が聞こえた。誰かお客さんかしら?

 

違った。煽りカメラだったわ。

ドア開けた時の女性の驚いた表情が撮りたかったみたい。すぐに帰ってったし。

意味が分からないわ。日本人の男ってマトモなの少ないのね。キッドにしかり、ハエ2号にしかり。ってこともないか。コナンくんもいるし。

 

なんて思っていると、しばらくしてまたドアノック。

今度はコナンくん!(と、会長の娘)からの女子会のお誘い!

なんてラッキーな日なの、憧れの女子会なるものに誘ってもらえるなんて。スコーピオンやっててよかった♪

踊りたくなる気持ちを抑えて、私が準備しに行くと、会長の娘が何かに気付いたように口を開いた。

「あっ。もしかしてそこにあるのは彼の写真?」

この娘、今なんて言った?

彼?彼氏!?

なんて恐れ多い!

(でも、心の底だけで叫ばせて。なんて日だぁ~~~~~!!!)

 

その後、娘が「いいなぁ皆、彼氏持ち。こうなったら絶対キッド様をゲットしなくちゃ」なんて、貴女にゲットできたら警察はいらないでしょって言いたくなることをほざいていたけど。

そんな戯言は無視して、私はスキップしたくなる気持ちを抑えてコナンくんと女子会に向かった。

でもここでテンションガタ落ちの事実に気付いてしまった。

 

それは、“日本人は写真立てをよく見る”って事実。美女の部屋よ?普通、他に見たくなるものってあるでしょ?

正直に言うと私、隠れラス様ファンなのよね。というより、知られるとドン引きされるから周りにバレたくないのよね。オタバレみたいな感じ。

希望的観測かもしれないけど、娘とコナンくんにはバレてないと思うのよ。

娘は白黒写真見て“彼氏説”出したくらいだから、しっかりとは見えていなかったとしか思えない。何も言わなかったコナンくんもそう。

だけどあの煽りカメラは駄目!映像見返されたら…バレる!

 

それから女子会に参加することになった私だけど、全然話が入ってこなかったわ。

憎かったとか、人見知りがどうとか、敗色とか、中国語とか、歳とか、誕生日とか。

「じゃあ、僕とは1日違いだ」

コナンくんの誕生日が5月4日。私は5月5日。何この偶然、可愛い。本当に癒される。(当然、ラス様には足元にも及ばないけどね)

 

なんて癒しの持続時間も夕方まで。

毛利スケベオヤジにセクハラまがいな視線を向けられることなんか気にならないほどのストレス。

それは煽りカメラの愚行!たしか名前は…出てこなくて手が止まるけど…そう!

「寒川さん、そのペンダント」

間違いない。ニコライ2世の三女マリアの指輪。そんなレアアイテムを雑なペンダントにして首から下げていやがったの。

これ本当にストレス。何がしたいのか分からないけど、これ見よがしに着けて私の前に出てきやがったわ。

もうこれ、バレてるわね。ラスオタバレ。

あとで私のこと馬鹿にするつもりだわ。

 

殺すしかない。

私のラス様ファンとしての品格・プライドを汚い足で踏みにじったクソ野郎!

 

 

その夜。私は行動に出たわ。

7時29分。煽りカメラの右目をショット!ザマァみろ。

あとはラス様グッズを取り戻すだけ…あれ?首に無い…

部屋中を漁ってみたけど、やっぱり無い。ひょっとして枕の中に?って思って切り裂いたけど、やっぱり無い。

やられたぁ。コイツ、指輪無くしたのね。

まぁビデオテープだけは確保できたから、オタバレせずに済むし。

最初から指輪は知らなかったものだって思えば、プラスマイナスゼロだから良いけど…

まさか、テンション最悪で今日という日を締めくくることになるなんて…

はぁ。ショック。

 

その後、ヘリコプターで警察参上。ポンコツっぽいのが3連星。と、鑑識。

マズイ…怒りに身を任せすぎた。

ココは絶海の密室。逃げ場はない。

【絶海でもないし密室でもない。逃げ場はたしかにない】

 

だけど、私にラッキーはまだ残っていた。

捜査線上に挙がった容疑者が、まさかの会長の秘書・西野だったの。

証拠は2つ。犯行現場に西野ペンがあったことと、西野部屋のベッドの下にマリアの指輪があったこと。

WHY!?どういうこと?

煽りカメラと西野がベッドインしたってこと!?

 

という意味不明な状況を打開してくれたのは、やっぱりコナンくんだった。と、毛利セクハラオヤジ。

何故なら、西野は羽毛アレルギー。私が羽毛枕を切り裂いたことで、容疑者から外れたのだ。

しかも煽りカメラは西野に恨みがあって、指輪泥棒の罪を着せるためにベッドの下に指輪を隠した。その後で私が煽りカメラを殺したせいで、事情が複雑になっちゃったみたい。

はぁ…何それ。見つかるはずないじゃん。

きっと指輪も証拠品として警察が回収しちゃうし。

こんなことになるくらいなら、オタバレして恥かいてから殺した方がマシだったわ。

 

でも、そんなテンションダダ下がりな夜も、どうにか盛り上がったわ。

「スコーピオンって知ってる?いろんな国でロマノフ王朝の財宝を専門に盗み、いつも相手の右目を撃って殺してる悪い人だよ」

コナンくんの話で、今回の事件はスコーピオン真犯人説ということで決着した。

えっ?それは私にとって都合悪いんじゃないかって?その程度は大丈夫よ。余罪たくさんあるけど、今まで一度も捕まったことないし。正体バレしなけりゃ気にしないわ。

前もって私が救命艇を1つ流しておいたから、スコーピオン取り逃がしってことで警察も結論出してくれたし。

それより重大ニュースがあるじゃない!

 

コナンくん…私、あなたの正体が分かったわ。

貴方、“スコーピオンファン”つまり、私のファンだったのね!

そうじゃなきゃ、小学生が私のこと知ってるわけないじゃない。説明つかないじゃない!

なんだけど…ここで蛇足情報(by白鳥とかいう警官)。

コナンくん、スコーピオンのことは阿笠博士って人から聞いたんだって。チッ、スコーピオンファン説、立証ならず。

 

でも1つイイかしら?

博士と知り合いって何?

周りが納得しているところを見ると、日本で有名な博士みたいだけど。

そもそも“博士”でしょ。コナンくん、鉄腕アトムか何かなの?

 

なんて冗談はさておき。

結局、スコーピオンが2つ目のエッグを盗む可能性があるってことで、白鳥野郎が城に同行することになったわ。

でも、白鳥推薦でコナンくんも城に来てくれることにもなったの。

ありがとう。白鳥!ナイスよ。

 

 

そして翌日、タクシーとリムジンで到着。ノイシュバンシュタイン城っぽいお城。

なんか子供ゾロゾロと一緒に太ったオッサンまで来た。この人が噂の博士。何よ、まさにお茶の水博士じゃない!じゃあコナンくん・・・やっぱりアトム!?

あれ?でもアトム作ったのは天馬博士だし。お茶の水博士は後見人。

なんだ。思い過ごしだったみたいね。

 

その後、私たちはお城イン。途中、ハエ2号が抜け駆けしたハプニングを挟みながら、執務室でラス様写真を発見!

「お父さん、ラスプーチンって?」

「いやぁ、俺も世紀の大悪党だったってことくらいしか」

はぁ!?ラス様が大悪党?殺すわよ!

(えっ?コナンくんも昨日私の悪口言ったって?私は良いのよ。本当に悪い人だから。でもラス様のことを悪く言うのは許せない!なぜなら私は蠍だから)

 

なんて私が怒りに震えてるところ、やっぱり作用するのは私の清涼剤コナンくん。

あっさりと隠し部屋のボタンを発見。ロシア語で何かパスワードを押せばエッグへの道がひらかれるみたい。

正解はコナンくんと私(とお菓子屋)の合作。『Boлшебник кoнца века』。

日本語に直すと『世紀末の魔術師』

そして開けゴマ!オープンザドアー!

 

地下へと続く階段を降り、真っ暗な一本道を進み、かすかな物音を聞きつけコナンくんと白鳥が離脱。

そして私はこの隙に、あのセクハラオヤジを殺す銃の準備を…

「あっアンタは!?」

まじか…ハエ2号に銃を見られた。もちろん殺した。

 

で、戻ってくると何故か子供たちと合流。

賑やかパーティで道を進むと、行き止まりに到着。あれ?道を間違えた?

なんて心配ご無用♪ 私にはコナンくんがいるじゃない。白鳥に命令してライトを当てればあら不思議。ドアオープン♪(開けゴマは、流石に古かったからもうやらないわ)

 

そしてドーム型の部屋に到着。もうゴール決定じゃない。奥の棺に鍵を挿して、エッグを抱いた遺体を発見!

ついに……2個目のエッグが。

『ありがとうコナンくん。短い付き合いだったけど、私はエッグを盗んでオヤジと娘を殺したら、さっさと逃げます』

と思っていた矢先。脳天に落雷!

その名も“エッグが空っぽ”大事件!

 

じゃなかった。ここで登場マトリョーシカ説。

どうやらこのエッグはメモリーズエッグを中に入れて、2つで1つのエッグとなるタイプだったみたい。

はぁ、メモリーズエッグがここにあれば答え合わせができるのに。

「エッグならありますよ」

ここで白鳥が鞄からメモリーズエッグを取り出した。梱包材(プチプチ)にも包まずに。

はぁあああ!?ラス様グッズを、なんて雑な運び方してんの、このド素人が!

 

結局、エッグは合体完了。

『よし、盗もう!』

と思った時、コナンくんがエッグを持ち、近くの台座に走り、私たちに何やら指示をし始めた。

私はコナンくんに言われたとおりに蝋燭の火を消し、白鳥は懐中電灯を台座にセット、コナンくんはエッグを台座にセット。

するとアメイジング!Yes I know it's Love な出来事が起こった。

この感動は言葉に出来ない。というわけで割愛。

 

感動が落ち着いた頃、セルゲイはロシアのエッグ所有権放棄を宣言。鈴木会長もきっと放棄するだろう。

ってことはだ。この時点で私の物決定!

「何はともあれ、一件落着!めでたしめでたし!」の毛利の右目にショット!

は、懐中電灯を投げたコナンくんに阻止された。

コナンくん、頼むから大人しくしてて。

続く娘へのショットもコナンくんダイブで失敗。

もう、コナンくんたら!貴方だから許してあげるけど…。

 

でも意外とこれが好都合。混乱の中でお菓子屋が転んでエッグを落とし、私が拾って逃げることができた。

よし、あとは戻るだけ!

追っ手が来るかもしれないから、途中で手榴弾を爆破しておいて。あとはガソリン撒いて火をつけて。

これで私の元にラス様が……

 

「ちょっと待ったぁ!てめぇだけ逃げようったって、そうは問屋が卸さねぇぜ」

甲冑だらけの部屋に響く声。それは毛利セクハラオヤジの声だった。

『まさか、もう追いついたの!?』

驚いて壁に隠れて銃を構える私に、“奴ら”は名推理をたたみかけた。

私がロシア人でラス様の末裔でスコーピオンだってことは白鳥が。

プースチンランを入れ替えるとラスプーチンになることは煽りカメラが。

 

えっ?

煽りカメラ!?私が殺したはずの!?

『もうこれ、ホラーじゃない!』

怖くなった私は銃を乱射しまくった。だけどホラーはまだ終わらない。トドメはハエ2号。

『判った!これは死んだ人がドラゴンボールで生き返ったパターン。となれば、次に出てくるのは、ラス様!』

そう期待した私の前に現われたのは、コナンくんだった。

1人で色んな声色を操って、私を怖がらせていたみたい。イタズラにしてはお茶目じゃないわ。

 

それからもコナンくん、まるで見ていたみたいに私の犯行を言い当てるったら言い当てる。

はぁ、ここまできたら仕方がない。可哀想だけど、コナンくんにもここで死んでもらわなきゃ。

残る銃弾は1発。

これで…終わりよ。ショット!

 

【しかしコナンの右目眼鏡の前に弾かれる銃弾!】

へっぁ!?

何が起こったの!?

怯んだ私に追い打ちをかけるように、コナンくんは何か靴を触り始めた。

これは油断できない!と“うつむ~く~”ながら、私はマガジンを交換して銃を構えた。

そこにどこかから逆転の女神的なトランプが投げられ、発砲が阻止されてしまった。

さらにコナンくんが瓦礫をキック。エゲつないスピードで私にヒット。

こうして、私は倒れて気絶し…

 

謎は全て解かれた

 

 




はぁ、コナンくんを甘く見過ぎたわ。
銃も効かないし、キックも凄いし。
やっぱり、気付いたときに注意しておくべきだったわ。

あの子は鉄腕アトムなんだって・・・

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