豪華客船アフロディーテ号で起こった連続殺人事件。
犯人はもちろん、無事に目的の4人中3人を殺した私・秋吉美波子。
残るは海藤船長ただ1人。
その前に17時からのウェルカムパーティー。ちょっと楽しみ。
パーティーはメインスタッフの紹介から。これは定番ね。
そして憎き海藤に紹介されて私も壇上に。でもここでハプニングが起きたわ。
八代親子殺害事件について、客が騒ぎ出して、船長や警察に詰め寄ったの。
私も同感。殺人鬼が放置された状態で、どうしてパーティーを決行したの?まぁ私だから問題無いんだけどね。
「皆さん、落ち着いてください!御心配ください。この凶悪な連続殺人事件の犯人は、この毛利小五郎が特定しております!」
その時突然、壇上にあがった毛利探偵がマイクを手にお客さんを鎮めたの。
その自信満々な立ち姿は、昨日のディナーでの情けない姿から想像できないわ。
待ってました。さぁ、見せてちょうだい。私の手のひらの上で踊る姿を。
「八代貴江社長を殺害し、延太郎会長をも殺害した犯人。それは秋吉美波子さん、アンタだ」
ええええええええ!?ちょっと待っ、ええええええええ!?
予想外の事態発生。ポンコツっぽい探偵が実は有能な件が発生よ。
「殺害の動機は、半月前に交通事故で亡くなった八代英人氏の復讐。その事故は実は、八代延太朗親子による殺人事件だったのです!」
まだあわてるような時間じゃなかったわ。
毛利探偵の推理、動機に関してはトンチンカンだったの。英人と私が恋人同士だったとか言い出すんだから。やめて気持ち悪い。
でも動機なんて二の次よ。重要なのはトリック。
毛利探偵が出した切り札、それはアリバイトリック崩しだった。
グラサンが用意したICレコーダー作戦、には一切触れず。むしろグラサンが一方的に話していたことで、私のアリバイが無いと言い出した。
「いい加減にしてください!」
マズイ・・・正解しているだけにマズイ。私は内心焦ったわ。ここは少し強引にでも、勢いで推理を殺すしかない!
「私が犯人だとおっしゃるなら、今すぐ証拠を見せてください!」
これは賭けよ。推理の詰めの甘さを指摘してたたみかけたわ。
そして勝った!
毛利探偵は急にしどろもどろになって目が泳いで、ついにはトイレタイムを要求して尻尾を巻いて逃げたの。
私は賭けに勝ったのよ!
と思った矢先に、二の矢が来たわ。
「心配はいらんよ、目暮警部。真犯人はわかっておるから」
急に入ってきたのはディナーで同席していた太ったおじさんだった。名前はたしか阿笠博士とかいう・・・
『もうやめて!これ以上、私の予定に無いことは!』
そんな私の悲痛な心の叫びも届かず、博士の推理ショーは子供たちの歓声の中で始まってしまったわ。
「命を奪う殺人者という名の海賊。その海賊とは、シナリオライターの日下ひろなりさん、アンタじゃ!」
踊ってた!私の手のひらで!
急に踊るんだもの、びっくりしたわ。
フラッシュモブかしら。
そこから博士による大逆転のすごくダンサブルなダンスショーが開幕したわ。
博士は早速、アリバイトリックをICレコーダーの音声で暴いたの。
「馬鹿な!それはちゃんと消したはず!」
「消した?いや、消したと思った。ところが消えて無かったんじゃな。こういう大事なモンはちゃんと確認せんといかんでな」
馬鹿なのグラサン?
いや、馬鹿ってのは知ってたけど、まさか音声を消し損ねているなんて大馬鹿じゃないの。
でもここで私も気付いたわ。
さっきの毛利探偵を追い詰めた証拠、ここにあった。
私、グラサンが電話口で語っていたドラマのストーリー、全く知らなかったもの。
「電話口で聞いていたはずですよね?なら話してみてください」なんて言われていたら詰んでいたわ。
ヤバイヤバイ。
そして博士は眼鏡の子と一緒に、グラサンの髪に付着した血液を指摘してフィニッシュ!
ついでに首を絞められた時の痣も指摘。言い逃れはできないわね。
『残念だけど、アナタはここでリタイアね。安心して、船長は私が殺しておくから』
そう思った矢先。グラサンは馬鹿な行動に出たわ。
「動くな!動いたら爆弾を爆発させる!」
グラサンは切り札の爆弾スイッチを見せびらかして、15年前の事故の真相を語り始めたわ。
ちなみに、英人の関与については「おそらく」で濁していたわ。(見切り発進?6か月、調べる時間あったでしょ?)
でも、何をしてるのコイツ?
そりゃ、爆弾を盾にするしかない状態に追い込まれたことは分かるわ。
だからってその見せびらかし方なんかしたら・・・背後から近づいてくるお客さんに気付いてないと・・・確保されるわよ!
【日下を取り押さえようと、勇敢な客が日下に迫った。だが・・・】
ポチッ
あ~あ、馬鹿。
グラサンは男のタックルを避ける時にボタンを押してしまったわ。意図なんか絶対にないわねアレ、思わず力が入ったみたい。
何処の世界にうっかり爆弾を爆発させる犯人がいるのよ!
グラサンはその後、隙を見て逃走。おそらくボートで海に逃げたみたい。
それを追う警察。
あれ?警察?全員出動?
船で爆弾が爆発したばかりよ?お客さんだって大混乱、ここは警察が人々を落ち着かせて誘導するのが普通じゃないの?
まぁ何はともあれ、最後の最後まで足を引っ張ってくれちゃうわ。
『あれ?でもこれ私にとって好都合じゃない?船長殺害のチャンスじゃない?』
殺人を邪魔する警察もいなければ、先に殺人をしようとするグラサンもいない。
天が言っているのね、私が殺せと。
そうと決まれば話は早い。私が仕掛けておいたほうの爆弾を爆発させて、船を沈没させればいいのよ。
もちろん全員無事に脱出できる余裕のあるように、沈没までの時間を調節して爆破したわ。
よっぽど命より大事なものを無謀な場所に取りに戻ったりしない限り、全員が助かるはず。沈没の際に最後の最後に残る義務のある船長を除いてね。
そして計画通り、乗組員もお客さんも全員脱出。残るは海藤船長だけ。
そのタイミングで私はヤツの前に現われたわ。銛の銃を手にしてね。
私は真相を語ってあげたわ。そうしたら「あれは社長に命令されて」って弁明してきたの。
聞く耳なんて持たないわ。
あとは引き金を引くだけ。
これにて完全犯罪は達成された・・・・
「やめろ!」
そこにいたのは毛利探偵だったわ。
何故?
そう思った私に、毛利探偵は逆転のダンスをぶちかましてきたの。
でも今回は違うわ。私が逆に毛利探偵の手のひらの上で踊らされていたの。
殺人未遂の現行犯、言い逃れの出来ない状況。しかも銛の銃は壊されて。
そして咲き乱れる見事な名推理。今度は的確に私の事件の真相を全て言い当てて。
(途中、一部の台詞が海の方から聞こえた気がしたけど、多分それは疲れていたからそう聞こえたのね)
謎は全て、解かれた・・・
でも、ここからが本番よ!
『お縄を頂戴します』と見せかけてアッパーを食らわせ・・・
ガシッ
BADでした。私の不意打ちの拳は難なく受け止められたわ。
「俺は女に手は出せない主義なんだ」
何このナイスガイ!一瞬、背後にシティハンターが見えたわ。
でもお生憎、私もこのままじゃ引き下がれないのよ!
そこからは、毛利探偵が無抵抗なのをいいことに、私の一方的なリンチが始まった。
先に言ったと思うけど、私今回の殺人のために鍛えたの。
その強烈な拳を、何発当てたか分からないわ。
なのに倒れないのよ、このオジサマ!息絶え絶えなのに。
「おじさん!」
トドメの一撃、そう思った瞬間。眼鏡の子が叫んだの。
『まだ逃げ遅れた人がいた!?しかも子供』
この時、私の心は折れたわ。無関係の人を逃がしたつもりだったのに、そのプライドが負けた感覚。
それを見透かしたのか、毛利探偵は私を背負い投げたわ。
降参よ。
最後に毛利探偵に聞いたわ。
どこで私が真犯人だと睨んだの?って。
「アンタがアイツに似てたから。犯人がアンタじゃなきゃいいと思って、無実の証拠を集めようとしたからこうなっちまったんだよ」
だって。素敵。
私のことを犯人じゃないって願っていたのに、パーティーで公開処刑みたいにして半端な推理ショーを開いたのも、もしかしたらそこで私に諦めて自首してほしかったのかもね。
こうして、謎は全て解かれた。
ちなみにだけど、今回の殺人は全て私が実行犯。
グラサンは殺害ゼロ。
彼が死を望んでいた者を私が代わりに殺して、罪も全部私のものになったわけ。
ざわ・・ざわざわ・・・・
まさかだけど、私にわざと殺させた?
私が沖田船長の娘だと知って、あの雑なトリックを見せたとしたら?
私なら代理殺人を犯すだろうって予想しての、全てを見透かした行動だとしたら?
思い返せば、トイレに行ってる時間がやけに長かった。
まさか・・・私は最初からサングラスの上で踊らされていたってこと?
無いわ。それは無い。
だってアイツ、しっかり船舶爆破の重罪あるもの。あと殺人準備の罪。
というわけで私の『グラサン=蛇説』は杞憂に終わりましたとさ。