「なぁあんた、なんでその兜ずっとかぶってんだ?」
うりうりと彼の背後から兜を掴み、揺らすモードレッド。木陰で眠っていた彼──名も無きホムンクルスは目を覚まし、鬱陶しいと思いながらもモードレットの好きにさせていた。
「………理由ならお前もモルガンに言われているだろう。それと同じだ。現にお前も外していないだろう?」
「あー……でもあっちーんだよなぁ、これ被ってると」
そう言いつつも兜を外さない辺り、モルガンの言うことには従っているようだ。
後輩のような、妹のような、弟のような存在に向けて彼は自身の経験を語った。
「まぁ、その内慣れる。事実オレもそうだった……途中から気にならなくなった形だが」
「そういうもんなのかぁ?正直身内みたいな相手に着ける必要性がわからねぇんだけどさ」
「あの魔女の事だ、きっとロクでもないことに違いない」
「ハハハッ、違いねぇや」
そう笑いながら、モードレッドは名も無きホムンクルスの隣に座る。
そして唐突に、しかし確かに、自身の夢を己の師に語り始めた。
「……なぁ、オレさ。アーサー王みたいな、そんな騎士になりたいんだ」
「騎士王のような、か。また難しい事を言うものだ」
「しょうがねぇだろ、憧れてるんだ。母上はオレに王を殺せってうるせーけど、オレからすればどうでもいい。ただオレは、あの人のようになりたい」
「……そうか、なれば特に言うまい。お前がモルガンに叛逆しようが構わんよ、オレは」
生みの親をあっさりと切り捨てる旨の発言をした彼は、その木に立て掛けてあった己が愛剣を手に取り、手元へと寄せる。ただそれだけを行い、静かにそれを見つめている。今までもこんな事はいくらでもあったが、流石にモードレッドも疑問が大きくなったのか、怪訝な表情を見せる。
「それ、ただの剣だろ?」
「確かにただの剣だな」
「だったらなんでそんな顔してんだよ、懐かしむ顔って奴……?とにかく変な顔しやがって」
「あぁ、それはな。かつて好敵手との戦いで持ち出し、そして止めを刺した武器だからさ。故に思い入れも深い」
軽々と持ち上げられる剣。モードレッドはなんとなく、その剣を見つめる。
何の変哲もない、神秘の欠片も感じない大剣。彼がそれを振るう場を見たことは無い。ある意味、こうやってじっくりと見るのは初めてだった。
「デケェ」
まず出てきたのはその一言。その刀身は彼の身の丈、あるいはそれ以上もあり、モードレッドの身長を超える長さ。よく見れば刀身は並の剣の三倍程も厚く、恐らくはその厚さに見合った頑丈さであろう。
「……持つか?」
「お、おう」
手渡されるその大剣。普段握る剣とは格段に違う重みに思わず落としかけてしまいそうだったが、持ち直して掲げてみる。こんな長物をどう扱うのか気になる程に、この剣は実に不思議だった。
「モードレッド」
「どうした?」
「──似合ってるぞ」
柔らかい口調で、珍しくそんな事を言った彼は、モードレッドにとって──
ふと瞼が開き、機械的な光が目に入って意識が覚醒していく。
「…………また、随分と懐かしい夢を見たもんだな」
ゆっくりとソファーから身体を起こして、欠伸を一つ。
「ったく、あんたはいつもそうだ。ロクに何も教えやしない癖に、とっととどっかへ行きやがる」
今はもういないあれこれと師へ文句を言いながら、部屋を出て行こうとして、ふと思った。
(……あんたはもしサーヴァントになったら、何を望むんだ……『兄上』……)
あの名前の無い男は、何を望むのだろうかと。
──腐らせるのもあれなのでここに置いておく。