ーー八幡の奇妙な体験ーー   作:龍@

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グロ注意
ダーク要素注意

本当に要注意です!シャレでも何でもないので!


ーー八幡の奇妙な体験、Part 2ーー

修学旅行、比企谷八幡は雪ノ下雪乃と由比ヶ浜結衣に裏切られる。

 

 

「あなたのやり方……嫌いだわ」

 

「人の気持ちよく考えてよ!」

 

 

2人が八幡の目の前から姿を消したのち、八幡の体に異変が起きる。

2人に裏切られ、失望され、そして期待を裏切ったという事実から目を背けたいという気持ちが彼の中で強くなって行き、消え去りたい、溶けて無くなってしまいたいと思った事から発現した。

 

発現した能力は【吸収】

自分の体をスライムのようにドロドロに溶かして、相手を取り込む力。

 

しかし八幡は体が溶けるというだけしか分からず、その時は元に戻れることがわかっただけで満足してしまった。そして修学旅行を何事もなく終わらせて帰路の新幹線に乗る。

その後に色々あったが、何故か八幡は雪ノ下雪乃にどうしても会いたい衝動に駆られた。

その気持ちを抑えることができず、修学旅行から帰る雪乃の前に八幡は姿を現した。

 

 

「っ! な、なんの用かしら?」

 

「…………」

 

 

自分が何故ここにいるのか、雪乃に対して何の用事があって雪乃の前に立ちふさがっているのか、八幡自身も分からなかった。

ただ衝動に駆られるままに、八幡は雪乃に近づいて思いっきり抱きしめた。

 

 

「っ⁉︎ えっ、ちょ、何してるのかしら⁉︎」

 

 

不意に抱きつかれて熱くなった顔を隠そうと身をよじる雪乃だったが、八幡に羽交い締めにされていて腕が動かせない。彼の温もりと匂いに包まれて雪乃はおかしくなりそうな自分の頭を理性で抑える。

しかしそんな理性もあっと言う間に消え去った。

 

ドロドロと八幡の体が溶け出したのだ。

目の前で人間の体がドロドロに溶けると言うあり得ない光景を目の当たりにした雪乃は驚きのあまり声を上げようとする。

しかしそれよりも早く八幡は雪乃の口を右手で抑えた。その腕もドロドロに溶けていて雪乃の口の中に入って行く。

 

 

「う、うむむ……う?」

 

 

何とか口から八幡の右手を離そうともがくが、そこで雪乃はあるおかしなことに気がついた。

八幡の右手が雪乃の口に当てられているなら、先ほどまで雪乃の腕を動かさないように羽交い締めにしていた手はもう雪乃から離れているはずなのだ。なのに動かせるはずの左腕に全く感覚がない。

 

雪乃は目だけを動かして、自身の左手を見ると目を丸くする。

なんと自分の左手が着ている制服ごと八幡の右腕の肘あたりにくっついているではないか。いいやくっついているというのは語弊がある。くっついているのではなく、八幡の肘に埋まるように手首から先が無くなっていたのだ。

 

 

「むー⁉︎ むー! むー!」

 

 

雪乃はさらなる身の危険を感じて死にものぐるいで体を動かそうとするが、もうすでに雪乃の下半身は八幡の下半身に吸収されていて、腹部から徐々に八幡の体へと入って行っている。

気づけば抑えられていた口も、口の中もドロドロに溶けていっているのを感じる。声が出せない。

自分が当たり前のように感じていた喉や口の感覚がなくなっていく事に雪乃は恐怖を覚えた。

 

ーーしかしそれ以上に、雪乃はある事に気づいてしまい、涙を流す。口を抑えられているため声は八幡に届かない。

 

 

「う、う、うう……ごぽっ」

 

 

目から涙をこぼし、その涙が頬からこぼれ落ちて地面に落ちる頃には、もう雪乃の姿はどこにも無くなっていた。

あるのは体の前に腕を交差させた体制で固まっている八幡の姿だけだった。

 

 

「う……ゔぐぐっ!? ぐぼぽぽぼぼ!」

 

 

しばらく固まっていた八幡だったが、突然体が熱くなってきて、堪らずうずくまる。

雪乃を吸収した事で、八幡の体に異変が起きているのだ。

 

ごぽっ!ごぼぉ!

 

八幡の体が膨張し、揺れ、どんどん姿形が変わっていく。

 

ボサボサだった髪は腰までグンと伸び、顔もシャープで女らしい形になっていく。股間にあったはずのモノも無くなり、背丈も縮む。

肩幅も太い腕もどんどん細くなって行き、しなやかな曲線を生む。

 

 

「う、あ、これは……この、知識は……」

 

 

変化がおさまるに連れて、頭の中が清々しいほどに冴えていく事と、知らなかったあらゆる知識が頭の中に存在する事に驚きを隠せない。

頭を抑えると長くなった髪に触れてビクリと体を震わせる。

気づけば着ている総武高校の男子制服もダボダボになってしまっている。

 

自分の今の姿を確認しようと、雪乃を吸収した時に、雪乃が落としたカバンから鏡を取り出す。知らないはずなのに当たり前のように雪乃のカバンから鏡を取り出せた事に少し驚くが、すぐに鏡で確認する。

 

 

「あ……え……」

 

 

写っていたのは雪乃だった。

いいや雪ノ下雪乃に似た誰かと言った方が正しい。

頭のてっぺんにあるアホ毛と腐りきった目は比企谷八幡のものだが、それ以外はまるっきり雪乃のものだったのだ。

顔のパーツや形も雪ノ下雪乃、胸や体の大きさも雪ノ下雪乃、足の長さも髪の長さも雪ノ下雪乃。声も美貌も知識も感覚も全て雪ノ下雪乃のものだった。

 

 

「オレが……雪ノ下になったのか……? いや違う……雪ノ下雪乃は、オレだ」

 

 

自分の中に雪ノ下雪乃が“いる”。体が入れ替わったとか、意識だけを憑依させたとかではない。雪ノ下雪乃を比企谷八幡の中に吸収し、自分のものとしたのだ。姿形は雪ノ下雪乃であれど、意識や体を動かしているのは紛れもなく比企谷八幡そのものだ。

 

 

「……これは、使えるかもしれない……」

 

 

これほどまでに強力な力を持った事に、八幡だったものは喜んだ。そして力を持った事により復讐心がふつふつと湧き上がり、雪ノ下雪乃と由比ヶ浜結衣にたいして復讐する事に決めた。

 

雪乃を吸収して新たな生命体となった八幡は、自分を“雪八”と呼ぶこととした。そして雪乃を吸収したこの能力を活用しようと考えた。

とりあえず見た目は雪ノ下雪乃なので、雪ノ下雪乃として過ごそうと考えた。家の場所も道も、雪ノ下雪乃の普段の過ごし方も全て知識としていつでも頭の中から取り出せる。

 

 

「ふふ……わたし、比企谷くんに吸収されちゃったのね……いいわ、これからはずっと一緒よ」

 

 

雪ノ下雪乃の声で有る事無い事を口に出して言ってみる。しかし虚無感を感じてすぐにやめた。

家に帰ってから色々と自分の体をいじったが、それもほどほどに終わり、あっさりと寝てしまった。

 

……吸収の能力が使えると思った瞬間、雪八の頭に真っ先に思い浮かんだのは由比ヶ浜結衣の顔だった。

その事に疑問を覚えると共に、さらに気がかりなことがあった。

雪ノ下雪乃を吸収して知識や基礎能力は身につけられたが、ただ一つ得られていないものがある。“雪ノ下雪乃の気持ち”だ。

 

 

******

 

 

パタン

 

「え……?」

 

 

修学旅行から日が経ち、登校日となった。

それまでの由比ヶ浜結衣は修学旅行であった出来事が気がかりであった。

しかしそれに追い打ちをかけるように、修学旅行からずっと比企谷八幡が行方不明だという事を八幡の妹の小町から聞かされた。

出来事の多さに頭のキャパシティを越えて、自分がどうしたらいいのかがわからなくなっていた。もしかしたら自分が原因で八幡が家出したのかもと思い悩んだ時もあった。

結衣は雪乃にも電話で行方不明の事を伝えて、お互いに会って話してはいないものの、共に捜索を登校日まで続けたが、手がかりを全く掴めないでいた。

そして今日、淡い気持ちで登校した結衣は八幡が来ているとこに期待していたが、案の定八幡の姿はなかった。

 

それから放課後になり、修学旅行の事で気まづいけれど、雪乃と話し合って見ようと考えた結衣は部室に向かった。

そして部屋の扉をあけて中を見ると誰もいなかったのだ。おかしいな、と思いつつ中に入ると、後ろの扉がいきなり閉められガチャンと鍵がかけられる音が聞こえてきた。

慌てて振り向くとそこには雪乃の姿があった。結衣はその姿を見た瞬間、安堵なんて感じることもなく、あまりの衝撃に背負っていたカバンをパタンと音を立てて床に落としてしまった。

見た目は雪ノ下雪乃で間違いないが、結衣はこう問いかける。

 

 

「だ、だれ……?」

 

「ああ、貴女はわかるのね。クラスの子たちには全く気づかれなかったけれど」

 

「違う……違う違う! ゆきのんじゃない! だれなの⁉︎」

 

 

結衣は目の前にいる雪乃の姿をした何かが危険なものだと判断した。咄嗟に逃げようとするも逃げ場がない。とにかく距離を取ろうと後ろに下がって離れる。

しかしそれよりも早く雪八が動いた。元々運動神経は雪乃の方が高いため、結衣はなすすべなく捕まってしまう。

 

 

「きゃあ⁉︎」

 

「あらあら、どうしてわたしが近づいただけで怯えているの? ひどいわ由比ヶ浜さん」

 

「だ、だってゆきのんじゃないもん! ! は、はなして!」

 

「くすくす……いい気味よ。わたしも……いや、雪ノ下もお前も修学旅行でオレを裏切るからいけないんだ」

 

「……えっ⁉︎ 修学旅行って……まさかーーむぐっ!」

 

 

結衣が正体に気づいた時にはもう遅かった。手で口を押さえられ、声が出せなくなってしまった。

雪乃の知識から得た護身術で固めているため、振りほどこうとするたびにどんどん動けなくなっていく。

 

ずぶ、ずぶ……

 

 

「あんっ、はじまったわね……」

 

 

これで合計2回目だが、少し慣れてきた吸収に雪八は結衣の体が自分の中に入ってきている事に心から嬉しくなる。

 

 

「む、むぐぅ⁉︎ ん、んー!」

 

 

ついに由比ヶ浜結衣の吸収がはじまった。ドロドロに溶けた雪八の体は後ろから羽交い締めにしているため、結衣の背中からどんどん吸収していく。

あっという間に結衣の体が吸収されていき、その大きな胸も先まで吸収されていった。

結衣の目からは涙がこぼれ落ちて、口を抑える雪八の手に溢れ落ちる。雪八は少し興味が湧いて口を塞いでいた手をどけてみた。

口を解放された結衣だったが、恐怖のあまり声が出ない。

 

 

「あ……あ……はー!はー!ぃ、いやぁ」

 

「うーん……そういう怯えた声は最高だけど、顔も見たいわね」

 

 

雪八はもうすでに首まで吸収し、頭部しか残っていない結衣の頭をむんずと鷲掴みにして、自分の方に結衣の顔をむける。

結衣の顔は涙でぐちゃぐちゃになっていて、恐怖からか口からカチカチと歯を震わせる音がする。

 

 

「うふふ……うふふふ……あっははは! ザマァ見ろ! これでもうお前は雪ノ下と同じようにオレの一部になるんだ! どうだ怖いだろ?」

 

 

美しい雪乃の顔を歪ませて、雪八は復讐心に塗れた憎しみの丈を結衣にぶつける。

しかし結衣は予想に反して、雪八の言葉に首を振ったのだ。

 

 

「う、ううん……ぐすっ、ちがうの……どんどん、わたしのかんかくが……なくなっていくのは……こわい、けど……うう……。

こうしてヒッキーとひとつになっていくとね……ヒッキーの気持ちが伝わってくるの……」

 

「…………え?」

 

「ごめんね……ごめんね……ヒッキー……辛かったよね? 苦しかったよね? 怖かった、よね?

わたし……ヒッキーのことを何もわかってあげられなかった……わたし、ヒッキーの事が好きなのに、なのになにもしてあげられなかった……」

 

「……や、やめろ」

 

「でも……でもこうしてひとつになっていって……わたしも、やっと……ヒッキーのためになれるの、かな?」

 

「やめろ!」

 

「ふ、ふふ……もう、あたまのなかになにもない、や……でも……ヒッキーへのおもいは……のこってる……ゆきのんのことも……。

だから、こうしてゆきのんと、ヒッキーと、わたしとで、さんにんひとつになれて……うれ、しい……ばいばい、ひっきー……」

 

 

ぐぽん!

 

目から涙をこぼし、その涙が頬からこぼれ落ちて地面に落ちる頃には、もう結衣の姿はどこにも無くなっていた。

あるのは雪乃の姿をした雪八だけ。

しかし最後に見せた結衣の顔は、涙を流しつつも……笑顔だった。

いつも見せるような笑顔ではなく、誰かを慈しむような笑顔だった。

 

ごぽっ!ごぽん!

 

 

「う、うぐぐっ!ぐおおっ!!」

 

 

変化が始まる。

由比ヶ浜結衣を吸収したことにより、雪八の体に変化が現れ始めた。

そして……

 

 

******

 

 

「はあっ、はあっ……」

 

 

3人だけの部屋に、たった1人の影がある。

 

顔は雪ノ下雪乃と由比ヶ浜結衣を足して割ったような顔立ち。髪色は肩まではピンク色で、肩から腰までは黒色になっている。頭の上にはお団子がある。

胸は大きくなり、腰や尻も女らしい丸みを帯びたものへ。

死んだ目と頭の上にあるアホ毛は変わらないが、全体的にグラマラスでスタイルの良い素晴らしい女性の体へと変貌した。

 

 

「はあ……はあ……」

 

 

声は、これまた雪乃と結衣を足したような声色。

頭の中は雪乃の知識だけではなく、結衣の世渡り術も新しく加わった。これでどこへ行っても、何をしても完璧だろう。

美貌も天女のごとき美しさ、誰もが見惚れるほどのものだ。この世の全てを手に入れたと言っても過言ではないだろう。

しかし……しかし、心は得られなかった。

 

 

「う、うぅ……ううう……」

 

 

雪乃の気持ちも分からない。

結衣の気持ちも分からない。

2人が自分の体の中にいることも、自分と同化してひとつの生命体となった事も実感できる。

けれど、2人を自分のものにしたところで、彼女らの気持ちは分からなかった。2人の考えていたことはまるで自分の中に入ってきていないのだ。

 

 

「……もう、2人はいない……それどころか、八幡もいなくなった……おれは、3人で1人になったんだ……」

 

 

依然として意識や行動、この体を動かしているのは比企谷八幡だ。けれど2人の意識はまるでなく、口調は真似できるものの、どんなことを思っていたのかは全くわからない。

 

戻そうと思っても、もう戻れない。戻る方法がわからない。

もう、由比ヶ浜結衣も雪ノ下雪乃も比企谷八幡もいなくなったのだ。

 

 

「……どう、しよう」

 

 

復讐だけを考えていた。そして達成してみれば、何も得られない虚無な気持ちだけ。

何をすれば良い、どうすれば良い。考えれば考えるほど後悔の念が湧いて、頭の中がこんがらがる。そんな中でひとつの光明を見出した。すでに答えは出ていたのだ。

 

それは唯一、由比ヶ浜結衣が残した彼女の気持ちだった。そしてその気持ちを解決できる方法も手段も雪乃の知識と八幡の発想から簡単に可能にできる。

 

 

「行こう……誰もいない、おれだけの世界へ……」

 

 

 

***

 

 

こうして比企谷八幡だけでなく、雪ノ下雪乃、由比ヶ浜結衣も姿を消した。

彼らの知り合いや友達が探し続けたが、雪ノ下家の力を持ってしても見つけることはできなかった。

 

姿を消した3人……いいや、1人はただ一つの想いを背負って生きていく。

誰もいない、静かな場所に暮らす彼らはこう思う。

 

 

ーーこうして、3人一緒になれて嬉しい、と

 

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