占いは、所詮占いに過ぎない。
世界の示す未来の姿を全て読み解くには、己を含めた世界の全てを知らねばならない。
鏡を用いても、見えるのは虚像ばかり。
なればこそ、占われた未来には、変える余地がある。
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「何故、ですか。私は言った筈です。この病は、はじめの村一つで被害を抑えなければならない、と」
「だからだよ。そのことを漏らされては困るんだ。せっかく、反王政派の旗頭が自然に消えてくれたというのに、ここで国民に反感を抱かれては元の木阿弥。死者も無駄死にとなってしまう。」
「安心して欲しい。君の娘は、この場から遠ざけてある。君の一族には、まだまだ働いてもらわなければならないから、ね。」
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「王国は、魔女によって滅びる—————」
王家に代々仕える占術師は、そう告げた。
「あれは、占いにすぎん。なら、予言された未来も変えられる筈だ。」
王はそう言って、王国周辺の魔女を捕らえるよう命じた。
熱い、痛い、熱い、あつい、あつい、あt————
「理由もなしに、はいそうですかと大人しく殺されてやる阿呆がどこにいるんだよ、バーカ」
傭兵として名を馳せた炎の魔女を捕らえに向かった一団は、炭と化した。
「なんですか、うちはただの薬師ですよ、魔女なんて、とんでもない。」
「いや、しかし、村ではこの家には魔女が住むと、」
「畑を見てくださいよ、ただの薬草ばかりでしょう、なんだったら家の中もあらためますか?」
「あー、すまない。お言葉に甘えさせてもらっ———」
ふわりと鼻腔をくすぐる香りに、意識は途絶え、
「あなたはきちんとこの家を調べた。ここに住むのはただの薬師、何も怪しいものはなかった。そうですね?」
「ああ・・・」
ふらふらとした足取りで、薬の魔女の家を出て行った兵の報告により、彼女はただの薬師ということになった。
痛い、方角がわからない、足が重い、鼻も凍りついたのか、息が苦しい、前が、見えない、いた、みが、うすれて、き
「今日は一段と寒いね、くろ」
「ニャア」
冬の魔女の元へと向かわされた兵達は、魔女に気づかれることすらなく、雪の中へ埋もれていった。
一向に成果を上げられない兵達は、王の怒りを恐れ、成果を求めて、
力も持たぬただの薬師や村から離れて暮らす老婆、果てはたまたま目についた女性まで、
手当たり次第に魔女として捕らえては、処刑していった。
そんな中、地方の村で、疫病が発生した。
中央に伝えるべき兵は、その多くが魔女狩りのために駆り出され、残りの多くも疫病に伏した。
薬師はほとんどが殺されてしまっていて、治療も間に合わない。
病は、王国全土に広がり、王すら、その例外ではなかった。
王は寝所に、占術師を呼びつけた。
「話が、違うではないか。お前は、魔女、が、国を滅ぼすと、いったが、国は、疫病に、よって、滅びに、瀕している。」
彼女はいった。
「間違いではありません。王子であった貴方が母を殺すのを見た時から、私の生き方は決まっていたのです。今の私は、占術師あらため、運命の魔女。私の言葉によって、国は滅びの運命を辿った。そういうことです。」