異世界転生したので前世の死因を考えてみる。   作:N-SUGAR

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推理できるようになるまで時間が掛かるかもしれませんが、それまでの間は一つの物語として楽しんでいただければ…。それではよろしくお願いします。


第零話 プロローグ

俺は異世界に転生した。と、一言で言ってしまって良いのかどうか、実はまだよく分からない。

 

というのも、こういう展開にありがちな、都合良く状況を説明してくれる人が今のところ俺の前には誰一人として現れてくれないのだ。目が覚めたらどことも知れない夜の森に一人放り出されていた。それだけならばまだ俺自身、異世界転生しただ等という世迷言思い付きもしないだろう。

 

しかし、空を見上げた先には大きな紫色と青色の月がそれぞれ浮かんでいる。当然、ここ、地球じゃなくね?という疑問がまず浮ぶ。そこからは状況証拠だ。覚えのない森。覚えのない空。学校指定の学ラン。首にお洒落で着けていたチョーカーは何故か粉々に砕けていて…。そして脳裏に浮かぶ、()()()()()()()()()()…。

 

異世界転生とは言い切れない。まず、転生というには俺の姿はあまりにも()()()()()()()し、ここが地球ではないだけで、遠大に広がる宇宙に偶然存在する地球に似た環境の惑星であるという説もある。俺が昨今のライトノベルに影響され過ぎているだけで、もっと頭のいい人ならば、別の最適解を導き出せるのかも知れない。

 

ただ、軽い混乱状態にある俺の脳が、辛うじて再生した最後の記憶が、自分が既に死んでいるという事実を主張する。

 

―――胸に突き刺さったナイフと、アスファルトに滴る自分の血液―――

 

俺は、自分の胸部を撫でる。傷ひとつない綺麗な身体。ほつれひとつないいつも通りの制服。

 

記憶と現状が解離しすぎている。信用できないのは俺の記憶か、目の前の光景か。

 

どちらにせよ、こんなうっそうと茂る森を、しかもこんな真っ暗な状態で光源もなしに闇雲に動くのは危険すぎる。一応ポケットのなかにスマートフォンが入っていたが、当然のように圏外だし、電池が残り20%しかないしでおいそれと使いたくはない。俺は、壊れて地面に落ちていたチョーカーを拾い上げると、そのまま近くの木を背もたれにして腰を下ろした。

 

これからのことを考えるにはあまりに状況が掴めなさすぎる。少なく見積もっても朝になってもらわないと動きようがない。果たして朝が来るのかどうかは分からないけど…。

 

かと言って、このまま全ての問題を後回しにして寝るというのは、あまりにも危険だ。先程から、多分鳥かなんかだと思うのだが、なにやら聞き慣れぬ生き物の鳴き声がぎゃあぎゃあと聞こえるし、風やらなんやらでガサガサと音がするしで、とてもじゃないが呑気に寝てなんかいられない。俺はこんな状況ですやすやできるほど図太くない。では、俺はここで何をすれば良いのか。

 

整理しよう。俺の混乱した記憶を。

 

どうせやることもないし、何かを思い出すうちに、もしかしたら現状のヒントの一つでも掴めるかもしれない。

 

なにより、俺は確かに見たはずなのだ。自分が死ぬその瞬間を。そして、()()()()()()()()()

 

だけど、フラッシュバックする記憶はあやふやで、断片的で、前後の記憶や詳細な記憶が思い出せない。殺人者の顔すら浮かばない。

 

であるならば、はっきりと思い出せるところから思い出すしかない。まずは、自分が何者かから、順番に整理しよう。万が一にでも、重要な記憶に抜けがあっては大変だ。

 

俺の名前は乙坂数斗(おつざかかずと)。性別男。家族構成は父、母、姉、ペットのごん(柴犬)の四人と一匹家族。政令指定都市の外れにある公立旧苑坂(きゅうえんざか)中学の三年生。先月誕生日を迎えたばかりの十五才。A型。一応受験生だが受験勉強などしていないので、恐らく順調に進めば、名前を書かなくても入れると噂の私立明朗高校に進学することになっていただろう。性格は、幼馴染曰く「裏表がないと言えば裏表がないけど、具体的に言えば裏しかない」。『帰宅部同好会』という非公式の同好会に所属している。成績は中の下。信条は、『赤点さえとらなきゃ百点』。自分が不真面目であるという自覚はあるが、周りの人間が大概ヤバイのでまだましかなとか思っている。後は――。

 

――うん。自分が何者か、は、大体覚えてると言って良い。身の回りの人物や、過去印象的だった出来事のいくつかも問題なく思い出せる。問題は直近の出来事。具体的には今日一日の記憶が少しあやふやだ。なので今日の朝から一つ一つ、思い出していこうと思う。ゆっくり時間をかければ恐らくは思い出せるだろうし、そうしていれば夜もきっと明けるだろう。

 

俺は意識を集中し記憶の蓋を開けていく。――そう。確か今日は朝から大きなニュースがあって――。




真面目に推理する方へ。

推理ものとは関係のない異世界ものとしての伏線を散らばすことがあるので情報の取捨選択にはご注意ください。
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