アズールレーン~彼女達に転生するとどうなる?~   作:サモアの女神はサンディエゴ

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これは、とある彼女?の一幕である。


獣欲を抑えて過ごしたある日「赤城、これを………受け取ってくれないか?」(箱から指輪)

「………え?」

 

月間MVPの報奨にと貸し切りになっている綺麗な夜景の見えるロイヤルのVIP用に用意された部屋で唐突に渡された¨ソレ¨は白いテーブルクロスの引かれたテーブルの上で穏やかに灯る蝋燭の火に照らされて美しく輝いている。

 

驚きで固まり、渡された¨ソレ¨と顔を真っ赤にしながら真剣な眼差しでこちらを見つめる私の………私達をいつも勝利へと導いてくれる指揮官様がいた。

 

「赤城、君と出会ったあの日から………君の事が気になって………いや、正直に言おう。君に一目惚れだったんだ!!」

 

その声はMVP報奨での労いの意味を兼ねた豪華なディナーの準備や給仕をしていた歴戦のロイヤルのメイド隊達すら一瞬にして動きを止めてしまうような力強さを秘めたものであり、目にはまるで私を焦がしてしまうような熱い眼差しがこもっている。

 

指揮官様はもともとユニオン出身で世界を巻き込んだセイレーン大戦の余波によって身寄りを失くし、その後のアズールレーンとレッドアクシズ大戦での徴兵から若くして戦場へ送られた一般人。

 

そこで偶然触れる事となった我々KAN‐SENの基礎となるメンタルキューブに触れた事から指揮官としての適正が判明したことでそのまま当時建設して間もない新しい母港に配属されて戦いに身を投じる事となったのだ。

 

その右も左も分からぬままの戦いの最中に通称3-4と呼ばれる海域で私と加賀を拾う事となったのだが、それも偶然の出来事だったらしく、あの何があってもマイペースな初期艦のラフィーですら私達に出会った事を驚いていたのを今でも覚えている。

 

そんな形でこの艦隊に参加する事となってもう2年の月日が流れていたのだけれど、まさかこんな形で指揮官様に求められる事となるとは思いもしなかった。

 

「赤城、どうかこの指輪を受け取ってはくれないだろうか?俺は君を幸せにしたい………いや、一緒に幸せになろう!!」

 

胸に手を当てると高鳴るのが分かる。

頬が紅潮して熱くなっていくのも………

 

「………少し、考えさせてください。まだ頭の中が混乱してしまいまして」

 

しかし、指輪を受け取る事は出来ない。

何故なら………

 

 

 

 

私、元男ですから

 

 

 

 

 

目が覚めたら女性になり、しかもKAN-SENという人では無い存在。

混乱のまま海の上に立ち、何故か加賀と一緒にいたというのが私の最初の記憶なのだ。

この身体になる前はどこにでもいる三十路間近の冴えない看護師で、寝て起きたら身体が変わって海の上。

まるで訳が分からない状態だった私を拾って置いてくれた指揮官様には感謝しかない。

この身体の能力を駆使し、時に学ぶ事によって母港を盛り立てて指揮官様とは苦楽を共に過ごした掛け替えの無い存在である事は間違いないのだ。

別に指揮官様の事が好きじゃないのかと言われればそうではないし、どちらかといえば………

 

しかし、しかしである。

 

元男であったという心理的な要因に加えてこの身体にはある欠陥があった。

それはまず、話し方や仕草がこの身体本来の持ち主である赤城のようになる事。

これは普段の生活では困らないのだけれども………たまに駆逐艦の子達に悪の女幹部のように見えて泣かれるのが心に突き刺さる。

子供とのふれあいが父性というか母性を刺激して優しくしてあげたいのにこの雰囲気や仕草が邪魔をするのだ。

 

まぁ、これは私の中でまだ軽い方だろう。

もう一つの欠陥が一番危険なのだ。

もう一つの欠陥、それは………

 

 

 

指揮官様を見ると獣欲が高まって抑えきれなくなりそうになる事。

 

 

 

 

はっきり言って指揮官様と二人きりになろうものならそのまま貪りというか搾り取ってしまいそうになってしまう。

それを自覚してからというもの、獣欲が高まる前に指揮官様の前からそれとなく離れて訓練に励んだり、敵………セイレーンの傀儡艦隊や上位個体に単独で殴り込んで八つ当たり気味に一方的に撃滅したりしていた。

 

そんな努力を続けて大切な指揮官様にはそんな自分の醜い獣欲を見せないように頑張ってきたのに………

家族のように親しくなったあの方を、傷付けないように細心の注意払ってここまでやって来たのに………

 

 

 

 

ここでそれはありませんわ指揮官様ぁ………

 

 

 

 

胸の高まりから腹部へと響く心地良い疼き………

獣欲が高まり始めたのを感じたのに比例して焦りが出てくる。

無性に感じる羞恥心が思考を阻害して半ばパニック寸前まで追い詰めてくるのだ。

ここまで追い詰められたのはセイレーンの上位個体とその直属艦隊の大部隊に単騎で包囲されていた時ぐらいだろうか?

 

胸から溢れる甘い疼きとキュンキュンくる下腹部の鳴動に、このままロイヤルのメイド達に見られながらも致してしまっても良いのではと頭の中の赤城としての部分が訴えかけてくる。

それを必死に抑えていると

 

 

「………はぁ姉様、またヘタレているのか?」

 

 

いつの間にかワイングラスを手にこちらに来ていた加賀が呆れた様子で見ていた。

 

「指揮官、もっと押してしまえ。いや、押し倒しても構わんぞ?姉様はお前の事が好きで堪らないが、奥手過ぎてそれを伝えられんのだ」

 

「加賀!?」

 

薄く笑いながら………というよりも愉悦を含むような笑みを浮かべて指揮官様にそう言い放つ加賀に私は目を見開いて名前を呼ぶことしか出来ない。

 

「だいたい姉様は奥手過ぎるのだ。お前に会う前は必ず身嗜みを確認するのに10分は掛けるし、二人きりになるのが恥ずかしいからといって必ず私を側に置こうとする。寝る前だって手の平ぐらいのお前の写真を30分も眺めてお休みの挨拶をして眠るのだ………あまりの熱の上げっぷりにこちらが胸焼けしそうだ」

 

「な、あ………」

 

口角を上げながら指揮官様には隠していた私の習慣を赤裸々に暴露していく彼女に私の羞恥心がさらに高まって頭が破裂しそうだ。

 

「そら指揮官、姉様は陥落寸前だぞ?私とロイヤルの者は退室するから後は上手くやると良い」

 

カラカラと笑いながら加賀はそれだけ言うとロイヤルのメイド達と一緒に部屋から出て行った。

後に残るは獣欲と羞恥心で狂いかけの私と何がなんだか分からないと混乱の極みにある指揮官様の二人きり………

 

 

 

ああ、指揮官様と致したい………

 

 

 

「………城?赤城?どうしたんだボンヤリして?」

 

呆けながら獣欲に身を任せそうになっていると静かになった私を心配そうに見つめる指揮官様が肩を揺すっている。

その心配そうに覗き込んでくる御尊顔が私の理性を………

 

「指揮官様ぁ」

 

「あ、赤城?どうしたんだいったい?何故服を脱いで………」

 

ああ………愛しい、愛しい指揮官様ぁ………

 

「待て赤城!?俺の服に手を掛け………ズボンは待て!!」

 

この赤城、我慢しておりましたが………

 

「誰か!加賀!ロイヤルの誰かでも………う、うおぁぁぁぁぁぁ!!」

 

此度ばかりは我慢出来そうにもございませんわぁ♪

 

 

 

「愛しておりますわ♪指揮官様ぁ♪」

 

 

 

 

翌日、艶々とした赤城が右手の薬指に指輪を嵌めて指揮官にキスの嵐を見舞うのをケラケラと笑う加賀と冷たい眼差しで見つめる翔鶴が母港中に広めるのだった。




獣欲(赤城的本能)には勝てなかったよ………

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