アズールレーン~彼女達に転生するとどうなる?~   作:サモアの女神はサンディエゴ

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初めの終わりは絶望した。

2回目の終わりは後悔した。

3回目の終わりは苦悩した。

それから幾度となく終わりを見続けて………それでも希望を諦めきれない。

あなたと交わした約束が私に力をくれる。

必ずあの約束を果たして、もう一度あの笑顔を見れるまでは………私は諦めません。



何度も、何度でもあなたを好きになる。

「指揮官、今日の業務の時間は終わりましたよ?」

 

「ああ、ありがとうニーミ……この書類に目を通したら終わりにするよ」

 

夕日が沈みそうになる水平線を執務室の窓から視界の端で捉えつつ、手に持つ書類を見つめる指揮官の横顔を盗み見する。

こんな穏やかな時間を過ごせる今がとても愛おしくて、思わず頬が緩む。

そんな私に気が付いた指揮官が笑顔で

 

「男の横顔なんて見てて面白いものでもないだろニーミ?」

 

私にそう問いかける。

だから私は決まってこう言うのだ。

 

 

 

「私にはとても魅力的ですよ指揮官の横顔は」

 

 

 

すると指揮官は苦笑しつつ書類を片付けて立ち上がり、引き出しに鍵をする。

残した物が無いか確認した指揮官は私の方に歩み寄り手を差し出す。

 

「それじゃあ夕食に行こうか秘書艦殿?」

 

「はい、喜んで」

 

私は指揮官の手を握り執務室を後にする。

 

ああ………こんな日常が何時までも続けばいいのに。

 

そんな思いを胸に秘めつつ今ある幸せを噛み締めて食堂へと歩く私は過去を思い返す。

 

私こと鉄血駆逐艦 Z23は転生者である。

 

そして、逆行者でもある。

 

男性から女性へと性転換する不思議な転生をして訳も分からず混乱する私を助けてくれた指揮官。

そして、そんな私を支えてくれた家族ともいえる仲間達と共に戦場を駆け巡った。

 

 

 

しかし、それは敗北して滅亡する世界の終わりを少しだけ押し止めただけに過ぎなかった。

 

 

 

最初の犠牲者は鉄血の指導者としての顔を持つビスマルクだった。

次の戦場へと単独で移動中にセイレーンと呼ばれる正体不明の艦隊に飽和攻撃を受けて仄暗い海の底へと沈められたのだ。

指導者を失い精神的支柱を失った鉄血艦隊は脆く、駆逐艦や巡洋艦が次々に沈んでいき………最後に残ったのは私と指揮官だけだった。

 

「俺にもっと皆を引っ張れる力があればこんな事には………」

 

皆の居なくなった寮を涙ながらに見つつそう語る指揮官に何もしてあげられない自分がもどかしくて………次の日に執務室で拳銃自殺を図り、冷たくなった指揮官を見て私は絶望した。

 

 

 

しかし、気が付けば私は指揮官に助けられたあの日に戻っていた。

 

 

 

あれは、あの生々しい日々は夢だったのか?

そんな思いと共にもう一度繰り返す日常を送る私は同じような最後を迎えそうになった。

唯一変えられたのは皆が居なくなってしまった後の指揮官の自殺のみ。

ビスマルクが堕ちた後に夢ではないと確信して動き出すも時は既に遅く、守れたのは指揮官だけだった。

 

「こんな約立たずで味方を守れなかった俺なんて助けてどうするんだニーミ………」

 

涙ながらにそう語る指揮官を胸に優しく抱きしめながら後悔した。

こんな事になる前に動けば良かったと………

 

その後、程なくして私と指揮官は再侵攻してきたセイレーンの砲撃で吹き飛ばされた。

 

 

 

今度は………今度こそは全てを変えてみせる。

 

 

 

そんな思いを胸に最期の瞬間まで指揮官を抱きしめ続けて………

 

そして、またあの日に戻った。

 

今度こそはと挑む私に皆の視線は………懐疑的だった。

あの悲劇を繰り返さないようにと覚えている限りの事を伝えるが、信じてくれる人達は少なかった。

それどころか私が精神的に病んでいるのではと逆に心配されるほどに。

 

それも当然だろう。

自分が沈むなんていきなり言われても頭がおかしくなったと思われても仕方がない。

 

唯一信じてくれたのは指揮官だけだった。

 

私の意見を参考に作戦や編成を変えて対応し、被害を減らして逆に返り討ちにする程。

そして、そこから興味を持ってくれたビスマルクが私の話を聞いてくれて鉄血全体の為になると皆に話して説得してくれた。

 

これならば………皆を救える。

 

一筋の光明が見えた瞬間だった。

 

「ニーミ」

 

「なんですか指揮官?」

 

執務室で秘書艦として指揮官のサポートをしていると不意に名前を呼ばれる。

見ていた書類を置いて指揮官の方に顔を向けると

 

「ありがとう」

 

笑顔でそうお礼を言われた。

なんでお礼を言われたのか分からずに首を傾げていると

 

「ニーミは俺達が負けないように未来の事を伝えてくれただろ?皆に信じられなくてもそれでも助けようとしてくれた。そのお礼を言っておこうと思ってね 」

 

「私も無我夢中でしたから………」

 

理由を聞いて少し恥ずかしくなる。

いつも私を信頼してくれる指揮官からのお礼に胸が高鳴り熱くなった。

こんな経験は初めてで、視線が指揮官に合わせられずに周りをキョロキョロと落ち着かない。

 

「俺はニーミに感謝してるよ。未来の知識を伝えるだけじゃなくて、何かの役に立とうといつも色んな所から探してきた仕事を頑張ってこなしている頑張り屋なニーミが好きだ。」

 

「す、好きぃ!?」

 

顔が真っ赤に染まるのを自覚しながら指揮官を見ると穏やかな笑顔でこちらを見ていた。

 

「いつかさ、ニーミに受け取って貰いたい物があるんだ。」

 

「えっ?」

 

「必ず、必ず渡すからさ。待っていてくれないか?」

 

「は、はい!!」

 

指揮官からの贈り物。

渡してくれると言ってくれたその約束とあの優しい笑顔を胸に刻んで、もう一度この悲劇を終わらせる誓いと1つの願いをここに願う。

 

 

 

早くこの戦争を終わらせられますようにと………

 

 

 

しかし、私は失敗した。

セイレーンとの戦いに油断した訳でもなく、ましてや想定外の事態に遭遇した訳でもない。

 

 

 

ただ、鉄血以外の陣営がセイレーンに滅ぼされたのだ。

 

 

 

こうなれば残った陣営である鉄血に全ての力を向けたセイレーンによってすり潰されるのはさほど時間はかからなかった。

 

私は苦悩する。

 

この運命の袋小路に対抗するには自分達の陣営だけでは到底無理である事に。

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

あれからどれ程のやり直しをしてきたのだろうか?

何度も何度も失敗して最期を迎えて………

それでも諦めきれずに挑戦し続けて………

何度心を折られたことか………

 

 

 

でも、指揮官は何度でも私信じて支えてくれた。

 

 

 

それだけが私の希望だった。

それだけあれば私は戦えた。

それだけあれば私は挑み続けられた。

 

何度裏切られて対立して、戦う事になっても前を向いていられた。

 

1度どんな時でも信頼してくれる指揮官に

 

「こんな私をどうして信じてくれるんですか?」

 

と聞いたことがある。

すると指揮官は笑顔でこう答えた。

 

「一生懸命良い未来を作ろうとずっと頑張ってるニーミだから俺は信じられるんだよ」

 

私はその時の事をずっと忘れられない。

そして、こんな優しい指揮官の為にこんな運命なんか打ち破ってみせると新たに誓う。

 

 

 

「運命なんて………打ち破ってみせる!指揮官や皆がいればこんな悲劇を乗り越えられる!!」

 

 

 

そう、変えられない運命なんて無いのだから。

 

それに私はあの時の約束をまだ果たしていない。

指揮官からの贈り物。

それは何度も繰り返す逆行の中で変わらずある指揮官の信頼と共に必ず起きるイベント。

 

たぶん…"あれ"だと思うのだけど、この悲劇を打ち破るまでのお預けだ。

指揮官が待っていて欲しいと言ったあの日から続くこの胸の高鳴りは、いまだに私の頬を染めて気恥しさを感じさせる。

 

「きっと、これは………この想いは……」

 

トクントクンと高鳴る胸に秘めた想いを抑えつつ、未来を見つめる。

いつも支えてくれるあなたにいつの間にか惹かれて堕ちていた私の心を抑えてより良い先へ。

 

今度こそ………今度こそは掴んでみせる。

 

あの日から最も先に進んだ今日この日。

 

相容れずに何度もぶつかり合った各陣営が手を取り合い最高の状態で挑む最終決戦。

 

重桜の綾波やロイヤルのジャベリン、ユニオンのラフィーといった最高の親友を得て繋がった各陣営との絆が今ここに集いて運命を貫く力となる。

 

私は絶対に負けない!!

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

「ニーミ」

 

「なんですか指揮官?」

 

夕食後の就寝時間までの間に指揮官と共に学園の外で夜風に当たりながら歩いていると不意に名前を呼ばれる。

指揮官の方を見ると小さな箱を私に向かって差し出していた。

 

「これを、受け取って欲しいんだ」

 

指揮官からの贈り物は月明かりに照らされてとても幻想的に見える。

震える手でその黒い小さな箱を受け取って蓋を開くと綺麗な銀色のリングが顔を覗かせていた。

 

「私で……いいんですか?」

 

震える胸と声に自分が自分ではないような感覚に錯覚しながら指揮官に改めて問う。

指揮官は耳まで真っ赤になりながらゆっくりと頷く。

私が受け取った箱から指揮官がリングを取り出して私の右の薬指にそっと填めていった。

 

これは紛れもないエンゲージリング。

 

溢れる涙でボヤけるけれども、月明かりに照らされてキラリと輝くその銀色のリングは今まで見てきたどんな綺麗なモノよりも輝いて見えた。

 

 

 

「これからの事を考えてさ、今しか渡す機会はないって思ったんだ。だからニーミ……俺と、結婚して下さい」

 

 

 

片膝をついて私を見上げながらそう告白する指揮官。

呆然とする私は、無意識に何度も頷く。

最終決戦前に不謹慎ではあるものの、私はとてつもない幸福感に包まれていた。

 

「私……私は………指揮官の隣に居ていいんですね?」

 

「もちろんこれからも、この先も、ずっとニーミには隣にいて欲しい」

 

私の右手を優しく握って包み込む。

そんな指揮官の優しさが嬉しい。

私もそんな指揮官の手に手を重ねて自分に出来る精一杯の笑顔を浮かべた。

 

 

 

綺麗な月明かりに照らされて私と指揮官の距離は近くなり、そしてゼロとなる。

 

 

 

これから襲いかかる悲劇なんて全部怖くない。

 

 

 

運命なんて指揮官と一緒に打ち破ってみせるのだから!!

 

 

 

『あら?このデータは無いわね?なら記録しておきましょうか………ふふふ、これ以上は野暮な真似はしないわ。良いデータが取れたもの………戦いの世はいつも変わらない、でもたまにはこんなデータも悪くはないわ』

 

そこはこの世界を観測する場所。

 

空間に浮かぶモニターを見続けた生物と兵器が混ざったような多数の触手を持つ彼女はそっとモニターを消すのだった。

 

 

 

 





いかがだったでしょうか?

今回は諦めない真面目系なニーミでした。

もっと早く投稿するはず………7月1日に投稿予定だったのですが、コ〇ナの影響でリアルが忙しくて執筆時間の捻出が難しい状況でした。

ネタは上がっているのに1日200文字を打つのが限界で全く執筆出来ない日々もしばしば………

これからも遅筆になると思いますが、どうか御容赦を

さて感想返し………

零距離雷撃でぼっこんぼっこん敵を沈めるってのが綾波

確かに酸素魚雷ガン済み綾波はっぉぃ………

初撃で前衛の3/1削るのやめちくりーな私がいます。

最近は許不和なローンさんもいて盛り返せるのですが、初手からあれは辛いです。

さて今回はこのくらいで。

では次回もお楽しみに

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