ポケモン世界に転生したと思ったらミカンちゃんだったのでジムリーダーになることにした。   作:木入香

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 遅くなりました。ミカンちゃんvsハヤトの第2ラウンドです。
 この対決は多くの人が想像出来ていたと思います。格好良いですよね。空中戦。
 次はどんな話を書こうかなと考えつつ、またしばらく間が空くことをご了承下さい。というかあくまで息抜きですので、書かないという可能性も無きにしも非ずですが。

 話は変わりますが、第3話にアサギジムへの挑戦者として登場したクリオですが、原作にもいたことを覚えている人は果たしてどれくらいいるでしょうか?(私は全く覚えていませんでした)
 エンジュシティからモーモー牧場の間の38番道路に登場する塾帰りです。
 手持ちのポケモンはバリヤードのみ。再戦時にレアコイルが追加されます。HGSSはコイルが追加され、そこから段々と強くなってレアコイルになります。
 余談でした。

 余談ついでに……ミカンちゃんと言ったらハガネールですが、一向に出番がありません。どうしましょう? エンペルトも……うん、いつか出します。

追記:誤字報告ありがとうございます。


第6話 vs エアームド

 場に出た2匹のポケモンを見て、周囲にどよめきが起こりました。

 

「まさか!」

「エアームド対!」

「エアームドだと!」

 

 そう、私もハヤトさんも繰り出したのは、よろいどりポケモンであるエアームドです。

 アルフの遺跡でツクシさんが、恐らくゴールドさんと思われる人物とロケット団と戦ったと話にありました。そして、ポケスペによれば、ハヤトさんがエアームドをゴールドさんと協力して手に入れるのが、その前のエピソードです。ですので、持っていてもおかしくはないですし、この残り1匹という場面で出してくるとしたらエアームドであろうと予想出来ていました。

 そこで、またしても私はあえて同じエアームドをぶつけるという手段に出ました。同じポケモン同士の戦いって展開的に熱いですからね!

 

「頑張れエアームド!」

「起きて下さい。ムーちゃん」

 

 ……同じエアームドでも、かなり違うようですね。

 と同時に、流石(さすが)コガネシティのアカネさんとその他の職員さん、見事なズッコケをして下さいました。

 審判(しんぱん)であるアカネさんは、起き上がりながら「しっかし、ミカンの方のエアームドはなんや、えっらいモッサリしとるなぁ」と言っているのが聞こえます。モッサリではありません。ゴワゴワしているんです。

 それはともかく、私の呼び掛けでハッと起きたムーちゃんは、辺りをキョロキョロと見、そしてバトルだと気付いてくれたようで、そこでようやく対戦相手の方へ向きました。

 

「えぇと、随分(ずいぶん)脳天気(のうてんき)な子みたいですね。それに、それは羽毛……? オレのエアームドとはかなり量が違うようですが」

「あはは……すみません。もう、ムーちゃんったら……すみません。それと、羽毛が多いのはこの子の体質です。換羽(かんう)をしても抜け落ちにくい体質で、どうしても抜けずにここまでになってしまいます」

 

 なるほどと(うなず)き、何やら考えている様子です。きっと、この羽毛の量から動きにくいだろうと予想しているのでしょうか。考えている時間は短かったですがすぐにまとまったようで、私に向き直ります。

 

「あなたが育てたポケモンです。気は(ゆる)めません。それに、せっかく同じポケモン同士なのですから、飛行タイプのエキスパートとしてのエアームドか、鋼タイプのエキスパートとしてのエアームドか。どちらが上か、挑ませて頂きます」

「はい、私も負けません!」

「先程は先制を取られて流れを持って行かれた。だから、【こうそくいどう】!」

「速い!」

 

 私のムーちゃんと違って真面目(まじめ)な子なのか、場に出てからほとんど微動だにせず、ジッと対戦相手を見つめていましたが、いざ指示が入るとすぐさま忠実(ちゅうじつ)に行動に移しています。

 

「【はがねのつばさ】!」

 

 その速さを維持したまま、ただでさえ硬い羽を更に硬質化させて衝突(しょうとつ)してきました。その速さに付いていけないムーちゃんは、直撃を受けましたが、多すぎる羽毛によってダメージはほとんどない様子で、数歩後ろに下がっただけで踏ん張ります。

 

「くっ流石に硬いですね!」

「羽が沢山あるおかげです」

 

 成体のエアームドの体重は、平均で50kgを少し超える程度です。鳥ポケモンとしては重い方で、大体が最終進化形でも30kgを切ります。ピジョットやヨルノズクといった40kg前後の個体でも、サイズが大きい故の重さであって飛び回るのに支障はありません。それはエアームドも同じことで、鋼の身体を持つが故に普通の鳥ポケモンよりは重いですが、それでも十分機動戦が行える身体をしています。

 ですが、私のムーちゃんは体長こそは平均のエアームドとほぼ同等ながらも、その体重は70kgととても重いです。ですので、一応飛ぶことは出来ますが、戦闘機動を取ることを考えると、とてもではないですがその重さでは無理があります。

 

「まだまだ終わらないですよ。【はがねのつばさ】」

「ムーちゃん、耐えて下さい!」

 

 鋼の羽毛のおかげで何とかダメージは食らわずに踏みとどまることが出来ていますが、どんどんと相手の攻撃力が上がっているように感じます。

 それもそのはずです。【はがねのつばさ】は一定の確率で防御力を上げる技。硬くなった羽は、防御だけでなくそれそのものが武器となります。しかも、【こうそくいどう】によって速度も上がっています。

 

「まだです。まだ耐えて下さい」

「【スピードスター】!」

 

 誘導型の弾幕がムーちゃんに殺到しますが、金属音が響くのみで彼にダメージが届いている様子はありません。

 

「まだです」

 

 速さとは、重さです。

 ゲームでは攻撃力の種族値があって、個体値があって、努力値があって、技の威力があります。ですから、例えばどんなポケモンが【たいあたり】をしようと、タイプ一致や特性での威力の底上げ、急所でない限り、威力は40で、それ以上でもそれ以下でもありません。ですが、本当にそうでしょうか?

 例として、イワークとバタフリーの2匹を挙げます。ゲームでは、攻撃力と素早さ種族値は同じです。

 つまり、個体値も努力値も性格も同じ場合、互いにタイプ不一致である【たいあたり】は同じ威力40になるということになります。しかし、少し考えただけで変だと思うはずです。

 体長8.8m重さ210kg防御160のイワークと、体長1.1m重さ32kg防御50のバタフリーが繰り出す【たいあたり】が、果たして同じ威力だと言えるのでしょうか?

 確かに、攻撃力も素早さも同じです。ですが、重さも硬さも全く異なる2匹が同じ壁に衝突した場合、結果がどうなるかは……考えなくても分かるはずです。

 

「こうなりますと、鳥ポケモンとしては重い体重も、立派な武器となっていますね」

「そう。飛行タイプの神髄(しんずい)は、高い機動力と素早さで空を制し、相手を翻弄(ほんろう)することです。ここに弱点である防御力をカバーすることで、非常に高いポテンシャルを発揮することが出来ています。それに、指摘の通り、重さは素早い動きをするにはネックですが、そこも【こうそくいどう】を使うことでカバーしています」

「となりますと、私のムーちゃんは防御こそ非常に高いですが、肝心な鳥ポケモンとしての素早さが圧倒的に足りないことになりますね」

「同じポケモンといえど、飛行タイプのエキスパートとしてのオレのスタイルと、鋼タイプのエキスパートとしてのミカンさんのスタイルで違うのは当然です。ですが、このまま受けるばかりでは勝てませんよ?」

「……そうですね」

 

 これは暗に、反撃して下さいと言っているのでしょうか? それとも挑発ですかね? ハヤトさんの真面目な性格のせいで、どうにも挑発が挑発っぽくないです。ただ、まだ攻撃に打って出る訳にはいきません。

 これまで私があの子に攻勢に出ないようにさせているのは、タイミングを(はか)っているからです。

 ムーちゃんは脳天気でマイペースな子ですが、戦いの場に出たら問題なく臨戦態勢(りんせんたいせい)に入ることが出来ます。(たま)に先程のように居眠りしていることもありますが……

 ただ、今のように多すぎる羽毛という足枷(あしかせ)がある状態では、攻撃に移ったからといって有効打は与えられません。であれば、チャンスが巡ってくるまで防御態勢を取ってダメージを最小限に食い止めることが先決です。ですので、今にも飛び出しそうな彼を、言葉で何度も引き留めています。

 普段はここまでの強い意志は感じないのですが、きっと相手が同じエアームドだからでしょうか。同族には負けたくないという思いから、普段ののんびりとした風貌(ふうぼう)からは考えられないくらいに鋭い目付きをしています。

 

「まだ守りますか。だけど【はがねのつばさ】!」

「ムーちゃん!」

 

 今の一撃は強かったです。おかげでムーちゃんも数歩、踏鞴(たたら)を踏んでしまいました。羽毛のおかげで、すごく高い防御力を手に入れていますが、それだけです。こちらからの攻撃が当たらないとなると一方的なサンドバッグ状態。いつかは攻略されてしまいます。

 

「あっ」

 

 その時、ハラリと一枚の羽が落ちました。

 私は、思わず口角が上がってしまうのを我慢し、ムーちゃんの状態を注視します。

 このまま耐え続けるだけでは、いずれ攻略されてしまいます。ならばと攻勢に出ようにも、まさしく重りが付いた状態では満足に動けないですし、しっかりと威力の乗った攻撃も出来ません。

 だから身に付けさせました。彼が足枷を(はず)し、大空を飛び回れる自由を手に入れ、その実力を十二分に発揮する為の技を……

 

「【ボディパージ】」

 

 その瞬間、バラバラとムーちゃんから余分な羽が抜け落ちて、小さな山を作りました。下ろした重さは30kg弱。自身の本来の体重の約70%の重りがなくなったことで、身軽になったムーちゃんはバッと羽ばたき……一気に相手の死角へ移動していました。

 

「なっまた!」

「またです! そして、ここからお返しです!」

 

 そこからは激しい機動の空中戦です。お互いに速く、ものすごい勢いで立ち位置が変わる為、外野からではどちらがどちらのエアームドか分からないと思います。ですが、私もハヤトさんも自身の相棒を見失うこともなく、指示を飛ばし続けます。

 速さ自体はほぼ互角です。ですが、明らかに私の相棒の方がキレの良い動きをし、確実に相手に攻撃を仕掛けることが出来ています。

 

「くっ、素早さは同じくらいのはずなのに、何故追い付けないのですか!」

「確かに、最高速度はほぼ同じくらいでしょう。ですが、私のムーちゃんはそちらのエアームドよりも、体重が10kgも軽いのです」

「それが何の……まさか!」

 

 そうです。同じ速度、同じ硬さであれば、より重い方が衝突の衝撃は大きいです。ですが重いということの弱点は、そのまま先程のムーちゃんが示していた通り足枷にもなるとうことです。

 重いと加速は遅く、また急に止まることも出来ないですし、急角度で曲がることも難しいです。そして、それを無理矢理やろうとしてしまうと身体に大きな負担ですし、スタミナの消費も激しくなりますので、長期戦が出来なくなってしまいます。

 そして、軽いということはその逆と言えます。速度の緩急(かんきゅう)が付けやすく、より鋭角に曲がることが出来ます。しかも、今のムーちゃんは重りを取り外したばかり。一時的なドーピング状態のように身体が本来の体重よりも軽く感じ、より素早く動ける感覚にあります。

 つまり、速度を維持したまま細かく動くムーちゃんの動きに、相手のエアームドが着いてこられなくなってきているということです。

 

「【ブレイブバード】で追い掛けろ!」

「こちらも【ブレイブバード】で逃げて下さい!」

 

 そして、熾烈(しれつ)な機動戦は更に激しさを増し、戦闘機のゲームのような複雑で(いびつ)ながらも美しい線を(えが)くように飛び回っています。

 

「くっ反転しろ!」

「させません! 今度は追い掛けて下さい!」

 

 体勢を立て直すつもりでしょう。しかし、このチャンスを逃す手はありません。

 

「ふっ【ブレイブバード】!」

 

 まさかの連続での【ブレイブバード】! しかもこの位置と距離では、確実に正面衝突コースです!

 そうなりますと、防御力も羽毛を脱ぎ去ったことにより本来の状態に戻ったことで、相手の【はがねのつばさ】で上がった防御力に勝てません。おまけに、何度も言うように重さは武器です。10kgの違いでも硬く、重い方が断然有利です。

 ですが、身軽になったことでこの技が使えるようになったんですよ?

 

「【フェイント】」

「なっどこに!」

 

 一瞬で目の前から姿を消したムーちゃんを探そうと、急停止しようとしたエアームド。ですが、それによって射程圏内となってしまいました。衝突の寸前に【フェイント】によって半バレルロールから相手の頭上へと移動した彼は、そのままの勢いで(ひね)り込んで真下に向けて加速します。

 

「【つじぎり】です」

「しまった!」

 

 狙いはエアームドの細い首。

 翼は【はがねのつばさ】によって散々硬くなっていますので論外。胴体と頭部は元々硬い鎧で(おお)われていますので、急所となりにくい。足は、攻撃が通ったとしても狙った効果は得られづらい。よって、首を狙いました。しかも【つじぎり】は素早く一閃をすることで、相手に(かわ)す暇も与えずに急所を狙うことが出来る技です。

 いきなり死角となる真上から首に向けての激しい攻撃に、ハヤトさんのエアームドはそのまま地面へと叩き付けられてしまいました。

 しかし、高い防御力のおかげでかろうじて体力は残っていたようで、何とか地面から起き上がろうとしますが、そこにムーちゃんが首筋に薄い鋭利(えいり)な刃物と化した羽を突き付けて、また【つじぎり】が放てる体勢になっていたことで、悔しそうに一声鳴き、地面に再び倒れ込みました。

 

「ハヤトのエアームド、戦闘不能。よってミカンの勝利や!」

「ふぅ、お疲れ様でした」

「あ、あぁ、お疲れ様でした……」

 

 負けたことによる悔しさもあるのでしょうが、切り札まで倒されてしまったことで自信をなくしてしまったのでしょうか、やや呆然としています。

 

「あの、大丈夫ですか?」

「え? あ、あぁ、申し訳ないです。いやぁ、やはり世界は広いなと実感したんですよ。オレの父もエアームドを持っていて、その強さに追い付きたいとオレもエアームドをゲットして修行をしていましたが、いやはや、まだまだ遠いですね。まるで父と戦っているような感覚になりました」

「そうでしたか」

「というか、父より強いんじゃないですか? ミカンさんのエアームドは、明らかに飛行使いであるオレですら見たことのない機動をしていましたが、一体どんな修行をすればそこまで高みに行けるのですか?」

「ほんまそう思うわ。ミカンの実力は、多分この中で一番。もしかしたら四天王の席に座ることが出来るくらいの実力があるかもしれへんくらいやしな」

「そ、それはちょっと誇張(こちょう)し過ぎだと思います」

 

 突然割り込んできたアカネさんに、否定の言葉を(こぼ)すも、すぐに「そんなことあらへんで」と更に反論してきました。

 

「実際にうちがミカンに挑んでも、10回やって1回勝てるかどうかやと思うで? 同じジムリーダーやのに、実力差がここまであるってどうやねん?」

「どうと聞かれましても……」

「よっしゃ決めたわ。ミカン、今からご飯食べに行こうや。そこで目一杯愚痴(ぐち)ったる」

「えぇ……あ、でも、それって……」

勿論(もちろん)割り勘や。当然やで?」

「えぇー……」

 

 そんな私達二人のやり取りを、ハヤトさんはオロオロと見つめていましたが、マツバさんやツクシさんに「いつものことだから問題ない」「女子同士の話に割り込むと面倒だよ」などと言われてアッサリ引き下がってしまいました。ちなみに、女子仲間であるイブキさんは「良いもの見れたし、早く帰って修行し直さなきゃ」と言って、一番に帰ってしまいました。いつの間にかヤナギさんは姿を消し、シジマさんは「そろそろ帰らんと妻が心配する。あ、土産(みやげ)でも買っていくか」と言って協会本部を飛び出して行きました。

 他にも協会やリーグの職員さん達もさっさと帰り支度を始めたり、「これからまた会議だな」と言って観戦席から出て行ったりする姿が多く見られました。というか、いつこんなにも人が集まっていたのですか? 最初試合開始した時にはもっと少人数だったはずですが、皆さんお仕事はよろしかったのですか?

 そんな疑問はさておき、私もアカネさんに引きずられる形でフィールドを後にします。

 

「夕食にはまだ少し早いけど、混み出すと面倒やし、このまま行くで?」

「分かりました。割り勘ですね?」

「そうや」

「どうしてもですか?」

「そんな目で見てもあかんで?」

 

 こうして私とアカネさんは2人(そろ)って、日が沈み掛け、夕日によって黄金色(こがねいろ)に染め上げられた街へと繰り出すのでした。


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