学戦都市アスタリスク 壬生の狼   作:PS

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この2020年の時勢、微熱が出ただけでも不安になりますね。
一刻も早く終息するように、私も気をつけていきます。

今回は原作から大きく乖離した設定があります。
できるだけ原作を尊重したいと考えて構成を考えていましたが、よりこの作品を引き立てる為、追加しました。

原作を重視する方には申し訳ありません。


第十二話 誠の旗の下に集った者達に――

 イザベラの来訪から時間が立ち、学生であれば既に冬期休暇に入った頃、船曳の携帯端末にある人物から着信が入った。

 

「お久しぶりですね、“天霧”総長」

『煙草を嗜む歳になったか、私の息子同様、時の流れとは早いものだ』

 

 相手は天霧正嗣。

 綾斗の父親にして、元第二期新選組の総長。しかし、第二期新選組の作戦には一度も参加したことはなく、主に関東地方へ派遣されていた隊士達の師範役を務めていた。船曳も何度か世話になったことがあるが、船曳が組長になる前に除隊した経歴を持っている。だが、除隊は局長である船曳猛が正嗣の身を案じた為の配慮である。したがって、統合企業財体は正嗣のことを第二期新選組の関係者であると認識してはいない。

 

「どういう風の吹き回しですか? あまり私と接触するのは危険がありますが?」

『先日、息子が刀藤流のご息女を連れて来てな、少しばかり剣を合わせた。その時に少し気になることがあった』

「ああ、あの小娘ですか。身体能力では敵わないでしょうが、総長の技ならあの程度、簡単にいなせるでしょう。なにを気にすることがあったのですか?」

『新選組式剣術の平突き』

「それがなにか?」

『模倣だったが、私に打ってきた』

 

 それを聞いた途端、船曳は失笑した。

 

「技が通じないからと、自棄になっただけでは?」

『いや、彼女は模索していた。確かな意思を持って私に打ち込んできた。その時の打ち込みの入りが君の牙突によく似ていた。左片手ではなかったが、突きからの横薙ぎ、粗さはあったが、よく見てきた平突きの型よりも、君の牙突に近い型だった。君が停学となる私闘を行った相手、彼女だね』

「ええ、そうですが……、あの小娘に見せたのは指で数えられるほど、対峙した時には一度で沈めました。確かに才能はあると思いますが、総長にそこまで評価させるほどでしたか?」

『少なくとも、私の息子より剣術は上だろう。そして、彼女はこう言っていた。“超えたい人”がいる、と——。おそらく、君のことだろう』

「あの小娘の相手なんざ、する気も起きませんね。同じ剣客でも、まず前提が違っている」

『局長が常々言っていたね、剣術の本質』

「それを理解していないから、簡単に戯言を吐ける。その本質、真実があるからこそ、我々のような人間をこれ以上増やすことにならないように日々の任務にあたっています」

『随分と成長したようだ』

「局長に警備隊に入る前から口酸っぱく言い聞かせられましたからね」

『だが、局長も、君の上司にあたるヘルガ警備隊長も、君達に変わってほしいと願っているはず、もちろん私もだ』

「総長、六花はほぼ無法地帯。それを抑え込む為にも、まだ人斬りは必要なのですよ」

『難儀なものだ』

 

 短くなった煙草をベランダに置いてある灰皿へ押し付け、船曳はベランダから部屋へと戻る。

 

「総長、久々に連絡を頂いたのに申し訳ないのですが、これから夜勤に出向くので——」

『忙しい時の休息中にすまなかった』

「いえ、久しぶりに総長と話ができてよかったです」

 

 玄関で靴を履いた後に、制帽を目深に被り、愛刀が入った刀袋を肩に掛ける。

 

「では、失礼します」

『くれぐれも、無理はしないようにな』

 

 通話を終え、扉を開いて船曳は星猟警備隊(シャーナガルム)本部ではなく、歓楽街(ロートリヒト)へ向かった。

 

 

 

 

 年を超え、一人の隊員の席がなくなった状態で始めた暗部隊の御用始め。淡々と連絡事項を伝え、また全員で御用納めを迎えようと締めた。

 年始から日々を積み重ね、ようやく春の暖かさを感じる時期のとある日——。

 

「…………」

 

 船曳は星猟警備隊が使用している駐車場に停められている車の運転席に座り、ヘルガを待っていた。

 ことの発端は前日の業務終了時刻間際、暗部隊の部署にヘルガから連絡が入り、船曳へこう告げられた。

 ——明日、付き合ってほしい。

 理由を問うたが、はぐらかされ、断ろうとしたら却下された。理由の代わりにと、ヤン・コルベル医師の治療院へ出向くということが告げられた。

 釈然としない船曳であったが、拒否権は与えられなかった為、不承不承に了承した。

 

「待たせたな、行こう」

 

 助手席のドアが開き、乗り込んだヘルガがシートベルトを装着したのを確認するとエンジンを始動。シフトレバーをドライブに変え、ゆっくりと車が動き出した。

 

「常々思っていたのだが、なぜ暗部隊の隊員はマニュアル操作を好む?」

 

 ヘルガは隣で車をマニュアル——AT運転——モードで操る船曳へそう問いかける。

 現代、自動運転の技術は大きく発展し、道路を通る車の大半は自動運転である。一部、船曳のようにマニュアル操作を好む人間もいるが、製造される車は2ペダル式のセミマニュアルが主流であり、クラッチペダルを加えた3ペダル式の車は絶滅危惧である。

 

「押送時は車内監視の為に自動運転にしますが、それ以外はマニュアルモードで運転するように徹底させています。理由としては緊急時の迅速さです。仮にカーチェイスに発展する事態になった場合、ドライバーの未熟さで相手に逃げられては話になりません。自動運転からマニュアルモードに切り替える時間も惜しい。まだ言いたいことはありますが、一番の理由はやはり有事に対応する迅速さに限りますね」

「一理あるな、私の方でもマニュアル操作ができるように徹底させるか」

「むしろ、運転できない奴が警備隊の制服を着ているのはどうかと思いますが?」

「そうだな、お前達から没収した車で訓練させよう」

「……くれぐれも事故らないように」

 

 暗部隊が作り上げた緊急車両は自動運転に関わる全ての装置を取り外した為、運転するのは人間だけ、もし車の運転に不慣れな隊員なら船曳も危惧しているように事故を起こしかねない。

 星猟警備隊の今後について、軽いながらも議論を交わしていれば、すぐに治療院へと到着。駐車場に車を停めるとヘルガの横に並んで治療院の中へ入っていく。どこか目的の病室に向かうのかと思えば、ヘルガが向かったのはなんと院長室。

 

「——来たか」

 

 中にいるのは当然、院長であるヤン・コルベル。

 ヤンは船曳の顔を一瞥したが、何も言わずにヘルガと船曳の横を通り抜け、治療院の廊下を進んでいく。ヘルガも何も語らずにヤンの後についていく。

 ヤンとヘルガは旧知の仲だということは教えられている船曳だが、何も聞かされていない船曳はこの時点できな臭ささを感じ取る。引き返したいと強く思うが、もう後には引けない。出かかったため息を飲み込み、ヤンとヘルガの後を追う。

 しばらく歩くと治療院の中枢にあたると思われる場所に着いたと思えば、今度は地下に向かっていく。ますます船曳は鬱屈とした気分になり、それが表情にも現れ始める。

 

「——正直、正には伝えるか迷っていたが、事態が変わった。暗部隊の力が必要になったと判断した」

 

 船曳の表情を横目で見たヘルガが言葉をかける。だが、肝心な部分を今になっても話さない為、船曳にとっては末梢的な言葉でしかない。しかし、ヘルガがここまでひた隠しにしている答えはこの先にあることは確かだ。

 

「ここだ」

 

 長々と続いた道のりがヤンの言葉で終わりを告げる。

 目の前には個室の病室に繋がっていると思われる扉。

 

「入るぞ」

 

 粗暴に扉をノックし、中にいるだろう患者の了承も得ずにヤンが病室に入っていく。ヘルガと並んで病室に入った船曳の視線の先にはベッドから半身を起こした自身と同じくらいの年齢と思われる女性が船曳達を見ていた。

 

「こいつは……!」

 

 女性の顔を見た途端。鬱屈としていた船曳の表情が殺気立つ。

 一歩踏み出した船曳を見てヘルガはすぐに船曳の肩を掴んで動きを止める。

 

「——いつからだ?」

 

 怒りを滲ませながら、ヘルガへ問う。

 

「居場所を知ったのは去年。だが、意識が戻ったのは数日前だ」

 

 主語が含まれていない船曳の質問に淡々とヘルガは答える。

 

「知っていたなら、なぜ教えなかった」

「お前ならすぐに我々が管轄する治療院へ移そうとすることが目に見えていた。それに、先も言ったが、彼女の意識が戻ったのは数日前、それ以前はヤンの治療を受けても意識は戻らなかった。ヤンが治療できない状態の参考人をここから移すのはリスクが高すぎる」

 

 冷静な状態の船曳ならこの程度のことは簡単に考えられる。星猟警備隊と連携、管轄を敷いている治療院は言葉こそ病院だが、その役目の半分は留置場も兼ねている。だが、ヤンの医療技術を持ってしても意識が戻らない女性を移せばいつまで立っても意識は戻らず、最悪の場合、女性の命を狙われる危険が高まる。事実、管轄している治療院では去年、一人の脱走を許しているのだから。

 

「理由を知れば納得できた話だ。俺が聞きたいのは——、暗部隊が信用できないのかということだ」

 

 ヘルガの手を振り払い、詰め寄る船曳。ヘルガが答えた理由はしっかりと議論を交わせば船曳や他の暗部隊の隊員達も納得できる要素はあった。だが、船曳が憤っているのはヘルガと船曳が互いに重要参考人と位置づけ、情報を共有していた目の前の女性の居場所をヘルガは事情があったとはいえ船曳に教えなかったことだ。

 常に六花の最前線に立ち、命を削る任務に従事している船曳には信用されていないと受け取られても仕方がない。それは船曳や暗部隊にとって屈辱である。

 

「悪いと思っている。後ろめたい気持ちもあった。だが、これだけははっきりと言わせてもらう。私はお前を、お前達を信用し、信頼している。この思いに嘘はない」

 

 船曳の目を見つめ、ヘルガは言い切った。時に衝突することはあれど、ヘルガが船曳や暗部隊を疑ったことは一度としてない。

 

「内輪もめは済んだか? これから忙しいんだ」

 

 船曳とヘルガの言葉の応酬を冷めた視線で見ていたヤンがそう告げる。

 睨み合っていた両者も矛を収め、この病室のベッドに半身を起こした女性に視線を移す。

 

「えっと、確かヘルガさんでしたっけ?」

「ああ、よく覚えていたな」

 

 儚げな印象は受けるが、しっかりとした口調でヘルガと言葉を交わす女性。

 

「そちらの方は?」

 

 女性が船曳へと視線を向ける。射抜くような眼光が女性へ向けられているが、気圧されるような素振りは全く見せない。

 

「私の、——“仲間”だ」

 

 船曳との関係を仲間と言ったヘルガ。その言葉は当然、船曳にも向けられている。

 

「そうですか、では、今日はよろしくお願いします」

 

 そう告げて、頭を下げた女性の名は《蝕武祭(エクリプス)》に関する重要参考人と位置づけている天霧遥であった。

 

 

 

 

「ふぅ」

 

 六花の空に向けて紫煙を吐き出した船曳。治療院の敷地内は全面禁煙の為、敷地外まで移動して煙草をくゆらせる。

 治療院の地下で遥と面会した後、様々な医療検査にヘルガと共に護衛という名目で遥に付き添った。付き添っている中で、なぜヘルガは遥の存在を船曳に伝えなかったのかを説明した。

 その理由は、星導館学園に所属している天霧綾斗の《星武祭(フェスタ)》優勝時の願いだった為、必要最低限の人間にしか教えることができなかったのだ。もちろん、綾斗の許可を得れば船曳にも教えることができたのだが、当時の星猟警備隊と星導館学園の関係は船曳の問題であまり良好な関係を築いていなかった。今でこそ不信感は若干取り除けたが、それでも綾斗にしてみれば自身が所属している学園の停学者に焦がれていた姉の存在を教えることになんの意味もない。

 確かに筋が通っている話であるが、船曳が最も嫌っていると言っても過言ではない統合企業財体の存在が絡んでいた為、納得こそするが、気分が良いものではない。

 何度か検査に付き添った後、頭を冷やすと告げてヘルガと分かれた。

 そろそろ検査も終了した頃だろう。ハニカムタイプの携帯灰皿を取り出し、煙草を収納する。気づけば、携帯灰皿の最大収納本数に達していた。吸い過ぎたと自覚した頃には手遅れ、口内も煙草臭い。ブレスケア用のタブレットを多めに噛み砕き、ヘルガにこれから戻るとメッセージを送れば、すぐに病室まで来いと返信が来た。関係者以外立ち入り禁止の区画だったが、ヘルガと分かれる際にヤンから渋々その区画へ入ることができるパスを受け取っていた為、問題なく病室に向かえる。

 治療院に向かって歩き始め、敷地内に入ったところで船曳の携帯端末に暗部隊の公安部隊から電子データが送られてきた。立ち止まってその内容を確認した船曳は電子データを閉じ、病室に向かっていく。地下区画に入って目的の病室に向かっていくと、その病室の前に同じ星猟警備隊の制服を纏った妙齢の女性隊員が二人、扉の前に佇んでいた。おそらく、警護の為に招集した隊員なのだろう。詳細を伝えられているかは定かではないが、《蝕武祭》に関わる案件を任せるあたり、ヘルガの信頼度を推し測ることができる。

 しかし、暗部隊とは関わったことがない隊員である為、そんなことは船曳にとってはどうでもいいことだ。無視して扉に向かっていったが——。

 

「貴様、所属と名を名乗れ」

 

 船曳の前に一人の隊員が立ちはだかった。

 

「平が知る必要はない、どけ」

「……何だと?」

 

 船曳の言葉に顔をしかめる隊員。

 もう一人の隊員も詰め寄ってくる。

 

「もう一度言ってみろ」

「知る必要はないと言ったんだ阿呆。とっととそこをどけ」

「貴様!」

 

 武力行使に出ようとした二人の隊員だったが、突如として二人の前に空間ウィンドウが現れた。

 

「なっ!?」

 

 その内容に愕然とした二人。

 

「くっ……、通れ」

 

 苦虫を噛み潰したような表情を顕にした二人の隊員にかける言葉もなく、船曳はノックもせずに病室の扉を開いた。

 

「えっ!?」

「なっ!?」

「……なんでお前も」

 

 扉を開くと、ずっと付き添っていたヘルガの他に検査が始まる前にはいなかった人物達がいた。

 去年の《獅鷲星武祭(グリプス)》の優勝チームである星導館学園の五人である。

 

「その人も私の検査に付き添ってくれたの、途中でいなくなっちゃったけどね」

「職務放棄」

「紗夜さん……」

 

 遥が船曳のことについて話せば、紗夜から辛辣な言葉が飛び出し、それを綺凛が宥めるように紗夜の名前を呟く。いつぞや見た光景である。

 

「警備隊長、彼女の容態は?」

「検査では特に問題なかった。それと、今しがた彼女にかけられていた洗脳のようなものを彼女自身が断ち切った」

「そうですか、ならば——、こちらに目を通していただきたい」

 

 船曳が公安部隊から送られてきた電子データをヘルガへ送る。

 

「……逮捕状の請求書か」

「逮捕状!?」

 

 ヘルガの口から出た言葉に五人が驚愕を顕にする。

 

「待ってください! 姉はつい最近意識を取り戻したばかりですよ!」

 

 綾斗が必死に遥の弁護に回る。

 

「落ち着け、あくまでも逮捕状の請求書だ。今すぐに逮捕するわけではない。が、司法機関が受理すれば然るべき対応をさせてもらう」

「ですが——」

「落ち着いて綾斗、その人が言っていることは何も間違っていないから」

 

 船曳の説明になおも食い下がる綾斗を遥が制した。

 

「姉さん……」

「大丈夫」

 

 不安げな表情の綾斗に向けて微笑むと、遥は船曳へ視線を移した。

 

「船曳さん。でしたね」

「そうだが?」

「私にかけられている容疑、《蝕武祭》についてですか?」

 

 遥が口にした《蝕武祭》という言葉。確かに遥にかけている容疑は《蝕武祭》についてであるが、この場でその言葉は慎んでもらいたかった。

 船曳は視線をヘルガに向ける。

 しかし、船曳の懸念に対してヘルガは何も問題はないとばかりにうなずいて見せた。おそらく、ここにいる全員には遥が《蝕武祭》に関わっているということが伝わっているということなのだろう。

 最重要な機密事項を一介の学生に伝えるのはいかがなものかと船曳は思ったが、伝わっているのならそれはそれで話が早い。

 

「そのとおりだ。洗脳を断ち切ったというのなら、我々が知りたい情報をお前は知っているはずだ」

「そうですね、色々と伝えられることはあると思います」

「なら、我々に協力してもらえると受け取っていいか?」

「はい、喜んで協力させていただきます。でも、弟や弟の仲間の皆さんを不安にさせない為にも、この場で私が知っていることを言わせてもらえませんか?」

「それは受け入れられんな、逆に、不安を煽るようなことを言えばお前の懸念はさらに深刻化するぞ。聴取は然るべき場所で行わせてもらう」

 

 遥の要望を拒否した船曳。

 《蝕武祭》は統合企業財体が表面化されてほしくない案件である。この場にいる学生は断片的に《蝕武祭》の情報を知っているようであるが、船曳が求めているのはもっと根幹に関わる部分だ。その部分をこの場にいる学生に知られるのは受け入れられるものではない。

 

「待て、正」

「なんですか?」

「彼女の要望を受け入れてやれ」

 

 船曳は咄嗟にヘルガを見る。

 

「正気ですか? 警備隊長」

「そこにいる天霧君は《獅鷲星武祭》の決勝戦前に《処刑刀(ラミナモルス)》と《ヴァルダ・ヴァオス》に接触した。ならば、次は天霧君やここにいる他の方々にも危険が及ぶ可能性がある。ならば、我々が追っている者達の危険性を知ってもらったほうが良いと私は思う」

「その危険性を取り除くのが我々の任務のはず。下手に不安を煽り、他に情報を流されればたまりません」

「失礼、船曳さん、既に我々はヘルガ警備隊長に綾斗が襲われたことは聞いております。私達としても、これ以上綾斗や遥さんに危険が及ぶのを見ぬふりはできません」

 

 ヘルガが開示する必要もない情報を明かした事実を知り、顔をしかめさせる船曳。これではできるだけ一般人に情報を明かさないように徹している自分が阿呆臭い。

 

「ちっ、やはり今日は来るべきじゃなかったな」

 

 ボソリと呟き、病室の壁に背を預けて腕を組む。

 

「では、君が知っていることを教えてもらおう」

 

 ヘルガはベッドの近くにある椅子に座り、聴取を開始する。

 

「それじゃ、どこから話していこうかな……」

 

 遥は顎先に人差し指を当ててしばらく考え込むと、おもむろに口を開いていく。

 主には遥が六花に渡り、自身の本当の父親だという《処刑刀》と接触し、計画の一端を任されたこと、結果、遥によってその計画は阻止されたこと。だが、一番の問題点は遥が話しの最初に語った《処刑刀》の計画。それは、あの大災害。《落星雨(インベルティア)》を再び引き起こすということだ——。

 

「ふぅー……、まあ、おおまかに話すとこんな感じかな」

 

 ところどころヘルガや学生達から質問があったが、遥は自身が知っている情報を話し終えた。それを確認した船曳は遥に質問することもせずに、壁から背を話して病室の扉へと向かっていく。

 

「船曳さん、どちらに?」

 

 その姿を見たクローディアが船曳へ問いかける。

 

「……正直に言って、今の言葉をすぐに信じろと言われても、信じられる情報ではないな」

「でも、それを証明する証拠はありません」

「ハル姉が嘘を言うわけない。ハル姉に謝れ」

「紗夜さん……」

「だがな、仮にお前の話が真実なら、改めて《処刑刀》の危険性を再認識できた。だが、何よりも……、誠の旗の下に死んでいった狼達の鎮魂の為に、《落星雨》の再来など絶対阻止だ」

 

 そう告げて、船曳は病室を後にすると車に一人で乗り込み、星猟警備隊本部へと戻っていった。

 

 




新選組の局中法度には局を脱することを禁ずると書かれています。
ですが、これも時代の流れとともに変えていったと解釈していただければ幸いです。

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