例えばこんな長谷川千雨の生きる道   作:紅シズク

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100 世界の秘密編 第7話 消えゆく人よ

「先行します、千雨さんは皆さんを」

そう言ってネギが舞踏会会場に駆けていったのを見送り、私たちはそれに続いて舞踏会会場に向かって駆けていた。

そこにパルからの通信が途切れ途切れ入り、どうやらプランB発動したらしいことが分かった。

「プランBだとさ、第二合流地点に目標変更だ」

 

ズンッ

 

その時、ひときわ大きな揺れが起きたかと思うと空中回廊がちょうど私達のいた場所で寸断されてしまう…私は咄嗟に聡美を抱えて退避するので精一杯だった。

「げ」

「朝倉さん、手をッ!」

その背中では朝倉とノドカが崩壊する空中回廊に放り出されているのにも気づかずに。

 

「げ、まずいっ…」

聡美を降ろし、後ろを振り返った時には何もなく、見下ろせばノドカと朝倉がギリギリもう崩れ落ちた一方の通路の端にしがみついている所であった。

「今助け…」

と、飛び出そうとした時、すっと現れた男…クレイグさんがのどかの手を取り、通路に引き上げた。

 

「どーなりましたぁー?」

と、聡美が暢気に聞いてくる…まあ私の表情で助かったとは思っているのだろうが。

「ああ、何とか助かったようだな…おーい、大丈夫かー」

そう私は叫んで下の面々に問うた。

「おーい、なんとかなーチウ嬢ちゃん!今、ノドカ嬢ちゃんから話は聞いたぜーッここは任せろ、二人は俺達が合流地点まで届けてやる!!」

「了解ー!頼んだぞーこっちは舞踏会会場を経由して残った面々と向かう!」

「応!話がはえーな!それじゃあまた後でな!」

そう言ってノドカたちは去っていった。

「合流しなくてよかったんですかー?」

「状況が混乱しているからな…どっちが正解ともわかんねえけど私は会場を見ておきたいと思ったんだ」

「わかりましたー次の攻撃が来る前にとっとと向かいましょうかー」

「ああ…と言うわけでお姫様抱っこな」

「ふぇ…はい…その方が速いですもんね」

と言う事で私と聡美もその場を立ち去った。

 

「ネギ!」

舞踏会会場手前の広場、ネギがうずくまっているのを発見した…

「ど、どうされたんですかー」

私は聡美を降ろし、ネギに近づく…どうやら闇の魔法の暴走のようである…

「ちっ…さっき闇にのまれたからか侵食ペースがやばいな…聡美、手を握ってやってくれ」

「あ、はい」

「私は…もう少し行けるか」

そう呟くと先ほどよりは少ないものの、魔素汚染を吸ってネギの応急手当てをする。

「グッ…あ…千雨さん…ハカセさん…ありがとうございます」

「何があった?」

「急ごうと思って闇の魔法を発動させたんですが、上手く制御できずに…この有様です」

「それは…かなりまずいですねー」

「戦闘中にならなかっただけましと思っとけ…プランBらしいからな…私たちはネギを拾って第二集合地点へ行こうか、丁度直通シャフトが近くにあったはずだ」

 

そんな話をしているととてつもない音が鳴り響き空間が割れるとそこからラカンのおっさんが現れた。

「ラカンさん!?」

「よぉ…ぼーずじゃねぇか、最後に会えて…良かったぜ…」

何だ…何かがおかしい…このおっさん…本当にここにいるのか?というくらい存在感がない。

そして、再び空間が割れる音がすると、大人モードのフェイト・アーウェルンクスが姿を現した。

「…ッ!?フェイト!!!」

「ネギ・スプリングフィールド…ここに空間を開いたのは…貴方の意思か、ジャック・ラカン」

それに応えるようにおっさんは無数の武具を出現させるとそれをフェイトにぶつけた…が、それらは熱源でバターが解けるように消え去ってしまう…巨大な剣、斬艦剣をぶつけても結果は同じであった。

「無意味だよ、ジャック・ラカン。全てを分かっていてなぜ向かってくる?」

「よ」

そしてフェイトが眼を見開くと原子分解魔法のような効果がおっさんの右腕…は既になく、動甲冑で補っている様だ…を破壊した。

「どうした?効かねぇぞ」

「……!やれやれ…頭を狙ったんだけどね。ここまで持つだなんて…あなたには本当に感服するよ。

今のあなたと僕には圧倒的な力の差がある…象と蟻…いや、それこそ字義通りに神と人ほどの力の差が…それを十分に理解もしている…」

神と人…字義どおりに?どー言うことだ…

「なぜだ?」

「あぁん?」

「ラカンさんッ!!」

「来るな!」

助太刀に入ろうとしたネギにおっさんが叫んだ。

「へっ、若造…フラフラじゃねぇかそこでおとなしく最後まで見とけ」

そう言うとおっさんは右腕を厳つい動甲冑で補った。

「あなたに似合わぬ無様な武器だ。なぜだ…?なぜあなたはそんな顔で戦える?全てが無意味だと知らされながら。

いや、あなたは既に知っていた…10年前、いや20年前のあの日からメガロメセンブリア上層部がひた隠しにするこの世界の秘密に。

この世界の無慈悲な真実に。

絶望に沈み、神を呪うもおかしくはない真実だ。事実これまでに僕が見てきた者は皆そうだった。

なぜだ?

真実を知り尚20年…なぜあなたはこの意味なき世界をそんな顔で飄々と歩み続けられる?」

真実…世界が、そして魔法世界人の殆どが幻という事か…?

「ほ…何だてめぇ、んなこともわかってなかったのか。てっきりわかってやってんのかと…

真実?

意味?

そんな言葉、俺の生にゃあ何の関係もねぇのさ」

そう言い切り、おっさんはニヤリと笑った。

「……ッ、ならばその真実に焼かれて消え去るがいい、幻よ!!」

そう宣言し、フェイトは尖った石柱の雨をラカンのおっさんにぶつけた。

「ちぃっ」

私とネギは聡美をかばうように障壁を展開し、攻撃の余波を防ぐ…

「ラカンさんッ!」

直後、ラカンのおっさんはフェイトの背後に現れ、乱打、原子分解…恐らく魔法世界人特効…と凄まじい応酬を見せ、厳つい右腕の鉄甲でフェイトを地面に縫い付けた。

「…コレも無意味だよ、ジャック・ラカン。結果はもう決まっている」

「けど、楽しかったろ?もうちっと楽しめや、フェイト」

直後、厳つい鉄甲のギミックが発動し、地面が砕けた。

「ラカンさんッ!!」

砂塵の中から現れたおっさんにネギが駆け寄る…が指先からサラサラと崩れていくのが見えた…ああ…

「…なるほど、限界って訳か…確かにもう結果は決まってやがったな」

「ラ…」

「ぼーず、まあ…なんだ、おっさん世代の矜持として拭き残しはさっぱり拭ってやりたかったが、どうも全部押しつけることになっちまいそうだ」

「ラ…カン…さん…?」

ネギが何を言っているのだと言わんばかりにおっさんの名を呼ぶ。

「悪ぃ…まあ、てめぇにならやれるさ…」

そう言い残し、おっさんはきれいさっぱりと消え去ってしまった…なんだよ、おっさん…あんたチート無限のバグキャラじゃねーのかよ…消えてんじゃねーよ…バーカ

「ラ…ラカンさんッ!!!」

ネギの叫びが木霊した。

 

「最後まで…わからない男だった…」

すっと何事もなかったかのように無傷のフェイトが現れる。

「えっ…無傷…ですか」

「フェイトッ…アーウェルンクスッッ!」

そんな叫びと共にネギは魔物化する。

「あ、バカ!やめろ!」

そんな私の声など届かず、ネギはフェイトに突っ込んでいった。

「やるのかい?いいだろう、やろうネギ君」

…暴走していては勝てるもんも勝てんが、助太刀するしかあるまいと私は覚悟を決めた…直後

 

まあ、落ち着け

 

と、虚空から拳とおっさんの声が出現し、ネギをぶん殴った。

「えっ…今のは…ラ…」

「…心底あきれた男だ…愉快だよ、今日はやめておこう、ネギ君」

そう言うとフェイトは転移で消え去っていった。

 

やめとけやめとけ、勝てねぇよ

 

「ラカンさん!?ラカンさんなんですか!?」

すると、おっさんがチリが集まるように形成される。

「あ…」

「お…おっさん!」

「!?ラ…カンさん…」

 

よ♪

 

「ラ…ラカン…さ…ん…」

 

これか?気合だ。すべては気合で何とかなる。

見てのとおり、奴らは世界の秘密につながる力を得たみてぇだ。

意味はわかるな?俺じゃ、今の奴らにてんで敵わねぇって訳だ

奴らを止められるのはお前達だけだ!!

まあ、ガキのてめぇに世界を背負えとまで言わねぇ、アスナを頼む

奴らが造物主の力を得ている以上、ホンモノのアスナは向こうの手にあると考えるべきだ…

 

「え…」

造物主の力…ホンモノのアスナ…なんとなく色々とつながってくる言葉である。

「ラカンさん、今なんて!?」

 

おーう嬢ちゃん!

チサメ嬢ちゃん!

 

「な、なんだ、私かよ?」

 

今の暴走でわかるとおり、コイツはまだまだだ。バカやらねぇように見ててやってくれねぇか

嬢ちゃんが一番コイツを見てる、頼むぜ

 

「ああ、一応姉弟子だし…マギア・エレベアの事もある程度はわかっているからな…任せとけ…アスナがいりゃあ押し付けてもいいんだが…ね」

 

おう、ぼーずと違って話が早えな。

そう、今お前たちの傍らにいるアスナは恐らく偽者…替え玉の幻だ…

 

「えっ!?」

 

いや…偽者とは言えねぇか、俺や…この世界のように…

 

「あ…ラ…カン…さん…」

おっさんの姿は再びチリの様に散り始めていた…

「じゃあな、おっさん…できる限りのことはするよ…いい人生だったか?」

 

おっ、それを聞くか…まあ色々あったが…楽しかったぜ、久しぶりに楽しいケンカもできたしな。

へっ…じゃあな、ぼーず。闇に食われるなよ

後ろじゃねぇ、前を見て歩け、

前を見て歩き続けるヤツに世界は微笑む

 

「ラカ…ン…さん…」

「嘘…ですよね…貴方がやられて消えるなんて…」

「どうしょうもねえさ…世界の管理者の力を使われたんだ…いくらおっさんでも…な」

「そんな…」

自身も涙を抑えながら、泣きそうな顔をする聡美を私はそっと抱きしめた。

「…ッ、ラカンさぁーんっ」

…ネギの慟哭を聞きながら…

 

 

 

「立ち止まってても仕方ない…行くぜ…ネギ」

私はおっさんの塵を手にうなだれるネギにそう声をかけた。

「ネギ先生ーッこっちですー総督さんとの話も大事だけれども、まずは一度離脱しましょうとの事ですー」

「あれーさよさんー合流地点の皆さんはー?」

「なんだか先に別の舟で先に脱出したそうですー」

「ぐ…ッ」

金魚の甲板で手を振るサヨと聡美がそんな会話をしていると急にネギが苦しみ始めた。

「だ、大丈夫ですかーぁ!?」

「どうみてもだいじょばない、マギア・エレベアの副作用だな」

「そんな、千雨さん、冷静に言ってないで何とか治療を…」

とは言っても、私も大分吸っているので対処療法にも限度がある。

 

ドサッ

 

そうこうしているとついにネギは意識を失い、倒れてしまった。

「ネギッ」

「「ネギ先生!」」

「どうしたっ」

「ネギ坊主!」

「ネギ!?」

と、そこへ舞踏会会場から撤収してきたアスナ…の偽者…やクー、真名などが合流してきた。

「チッ…とりあえず、一度離脱、別便の連中と合流して検討会議だ」

そう、その場は纏め、私たちは金魚で舞踏会会場を後にした。

 

 

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