例えばこんな長谷川千雨の生きる道   作:紅シズク

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101 世界の秘密編 第8話 偽アスナ

 

「…知り合いの被害状況が色々と深刻なのはわかった…で、ノドカ、その情報は確かなんだな?」

「はい、敵の大幹部、デュナミスさんの読心をした結果ですので間違いないかと」

「…わかった、じゃあそのグレートグランドマスターキー奪取とアーニャらしき反応の救出を仮目標として廃都方面に向かい、ネギが起きたら改めて正式な方針会議をするという方向でどうだろうか」

「問題ないかと」

「了解っ」

「異議なしっ」

というわけですでに廃都方面に向けて脱出していた別艇と合流し、私たちは白き翼の情報組+αで情報共有と仮方針会議を開き、今、終決した。

 

「お待たせ、聡美、状況は?」

「こっちも終わりましたよー概論としてはこんなもので十分かなーと」

そう言って聡美はデータファイルを提示してくる…内容は本来ラカンのおっさんに預ける筈だった火星緑化計画の概論である。

「…うん、私もこれで十分だと思う。ネギのチェックを入れたらアリアドネーと駐留艦隊のそれぞれに割り込み通信入れてセラス総長とクルト総督に渡そう」

「はいー」

というわけでネギが起きるのを待つだけとなったのでネギの様子を見に行くことにした。

 

「千雨」

「ああ、真名…まさかお前がこっちに来ていたとはな」

「ふふ…驚いただろう。しかし私も驚いたよ…強くなったな、千雨…いや、ちう選手」

「からかうなよ…まあ、色々とがんばったからな…」

「ああ、そして少年は遂に姉弟子を超えたようだな」

「…色々と代償に、な…あいつはもはや人外まであと一歩って所だ…字義どおりに、な」

そう言いながら狭い船内を進んでいく。

「ネギ?」

コンコンとノックをして、まだ起きていないだろうと返事を待たずに寝室の扉を開けた。

「え…龍宮さん!?」

「や」

しかし、意外な事にネギは既に覚醒していて真名の存在に驚きを示した。

「ネギ、覚えているな?突然倒れた事…マギア・エレベアの侵食だな?」

「そ、それは…あっ」

私の言葉を否定できずにたじろぐネギの手を真名が取る。

「ふむ…重度の急性魔素中毒の症状に似ているな…なるほど、闇の魔法か…」

「ああ、対処療法も概ねそれと同じだ…が私じゃあ急性症状の緩和しかできねぇ」

「なるほど…早急に処置を施さなければ命に関わるぞ、ネギ先生」

真剣な目で真名がネギの顔を覗き込む。

「……わかっています、龍宮さん…でも」

「真名、その事だが、テオ…皇女から借りたダイオラマ球がまだ手元にあるんだ。あと、マスターのコピー付きのマギア・エレベアのスクロールも。こいつらを使って何とかできないかと思っている。真名にも力を貸してほしい」

「千雨さん…」

「なるほど、ダイオラマ球に闇の魔法の巻物か。確かに手があるとすればソレだろうな」

「そ、それより状況はどうなっています?」

はっと、ネギはそう問いかけてきた。

「安心しろ、クラスメイトは全員無事だ」

「総督との再会談とも迷ったが当初計画通り廃都オスティアへ向かってるとこだ。飛行魚は2隻に増えちゃいるが」

「2隻?」

「ああ、私達の合流が間に合わなくてヤバかった所をたまたま居合わせたトラックの運転手が助けてくれたそうだ、なんでも裕奈たちがこっちで世話になった一般人らしいが…」

「なるほど…」

「しかし、この魔法世界の人々がかなりやられている、君たちの関係者も何人か…」

「あのトサカが亜子を庇ってやられたそうだ」

「トサッ…!?そんな!?どうして…」

「だがいい報せもある、驚くなよあのノドカが決死で得た情報だそうだ、消えた人間を復活させられるかもしれない、あのラカンのおっさんもな」

「うむ…という事で方針策定会議を開く…行こう、ネギ先生」

「待った、真名…ネギ、これを」

そう言って私は魔法糸で梵字と魔法陣の刺繍を施した黒長手袋を取り出した。

「これは…?」

「無いよりマシ、程度ではあるがマギア・エレベアの侵食を止められるはずだ、一応つけておけ」

「あ、ありがとうございます、千雨さん」

そう言って、ネギは笑った。

 

 

 

「で?行くの?行っちゃうの!?よっしゃー」

再びの情報共有と方針策定会議…今度は全員公開で…を済ませ、裕奈がノリノリで言い出す。

「いえいえ、まだです、早いです。とりあえず夜明けまでは待ちます…僕はこれから治療と救出作戦検討の為にダイオラマ球に入ります、皆さんもできたら順番にダイオラマ球で休みを取ってください」

「治療?」

「あ、いえ、その…まあ…ハルナさん、やはり廃都まではまだかかりますよね」

誤魔化すようにネギが問う。

「かかるどころじゃない、簡単には進めそうもないよ、ネギ君ちょっと甲板に上がってくれる?」

 

「コ…コレは…」

ハルナに促されて甲板に上がった私たちはゲートポート周辺に魔力だまりが形成されているのを確認した…ヤベェ

「私達が向かっているゲートポートの方角に強い魔力が集まって光っているみたいね。

魔力が枯渇しているハズの地域なのに浮遊岩が多くてオカシイと思っていたのよ、この数時間でこうなったぽいわ」

「…連中のテロ計画はやっぱりコレの為か」

「…ですね…20年前の再現…でしょうか」

「オロ…予想済みだったわけ…!?とにかくヤツラが何かおっ始めたって事よね

フフフフフフフッいいわね、いいわね、面白くなって来たじゃないッ。

ちょうど状況が一段落したことだしパル様が纏め絵を作成しといたわ!みんな状況整理しといてね!」

そう言ってハルナは各員がデフォルメされた状況整理図を広げた。

 

 

 

「アスナさんと二人っきりで話したいことがあるんです」

少し用事があるから、とノドカをこちらに移乗させて真名も呼んで共にネギを探しているとネギが偽アスナを誘っている場面に出くわした。

「げっ…先走りやがった」

本当は、尋問のプロでもある真名にも状況を説明して偽アスナを呼び出してノドカのサポートの下、ネギ立ち合いで尋問をする予定だったのだが…

「どーしますー?」

「…ある意味好機だ、二人にこっそり続くぞ…真名、ノドカ、状況説明は中でする」

という事でネギと偽アスナがダイオラマ球に入って少しした後、私たちはそれに続いた。

 

「うーむ…状況証拠は黒なんだが、こうしてみてもホンモノのアスナにしか見えねえな」

状況を説明し、アスナがネギを風呂に入れている場面を観察しながら私は言った。

「私が護衛についた時にはすでに偽者だったという事か?とても信じられんな…もし事実ならどれほど高度な術を用いたのか」

「それを確かめるのは甘ちゃんのネギには力不足かもしれないな」

「その時はすまないが任せたぞ」

「ひゃ」

「でーこれ私いりますー?」

と、聡美が私に問うてきた。

「あ…ごめん、一緒にいたからつい巻き込んじまった」

「もー仕方がありませんねーこうなったら微力ながら協力いたしますよー記録係とかー」

と言った会話をしていると、ネギのマギア・エレベアが暴走を始めた。

「あーこれもう駄目なんじゃないですかぁー?」

「そ、そんなっ」

「オイ!?千雨、あの黒手袋の効果は!?」

「新たな侵食を抑えてアレ、ってこったよ…いよいよ末期だな…とっとと尋問を終わらせて治療に移らにゃならん」

と言っているとネギが偽アスナの胸に顔をうずめるように倒れた。

「いかんっ…!?」

と言って真名が飛び出し、私たちもそれに続いた。

「おおーっと、そこまでだ、神楽坂!!」

「代われぃ兄貴っ!」

オイ、カモ、ひねるぞ?

「離れろ、アスナ、今、いろんな意味でお前がヤバイ!」

「あ、あのアスナさん、エ…エッチなのはいけっいけにゃな…」

「キゃアアアッ何々ーッ!?っていや違うのよこれは誤解でッ…」

と、コントをやってしまったが…

「アスナさんを拘束しなくていいんですかぁー?」

との聡美の一言に我に返った私たちは偽アスナを拘束し、ネギに服を着せて尋問に取り掛かるのであった。

 

 

 

「『鬼神の童謡』が無反応とはな…」

「本物の神楽坂だったとしても無効化されるだろうがな」

「だから何回言わせるのよっ、私がスパイなわけないでしょ!?私は正真正銘神楽坂明日菜よッ!!」

と、まあ予想はしていたが、手短な尋問では想定通りの展開となった…魔法無力化能力がないという状況証拠からは黒なのだが。

「仕方ない、私が『尋問』しよう、いくつかやり方を知っている」

「いや、姉さんソレ、絶対尋問じゃないだろ」

「掲載できないようなアレなナニはもうちょい待ってくれ、真名」

実際、私は悪い警官役として真名を頼ったつもりなのでそれは最終手段にしたい。

「じゃ、ノドカ頼む、まず『アスナ』でいってくれ」

「は…はいー」

「すみません、アスナさん、本物だったらとても失礼な質問ですがー…」

「本屋ちゃん…」

「神楽坂明日菜さん、あなたは本物ですか?あなたはいったいどこの誰ですか?」

そして…対策がしてあるとは思ったが、やはり、通った。

「あーアスナで通っちまったか」

「や、やはりご本人なのではー…」

「いや、嬢ちゃんの『いどのえにっき』は例えば多重人格の別人格を名指ししても捕らえられる…らしい。この辺、固有名や魂の話になってきて複雑なんだが…」

「何…?では少なくともこの『神楽坂明日菜』は自分を『神楽坂明日菜』だと認識しているということか」

「そーだな…ノドカのいるうちに送り込むならばその辺りの対策はしているとは思っていたが…そうなると自己催眠系の術式が怪しいっちゃ怪しいな」

「なるほどー」

と言いながら聡美は記録をつけている。

「だから、ホンモノだって言ってるでしょーッ」

「龍宮さん、何をしているんですか!鎖に繋ぐなんて!ホンモノのアスナさんかもしれないんですよ」

そう、覚醒したネギが現れて言った。

「ネ…ネギ…」

「ふむ…君らしい…が。この場面ではその甘さは許されない。

もし彼女が本当にスパイだったなら仲間全員が危険にさらされる。

リーダーならば疑いがある限り、最悪のケースを想定するんだ」

「で…でも、そのアスナさんの人格は本物だと今…」

まー提督の気斬を無効化できなかった点や、舞踏会会場で役立たずだったという証言から見て偽者だろうけれどな…それか『黄昏の姫御子』とグレートグランドマスターキーが同義で、魔法無力化能力の源であるそれを抜かれたとか…な。

「…たとえ本物でもキーワードで覚醒する『自覚なき暗殺者』などにマインドコントロールされている可能性もある。

人格移植された自動人形の可能性も否定できない。油断は禁物だ、甘すぎるぞ…先生」

「で…でも、龍宮さん」

「…どうもこのままではらちが明かないな、宮崎のアーティファクトでも打開できないならば、これでいくしかないようだ」

そう言って真名は銃を取り出す。

「真名!?」

「「龍宮さん!?」」

「ちょ」

「人に化けた魔物の正体を暴く退魔弾だ、偽者ならばこの直撃でわかる。

安心しろ、先生、本物の神楽坂明日菜ならば魔法無力化能力によってこの弾を弾く」

「た…龍宮さん、それはいけません!」

「待て、真名!その神楽坂明日菜に魔法無力化能力が無いのは実証済みだろうが!魔法無力化能力を喪った本物って可能性だって残っているんだぞ!?」

「ふん、千雨も存外甘いな、弾が当たっても死にはしない、近衛にでも治してもらえ」

チッ…真名がここまで強硬に暴走するとは読んでなかった…

「でも、龍宮さんッ」

「悪いがダメだ。君達ができないことを私が請け負ってやろう」

そう言って、真名は引き金を引き、その弾は左鎖骨に命中した…割って入ったネギの。

「ネ…」

「何を…先生…」

「ダメです、龍宮さん」

私は黙って天を仰ぐ…そうだな、ネギならそうするわな、という思いを込めて。

「バカな…どきなさい、ネギ先生!」

「なぜだ、ネギ君!?」

「なぜでもです!!」

「皆の安全確保は最優先課題だ!!ここまでの逸脱はいくら君でも看過できないぞ!?」

「それでも、アスナさんは撃たせません」

「まるで子供のダダだ!」

と、ネギと真名は口論をしながら互いの腕を弾き合う応酬を繰り広げる。

「どくんだ!」

そしてついに真名のビンタがネギに入る

「!!龍宮さんッダメ…ネギッ」

が、すぐにネギが真名の腕を取った。

「たとえこの人がアスナさんじゃなかったとしても、僕にとって大切な人には違いありません」

「ネ…ギ…」

「しかし…ネギ先生」

と、真名が食い下がる。

「…こうすれば誰も傷つけずに真実を明らかにできます、カモ君」

「ふむ」

「失礼します、アスナさん」

「へ?」

と、ネギが枷を破壊した所で私も気づいた、ああその手があったか、と。

そして、ネギは偽アスナにキスを…仮契約を仕掛け…そしてカードは出現した…ルーナという別名義で。

「…やはりか」

「あ…あなたは…?」

「…ネギ…さん」

「な…何者だてめぇっ!?」

「『完全なる世界』の構成員だな?本物の神楽坂はどこにいる?吐け、女」

と、真名は銃を突き付けて問う…が、ルーナはプイっと顔をそむけた。

「貴様…」

「待ってください」

手荒い手段に出そうな真名をネギが諫める。

「ルーナさん、ですね?

危害を加えるつもりはありません、何かを強制するつもりもありません。ただ…本物のアスナさんの居場所を…教えて頂けませんか?」

「…あ…う…!」

…ここでノドカの投入かと思ったが、反応を見るにこの方が良さそうである。

「…あ、アスナ姫は私達が捕らえ、あなたの仲間の一人とともに。恐らく今は墓守り人の宮殿にいますわ」

「マ、マジかよ…」

「墓守り人の宮殿…」

「アスナ…姫?」

「…ああ」

 

 

 

「…と言うわけです」

面子を入れ替えて…ノドカを外して刹那と楓を加えて…完全なる世界の目的をルーナに問うた私たちは薄々感づいていたその目的を知った。

魔法世界がいずれ崩壊する事…魔法世界人の殆どが幻想である事…そして魔法世界人全ての魂を『完全なる世界』と呼ばれる幻想世界に移住させる計画…それこそが『完全なる世界』という組織の目的であった。

「…なるほど」

「確かにーある種の次善解ですねーラカンさんの映画の通りですー」

「し、しかし、ネギ先生の計画では…」

「う、うむ…その点もクリアーできる筈…でござるな?ルーナ殿?」

アスナとしてプレゼンの一部を見ていたルーナに楓が問うた。

「…ええ、もしおっしゃる通りに本当に魔法世界崩壊自体を阻止できるのであれば…」

「けどアンタ、そんなペラペラ喋っていいのかよ」

「私は…時間をかせぐのが役目でしたからもう…」

「使い捨て…というわけかよくある話だな」

…という言葉に端を発し、真名とルーナの言い争いが始まり…ネギがその場を収め、真名にルーナの見張りを頼んだ。

「千雨さん、ハカセさん、カモ君、楓さん、刹那さん、ちょっといいですか?」

「あ…待…」

と、ルーナがネギの服の端を掴んだ。

「…話しにくいことをいろいろ答えてくれてありがとうございます、後でもう少し詳しい話をお聞きして構いませんか、ルーナさん」

「は…はい、喜んで。あ…あの…後で…とはいつ…?」

喜んで…?

「いつ?ええ、すぐまた戻りますよ」

「は…はい、お待ちしていますわ…」

「あーあ」

お…オイオイ…まさかのネギラブ勢追加である。

 

 

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