例えばこんな長谷川千雨の生きる道   作:紅シズク

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102 世界の秘密編 第9話 ネギの治療…?

 

「――どう思われましたか?」

「完全なる世界計画…か?まあ、いろんな意味で独善的というか父権的というか…地球との往来を断って人造異界の階位を下げて幻想に取り込むまでならともかく、楽園への移住ってのが気にくわなかったな、私は」

「まー私は魔法世界の再構築自体は次善解として悪くはないと思いましたよー楽園計画とでも呼ぶべきものが付随している点の是非については置いておくとしてー」

と、私と聡美…まー持てるものだからこそ言える感想なんだろうが。

「拙者にはよくわからんでござるが…ネギ坊主の計画とやらをゲーデル殿があれだけ切実な顔で聞いていたわけでござる」

「俺っちとしては…まあ気持ちはわかるがさせる訳にゃ行かねーって所だな…兄貴達の計画とやらが実現可能ってんならなおさらだ」

「私はネギ先生を信じますが…計画を崇高と呼ぶルーナの気持ちも少しわかるような気もします。

ですが…本物のアスナさんが敵の手に…くっ」

「ほかの奴らに何処まで伝えるかは検討中だ、朝倉には伝えている、しばらくは黙っててくれ」

「…完全なる世界計画なんて実行させちゃいけない…そうですよね、皆さん」

そう、ネギはどこか自分に言い聞かせるようにつぶやいていた。

「さ、ネギ。今はお前の体をどうにかするのが先だ」

「…ハイ」

「闇の魔法の巻物です」

「わりぃな、刹那」

「確かにエヴァンジェリンさんならばネギ先生の闇の魔法による副作用を何とかできるかもしれません」

との刹那の物言いに副作用…副作用なぁ…?という言葉が浮かんだが飲み込んでおく。

「…では開けますよ」

「ハイ」

と、スクロールを開く…と真っ裸でクッションに横たわり、ポテチを摘まみながらレトロゲーをプレイするマスターのコピーが出現した。

「おわあっ!?何だ貴様ら」

愕然として固まっていた私たちはしばらくした後にエヴァがそんな反応をしたことで元に戻った。

「エヴァさん…」

「マスター…?」

「エヴァこそ何やってんだーッ、てゆーか中で暮らしてんのか!?全裸でポテチくってレトロゲーとか本物のマスターでもしな…いやする…か?」

「千雨さーんそこじゃないですー」

「で、何の用だ、ラカンには勝ったんだろう、この巻物は用済みのハズだが?」

「それがマスター…」

と、ネギが状況を説明した。

「そうか…ラカンが逝ったか…」

「まあ、予想通りあんま動揺はしない…と」

「ふん…死など見飽きている」

「それより、貴様のマギア・エレベアの暴走についてだったな」

「ハ…ハイ」

「マギア・エレベアは元々私固有の魔法技だ、ただの人間が使う事は想定していない。

闇の眷属でもない貴様が使い続ければ闇と魔に侵食されることは予測できていた。

ただ…フフ…ここまで相性が良いとは思わなかったがな…このまま暴走を繰り返せば貴様は…

――恐らく精神も肉体も魔に支配されて人外の化け物となる、二度と人間には戻れないだろう…私のようにな」

デスヨネー…知っていた。驚愕する面々を尻目に私と聡美は当然のことだという顔でそれを聞いていた。

「まあ、その過程で耐えきれねば死ぬかもしれんがな。しかしこれは言ってみれば生物種としてより上位の存在への転生だ…悪いことでもないかもしれんぞ。

むしろ父の偉業を継ごうと決めた貴様ならそう言った存在になった方が有利ではないかな?…くっくっく」

そんなエヴァの言葉にネギは割と真剣に悩んでみせる。

「コラコラ、真剣に悩むなよ…選択肢はねーに等しいけどな」

そう後半は肩のカモと隣の聡美に聞こえるくらいの声でつぶやいた。

「ま、そうなった直後はケモノ同然…ハッキリ言っていい鴨だ。デメリットは大、今は処置しておくのが得策だろうな」

ほーら、暴走させないんじゃなくて暴走させてソレを御する方向で話が進んでいる。

「…マスターッ!お願いします!」

「フ…よかろう。だが、私にとっても初めての事例だ。極めて危険、成功するかどうかもわからぬ、それでもか?」

「ハ…ハイ」

「それと…私の再生はこれが最後となる」

唐突にエヴァが衝撃の事実を告げる。

「え…」

「これが私の最後の授業という訳だ…わかったか!?わかったら心してかかれ!!」

「ハイ!!」

「いい返事だ」

…とマスターはネギを地面に縫い付けると魔法陣を出現させ…意図的な暴走を誘発させる。

「な…何を」

「わざと闇の暴走を起こさせるのだ、貴様らも手伝え」

「マ…マス」

「闇の力とは畢竟、己自身の負の側面、切り離せぬ半身だ。ぽーやの問題はそちら側に力の源泉、自我の根源がある事…受け入れるだけでは足りぬ、飼い慣らす方法を見つけろ。

それが何かは私も知らぬ、誰も助けられぬ!貴様自身が見つけるのだ!!力に飲まれるも支配するも全ては貴様次第!!!」

案の定、マスターの無茶振りである。

「拙者たちは何を?」

「抑えるのを手伝え」

「抑える?」

「そうだ、魔物の扱いは本業だろう?

ただ、気を引き締めろよ、こいつはそこらの中ボスクラスの魔物より余程厄介だからな」

「りょーかい」

と、言われ私はシグヌム・エレベアを装填しようとした…のだが

「ああ、千雨、貴様はシグヌム・エレベアなしで参戦だ、後、三人ではあまりに容易いだろう、いいというまで貴様は待機だ」

「…わかったよ」

そう答えて咸卦の呪法のみを発動させて待機状態に入った。

 

「オイオイ、押されてんじゃねーか」

暴れるネギを抑える刹那と楓を眺めながら私は呟く。

「あれほどの魔物を殺さずに抑え込むのは簡単な仕事じゃないさ…あの二人の修行にもなって一石二鳥だ」

「しかしーわざと暴走させるなんてー随分無茶ですねー」

「マギア・エレベアは千雨の様に再構築してなお人間が手を出すには危険な代物だ、ハカセも十分に理解しているだろうに…安全な対処などありはしない」

「まー実際問題、それしかねーのは理解するけど…本人に丸投げしてるだけじゃねぇか…答えがあるかどうかもわかんねぇんだし」

「だよなー」

私の言葉に聡美の肩に移ったカモが応えた。

そして戦況は刹那と楓が本気になった事で動いた…悪い方に。

刹那の建御雷召喚と楓の16分身に応えるようにネギは雷天大壮状態になってしまった。

そして目ざとく楓の本体を見つけるとゼロ距離で桜華崩拳をぶっ放して楓を吹き飛ばした。

「楓!」

「済まぬ」

「ケモノ同然どころか暴走後もくればあでござるよ」

「いかにも先生らしいな」

恐らく、それでも平常状態より知能は下がっているのだが。

「邪法に手を出したとはいえ…」

「うむ…」

「で、介入せんと二人がヤバイぞ?」

「まあ、待て、私の出番だ」

と、エヴァが言うとネギが巨神殺しを形成し、二人の背後に転移した。

「くくく…たるんでるぞ、貴様ら」

断罪の剣で介入したマスターはそう言い放った。

「フ…光を求めるならば自分の手で掴まなければな。そうでなくては意味がない、なあ、ぼーや?

千雨!いいぞ、参戦しろ!」

「了解っ!」

そう答えて私は空に舞い、戒めの風矢を連弾で放ってネギの注意を引く。

「こっちだ、ネギ!二人はフォロー頼む!」

案の定挑発に乗った、スペックで圧倒するネギである…こっちはシグヌム・エレベア無し、ネギはマギア・エレベア暴走状態+雷天大壮である…が、まあ知能が下がっているのであればやり様はある。いつもより短絡的な戦術思考を先読みして糸と風矢で牽制と妨害を繰り返しながら的を絞らせないようにランダム機動で回避し、時々肉薄してくるのを鉄扇術で捌く。

「すごい…闇呪紋無しであのネギ先生を一人で抑えている…」

と、刹那…感心していないで手伝ってほしいのだが…

「うむ…だが的を散らさせなければ千雨にもすぐ限界が来る…行くでござる、刹那」

と、刹那と楓が参戦してくれて一気に楽になった…かというとそうでもなく、一番脅威度が低いと思われて軽視されがちな私にも注意をひくために時々積極的に攻める必要があって面倒ではある。

 

「あ、やべっ」

と、三人でかき回すように、的を絞らせないように暫くやっていたら少しばかりやり過ぎてネギを断罪の剣でぶん殴ってしまった。

まーこの状態の偽・断罪の剣程度で抜ける魔法障壁+マギア・エレベアの防御ではないのであるが…囲う様に撹乱していたのに地面に叩きつけては台無しである。

「げっ亜子達っ!?」

そしてよりにもよって、その落下地点にはダイオラマ球に入ってきた運動部四人組がいた。

そして運悪く、私は上方機動に入っており、回避機動はともかく下方移動には数舜の間が必要とされ…二人は私のミスのフォローに入ってくれた機動が災いして同じくである。

そして…ネギにより大地が吹っ飛んだ…亜子たちの周りを避けて…

「おっ…?今のは」

「先生が意識を取り戻した…?」

「怪我の功名という奴でござるか?」

といい合いながら亜子たちを一応は救出せんとマズイだろうと下方に跳ぶ…寸前、エヴァが介入してネギを氷漬けにした。

「今日はここまでだ。くく…早く答えを見つけねば戻れなくなるぞ、ぼーや」

「和泉さん!」

「大丈夫か!」

「う、うん、うちらは大丈夫やけど…ネギ君が」

と、亜子はカチカチに凍ったネギを指した。

「アーうん…今のネギはこれくらいで死ぬ生き物ではないから大丈夫…」

「はぁはぁ…何があったんですか!?」

と、そこへ身体強化で全力疾走したらしい聡美が合流し…

「兄貴ー!」

カモが叫んだ。

 

 

 

「や…闇の魔法…」

「それのせいでネギ君、こんなことに…」

ネギの暴走が止まった頃合いを見計らってネギを氷から救出してベッドに寝かせる迄の間、運動部四人組にもネギの事情を説明して帰ってきた言葉がそれである。

「そうだ。だがぼーやの力の源でもある…怖じ気づいたか?ぼーやのこの姿を見て」

そういうネギの肌は真っ黒で爪は発達し、服の上にも浮かぶ紋様…と完全に悪魔かなんかである。

「…ッ」

亜子はおびえてアキラの陰に隠れている。

「だからってなにも氷漬けにすることないじゃん!!」

「あそこでああしなければ貴様らが死んでいたぞ」

「そっそれはそうかもだけど…」

「あ、いやそれは…」

と、フォローを入れようとした時、まき絵が口を開いた。

「違うよ…ネギ君は…ネギ君はさっき自分で止めたもん。大丈夫…大丈夫だよ、ネギ君は」

「まき絵…」

と、まき絵がネギの手に両手を重ねるとネギの手が元に戻る…アー最も原始的な魔法…強い想いって奴かな?あとで引き受けられるだけ汚染を受け入れて聡美と共寝…という手も考えていたがもっと単純に解消できるなら任せるか。

「え…アレ…治った…?」

「…フ、いいだろう、貴様らが看てやれ。明日は朝4時半からまた同じメニューだぞ」

「…もう…まき絵は強いなあ」

「亜子…」

そして亜子がまき絵に手を重ねたのを皮切りに裕奈やアキラも『手当て』に参戦するのであった…

「ふ…」

私は今回敵役なので不参加と、思いつつ感傷に浸っていると…

「いいよっしゃあぁっ!!よくわからんがなんかいい雰囲気になったところでぇ…お待ちかね!仮契約ターイムッッ!!」

と、カモが飛び出し、私はずっこけた。

「「「「へ」」」」

「どうする、4人一気にイっちまうか」

「えぇーっ!?」

「それは…ちょっと…」

「ふむぅん?どうしたいお嬢さん、二人っきりでやりたいってかOKOK話は聞いているぜ、ぐぇっへっへっへ。

いいっていいって皆まで言うな、おじさんに任しておけばロマンチックな思い出を演出してやるぜぇ?」

と、亜子にカモが絡み始めた。

「ちっ違…」

「なぁにが違うもんかい、ホレホレこの薬を飲ませれば兄貴は大人バージョンに…」

「そっ…そんな」

「やめぃ」

「まろんぼ」

と、私は鉄扇でカモをぶん殴っておいた。

「と、とにかく今はネギ君の身体を治すことが先決だよ。寝ているところに無理やりキ…仮契約するなんて良くないと思うし」

「まーそーだねー寝込みはイカンよねー寝てるトコにやるのはヒキョーだし、つまらんないし」

「交代で朝まで看病しよっか♪」

「応、すまんが頼むぞ…私は敵役だから休憩取りたいし…」

「私はどうしましょーかー?」

と、ひょっこりと今まで黙っていた聡美が口を開く。

「ハカセも看病、参加するー?」

「せっかくですしー私も参加致しましょうかー修行自体はお手伝いできなさそうですしー」

という事で聡美はネギの看病ローテーションに組み込まれる事となった。

 

 

 

「…で、明日に備えて早く寝たいんだけれども、何の用だ、エヴァ」

と、私はコテージの与えられた部屋でエヴァの訪問を受けていた。

「なあに、すぐに眠れるさ…体はな」

エヴァはそういうと私の頭を掴んで…私の中に飛び込み…私は気を失った。

 

「…何のつもりだ、エヴァ…いや、マスター!?」

と、私はネギがマギア・エレベアを習得したであろう幻想空間に取り込まれていた。

「いやな、貴様も私の弟子だったなと思ってな…稽古をつけてやろう」

「まさか、マギア・エレベアを習得しろとか言わんだろうな!?」

「いやいや、どちらにせよ、夜明け頃には解放してやるよ…手を伸ばせばそれも可能…いや、紛い物とは言えすでにそれを使いこなしている貴様には容易だろうが…な」

いや、それって状況に関わらず朝までみっちり扱くという宣言では…

「本当は欲しいんだろう?マギア・エレベア…本物の咸卦法と合わせて…高みに至りたいんだろう?貴様の技法はそーいうものだ」

「ぐっ…」

まあ、確かに欲しい…と夢想した事はある、しかしそれは禁断の果実であり…破滅の序章でしかない。

「行くぞ…シグヌム・エレベアはもちろん、望むならばマギア・エレベアの使用も自由、血液も死亡毎に全快させてやろう、さあ、抗って見せろ!」

「畜生め!」

私はそう吐き捨てながらも、内心はマスターとの命がけの死闘を連戦できる事に歓喜を覚えていた。

 

 

 

 

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