例えばこんな長谷川千雨の生きる道   作:紅シズク

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103 世界の秘密編 第10話 闇の誘惑

 

「なかなか楽しかったぞ、明晩も楽しませてくれ…4時半から敵役も頑張るんだぞ」

と、マスターは夜明け寸前に私から出るとそう宣って部屋から出て行った…

「んー?アレー今エヴァさんがー?」

私に添い寝していたらしい聡美がそう寝ぼけた様子で言う。

「ああ、うん…ネギのマギア・エレベア習得時と同じ原理で修業つけられていた…強制的に」

「えっ…ち、千雨さんお怪我は!?」

「けがは…うん、私、ネギほど闇との相性が高くないみたいで精神ダメージだけだったよ」致命傷を喰らった何か所かは痛むけど、傷にはなってないし。

「…それなら良く…はないんですが…って習得は?」

「してないよ」

正直、誘惑するように術式兵装や奥義で色々と見せられて…最終的には『氷の女王』の物量戦とかで磨り潰されたけれども。明晩も誘惑に耐えられるかわからないけれども。

「そうですか…」

そう言って聡美は私にギューッと抱きついてきた。

「エヴァさんの扱き、きつくないですか?大丈夫ですか?一緒に抗議くらいできますからね…?」

そういう聡美を同じく抱きしめて私は答えた。

「大丈夫だよ、聡美…ありがとう…愛しているよ」

そして、4時半修行開始に間に合うギリギリまで仮眠をとるのであった。

 

 

 

「来たか…では配分は昨日と同じで、3人がかりでぼーやを抑えろ」

時間ギリギリに到着した私を一瞥してマスターがそう宣言した。

「はい」

「了解」

「承知した」

「皆さん、よろしくお願いします」

「フム…では…行くぞっ」

と、マスターがネギを暴走させにかかる。

「ぐっ…あぁぁぁぁ」

「くっ…ネギ先生」

「ネギ坊主…」

心配そうに刹那と楓がつぶやいた。

「そうらっ!」

そう言ってマスターはネギを海に向かってぶん投げ、私たちはネギを包囲、暴れだしたネギをあまり痛めつけないように気を使いながら抑えるという修業に取り組むのであった。

 

「刹那!行ったぞ!」

「ぐっ…やはり速いっ」

と、私が引き付けていたネギのターゲットが刹那の支援で刹那に移って刹那メイン、私と楓が支援に切り替わる。

私は戒めの風矢と糸、楓は一撃離脱と大手裏剣でネギと近接戦闘をこなす刹那の支援に回る。

「くっ…はっ!」

「むう…やはり刹那が一番持たんようでござるな」

「私とお前はネギと同じで機動力極振りだからな…腕の一本位斬り飛ばしていいならともかく、深手を負わせずに耐えるには刹那は不利だ」

牽制を続けながら私と楓はそんな会話をしていた。

「ふむ…そうでござるな…よし、刹那!代わるでござるよ!」

と、楓は分身をしてネギに肉薄していった。

 

 

 

「よし、午前はこの程度にしておこうか」

ネギの答え探しと、私達の修業はネギの暴走が時間経過で収まった際の小休止を除いて、ぶっ続けで昼前まで続いた。

「お疲れ様ですー」

と、途中から修行を見学していた聡美がドリンクを差し入れてくれる…亜子たちは…と言うと

「うぐっ…」

「「ネ、ネギ君っ」」

ネギの方に群がって『手当て』を施していた。

「ネギ先生の治療が終わったらご飯にしますよー」

聡美はこの調子で私達の相手をしてくれていたが。

 

 

 

「刹那と長瀬楓は離脱か…つまらんな…しかし代わりに近衛木乃香が参加…と…ならば千雨、フルスペックでやって良いぞ、但し事前装填は無し、傷つけても構わんが殺すなよ」

昼食後の修行…楓と刹那は外に出る前に小休止を取っている…に私とネギ、そして木乃香が並んでいるのを見てマスターが言った。

「了解しました、マスター…じゃあやるか、ネギ」

「ハイ…お願いします、千雨さん、マスター」

「では…いくぞっ」

と、マスターがネギを暴走させる…

「グッ…あっあぁぁぁぁ」

「ネギ君…」

木乃香が心配そうにつぶやいた。

「いくぞっ、それっ」

そう言って、マスターは何時ものようにネギを投げ飛ばした。

「こっちだ、こいっ」

そんなネギに私は戒めの風矢をしこたまぶち込むと、空に舞った。

「アデアット ロード・セプテット」

そして、アデアットをして力の王笏に組み込んだプログラムの支援を得て、電子精霊を7重装填する。

「ノイマン・バベッジ・チューリング 契約により来たれ 高殿の王 我に力を 雷の招来」

 

魔力掌握 精霊の歌・6匹の電子妖精舞踏+雷奏 三位一体の闇呪紋 増強装填

 

…そして素早く装填の1つを雷の招来に切り替える…魔法の射手7重装填よりマシとは言え、電子精霊を装填した場合のスペック強化度合いは中位精霊クラスなのである…電子精霊の格自体は高いので思考加速のオマケくらいはついているのだが。

「ぐあああああ!」

と、そこでネギが束縛を解放してこちらに向かってくる…のをいなしながらシグヌム・エレベアの組換えを続けるのであった。

 

「ちぃっ…反応できるとはいえ、厄介なっ」

予定の完全体…思考加速の為に電子精霊1を残して雷、風、闇の上位精霊を各2…に変貌した私は雷天大壮を纏ったネギの相手を続けていた。そして反応できるとは言え、一対一でやっている時の雷速瞬動は非常に面倒である…余裕があれば鉄扇術でぶん投げてやってはいるのだが…

「そして…命知らずに攻め立ててくる奴を殺さずに抑えるのは…スペック上回っていても面倒…だなっ」

試合であれば、とっくに私の勝ちで決着をつけられているのであるが、喉元に断罪の刃を突き付けて止まる状態ではないのでやり過ぎないように、かつ動きをある程度止められる程度にネギをボコるという精神の削れる作業を続けるのであった。

 

「…試合でも見てたけれど、アレ、どっちが化け物かわからへんよね…千雨ちゃん」

「そんな事ありませんよーと言いたいところですが、まあ…ほぼ精霊化しているので…千雨さん」

「あの状態のネギ先生をスペックで上回ると言う意味では十二分に化け物でござるが…な」

「邪法に準ずるものとはいえ、本当に強くなったものだな…千雨も」

小休止から戻った刹那と楓を交え、見学組はそんな会話をしていた、と後で聡美に聞いた。

 

「マスター!そろそろきつくなって来たんですけど!」

数時間戦いを続けて精神の睡眠不足と午前の分の疲労で疲労困憊になりつつある私はマスターに向けてそう叫んだ。

「ハハハ、まだまだいけるだろう、千雨。なあに、本当にヤバくなったら介入してやるから安心して続けろ!」

「はーもう、了解っ!」

 

そしてさらに数十分後…

「ぐふっ…」

立て続けに幾つかのミスをした私はネギの桜華崩拳をもろに食らって吹き飛ばされ、追撃の雷の投擲で串刺しにされていた…これ、介入してくれないと止めで死ぬか死にかけるやつなんだが。

「まあ、良く持った…交代だ、千雨…回収してやれ、刹那」

という訳で止めの巨神殺しの投擲に断罪の剣で介入したマスターに助けられて私は刹那に回収され、木乃香に治療された。

 

「ハハハ、どうしたぼーや、まだ何の手がかりもつかめぬのか、あと二日しかないのだぞ」

そして、エヴァはネギをいたぶる様に…というか実際いたぶった。そしてついにネギを氷で串刺しにして見せた。

「止めてぇエヴァにゃん、何もここまでせんでも――」

「そうだよエヴァちんッ!これじゃあ逆に悪化させてるみたいじゃん」

いや、みたいも何もやっているのは悪化させてソレを御せと言う修業である。

「フン、知ったことか、己の闇を飼いならすことができなければどちらにしろ死ぬ。

そうなればこの小僧も貴様らが思うほどには大した男じゃなかったというオチになる」

マスターのその物言いに運動部四人組は反発を覚えているようだった。

「ネギ君、ネギ君」

「あ…がは」

と、その隣では木乃香がネギを介抱していた。

「よし、今日の修行はここまでとしよう」

そう、マスターが宣言し、ネギの手当てが始まった。

 

 

 

その後、夕食まで聡美と仮眠を取った私は、夕食後、聡美とともにネギと火星緑化計画について打ち合わせをして、通信が回復次第、念のためセラス総長に託しておく事になった。

そして…

「やあ千雨、今晩も来たぞ」

と、寝室をエヴァが訪ねてくる。

「エヴァさーん…あんまり千雨さんに無茶させないでほしいんですが」

そう、聡美がジト目でエヴァを見つめる。

「なあに、疎かにしていた姉弟子の方もきっちり指導してやろうという師匠心だ。それに昼間楽をさせてもらった分、報いてやらんとな」

「そー言う事じゃなくって…しっかり休ませてあげてください、って事です」

「ん?夕方、寝ていただろう?アレで足らんか?」

そう、エヴァが言う…

「…足らん事はないけれども…明日も途中で疲労困憊になってミスしそうなんだが」

「安心しろ、その時は助けてやる…始めるぞ」

そう言って、マスターは私の顔をひっつかんだ。

「うぐっ…ぐぁぁぁっ」

「まったく…エヴァさん…千雨さんに無理はさせないでくださいね?」

そして今日もマスターとの死闘を精神世界で繰り広げる事となったのである。

 

「なあ…マスターッ…どうして…ここまで…するんだっ」

殺し合いをしながらマスターと言葉をかわす。

「んー?まあ、私も存在意義というモノがあってな…一度開かれれば、適性のあるものにマギア・エレベアを教えるようにできているんだよッ」

「言うほど…適性があるとも…思えんけどねっ」

「ふん、ぼーやが適性がありすぎるだけで貴様も十分適正はあるさ…お優しい本体がどういうかは知らんがね」

「そうかいっ…それでも私は…ッ」

破滅の切符に手を出すつもりはない、とマスターを睨みつける。

「ほら、いい加減に正直になれ、千雨」

「グッ…意地でも我慢してやるよ!」

気づけば思わずそう口走っていた。

「ほう…ついに認めたではないか、本当は欲しいんだ…と」

「…そうさ、欲しいさ、本当はマギア・エレベアが!」

欲しくて欲しくて欲しくて欲しくてたまらない…本当は今この攻撃でもなんでも呑みこんでマギア・エレベアを習得したくてたまらないのだ。そうして、人ならざる者に至ってみたい…私はそんな願望を抱えている…しかし

「だが人間として生きて死ぬにはシグヌム・エレベアでも十二分に手に余るんだよ!」

「そんなものに拘るたまか?貴様」

「ッ…聡美のいない世界なんて永く生きて何になる!」

「フハハハハ、そこでそー惚気るか、千雨…そんなもの、共に超えればよかろうに…ほら、チェックメイトだ」

と、こんな感じのやり取りをしつつ、私は胸を一突きにされ、この晩、何度目かの死を迎えた。

 

 

 

修行三日目…朝から私一人でネギの相手をして、疲労困憊、また夕方に仮眠を取って…夕食後の時間を聡美と過ごしていた。

「千雨さんー」

聡美が私の名を呼ぶ。

「んーどうした?」

「私の不老化ーと言うかー延命手段に関して何ですけれどもー」

「えっ?」

「…えっ?」

そう言って見つめ合う。

「いや、確かにそーいう話もしていたけれども藪から棒にどうしたんだ?」

「だってー千雨さん、マギア・エレベア習得してー至るんでしょう?」

「え…あ、いや、マスターとの鍛錬はマギア・エレベア目的じゃあないぞ?」

何か勘違いがあるようで、聡美にそう述べた。

「えー千載一遇のチャンスですよねー?」

「確かに勧誘はされているけどさ…習得する気は」

「欲しいんでしょう?」

私の言葉を遮って聡美が言う。

「うぐ…でも…聡美をおいては」

「だからー私も一緒に行くっていう事でー不老化はともかく延命手段くらいはーと」

「…悪いな」

「いーえー千雨さんの足かせにはなりたくないのでーという訳で出来る限り一緒にいられるように私の延命手段をーと…一番わかりやすいのはーエヴァンジェリンさんの眷族化でしょうかー?」

そう、一番わかりやすくかつエヴァの説得のみで実行可能なお手軽な方法を聡美が述べる。

「そうだな、ディライトウォーカーになるまで色々と不便だろうし、エヴァの無茶振りに強制的につき合わせられるというデメリットはあるな…あとエヴァがそれを是としてくれるかどうかというのもあるけど」

そう問題点を指摘する…一応エヴァにも話をしたことはあるが、本気でそれを望む時に改めて、とはぐらかされている。

「それとー純潔を守っておいた方が良いのかなーって感じですかねー?」

「その辺りもあるな…私らの場合の純潔ってどこまでなのかって話もあるけどな」

「次はー理論上可能だと推定されている電子精霊化…と言うか電脳化からのロボボディですかねー」

「まあ、倫理的問題全部取っ払っても技術的問題は山積みだけどな…ボディは茶々丸のを元に開発すれば資金があればいけるとしても」

あくまでも、理論上可能、である。

「ですがー人として逝く寸前まで生きた後にー人ならざるものとして十全に生きられるという利点はありますー言い換えれば決断までの時間はありますー」

「それはある意味利点ではあるな…あと、至った私を解析して同じようなモノになるという手はあるな…まあ、不老化と言う意味では寿命や可能かと言うのも含めて何もかもが完全に未知数だけれども」

「そうですねーマギア・エレベアも咸卦法も私には習得が難しいですから厳しそうですけれどもー一番魅力的ではあるんですけれどもねー」

と、言った具合でほかにも不老化や長命化の手段を色々と相談するのであった…まあ私が至れるかと言うのがそもそもの問題ではあるのだが。

 

そしてその晩…

「ふはは、どういった心変わりだ?千雨」

マスターとの戦いが始まった直後、マスターの魔法を取り込み、マギア・エレベアを習得した私にマスターはそう述べる。

「…惚れた女と一緒に人間やめようって決めたんでな」

「フフ…それは良い…本体がどう言うかは知らんがな…では修業を始めるぞ!」

そして軽く使い方のレクチャーをした後に死闘形式で修業を重ね、夜明け前に解放された。とはいえ、まだ戦闘ではシグヌム・エレベアの方が強いのではあるが。

 

さすがに突入前は休んでおけと言われ、たっぷりと言うほどではないが6時間ほど睡眠をとった。

「んーよく寝た」

「おはようございます、千雨さん」

「うん、おはよう、もう昼だけれどもな」

「そろそろネギ先生の修行も終わるころです…行ってみます?」

「ああ、行こうか」

という事で私たちはネギの修行の結果を確認に向かった。

 

「あー派手にやっているな」

外に出るとネギとマスターの戦いが岩山を砕いているところであった。

そしてネギはマスターに吶喊し…数手のやり合い…だんだんネギの動きがさえてくる…コレは…やったか?

そうしていると、二人は遂に断罪の剣でぶつかり合い…海を爆発させた。

「大丈夫ですかねー」

「…多分」

それで決着したらしく、マスターが腹を貫かれていた…ネギは左手を犠牲にマスターの断罪の剣を止めていた。

「本体に数倍劣る複製とはいえ…この私に一撃するとはがふっ…」

「マ…マスター!!」

「だが、暴走を制御できたとはいえわずか一瞬、まだ未完成…不完全だ。

いつまた闇が貴様を喰らいつくそうとするかわからぬぞ」

「わかっています、どうも…これを抑えるのは僕一人じゃ無理っぽい…だから僕は前だけ見ていようかなと」

「何?」

「闇に取り込まれそうになっちゃったらそれはその時、後は皆にお願いしようかと思って。白き翼の皆ならきっと何とかしてくれます」

丸投げされた課題をまさかの丸投げしやがった、こいつは…

「フッ…アハハハハハハ!!ぼーやにしては言うではないか」

「それに…マギア・エレベアに取り込まれても、死ぬか魔物になるだけでしょ?僕の相性からいって死ぬ確率は低いです、計算しました。

それに…魔物になっても、それってマスターと同じになるってだけじゃないですか、だったらいーかなって」

と言ってネギは笑った…人がさんざん悩んでいる問題にそー答えるか、ネギめ…

「僕、マスターのことは大好きですから」

「ぬ」

そして付け加えられたネギの言葉にエヴァが頬を赤らめる…おや?

「んー……」

「アレ?マスター、どうかしましたか?」

「そーゆー台詞は…400年早いわ、ガキがーッ」

と、エヴァはネギに断罪の剣で襲い掛かった。

「キャー!?」

「今の台詞を我が本体に言うのを禁ずる!!さもなくば死!!」

「わひーん」

…完全にコントである。

「ふん、よかろう授業は合格ということにしてやろう。最後に一つ聞こう、貴様が得た答えは何だ?」

「僕は…僕はフェイトと友達になりたいんです」

そう、ネギは言った。

「フフ…ハハハハハハ…まさかの答えだな…よかろう、それが貴様の答えならばな…では…さらばだ」

そう言い残し、エヴァは光の粒になって消えていった。

「あ…マスター…」

そう、寂しそうにネギは呟いた。

 

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