例えばこんな長谷川千雨の生きる道   作:紅シズク

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105 決戦編 第2話 リア充二人

「バ…バカな、ザジ…ザジ・レイニーデイだと…?」

「ザジ…さん?」

そんな真名とネギの言葉にザジらしき人物はニッと笑って答えた。

「ちっ」

「龍宮さん!」

「彼女がここにいるはずはない、罠だっ!」

「しかしッ」

「悪いが議論の余地はない!!」

真名はそう叫ぶと銃を三連射し、放たれた弾丸は目を見開いたザジらしき人物の目前でぴたりと止まった。

「楓!刹那!」

「うむっ」

一応、ルームメイトである私に気を使ったのか、密集しすぎるからか、真名は楓と刹那にのみ声をかけ、真名はザジらしき人物の腕を極め、後頭部に銃を突きつけた。

「動くな」

そして同時に刹那と楓がそれぞれの得物をザジらしき人物の首に突き付ける。

「答えてもらおう、こんな場所で私達のクラスメイトを騙る貴様は何者だ?」

真名の問いにザジらしき人物はクスッと笑うと真名とその銃、そして刹那と楓を同時に吹き飛ばした。

「くっ…」

「ちっ」

「…動くなポョ…君達を傷つけるつもりはないポョ」

「え…」

「…私は君を止めに来たんだ…ポヨ、君は間違ってるポョ、今や君は危険な存在ポヨ」

そう言い放つとザジらしき敵は魔力をたぎらせ、威圧をしてきた。

「…君の進む道はフェイトの進む道よりも多くの血を流す…っポイョ…これだけ言えば君にならわかる…と思うポョ…最後の選択肢をあげるポョ」

ザジらしき人物がそういうと、周囲の景色が麻帆良学園へと塗り替えられていく…

「え…」

「これは…」

「君がここで手を引けば君達はこのままここへ返してあげるよ」

「なっ…なんと…」

「そ…そんな…」

「こ…ここは…」

「麻帆良学園…」

「あ…ありぇねぇ…」

個人の魔力で麻帆良と墓守り人の宮殿を繋ぐとか…それは不可能だ。

「そう…これで君達が抱えている問題の半分以上は解決できたよね?」

「ふん…言ってくれるぜ、ポヨはどうしたんだよ、ポヨは」

あくまでも半分以上、であってアーニャもアスナも助けていないし、魔法世界を丸々見捨てろと同義である…と私はそんな挑発をする。

「…できたザジ」

「ザジかよっポヨよりは関連性はあるがっ」

「できたポニョ」

「いや、それは色々やべぇから。本人だとしたら意外にお茶目だな」

…漫才と化してしまったが。

「ちっ」

と、真名が羅漢銭で拘束を脱出した。

「騙されるな、先生!アレがザジであるハズがない!!現在世界間の移動は不可能だ!これは罠だ!!」

「確かに全ゲートが破壊された今、両世界は隔絶されているはずです!ザジさんがここにいるのは筋が通りません。この状況も!気を付けてください、ネギ先生!」

「で、でもちょっと話を聞いてみるべきじゃない!?ザジさんなのよ、このままだと何が何だかわかんないわよ!」

「もう一度聞くポヨ、君の進む道はフェイトの進む道より多くの血を流す…それでも進む…ポヨ?

…君が進む道はきっとあの『超 鈴音』が止めようとした未来に繋がっているんだポヨ」

「え…」

…状況から察するに、きっとそうなんだろうな…ネギがその一件で精神的に成長しているという点を除けば。

「…それは知っています、きっとそうなんだろうって」

「ほう…」

「それでも…僕は前に進むつもりです、父の跡を継いで」

「…そうポヨか、仕方ないポヨ」

ザジらしき人物はそういうとアーティファクトカードを構えた。

「ネギ先生!」

真名がそう叫ぶと共に、世界が光に包まれた…のだが

「何とも…ない?」

そう呟いた直後、いくつものドサッという人が倒れる音が聞こえた。

「ッ!!」

「おっと…君が残るのは若干計算外ポョ…闇の魔術をあれだけ深く理解し、使いこなす君が…ポヨ」

「何を…した…」

「私のアーティファクトの効果ポヨ…これが『完全なる世界』…ポヨ」

そして合点が行く、なぜ私が無事で、ネギ達が昏倒しているのか…

「その顔は知っているポヨね?満たされぬ想いが多ければ多いほど、心の穴が大きければ大きい者ほどその甘美な夢…『完全なる世界』からは逃れられぬポヨ」

「これが…こんなものが『完全なる世界』…だと?」

こんなちゃちいモノが?と私は虚勢を張る。

「無論、本物の術式ではないポヨが。本物は肉体ごと異界に取り込み、永遠を与える」

「あ、千雨ちゃん!皆が!っ、ネギ君迄っ」

…とそこへまき絵が現れた。

「――ちなみに、この術はその特性上、リア充には効きにくいポヨ」

「…デスヨネー」

薄々感づいていた理由をぶっちゃけられるとちょっと恥ずかしい。

「千雨ちゃん、りあじゅーって何?り…りある十代…?」

「…違う、『現実生活』が『充実』してる人間を指すスラングだよ。典型的には恋人、家族、友人関係に恵まれネット以外の日々の生活が豊かな者等を言うが定義はあいまいだ。

でも、うちの面子、ネギとか刹那とか真名とかコタローとか除けば割と耐性ある気がするんだが…?」

「…いや?無事なのは君たち二人だけポヨ?」

「聡美も…?」

聡美の過去に後悔…特にトラウマ級のは超の計画関係くらいしかない筈で…一緒に乗り越えられていたと思っていたのだが…第一計画成功の世界線にでも行っているのだろうか?

「そうポヨ…愛されているポヨね、君と一緒に無茶ができるだけの才能があって、幼少から修行を共にしていたら、という世界みたいポヨ…闇の福音のガチ修行で現実よりも幸福度が下がっているようにも思えるポヨが…それでもそっちの方が良いらしいポヨ」

「ああ…うん……まあ、それなら仕方がないか…な…?」

それは…ある意味仕方がない、いろんな意味で。

「…あと同性愛への寛容さと…ポョ…君もその辺り引っかかると思っていた…ポヨが」

そして何事かをザジらしき人物が呟いた…が聞き取れなかった。

「…で、私はどうすりゃいいんだ?敵みたいだからバトルって事でいいのか?」

「そうポヨね、力づくで突き落とす…という手もあるポヨ。君達にはそれで堕ちてもらうポヨ…君はその頭脳と言い、実力と言いネギ先生を代替しうる危険度な存在ポヨ!」

「へっ…そうかい!アデアットして下がっていろ!まき絵!」

「う、うん!ア、アデアット」

という事で戦闘態勢を整えた、その瞬間…倒れていたはずのネギがザジらしき人物の隣に出現した…ネギの意志力は知っているが、まさかこれだけ迅速に脱出してくるとは思わなかった。

「お待たせしました」

「あ…」

「お早いお帰りで…」

「ポヨ」

「バカな…」

「はじめまして…ザジさんのお姉さん」

ネギの邪魔をしないように黙ってみていると、ネギとザジらしき人物…もといザジの姉は互いに断罪の剣と剣化した爪を突き付け合う…と、ネギから雷がほとばしり、麻帆良学園の景色を吹き飛ばした。

「そうか…我が妹の手引きポヨね?ネギ先生」

成程…それならネギが一番に脱出した理由は理解できる。

「ええ、ザジさんのおかげです。それに僕は…フェイト・アーウェルンクス…どうしてもあいつに会いに行かなきゃいけないんです」

「やれやれポヨポヨ、では…力ずくで止めるしかないポヨね」

「…なぜ僕を止めるんです?」

「この世界はいずれ滅びるポヨ、知ってのとおり。その崩壊に巻き込まれて魔法世界12億の民の多くは死に絶え、何とか生き残り不毛の荒野に取り残された者達も生存をかけて地球人類との100年を超える争いに叩き込まれるポヨ悲惨ポヨよ?

これら全ての悲劇を回避するためにはフェイトたちの計画どおりこの世界の全てを『完全なる世界』に封ずる他はないポヨ。

私は魔法世界人でも旧世界人でもないポヨが、力ある者の責務としてこれら未曽有の危機を見過ごすことはできないポヨ。

世界を救った英雄の息子がこんな無謀な行動に出る事が無いよう祈って監視していたが、残念ポヨヨ」

「……なぜ…なぜ未来がその一つしかないと決め込んでいるんですか?」

そう、ネギは問う…それでいい、私たちは答えを得ているのだから。

「…何の話ポヨ…?」

「魔法世界が崩壊するという話です」

「…それこそが避けえない唯一の未来ポヨ。私の研究機関による試算では最短で9年6カ月の後に崩壊が始まるポヨ」

ああ…それは

「「良かった」」

ギリギリ間に合う範疇である、計画を全力疾走した場合ではあるが。

「時間だけが問題だったんです、9年6カ月もあるなら充分だ」

「な…に?」

そしてネギが叫ぶ。

「フェイト・アーウェルンクス!!見ているんだろう!?聞け!!!

君の望み通り僕は君と戦ってやる!!だが聞け!!!いいか?フェイト、全ての元凶は不可避とされる『魔法世界の崩壊』という未来だ。僕達にはそれを止める手立てがある。

そこでおとなしく待っていろフェイト、僕が力づくでも君にわからせてやる!!」

と、その時、遠くからよくも戯言を、と言わんばかりの気配が飛んできた…おそらくフェイト・アーウェルンクスのモノだろう。

「僕が冗談でこんなことを言うと思うのか?いや!君がそう簡単に信じないだろうことはわかっているさ。

だから僕がこの手で信じさせてやる!そこでおとなしく待っていろ!!」

「そうだな!少なくとも、理論上は私らで検討してみた限りは完璧だったぞ!」

と、私も付け加える形でそう叫んだ。

「あ、千雨さん、修行の合間に実証実験もしちゃいましたよ、予備的なモノですが」

「ちょっ、いつの間に!?」

「それは修行の合間にちょちょっと…セラスさんに送ったデータにも添えておきました」

「…それはもはやルーナを使者に立ててフェイトたちにデータ送った方が話が早いんじゃ…」

「それは…まあどうせ戦いはするので後でも良いかなーって…互いに別解である事には違いありませんし」

「…テメェがそれでいいならいいけどさ…」

そう、私はため息をついた…瞬間

「危ない、ネギ君ッ」

虚空から現れた腕がネギを襲った。

「プランだと…?さすがに信じられぬ…ポヨ」

「魔族!!」

…ザジの姉が魔族としての正体を現した。完全にデザイン的にはラスボスである。

「魔族って…時々見かけるあの?お店に来たのはいい人ばかりだったけど――…」

「その中でもかなりエラい人ポヨ、ラスボスくらいにはエラいポヨ。それで少年、本気…ポヨかね」

「はい」

「たかだか10年しか生きていない子供の思いつきを信じる訳にはいかないポヨ」

「あ、ネタ元はこちらの千雨さんです」

「わ、バカ、バラすな!」

と、ネギが私の話をしやがった。

「…15年しか生きていない少女でも大して変わらんポヨ!」

「わかってます…でもこれが僕達の答えです、もし僕達の考えが上手くいけば、全ての問題は解決します!」

「いや、違う。問題は解決しない、やはり君の道に血は流れるポヨ、やはり…力ずくでも止めるしかないポヨ」

そう言ってザジの姉は魔力砲撃をかましてきた。

「千雨さん!」

「わかっている!」

後方の舟とまき絵を守る為に私とネギは一歩前に出て障壁を張る…が

「え…」

「何…」

「皆さん!!!」

私達に達する前にクー、刹那、楓、真名が復活、さらに前方で防いでくれていた。

「ポヨ、先生の脱出でタガが緩んだポヨか」

「遅れてスマヌ、ネギ坊主」

「なるほど…聞いてはいたが『完全なる世界』…恐ろしい術だな、幸せという麻薬はいかなる脅迫にも拷問にも勝る」

「死んだジジババと里でのんびり過ごしてしまったでござるよ、良い夢でござった」

「何を顔を赤くして震えている?」

「何でもないッ」

「ないアルっ」

「みな目覚めてしまったポヨか、だが計画を止めさせる訳にはいかぬポヨ。

まとめて送るポヨ、次こそは二度とは戻れぬ真の『完全なる世界』へ」

そうザジの姉が言うと、魔力が迸り、彼女が強敵である事をありありと示す。

「ポヨ・レイニーデイさんは僕が引き受けます!!みんなはその隙に上層部へ救出に向かってください!!」

「いや、ネギ先生、君はリーダーだ、最大の戦力でもある。ここは私に任せて君が皆を率いて上へ向かうんだ」

「龍宮!」

「ダメです、隊長ッ、ポヨさんの力は未知数です!フェイト達以上の強敵の可能性もある!やはり僕がここを…」

「だからこそ、君は力を温存しておかなくてはな、私を信じろ、少年」

そう言って真名がリモコンのスイッチを押すとジャンプ地雷が複数起動した。

「ポヨ?」

そして…その地雷が炸裂するとザジの姉は押しつぶされるようにその場に拘束された。

「超鈴音特製重力地雷、一瞬だが50倍の重力がかかる」

そう言うと真名はザジの姉の周囲の床を破壊し、階下へ落した。

「ひゃああ」

「じゃあな、先生、しっかりやりな」

「龍宮さんッ」

「大丈夫さ、お代はもう貰ってある」

「いえっ…じゃなくて…」

「君こそお姫様と幼なじみをちゃんと助けてライバルときっちりカタをつけてくるんだな」

「龍宮さんッ」

そう言い残し、真名は階下へと…深い穴へと飛び降りていった。

「真名ならばきっと大丈夫でござるよ」

「でも、あの相手に一人で」

「足止めに徹すればどんな相手にも遅れはとりません、私が保証します」

「ああ、私も今でさえ逃げ切れるか怪しいくらいだからな」

「私を信じろ、少年」

と、真名の声も穴の底の方から聞こえてくる。

「…わかりました、みんなを起こして…いきましょう!」

 




千雨ちゃんを第一計画世界線に堕としてもよかったんですが、まあこの方が話を書きやすかったので(ネギ君のキーワード以外での脱出描写がないので書きにくかった。

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