例えばこんな長谷川千雨の生きる道   作:紅シズク

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106 決戦編 第3話 限界

 

「…という訳で多少変更はありましたが概ね計画どおりです」

皆を起こしたネギがそう宣言する。

「第1班はパル様号及びフライマンタの修理を進めつつ脱出路の確保を担当。

第2班は人質、アーニャの救出。

第3班は『造物主の掟』の奪取、敵主力との正面戦闘を想定します」

大きな違いと言えば…

「フライマンタも一緒に突入してしまった事でどの班が安全かとは言えなくなりました。もし…僕を信じてもらえるなら…」

「…うん!ネギ君たちと一緒に行くよ」

運動部四人組が、楓の天狗の隠れ蓑の中とはいえ、同行する事になったくらいか。聡美は修理班である。

「…わかりました」

「楓さん」

「うむ」

そしてその後、ネギはハルナと何事か念話を交わし…おそらくアスナの事…出発という事になった。

「それじゃあ行ってくる、聡美」

「はい、千雨さん…ご武運を…」

「じゃあ」

「おうっ」

「行こう!!」

そうして、私たちは進撃を開始した。

 

「おそらく、この先に縦坑が…」

「敵や!召喚魔!」

回廊を進撃し、第2班との分離地点である縦坑の手前、ついに私達は接敵した。

「『造物主の掟』持ちです」

「大丈夫!蹴散らします!」

と、ネギは魔法の射手を詠唱し、放つ…が、

「なんと!?ネギ坊主の魔法に耐え…お」

敵はその攻撃に耐え、そしてネギによる近接戦で撃破された。

「まだ来るアルよ!」

「うひゃーまた団体さんやで」

「後ろのことを考えてなるべく数を減らしながら進みます!『造物主の掟』持ちは遠距離攻撃が効きにくい、接近戦を心がけてください」

確かに、舟のことを考えれば可能な限り削っておくべきである…とは言ったものの

「術式装填 魔杖雷鉾槍化」

「なるべく数を減らす…との事ですが」

「全部お前が食っとるやんけ」

「もうなんか人間台風みたいアルネ」

「そーだなぁ…」

と、ネギが杖に付与呪文を施し、一掃してしまった。

 

そして縦坑に入り、第2班と分離した後、私たちは階段を無視して上へ上へと向かっていた。遭遇する敵兵力も、ネギがほぼ仕留め、取りこぼしを私、クー、刹那、楓で手分けして殲滅しながら進撃し…

「螺旋階段の頂上に到達しました」

遂に螺旋階段の頂上に到達した。

「敵の召喚魔はもう見えませんね」

「栞殿、よろしいか?」

楓の呼びかけに応じてルーナ改め、栞(ルーナが本名らしいが、仲間内でも栞で通していたらしい)が化けたアスナが隠れ蓑から現れた。

「ネギさん!アスナさん、しばらく失礼します」

「栞さん…」

「ネギさん…大丈夫ですか」

「え…?」

「ずっとその姿で戦いっぱなしではないですか。その…デュナミス様の強さは尋常ではありません、魔力の残量などは…」

「大丈夫です、修行のおかげで今の僕の雷天大壮の魔力運用効率はかなり上がってますし、『完全なる世界』の中で丸一日休ませてもらいましたし、魔力はほぼ満タン状態ですよ」

…それだけ、ではないがな…と私はネギを見つめる。

「そ…そうなんですか…?」

「…それだけではないでござるな?」

「うむ…私も魔法はまだ素人アルが、なんとゆーかあれだけの敵を相手にして魔力が減るどころかむしろ増しているように見えるアル」

「闇の魔法による、魔力容量の増大…ですね?より馴染んできている…もちろん、それに伴い『侵食』も」

「ああ、恐らくは…」

分水嶺は越えてしまっている、私はそう言いかけて、言いよどんだ。

「…はい、どうやら…そう…みたいですね」

「そ…そんな、大丈夫なのですか?」

「大丈夫です、大丈夫じゃないかもしれませんが、大丈夫じゃなくなっても皆がいてくれればきっと大丈夫って…信じてます。だから…大丈夫です。

それに、なんだろうとパワーアップは今、ありがたいです」

…最後までもてば…な…正直、私の眼には侵食の最終段階にしか見えない。

「フ…そうでござるな」

「勝手でスミマセン」

「ま…いーんじゃねーか?覚悟決まってんのなら」

「いきましょう、栞さん、世界を救いに。いきましょう、アスナさん、あなたを助けに」

そう、ネギがおしゃべりタイムをしめた。

「栞さん」

「はい…アレが墓所への扉です、墓所を通り抜けて上層部へ上がれば…」

「待て!何か…いるでござる!」

「待ち伏せ…罠か?」

「いや…強大な気と魔力を隠そうともせず、これは恐らく尋常の勝負を…」

「…いきましょう!」

そう、ネギが宣言し、私たちは墓所への扉をくぐった。

 

「ようこそ、白き翼の諸君、次代の子等よ」

そこにはデュナミスとフェイトガールズ3名、それに月詠が待ち受けていた。

ネギがデュナミスに向かって飛び掛かった…瞬間、デュナミスの魔法障壁に阻まれたが障壁破壊効果を練りこんだ掌打で魔法障壁を突破、直後、『造物主の掟』によるカゲタロウの操影術のような影刃にネギは貫かれながら吹き飛んだ。

「見事だ少年、英雄の息子よ、存分に戦おうぞ」

「ネギ坊主!」

そうクーが叫ぶ…が、ネギは雷化して脱出、致命傷は避けたようである。

「おおっ」

「やはり一筋縄ではいきません」

「だが、世界の運命を懸けた戦いに傍観者を気取る者がいるのは面白くはないな、どれ…」

と、デュナミスが言うとデュナミスの『鍵』が発光…楓の隠れ蓑に干渉された。

「げ、マズイぞ」

と、言うと同時に聡美を連れてきていなくて本当によかった、と思う私だった。

そしてドサドサと楓の隠れ蓑から次々に中の面子が落ちてきた。

「いかん!」

「あたた…」

「これは…」

「くっ…非戦闘員連中が無理やり外に押し出されたっ!」

「つ…つまり?」

「つまり、ラスボス戦で育ててなかった遊び人と商人もバトルに強制参加ってゆーイベント!?」

「そらマズイ!」

「ネギくぅんっ!」

「落ち着いて!楓さん!!皆さんを安全な場所へお願いします」

「うむ」

「皆さん、もう一度マントの中へ…」

直後、敵のデュナミスと猫耳以外が非戦闘員に接敵する。

「貴様らのような役立たず、私の能力で一瞬で灰にしてくれる」

「一緒に楽しみまひょ、まずは…」

とツインテールの少女と月詠が口を開いた…と、そこで私はデュナミスに断罪の剣を展開し斬りかかった…

全員の意識が非戦闘員組近辺に向いている刹那に何かされれば致命打になりうると考えて。

「ほう…貴様も中々やるな…小娘…この状況で私を止めておこうとはなかなか」

「そうかい…これでも白き翼の参謀の一員でもあるらしいんで…ねッ」

「ハハハ、それはよいな…しかしなかなかいい技術だ…その剣は」

「フン…あんたら対策に障壁破壊・貫通系はモリモリにしてあるのさ」

そんなやり取りをしていると後方の状況も整理がついたようで…刹那は月詠と共に離れて戦い始めているが…私も一度距離を取った。

「ふむ…ならば一度少年に挨拶をしようか」

と、デュナミスはどぶんと影に沈む。

「ネギ!行ったぞっ!」

「あっ」

「くっ」

「デュナ…何だったアルか」

「デュナミスだ…ふんッ」

で、斬りかかろうとした私は突然デュナミスが脱いだ…というか衣服を霧散させた事に戸惑い、手を止める…それは私だけでなく、皆も同様だった…刹那と月詠以外。

「なるほど、英雄の息子よ、父と違って君には世界についての代案があるようだ。

それは良い、だが…私の見たところ、やはり我々には歩み寄りの余地はないようだ」

「しかし、デュナミスさん!僕達の計算では魔法世界の崩壊を防ぐ手立てが…」

「いや、少年よ、その問題は本質的ではない、そして私にも悪の秘密組織幹部としての矜持がある。自らを貫きたくば拳で語れ」

そう言って手を打つとデュナミスが影精らしきものに包まれて行き…形成された剛腕によってネギがぶん殴られる。

「いかんっ」

そしてデュナミスは装備を完成させ、4腕の戦闘態勢になった…そして跳躍して壁に叩きつけられたネギに追撃をかける。

それに楓は割って入って攻撃を防ぐ。

「楓さん!!」

「ここは拙者が!!ネギ坊主は先に行くでござる!!」

「そう簡単にいくかな?このデュナミス、大幹部戦闘形態、とくと味わってもらおう」

そして、フェイトガールズ3名も復活し、クーが三人娘を同時に引き受けて戦い始める…どっちに加勢するべきかと一瞬考え、楓に加勢する事にする。

「楓!加勢する!」

「いや!千雨はネギ坊主と共に!」

「が、そう簡単にいかせてはくれんようだぞっ」

「はぁッ」

と、殴りかかってくるデュナミスの拳をこそぎ落とすがシュルシュルと即座に回復されてしまう。

「むう…やはりその剣は厄介だ…」

と、デュナミスは影刃を飛ばしてくる。

「ぬかせ、ダメージになっとらんくせに…楓こそ、ここは任せてネギと行ってくれてもいいんだぜ?」

それを切り払いつつ、私は叫ぶ。

「そうもいかんでござる…では暫し助力を頼む」

「了解っ」

という事で私は暫し楓と共闘することになった…

 

「むう…!なかなかやるではないか、次代の子等よ」

「それはどうも…っと」

楓と2人でデュナミスの呼吸をかき乱しながら隙を探る…そして、何度目かの激突の際、私はデュナミスの剛拳を断罪の剣ではなく、鉄扇で受けた。

「なぬうううっ」

まー当然、狙いは合気柔術なわけで…不完全ながらデュナミスをぶん投げる事に成功する。

「今でござる!」

「ぐっ…」

と、そこへ楓がいつもの巨大十字手裏剣をデュナミスの腹に刺し、クナイで増腕を両方とも切断、さらに爆符付きの鎖と8つの十字手裏剣でデュナミスを固定する。

「爆符!」

「特別製でござる」

「来れ深淵の闇 燃え盛る大剣 闇と影と憎悪と破壊 復讐の大焔 我を焼け彼を焼け 其はただ焼き尽くす者 奈落の業火」

そして、そこへネギの奈落の業火が直撃、と同時に楓の爆符が爆ぜ、相乗効果でえげつないことになる。

「よしっ、ネギ坊主!千雨!行くでござる!!」

「…了解っ」

「楓さん!」

「フェイトのもとへ、そして最後の鍵を」

「楓さん、デュナミスさんの曼荼羅障壁は…」

「大丈夫、拙者にもやりようはあるでござるよ!」

「気を付けて!」

そして、ネギと私はデュナミスとの戦闘から離脱し、非戦闘組のもとへ向かう。

「ネギ君」

「はいっ」

「杖よ。のどかさん、乗ってください!アスナさんは行けますか!?」

「ゆーな!私抜けても大丈夫!?」

「行きなっ!!」

そうしてネギの杖にノドカと栞が乗った。

「ホール上部の縦坑からが近道だって!」

「了解!」

「ネギ君」

「ネギ君ッ」

木乃香と亜子とアキラがよって来る。

「がんばりや、ネギ君!」

「はいッ」

「先に跳ぶぞ!」

そうして私は縦坑に侵入し…ようとした瞬間、目の前の空間に亀裂が走る。

「チッ…あっ」

咄嗟に虚空瞬動で避けた私であったが、その狙いは後続のネギ達で…ノドカと栞を乗せているネギは雷化回避するわけにもいかず、もろに食らって…ドシャッという音を立てて墜落した。

「そんな技が…不覚っ」

「…ぬうん、悪の秘密組織の大幹部を甘く見てもらっては困る、簡単にはいかせぬよ」

「ネギ君」

「ネギッ」

「先生ッ」

「ネギ君」

そばに寄った私達が見たネギはかなりの重傷で…

「ネギ!」

「ヒドイ…ッ」

「ウチが今…」

「っ…待て!ネギから離れろ!魔物化だっ」

「ネギッダメよ!」

「チッ…持たなかったか」

私は思わずそう呟いていた。

「ぬうっ…」

そしてネギは完全に魔物と化した…そしてこれはネギの人としての時間の終わりである。

「きゃあー」

「…こ、これは…」

そして、ネギはデュナミスに吶喊し、怪獣大決戦が始まった…

拳と拳のぶつかり合い、デュナミスの振り降ろしを受け止めるネギ…腕をさらに増やしたデュナミスの連撃とそれを相殺するネギ…そしてデュナミスの腹にネギの一撃が入る。

「ぐうッ、ぬぅあぁあッ」

吹き飛ばされるデュナミスは増やした拳をネギに殺到させるが、ネギは前へと増腕を切り裂きながら進み…デュナミスを真っ二つに切り裂いた。

「ぐぅおおおっ」

「デュナミス様ッ!」

「そんなっ」

…しかし、それでもデュナミスはまだ活動を続けており、ネギの身体にはヒビが入りつつある…アレは…?

「ネギ君ッ」

「身体にっヒビが…ッ」

「まさか…脱皮…?」

そう言っているとデュナミスは先ほどネギを貫いた拳を虚空に出現させる攻撃でネギを攻める…それに対してネギは攻撃を掻い潜り、デュナミスの顔面に一撃入れると黒い雷で巨神殺しを形成し、デュナミスに放ち、デュナミスを内部から焼き尽くす。そして上半身のみのまま、しかし影装が解けて落下していくデュナミスであった。

「ぬ…う、なるほど…ウェスペルタティア最後の末裔の血…英雄たる父譲りの魔力…君自身の才能…さらに我が主の御業に連なるその魔法技…これだけ揃えられてはただの人形たる私に勝ち目など無いな。

だが…我々の勝ちだ、やるがいい君はここで闇に落ちる」

「ダメだッ!!デュナミス様はやらせはしない、やるなら私をやってからにしろ!!」

ツインテール…焔とやらが飛びおり、デュナミスを庇う…

「熱いっ、止めるな小娘、それで我々の勝ちだ、計画はなる」

「しかしっ」

止めるべきか、と私は糸を飛ばす。

「熱いぞ…やるのだ少年!」

そして糸の到達より早く腕を振りかぶるネギ…の前に栞がデュナミス達を庇うように飛び出して…血飛沫が舞った。

 

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