例えばこんな長谷川千雨の生きる道   作:紅シズク

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107 決戦編 第4話 インターバル

「よくやった、栞、我らの勝ちだ…彼は堕ちる」

「グッ…アアアアッ」

そのデュナミスの言葉通りにネギは黒い紋様を浮かべながら暴れ、デュナミスに止めを刺そうとする。

「そうはさせんッネギ坊主!」

そのタイミングになってようやく楓と私の糸が到達し、影縫いと糸と楓の物理拘束がネギを止める。

「グウウウッ」

「どどど、コレどーゆーこと?アスナが知らん女の人になってネギ君に刺されて―」

「わからないけど、このままじゃ…ネギ君はきっとニセエヴァさんが言ってたように化け物になって…」

「まだや!」

木乃香が飛び出していく…私も糸を維持しながらネギのもとへと向かった。

そしてクー、のどか、まき絵が到着し、ネギの拘束に加わった。

「ガアアッ」

「先生ッ」

「グウウッ」

「ネギ君」

「くっ」

「痛っ熱痛いっ?」

「く…うううう」

そうして現場に到着して状況を理解した私はネギにビンタをかました。

「落ち着け、バカ者」

「ぐ…うう」

ネギが涙を流しながら呻き、暴れて私の二の腕と顔を薄っすらと切り裂く…シグヌム・エレベアの防御を突き抜けるとは…まあ今はそれどころではない。

「千雨ちゃんっ」

「よく見ろ、あわて者。あいつはまだ大丈夫だ」

そう言ってネギの髪を掴んで栞の方を直視させる。

「かすり…傷です、ネギさんは…直前で手をそらして…」

「ア…グウ…あ…」

「ネギく…あっ」

ネギはピシリビシリと体にヒビを走らせながら、倒れこんでしまった。

「先生っ」

「ネギ君」

 

その後、木乃香がネギの治療を試みたが、効果はなかった…それはそうである。

「アカン…ウチの外傷完全治癒も異常状態快癒も発動せぇへん。それやのに体温はめっちゃ低うて呼吸も鼓動も弱い。意識も戻らへんしまるで仮死状態や、手足のひび割れみたいなのも治らへんし」

「おそらく、闇に飲まれる寸前に意識が踏みとどまり危うい均衡を保っているのだと思います、動かしてはいけませんわ」

「しかし…ここに来てネギ坊主がこんなことになるとは…」

「まあ、兆候は出ていたがな…今のネギは羽化を待つ蛹みたいな状態ともいえる」

「いつも見たく、私達が手を握ってあげたらどうかな?ね?」

「まー多分それが効果的な手ではあるとは思うが…それでもいつネギが活動可能になるかはまったく不明…手当てをする前提で、いくらネギでも今日中に目覚めたら奇跡、数日から数週間くらいなら上出来、数か月はかかる可能性が高いし…場合によっては…」

目覚めない可能性さえある、と言葉を濁す。

その時、ドドォ…ンと遠い戦闘音が聞こえる。

「この音は?」

「刹那がまだ戦ってるアル、あの危ないメガネ女と」

「助けにいかなくていいの?」

「…うん!あっちは大丈夫や、せっちゃんが自分一人に任せて言うてた」

若干心配ではあるが、刹那であれば…大丈夫であろう。

「…栞、貴様なぜその少年を、千の呪文の男の息子を助けたのだ」

焔がそういうと、猫娘と竜娘もやってくる。

「むむっまだやるかッ」

「カグラザカアスナの替え玉役とガキどものスパイが貴様の役目のはず!なぜだ!?」

「今から話しますわ、焔…いいですか?私達の目的は何です?『世界のリライト』…でしたわね?

この20年来、フェイト様達がこの計画を急いだのは『魔法世界の崩壊』が目前に迫っていたからです。

でも…この『魔法世界の崩壊』を止める手立てがあるとすればどうです?」

「それはもう聞いた、信じられるか!!子供の口から出まかせだ!!」

「そーダ」

「そうニャ」

…私も参画している計画をそこまで言われると口もはさみたくなるが…黙っておくか。

「でも…もし本当だったとしたらどうです?ネギさんはフェイト様もお認めになる稀有な人ですよ」

「むぐっ」

「それは…」

「お願い、焔、少しだけ考えてみて、もし本当ならって」

「本当ならどうだというのだ!!たとえそれが本当で魔法世界の崩壊が回避されたとしても、この世界は今のまま、何一つ改善されないではないかッ!!私達のような戦災孤児も減りはしない!!」

アーうん、楽園計画的な方面ではアレではあるな。

「まあ…それはその通りなのですが、それはそれ、これはこれごっちゃにしては話がこんがらかってしまいますわ」

「何っ!!」

「私はネギさんと一晩、話し合う時間を頂きました…計画についても私のわかる範疇では矛盾も無いようでしたし…」

「なっ…ひ…一晩?」

「いつの間に?」

「ネギ君よく身体もつなー」

「焔…私は…ネギさんを信じてみるつもりです」

「栞…貴様ッ裏切るつもりか!?」

栞の言葉に焔が激高する。

「待て焔」

それを止めたのはデュナミスであった。

「戦う必要はない、我々の勝ちだ。堕としきれなかったのは残念だがいずれにせよ彼はもう使い物にならない、君達は我々に対する切り札を失った。

一方黄昏の姫御子と造物主の掟・最後の鍵は宮殿最奥部にてテルティウムに守られ最後の儀式は既に発動し、後1時間43分で我らの計画はなる。

アーウェルンクスシリーズには…その少年でなければ対抗しえないであろう…そこの我が主の御業に連なる技法を使う小娘でさえ…な」

そう言ってデュナミスは私を見る。

「フフハハハ、諸君らは失敗した!!私一人と千の呪文の男の息子と引き換えなら安いものだ!!フフフハハハ今回こそは我々の勝ちだ!!ぶぎゅるっ」

…高笑いするデュナミスをクーが棍で突いた。

「上だけのくせにエラそう言うナアル」

「デュナミス様に何をするか貴様―ッ」

と、一瞬コントとなったのであるが…

「1時間40分…」

「フェイト…」

と、すぐにお通夜のような空気になる。

「それでも…」

「それでも!」

「それでも…だな」

「うむ、行こう、あきらめる訳にはいかぬでござる!!」

「うむ!!」

「「「「「おうっ!!」」」」」

 

「…で、楓、ネギに治療を施す前に確認するが、私も戦力としてあてにされている、という認識でいいんだよな?」

「む?どうした千雨…ネギ坊主を除けばおぬしが我ら白き翼の最大戦力でござろうに」

「いやな?色々鑑みるに、ネギの魔素汚染の引き受けをするとガチバトルと言うか、限界突破で強化をする際に私自身がやばいんでね」

「なるほど、攻撃呪文の装填でござるな…その…ネギ坊主の魔素汚染、拙者たちでは引き受けられんのでござるか?」

「無理だ、私のシグヌム・エレベアでネギのマギア・エレベアに干渉してやっている治療法だからな」

「…で、あれば千雨は万全の態勢で戦えるようにしておいて欲しいでござる」

「わかった、じゃあその方向で出来る限りの治療はしてみるよ」

と言う事で私はネギに触れ、いくつかの術式を用いてネギに干渉、しないよりまし程度の治療を始めた。

「さて…後はお主達の処分でござるが…」

「やるか!?」

「うむ。先程のクーとの戦いで力量はわかった。デュナミス殿がリタイアした以上お主達は敵ではない。

時間もない、やるとなったら全力で潰させていただくでござる」

「なっ…」

「そのうえで、デュナミス殿には最上級の魔物相当の封印を受けて頂こう」

「ふっ…もう手は出さぬよ、不戦を強制契約してもいい、観劇させてくれないか?諸君らの足掻くさまを」

「…わかった、しかし…鵬法璽はこちらの用意したモノを使わせて頂く」

「慎重だな、くくく…よかろう」

という訳で、デュナミスへの鵬法璽での強制契約が終わった頃、私の施せる手もネギに全て施し終わった。

「おおーいっ無事かーッ」

「みなしゃーん」

「大変だーッ」

と、そこへ朝倉のゴーレムに乗ったカモと小夜がやってくる。

「カモ君!」

「さよさん!どうしたんですかー」

「こっちは一大事だ、作戦の変更が必要だぜ!そっちはどうだ?勝ったのか?

うおっピンピンしてんじゃねぇか、フェイトの取り巻きハーレムのお嬢ちゃん達」

「はぅあ」

「何だと?」

「って兄貴ぃいいいいぃ~~~ッ!?」

「ネギしぇんしぇい~!?」

…と、らちが明かないのでカモたちに状況を説明するのであった。

 

「ぬうぅぅっ最悪の展開だッ!!ここにきて兄貴がこんなことになるとはッ!!あのフェイトと唯一兄貴だけが互角に戦り合えたかもしれねぇってのに…!!」

「アスナは確かにフェイトに連れ去られたんだな?」

「は、はい、フェイトしゃんが指をかき鳴らすと消え失せて…どこに連れてかれたかはわからないそうで…」

「ぬう…だが確かにめげちゃいられねぇ、俺達だけで何とか…作戦だ、作戦を立てる必要がある、まずはポジティブに現状把握を…

そこのおっさん、デュミナスっつったか!?話に聞けば…あんた20年前の戦いからの唯一の生き残りでこの『完全なる世界』残党の頭脳…かつ計画立案者!

つまり、実質現トップってわけだな!?」

「まあ、概ね間違いではなかろう」

「曲がりなりにもそのアンタを行動不能たらしめたのはデカイ!!残る強敵はフェイトのみって訳だ!!」

「待ってください」

「む?」

「まだ私達の仲間の調が儀式のオペレータとしてお側にいるはずです」

「それだけか?残りの仲間は」

「えっ…その…あと一人…『墓所の主』と呼ばれる人物がいます」

「な…何者だそいつは?」

「わ…私も詳しくは…小柄で少女のようでもあり、老婆のようでもある不思議な人ですが…」

「まだそんな奴が…」

「いや、それでも数は少ないぜ、わずかに3人じゃねぇか」

カモのポジティブに、という言葉に乗ってそんなことを言う…ただ、まあ戦力的にはアレであるが。

「少数精鋭って訳だな、事実この人数で大計画を成功させつつあるしな」

「のどか、頼む」

と、私はのどかにデュナミスの読心を頼む。

「はっはい。デ、デュナミスさん、アスナさんと最後の鍵の在り処…その周囲の状況はどうなっていますか?」

「ふっ、君か、ミヤザキノドカ…やはりあの時消しておくべきだった。

だがその本で覗かれるのは不愉快だ、私から話してやる」

「えっ…」

「私を倒したサービスだ」

と、デュナミスは状況を説明した…それによると、アスナと最後の鍵はこの墓守り人の宮殿の上層祭壇にいるらしい。

「姐さんと最後の鍵…200mは離れてるみてぇだな」

「ってずいぶん親切じゃねぇか、おっさん」

罠を疑いたくなるほどに。

「今回ばかりは我々の勝ちだ諸君らがどうするかに興味があるだけさ」

「けっ、よしみんな集まってくれ!」

と、カモが呼び掛け、朝倉のゴーレムで別動隊も繋いで作戦会議が始まった。

前提として、ネギ無しではフェイトに勝てる可能性は限りなく低い、しかし戦う必要はなくアスナと最後の鍵さえ奪取できれば良い。そこで夏美のアーティファクトを活用する作戦が立案された。そしてそれを骨格に別動隊からも意見が出され…作戦計画が策定された。

概略は次の通り…夕映の観測の下、夏美のアーティファクトによってまずは限界まで近づく。そして茶々丸の砲撃による牽制、私がフェイトに襲い掛かり、その隙に楓がアスナを、まき絵がリボンで最後の鍵を奪取、のどかが最後の鍵を用いたリロケートで離脱、と言う寸法である。

「…さて、行くでござるか」

そう、楓が宣言した。

 

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