例えばこんな長谷川千雨の生きる道   作:紅シズク

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108 決戦編 第5話 足止め

闇呪紋の装填を、電子精霊を千の雷に差し替えて限界突破状態になった私は、楓の天狗の隠れ蓑で運ばれていた。

「よし、今だ」

と、天狗の隠れ蓑から出て、みんなと共に夏美に連なる列に加わった。

「…よし、そろったな、絶対手ぇ離すなや、いよいよ大詰めや。

ええな?ネギのヤローがダメな以上、俺達だけで何とかするしかない、ここまで来たからには覚悟決めてもらうで。

まだ1時間もある、焦らんでええゆっくり歩いて近づけるトコまで近づいて夏美姉ちゃんのステルスに限界が来た段階で最終作戦発動や。

…やれやれ、ま、無理ないな…気休めになるかわからんけど、奴らが俺らを殺すのは一応禁止されとるんやし、万一やられてもあのお気楽な夢の世界が待っとるだけや」

と、コタローが緊張をほぐす為にそんなことを言い出す。

「え」

「今、それでもいいかもって思ったでしょ」

「思ってないですッ!!!全然いくないですッ」

「そういう朝倉はどーゆー夢だったのぉッ?」

「ん~?私?私は…んふふ、ヒ・ミ・ツ♪」

「えー何ソレーっ!?」

「何、朝倉男?男なの?」

「そーゆーアンタはどーせお父さんでしょ」

「ユエさんの夢はどういう…?」

「ビーさんこそどういう夢を?」

そしてそれに乗って色恋話が始まる…ある意味、肝が太いな、オイ。

「何や何や~?お前らみんな色恋ネタかいなこれやから女は―」

「そ、そーゆーコタロー君はどーゆー夢だったんだよ?」

「俺か?俺はネギとか千雨姉ちゃんとかつえぇ奴らと修行三昧やな、正直今と変わらん。

ハイハイ、アホやっとらんと行くでぇ!時間ないっちゅーの」

「わかってるよ!」

「しっかりしてや、夏美姉ちゃんがポロっとそれ落としたら終わりやねんで」

「うるさいなあ」

「ほぐれたようでござるな」

「やるねー」

…とかやっていると接近する気配を感じる。

「っ!何か来る!」

飛来したそれはフェイトであった。

「…ッあ」

「離すな!!!」

「ひッ」

「皆も手ぇ離すな!!!」

そして、フェイトはカツカツと足音を立てて近づいてくる…

「あ…ッ、ひ…」

「跳べッ右やッ」

と、コタローの指示に従って右に跳躍すると直後、通路が細切れに刻まれた。

「きゃああ」

「わああっ」

「ひ…ふ…」

「…フム?」

「あ…」

フェイトが視線をそらした瞬間、緊張の糸が切れたのか、夏美が崩れ落ちる。

その時、夏美の帽子がふわりと浮き、夏美から離れ…気づかれかけたが、それを意地でコタローが口でキャッチした。

「ふぇ」

「…気のせいか、いや彼ならもはや隠れて近づくなどと言う真似はすまい」

フェイトはそう呟くと跳躍して再び定位置へと戻っていった。

「た、助かった…?」

「拙者が来たときのかすかな気配を気取られたようでござるな…」

「あっ…私…?」

「平気か?夏美姉ちゃん、よぉアーティファクトを離さんかったな!エライで!見直した!」

と、コタローが声をかけ、暫しやり取りをするが夏美は再起不可能のようである…無理もない。

「…わかった、大丈夫や!別の作戦を考える、夏美姉ちゃんはよぉやった!」

「さあ…っとなるとどうする?」

「少し遠いがここから攻めるでござる…いけるか?千雨」

「ああ…任せろ…とは言い難いが、おさえてみせるさ、フェイトの奴を」

正直、私がフェイトを制圧できている限り、他の面子は安全と言えるのである…まあそれが難しいから奪取組の直衛を連れてきているのだが。

「せやな、結局危険度は同じや」

「まき絵殿、ここから届くでござるか?」

「えっ。う、うーん」

「コタロー君!!」

「うぉっと、ビックリしたあ」

「だ…大丈夫って大丈夫じゃないよね、私…私がっ…私がここでがんばんなきゃ…ダ…ダメだよね」

と、夏美が泣きながら言う。

「…ま、正直、せやな。成功率は落ちるやろ…でもそこまではたのめん、気にすんな」

「…う、うん…わかった…やるよ」

「お、おい、大丈夫かいな」

夏美は立ち上がって言った。

「大丈夫だって…せっかくもらった主役だもん」

「ほ…上等!」

という訳で私たちは作戦計画通り、祭壇へと接近していった…そして祭壇手前、最後の階段の手前…

「…ここが限界です」

「…よし、作戦開始や」

そして、茶々丸に連絡を入れ、作戦開始と相成った。

 

「どうだい?」

「は…世界再編魔法発動まで30分を切りました…すべて順調ですフェイト様」

「下からの連絡は?」

「ありません」

「そう……」

「フェイト様?」

「…このまま…」

「ハ…?」

「このまま終わってしまうのなら少し…つまらないね」

「フェイト様…」

フェイトと調とやらの会話…そしてピピっという音が鳴る…始まった。

「何らかの巨大な力場が収束中!障壁を侵食!魔法…ではない…?魔力溜まりの遥か上空!上から来ます!」

そして、空飛び猫からの砲撃がフェイトを襲った。

「今や!」

とのコタローの叫びにしたがって、私は闇呪紋と障壁破壊・貫通の術式を流し込んだ断罪の剣でフェイトの胴を分かたんと振り切る。

「ぐっ…キミ…達風情にッ…!」

フェイトは奇襲にも拘らず後ろに飛んで致命傷は避け、同時に先の尖った石柱を無数に召喚する。

「させねぇ!」

 

拡散 白き雷

 

と、私は呪血紋により無詠唱で強化発動させた白き雷にて可能な限り石柱を破壊し、残りの処理は直衛に任せて前に出る。

「…想像以上にやるじゃねぇか!フェイト!!」

「ハセガワチサメ…君が…来るとはね…」

フェイトはそう答えながら私の剣戟を巧みに避けつつ後退していく。

「へっ…顔に書いてあるぜ、来たのがネギじゃなくて残念…ってな」

「その通り…君達風情に我々の計画が妨害されるなどあってはならないことだよ」

瞬間、フェイトから尖った石柱が沸き立ち、私…の残影を貫いた。

「それは悪いな、フェイト…悪いついでにもう少し私と踊ってくれッ!」

「冗談…ではないッ」

そう言いながらもフェイトは私を倒すのが状況改善の近道と判断したらしく、無数の黒い刃を召喚して襲ってくる。

「ノイマン・バベッジ・チューリング 来たれ雷精 風の精」

それを私は呪文詠唱しながらしのぎ、切り裂き、切り開いてフェイトの岩石の大剣と鍔迫り合いをする。

「雷を纏いて 吹きすさべ 南洋の嵐 雷の暴風」

そして発動した雷の暴風はフェイトに直撃したが…

「ちっ…想定以上に障壁の再展開も早いっ」

初手の奇襲で粗方破壊した筈の曼荼羅障壁は既に再展開され始めていた様子で、それによって大幅に軽減された私の魔法は大したダメージにはなっていないようだ。

「ならば…攻め続ける!」

「いい加減に…してくれないかな」

「やなこった!」

と、ちらりと一瞬、意識の一部を周囲に向けた…状況は完了しているはずなのに…なぜ跳ばない?まさか…私とフェイトの機動戦闘をのどかが捕捉しきれていない…?

「私はいい!行けっ!」

「で、でもー」

と、のどか…やはり私が問題だったようである。

「あとから合流するさ!逃げ足にゃ自信がある!」

そう叫んで私はフェイトとの戦闘に全神経を再び集中させた。

「これで終わりだよ」

刹那、フェイトは再び無数の尖った石柱を召喚し、それを私一人に殺到させた。

「でもねーと思うけどな 解放 千の雷」

それを私は取り込んでいた千の雷を解放して吹き飛ばす事で対応した…まあ、ある意味追い込まれたが。

「ノイマン・バベッジ・チューリング 契約により我に従え高殿の王 来れ巨神を滅ぼす」

「そうかい、じゃあおかわりだよ」

そう言ってフェイトは苛立ち気味に…皆が離脱したのだろう、アスナと最後の鍵と共に…三度、無数の尖った石柱を…先ほどより広範囲に分散するように召喚する。

「燃ゆる立つ雷霆 百重千重と重なりて 走れよ稲妻 千の雷」

 

魔力掌握 精霊の歌・雷と風と闇の六重奏+雷宮の調べ 三位一体の闇呪紋 増強装填

 

それが完了すると同時にこちらの再装填も完了し…後方に全力で跳んだ。

 

拡散 白き雷

 

そして焦点を外したことで密度が低下した、それでも致命となる無数の石柱を白き雷と断罪の剣でなんとかしのぎ切った。

「…で、置いて行かれたみたいだけれど君はどうするんだい?逃がしはしないよ?」

「そうさね…簡単に逃げられるとは思っちゃいない…けどなっ」

と、剣戟を再開する…が、ふとフェイトの左の瞳が色を変える…マズイッ

「石化の…邪眼か」

そして咄嗟に照射された光線を回避し、わずかに掠った髪の一部が一時、石化し、すぐに元に戻る…レジストできたようだがマトモに食らうとやばいな。

「出し惜しみは無しだ!」

そう、フェイトは怒り交りに叫んだ。

「それは光栄だな!」

時々虚空舞踏も混ぜながら目からビームを回避し続けながら詠唱を始めた。

「ノイマン・バベッジ・チューリング 影の地 統ぶる者スカサハの 我が手に授けん 三十の棘もつ愛しき槍を 雷の投擲 解放 千の雷 術式統合 雷神槍 巨神ころし」

詠唱完了直前、ひそかに張り巡らせた糸でフェイトを拘束する。

「っ!それはネギ君の、なぜ君がッ」

「一応、私は共同開発者なんでね…喰らいなっ」

と、私はフェイトに向けて巨神ころしを投擲し、それが曼荼羅障壁を貫通し、受け止められた事を確認した直後…

「千雷招来」

千の雷を炸裂させて…逃げた、それはもう一目散に…こうして私は離脱に成功した。

 

 

 

 




リロケートもそうだとは限りませんが、少なくともリライトは対象を指定してからでも(ラカンなら)避けられるようなので今回こー言う事にしました…そうしないとクウィントゥムとの接敵で千雨が足止めして楓の天狗の隠れ蓑で離脱という手がとれてしまいまして…アスナの奪還には成功しちゃうんですよね…と言うかそれを書きかけて続けられなくなってしまいまして…物語的にその面子が生存と言うか健在なのは問題ないけどアスナ奪還はちと拙いのです…コタローが足止め役出来るというのは別問題、最後の鍵再奪取のために楓と共に挑んでダウン的な流れで勘弁してください。
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