例えばこんな長谷川千雨の生きる道   作:紅シズク

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112 モラトリアム編 第2話 新たな日常

レーベンスシュルト城で修業と研究とをしつつ数日過ごした私はダイオラマ球を出てエヴァンジェリン邸に戻っていた。修行は魔力容量拡張と咸卦法をメインに、研究は自身と言う検体を利用してマギア・エレベアについてと火星緑化計画についてをメインと言う感じで。

「あ、千雨さん。千雨さんもいらしていたんですか?」

エヴァと話をしていたネギが私に声をかけてくる。

「ああ、マスターに呼び出されて土産話を…それとダイオラマ球で修業と研究だな」

「なるほど、さすがは千雨さんですね」

「ネギもマスターに土産話か?」

「それもありますが、火星緑化計画についても少々…」

と、ネギが言う。

「ふん、科学用語が大量に出てきた辺りから聞き流していたがな。ぼーや自身には興味はあるが、それ以上の事は知らんよ、私は」

「もーマスター…まあ、構いませんけれども」

「で、いいんちょに雪広コンツェルンとの繋ぎをしてもらうって言っていた件は?」

「はい、それが…委員長さんと仮契約してしまって…」

「あーやっぱそうなったのか」

「ええ…ぜひ巻き込んでくれとおっしゃられまして…その後は千雨さん達の予想通りに」

「おう、すごかったんだぜ、兄貴とあやかお嬢ちゃんの仮契約」

そう言ってチャチャゼロと飲んでいたカモが仮契約の様子を説明してくれた。

「うわぁ…それは予想外っつうか…仮契約が逆流しかけるって…」

その内容は…まあ酷かった。主にいいんちょの愛の力が。

「でも、悪いな…政治・経済的な折衝を丸投げしちまって」

「いえ、こちらこそ皆さんの先生としての役割を放り投げているうえに、千雨さんとハカセさんには軌道エレベーター計画を含めた地球側からの緑化計画…後期計画の草案作りをお願いする事になってしまっていますし」

「まあ、魔法世界側からの緑化…前期計画のたたき台はほぼお前が考えたんだし、気にすんな。もっとも、私らも宇宙開発は専門じゃねぇから計画が本格始動したら総点検前提のたたき台にすぎねぇけどな」

そう言って笑う…機密でなければコネ総動員して麻帆良の英知を集結させるんだが。

「それでも、です。おかげで僕も大分楽になっています」

「…楽になってなお、殺人的なスケジュールになりそうだったがな、総督と話した感じでは」

「はい…プロジェクトとして動き出すまでは特にそうですね…完全な世界計画解決の熱狂が冷めないうちに魔法世界をまとめてしまうべきだという総督の意見に乗ったものですからね」

「…アスナを犠牲にする羽目になった事、気に病むなよ?それで無理してお前まで潰れたら元も子もねぇんだからな?プロジェクトの顔役だけはお前じゃないと多分ダメだからな」

「ええ、総督にも言われました…それで大分過密なスケジュールになっちゃいましたが…大丈夫ですよ、僕はもう…マスターと同じ、不死の存在ですから」

そう、ネギは自嘲気味に笑った。

 

 

 

「そんなことがあったんですかー」

その夜、私は聡美とお互いに今日の出来事を情報交換していた。

「で、ですねーこっちは、茶々丸の装甲用の魔法技術を流用した複合素材のデータ集めて来たんですがー多分、俗にいう軌道エレベーターじゃなくてー冗談抜きに宇宙までそびえたつ塔を立てられます」

「は?どういう意味だ?」

「いえ、文字通りの意味ですー地盤などの諸問題はありますがー魔法的処理を施した複合素材を用いればー静止衛星から垂らす方式でなく、理論上は文字通り宇宙まで届く塔を建てられますーまあ、高さ100km超えと言う意味ですので外気圏まで行けるかという意味では怪しいですがー」

「マジかー」

「マジですーもちろん、従来の軌道エレベーターの建材としての要件もよゆーでクリアーしていますねー」

「そうなると、下部は従来型建造物にして対流圏・成層圏は気象条件に耐える、そこから先は静止衛星軌道から垂らした軌道エレベーターに乗り換えて宇宙へ…みたいな事も?」

「できますねー専門ではないのでたぶんですがーたたき台として大風呂敷広げてみる分には構わないかとー」

「じゃあ、予定通りの赤道メガフロート案を組み上げたらそっちも考えてみようか」

「はいー」

と、いう事で私たちは素人なりに組んでみた設計・配置図をシミュレーションにかけては手直しし、何とか笑いものにならない程度のたたき台に仕上げていくのであった。

 

 

 

「フム…これからどうなるかはともかく、初動としては順調なようだね」

現実世界側でネギとフェイト、おまけにコタローに私と聡美で情報交換を進めていた。

「そうだね、フェイト…千雨さん、ハカセさん、引き続き計画案の策定お願いしますね」

「折衝関係は手伝わんからな、まあそれくらいは任せておけ」

「俺も付き添い位しかできへんけどなー荒事やったら手伝えんねんけど」

「そうだね、まあ君は聞き手役くらいこなしてくれれば十分だよ、コタロー」

若干皮肉に聞こえるような調子でフェイトが言った。

「それはそうと、ネギ君。僕は役割的に手が空くからね…君が落ち着くまで教師役を務めようと思うんだがどうだろうか」

「それは…助かるけれども、大丈夫?できるの?」

「必要知識はインストールできるからね、問題なくこなせるよ。それに知識や技能のインストールだけでは足りない部分というモノの理解にも役立ちそうだ」

「げ、てめえがネギの代理で担任やるのかよ…」

思わずそう言っていた。

「不満かい?ハセガワチサメ」

「担任不在よりはマシ…かもしれねぇけどさ、直接戦った面子は一部とはいえ、世界を懸けて戦った相手が担任ってのは割り切れないものがあるかもだぜ?」

「私は構いませんがー気にする方もいるでしょうねー」

「とにかく、僕には決められないから学園長に相談してみようか」

と言う事で、フェイトの学園赴任フラグが立ったのだった。

 

 

 

雪広コンツェルンと気づけば巻き込むことになっていた那波重工とに提供する装甲板の試料を作成し、色々な計画・仕様をネギ達と相談し、また修業と研究をしながら過ごして、そんな新たな日常になじんできた頃…遂にその日がやってきた。

「ん…来たな」

大人と子供の背丈の足音が1つずつ、教室のドアの前で止まる。それは多分源先生とフェイトのモノである。そして扉が開き、フェイトの姿が見えると白き翼の面々が次々とアデアットし、得物をフェイトに向けた。いちおー和解というかネギの仲間になったって忘れてねぇか?

「ホラホラ皆さん、席について!何を突然コスプレ大会など開いてるんですか。紹介しますよ、こちらはフェイト・アーウェルンクスさん!海外などにも出張する機会が増えてご多忙のネギ先生の代わりとして臨時にあなた達のクラスを受け持つことになった子供先生です!」

「え…」

「よろしく」

「えぇ~~~っ!?」

一応、秘密にしておいた事もあり、夏休みに魔法世界を訪れた面々から驚きの声が上がるのであった。

そこからは、まあ我らが3-Aと言うか、事情を知らない連中とあまり気にしない面子がいつものノリでフェイトを質問攻めにしたり、フェイトがそれに淡々と答えていたりといつもの風景が広がっていた。そして肝心の授業と担任の仕事だが…まあ淡々としていた…が。

「そうそう、次回から皆の理解度をはかるために小テストを実施する事にしているからそのつもりで…出来が悪ければ放課後に補習だからね」

そう告げて教室を去っていった直後、教室は抗議の声が溢れていた…私にはどーでもいいことだが。

 

 

 

「え?提供した試料に問題があった?」

その日の放課後、聡美の研究室でフェイトと情報交換をしているとそんな感じの事を言われた。

「ああ、物性自体は素晴らしいとの事だが…強度があり過ぎて施工が困難らしい…何とかならないかい?」

「んー我々の技術力でも加工に多少は手間取るレベルの逸品ですからねー大規模建造物の構造材に使用するには頑張り過ぎましたかー」

「そのようだね、加えて…魔法処理も必要量の調達には簡素化が必要じゃないかなと僕は思っている」

「えーそんなに難しい処理をしたつもりはないんだけれどもなぁ…まあ大規模化には多少改良と言うか研究が必要にせよ、一般魔法使いでもできるだろ?」

フェイトの言葉に私は反論を述べる。

「…一般魔法使いのレベルが魔法学校卒業生になっていないかい?魔法学校を全課程修了で卒業となると、実は結構なエリートだからね?」

「そーいうものなんですかー?」

「そういうモノなんだ、という訳でそっちの研究も頼みたい」

「…了解、やってみるよ…理想はあっちに技術移転して向こうで量産化してもらう事なんだけどなぁ…」

「魔法技術の流出についてはまだ指針がまとまっていないからね…大変だろうけれども頑張ってほしい」

「また別荘に泊まり込みですねー千雨さん」

そう、聡美がどこか嬉しそうに言った。

「そうだなぁ…修行も趣味の研究もしたいのに時間が足らねぇ…」

「まあ、あんまり無理はしないように…プロジェクトの中枢がネギ君だとしたら技術開発の要は君たち二人なんだからね…君達がつぶれたらネギ君の負担が倍になるだけでは済まない」

そう、私たちはフェイトに釘を刺されるのであった。

 

「…で、この徳用魔力缶とやらはなんだい?」

構造材についての話も終わりスティック飲料(フェイトは案の定コーヒー、私達は今日は紅茶)を飲みながら話をしていると茶々丸への魔力供給用の試作品を目ざとく見つけてフェイトが問うた。

「それは高濃度の魔力を封じ込めたボンベですねー封入後の魔力濃度維持に苦労していましてー今ですと規定濃度充填して使用に足る濃度を維持できるのが1週間と言った所ですねー」

「なるほど…君達の娘だというあのロボット…絡繰茶々丸用と言った所か…コレも魔法と科学の融合の産物かい?」

「そうですねーどちらかと言うと科学メインのアプローチで作成した品ですねー符術やポーションを解析して理論的応用はしていますが技術的には新規開発ですよー」

「よければ技術資料をみせてもらっても?」

「かまいませんよー」

そう言って聡美は戸棚からファイルを取り出し、フェイトに渡した。

「なるほど…コレは凄いね、科学の力というモノは…いや、この場合は君達がすごいのかな」

「科学は集合知だからな…私達が最後の仕上げをしたにせよ、先人たちの積み重ねがあってこそさ」

「それは学問全般に言える事だね…魔法は属人的な所も大きいけれども…所でここなんだけれど…」

そうして、魔力缶について、話が始まるのであった。

 

「なかなか有意義な時間だった、楽しかったよ」

暫くの会話の後、そう告げてフェイトは研究室から去っていった。

「…フェイトさんって意外と気さくな方ですよねー」

「まーアレでもフェイトガールズには単なる命の恩人云々以上に慕われていたみたいだし…わりとネギと似た所はあるよな、研究について話している時は特に」

「ええー頭もよいですしー魔力缶の改良も進みそうですー」

そう話ながら、私はフェイトを新たな日常の一部として受け入れている事に気づくのであった。

 

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