例えばこんな長谷川千雨の生きる道   作:紅シズク

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113 モラトリアム編 第3話 刹那の苦悩とアスナの代償

「ねーちうちゃーん取材させてよー」

最近、私は朝倉にまとわりつかれる事が増えていた。

「何度ねだられても取材拒否だ、あとちう呼びヤメイ…つうか大体は知っているだろうに」

「えー火星の緑化をして魔法世界の崩壊を阻止するってのはわかっているけど、具体的に何やっているのかは教えてもらってないじゃん」

「…で、白き翼の情報班たる朝倉はどう読んでいるんだ?ある程度読める事もあるだろう?」

そう、朝倉を煽ると少し考えるようなしぐさを見せてからこう答えた。

「んー多分だけれども、ネギ君とゲーデル総督が渉外担当、千雨ちゃんとハカセが技術担当で組織作りの段階って所じゃないかな、委員長と那波の動きから考えると雪広コンツェルンと那波重工は巻き込んでいるとは読んでいるよ」

「十分わかってんじゃねーか」

大方理解している朝倉の読みに私はそう答えた。

「えーこんなん、白き翼の面々ならすぐにわかる事じゃん、私が欲しいのはネギ君やアスナに千雨ちゃんが秘密にしている計画の実際についてのネタなんだってば―私達、仲間じゃん?千雨ちゃん」

「確かに白き翼の仲間だが、仲間にも秘密にしなきゃならん事はあるんだよ…ぶっちゃけ、お前なら守秘義務契約結んで記録係みたいな事を任せてもいいんだが…」

「え!マジ!?」

私の妥協案に嬉しそうに朝倉が答える…決めるのはネギだが。

「…まあ、ネギ達がOK出したらな」

「伝記形式でもアリっちゃアリだね、よーし、ネギ君におねだりしちゃおっと。そしたら千雨ちゃんも取材受けてくれるよね」

「時々ならな…」

「了解っ、それじゃあネギ君を説得してまた取材に来るね」

朝倉はそういうとやっと私から離れていった。

「お疲れ様ですーところであんな安請け合いしてよかったんですかぁー?」

と、そばにいた聡美が声をかけてくる。

「ああ…まあ実質ネギに丸投げしただけだし、守秘義務契約があれば話しても大丈夫なやつだからな…いつか火星緑化計画…ブルーマーズ計画が歴史になった時の為に記録係が欲しいのは事実だし」

「それもそうですねー」

そんなことを話しながら私達はマクダウェル邸、レーベンスシュルト城にある私の魔法使いとしてのアトリエに向かっていった…構造材の魔法処理について研究するために。

 

 

 

「…で、朝倉がネギについているのは私があおったっつうか丸投げした結果だとして、茶々丸はどうしたんだ?」

数日後、ネギ達との構造材についての会合に現れた茶々丸と朝倉にそんな言葉をかけた。

「いえ…千雨さん、不眠不休で働けるロボの身体を活かして、秘書役としてネギ先生のお手伝いをさせて頂こうと…ダメでしょうか?」

そう、不安そうに茶々丸が問うてきた。

「いや、お前がそうしたいならそうするといいよ、な?聡美」

「はいー茶々丸がそう望むのであれば構わないと思いますよー」

「あ…ありがとうございます!」

茶々丸はそう、私達に感謝の言葉を述べるのであった。

 

「わぁーこんな短期間で物性の改良と魔法処理の簡素化を完成されるなんてさすがは千雨さんとハカセさんですね」

新しい構造材用の試料とその技術資料を確認したネギはそう言って私達を褒めた。

「まあ、改良って言ったって実質はダウングレードだからな…魔法処理の簡素化と相まって割と簡単だったよ」

「ええ、アップグレードと簡素化の両立でしたら大分時間を頂くところでしたがー難易度としてはそう高いものではなかったですー」

実際問題、魔法処理の簡素化に伴う物性の低下を調整したくらいでそう難しい仕事でもなかった。

「あまり謙遜が過ぎると嫌味だよ、長谷川千雨、葉加瀬聡美。一般的な魔法研究チームなら最低限の形にするのにも3か月はかかっただろう、それをダイオラマ球を併用したとはいえ二人で一週間もかからずにこのレベルに仕上げてくれた二人には感謝しかないよ、誇るといい」

そう、フェイトも私達の成果を褒めてくれた。

 

構造材の話が終わった所で、ネギがラカンのおっさんから預かってきた私へのお土産…メガロ饅頭(塩味)を開けて茶菓子にしつつ計画の草案を確認していた。

「今の所、こんな所だね」

「ああ、フェイト…千雨さんとハカセさんもありがとうございました、まだまだやるべきことはありますが火急の仕事は終わりという事で大丈夫そうですね」

「ああ…これだけ計画が固まっていれば総理大臣との会談はなんとかこなせるだろう」

「後は技術移転の準備に長期開発計画の消化と何か技術的問題が起きた時の対処ですねー」

「いやーしかし委員長のアーティファクトは凄いねぇ…一国の宰相とノーアポで面会できるとか」

朝倉がどこか呆れるようにそう言った。まあ私も同感ではあるが。

 

 

 

それから数日、総理大臣との会談も無事に終わった後、比較的のんびりとした日々を私たちは過ごしていた…そんなある日の事。

「あー?将来のこと?いきなりどうしたんだ、刹那…木乃香と喧嘩でもしたか?」

突然、将来について相談があると言ってきた刹那に私はそう答えていた。

「あ、いやそうではなくて…千雨やハカセは将来のことをどう考えているのかな、と…参考にしたくて」

「なるほど…まあ、私たちは決まってるわな」

「ええ」

そう、私と聡美は顔を見合わせて答える。

「「科学に身を捧げる」」

「ア…うん」

少し引き気味に刹那が応えた。

「まー人外としての生をどーするかはともかく、人としての生を謳歌している間は科学者として、魔法学者として研究の道に一生を捧げるつもりだよ。人として誤魔化せる寿命の先は…そん時考えるが研究の道を離れることはないと思う」

「そーですねーできれば人外としての生も科学のために尽くしたいのですがーそれを人類が良しとしてくれるかは別問題ですからねー」

「とはいっても、中学生でここまでキマってるのは例外だと思っていいし、まずは勉強だろ?刹那の場合」

「ええー知識はあって困る物ではないですしー木乃香さんが医療系のマギステル・マギを目指されるのであればそれを補佐する為の知識や技能を得るのも必要かとー」

「補佐…ですか?」

聡美の言葉に疑問符を浮かべる刹那であった。

「木乃香は魔法医になりたいんだろう?だったらお前は看護師の真似事ができれば便利だろう、ってこった」

「ほかにもー清潔な真水を用意したり、ベッドやシーツを消毒したり、麻酔を施す陰陽術や技術なんかもあれば便利そうですねー」

「ま、具体的にどんな技術が必要かは木乃香と話し合うんだな…あいつのやりたい事に合わせる必要があるからな」

「な、なるほど…だが、それは流れに身を任せているだけではないのだろうか」

「欲しい未来が流れの先にあるならそれに乗るのも立派な選択だぜ?刹那」

「はいー特に刹那さんは木乃香さんのパートナーでありたいというのが第一でしょう?」

「…それも、そうだな…千雨、ハカセ、参考になった、ありがとう」

そう言っても刹那は去っていった。

 

その後、レーベンスシュルト城で聡美と共に修行とマギア・エレベアの研究に励んでいるとエヴァがネギ、アスナ、刹那を連れてやってきた。

「千雨、励んでいる様だな、結構結構。ぼーやに稽古をつける、お前らも見学していろ」

そう宣言すると城の外郭に移動してネギとエヴァが湖面上で立ち会う。

「では、久しぶりに手合わせといくか」

「はいっ」

「ククク…あのラカンと互角に渡り合い、始まりの魔法使いの使徒どもをねじふせたというその力、見せてもらおう」

「はーい、二人準備オッケー?いっくよーせーの」

「…嬉しいぞぼーや、手加減なく力を出せるというのはな」

そう、うれしそうに嗤うマスター…

「え…ちょ、アスナさんちょっと待っ…」

そして開始を待ってくれと言うネギ…装填先にした方が良いがそれはまあ甘えと言う奴である。

「スタート!」

無慈悲に下される開始の合図、そしてネギはきれいに吹っ飛んでいった。

「先ッ…し…死んッ?」

「ネギーッ!?」

このありさまである。

「あーエヴァさん相手だと事前装填してないと間に合いませんかー」

「だなぁ…」

そうこう言っていると瓦礫に埋もれたネギが瓦礫を吹き飛ばして復活してくる。

「やれやれ、その程度か?正直、期待ハズレだぞ…ぼーや?」

エヴァの失望した、と言わんばかりの言葉にネギが応える。

「僕の力は付け焼き刃なんです!わかるでしょう!全開のマスターに準備なしじゃ付き合えませんよ!段取りってもんがあるんですっ!!」

そういうとネギは千の雷を解放し、装填して雷天大壮状態となってエヴァと向き合う。

「出た!先生の闇の魔法!」

「ふん…ぼーや、くだらぬものに手を染めたものだ。若い頃の日記を勝手に覗かれたようなむずがゆさだよ」

と、エヴァが応えた時、二つの気配が現れる…気配を消して近づいてきていたようである。

「う~ん、スゴイねーネギ君は。まさかエヴァ君の闇の魔法をものにするとは」

「長!」

一人は西の長

「キティも内心では思いもよらぬ後継者を得て小躍りするほどうれしいといったところでしょう、認めないでしょうけど」

「ヘンタイ!」

もう一人はクウネル…そして気になって周囲を探るともう一つ悪戯っぽく隠れている気配とまた別に2つの気配があった。

雷速瞬動でエヴァに迫るネギ、しかし先行雷を受けてエヴァはひじを置き、カウンターの構えを取り、対応する。

「フ…礼だ、見せてやろう」

そういうとエヴァは千年氷華らしき魔法を解放、掌握しようとする。それに対してネギはそうはさせまいとぶつかっていった…が、エヴァは掌握を成功して術式兵装・氷の女王を身に纏った。

「おお…あれはまさかエヴァさんの…」

「うむ…ババアの本家、闇の魔法だな。こりゃいいモン見れたぜ、来た甲斐あったな」

そう言ったのは隠れていた気配…ジャック・ラカンである。

「「えっ…ラッ」」

まさかのおっさんの登場に刹那とアスナの二人は驚きの声を上げた。

「よう、おっさん、ようこそ麻帆良へ」

「おう」

「ラララ、ラカンさん!?千雨もそんな冷静に…と言うか何で麻帆良にいらっしゃるんですか!?」

「いやあ、ちょっと観光っつーかなんつーかな」

「じゃなくて純粋魔法世界人はこちらに来れないハズでは…!」

「ああ、この身体な、作りモンだ」

「つ…作り物?」

「ここにもココネってのがいんだろ?それより見ろ、闇の魔法同士ってのはなかなか見れねぇぞ」

おっさんがそう促すとネギが二重装填によって雷天双壮状態になっているのが見えた。

「これが…」

「はい!先生の最強モードですね」

「…うむ」

「こ…こっちは何か立っているだけで周りが凍ってってるみたいだけど」

うむ、エヴァのは領域支配型とでもいうべきタイプであるのでそりゃあそうなる。

「わが技法を使いこなしているようだな、千雨が継ぐかもしれぬとは思っていたが、まさかぼーやが、とはな」

まー私も継いだっちゃあ継いだのではあるが主力にはまだできていない…と言うか人間でいる間は主力にする気はない。

そうしていると、ついにエヴァとネギとが激突する…ぱっと見よく分からないがよく見ているとエヴァの領域支配による魔法連打をネギが何とか雷速加速で対応していると言った所だろうか。

「おほほ、すげぇすげぇ、何やってんだかぱっと見わかんねぇくらいだな。おう、どうだ、てめぇら、後輩の出来はよ?」

そう、ラカンのおっさんは近づいてきていた残り二つの気配…高畑先生とゲーデル総督に声をかけた。

「あ」

「いやあ、いずれ抜かれるとは思っていたけどこれほど気持ちよく抜かれちゃうとはね」

「何を言っている、タカミチ。まだまだ付け焼き刃とは彼の言うとおり。この程度で満足してもらっては困るよ」

「た…高畑先生…」

「ゲーデル総督まで…仕事はいいので?」

「今日は同窓会ができるな」

「まあ、今のネギ君を最強クラスたらしめている特性はあの技ではありません」

「そうですねぇ我々でも今の彼を倒しきれるかどうか」

「え…」

総督とクウネルの会話に刹那が驚きの声を上げる…ああ、ちゃんと知らなかったっけか、刹那は。

と、思っていると、エヴァの爪がネギの脇腹を切り裂いた。

「あ…」

刹那がそんな声を上げるが、その傷はあっという間に塞がっていってしまった。

「傷がみるみる修復していく…!では、やはりネギ先生は…」

「気づいていたかい、刹那君」

「でっ、ではやはり…!しっ、しかしそんな…今のネギ先生は……エヴァンジェリンさんと同じ…?」

「そう…あの戦いで一度死んだネギ君はマギア・エレベアに生かされ、かのエヴァンジェリンと同じバケモノとして生まれ変わったのです」

まあ、死んでいたか、と言うと少し微妙な所であるがあんまり大事な所ではないので口は挟まない。

「うっ嘘です、そんな馬鹿なこと…!」

「いいえ、確かですその特性…吸血鬼の不老不死。もっとも、不死はキティほど完全ではないし、不老であるかもまだ何年か見ないと確定できませんが」

「し、しかしあまりに話が突飛すぎます。過去に多くの術者が目指して届かなかった不老不死なのに」

まー私も目指しているし…勝算は十二分にあるのだが。と言うか、マギア・エレベアの特性上、呑まれて生き延びれば必然的にそうなる。

「いえ、これは必然なのです。キティのマギア・エレベアは不死である彼女自身の肉体と魂から編み出された技法です。そして彼女を不死とする実験を行ったのが…かの『始まりの魔法使い』。さらに魔法世界の創造主である『始まりの魔法使い』の娘と伝えられているのがオスティア王国の開祖アマテル…ネギ君はその末裔です。おそらく…ネギ君がオスティアの末裔でなければ彼はあそこで死んでいたでしょう。これはネギ君のみに開かれていた道だったのです…まあ、そこのお嬢さんは特殊体質に別のアプローチを合わせて道をこじ開けるつもりのようですが」

そう言ってクウネルが私を見る。

「ま、千雨嬢ちゃんの事は置いといて、坊主の方は世界の危機と引き換えだ、死ぬよりゃよかったんじゃねぇか」

「で…では…それがネギ先生の代償…!」

「代償?いいえ、とんでもない。ギフトですよ」

そうゲーデル総督が刹那の呟きに応えて続ける。

「不老不死!!これが男として生きるのにアドバンテージでなくてなんだと言うのです!過去どれほどの王が!指導者が求めたことか!暗殺不可!後継者問題なし!これはデカイ!反対派の封殺にコレ以上の好条件はありません。ネギ君が始めようとしているのは100年の大事業です!ならばその100年!絶対の王として見事に計画完遂までの面倒を見てもらいましょう!!」

「お・前・は、もっと言い方があるだろう、昔からお前は…」

「本当ッの事だろうがッ取り繕ってどうするっ」

と、高畑先生と喧嘩を始めてしまったが。とはいえ、不死の王とそれに付き従う三人の不死者(私、聡美、フェイト)という構図が将来のブルーマーズ計画に見えるのだが大丈夫なんだろうか。

「まあ、確かに良かったのかも、あのバカにはピッタリよ」

「アスナさん」

「今までいつ怪我するか、死なないかって心配だったけど殺しても死なないってんだから」

「ご存じだったのですか?アスナさん」

「大怪我が治ったトコ見ちゃったからね、あとで本人に聞いたわ。大丈夫、人間じゃないって言っても、それを言ったらエヴァちゃんやザジさんや茶々丸さんだって同じだし、そんなにヒドイことじゃないよ、大丈夫……ただ結局、私…あいつがあっち側に行っちゃうのを止められなかった。それだけが…ちょっと悔しい。……あいつさ、よく魔法薬で大人の姿になってたけど、あいつがホントにエヴァちゃんと同じになったんなら、もう普通に成長してあの姿になる事はないんだね」

そうこうしていると、エヴァの物量により徐々にずれていた均衡が完全に崩れてネギが氷壁に縫い付けられてしまった。

「さすがに敵わねぇか?」

そんなおっさんの言葉に対し、手すりにアスナが飛び乗った。

「!アスナさん?」

「いってくる!刹那さん、千雨ちゃん、ハカセちゃん」

「ハッハイ」

「んー?なんだ」

「はいはいー?」

「ネギのこと頼んだよ、それでもやっぱり心配だから」

「えっ…」

「おう」

「できる限りはー」

「ま…アイツ人間じゃなくなってもついてきてくれる子は多そうだけどねっ」

そう言ってアスナは展望台から飛び降りた。

「く…」

「ふふ…見事だった、私は満足だぞ、ぼーや。だが、まあ、それもここまで…終わりだ!」

そんな言葉と共に放たれたエヴァの止めの一撃…そこにアスナが割って入り、打ち消す。

「っほう…」

「アスナさん…」

「アスナさん」

「えっへへ、一人なら無理でも私達二人ならなんかいけそうって気がしない?最後にちょっと試してみたくってね。OK?エヴァちゃん」

そう言ってアスナは不敵に笑った。

「フン…よかろう、神楽坂明日菜。相手をしてやる、手向けだ」

エヴァはそう答えると魔力を解放し、周囲を凍てつかせてしまった。

「気を付けてください!」

「な…何とかなるかもってのは気のせいだったかなーって」

「フ…氷圏内は全て私の支配域だ」

そう言ってエヴァが手を動かすとネギとアスナの足元から氷柱が沸き、二人を襲う。

「ちょ、ちょ…」

そう言うアスナの背後をエヴァがとるが、ネギが割って入り反撃…するもエヴァはネギをアスナごと凍てつく氷柩に閉じ込める。

「フ…ぬ?」

しかし、まあそれはアスナの能力もあり、あっという間に脱出されてしまう。

「ちっ」

エヴァは距離を取ると氷の槍を無数に召喚して二人に投擲するが、アスナがそれを打ち消して、ネギがエヴァに接近戦を挑む。

「ぬうっ」

「ほほう、これは…」

「なかなかハマってんな。ババアの術式兵装は氷結呪圏内なら上級以下の氷属性魔法を無詠唱無制限にブッ放し放題つー無敵寸前の反則技だ。現にぼーずはさっきその物量に押し切られそうになってたが嬢ちゃんの剣がそれを全部なしにしている」

「結果、二人の肉弾戦ですがネギ君の雷速加速が経験差を埋めているというところですね」

「あ…あの…」

先ほどから深刻な顔をしていた刹那がおずおずと口を開いた。

「なんです?」

「ネ…ネギ先生の代償がアレなら…その…アスナさんの代償と言うのは…?」

「それは…」

私が口を開こうとするのをクウネルが制し、私に任せておきなさい、と言わんばかりに私に微笑み、刹那に答えた。

「知ってもどうにもならない話というのもあります。あなたは何故それを知りたいのです、桜崎刹那」

「そ…それは…アスナさんは私の友人…いえ、アスナさんは私のしっ…親友です、どんな話だろうと知っておきたい、聞かせてください」

「……わかりました、お話ししましょう」

そう、クウネルは微笑んで答えた。

「親友であるあなたにはつらい話です、覚悟は?」

「ハ…ハイ」

戦う三人を一瞥してクウネルが口を開く。

「次の春にあなた達は中学を卒業して高校生になるんでしたね?」

「え…ええ」

「残念ながら…彼女はあなた達と共に卒業式を迎えることはできません。それどころか…あなたはもう二度と『神楽坂明日菜』とはお会いになれないでしょう」

「え…」

背後でエヴァが最上級魔法凍る世界…だと思う、さすがに終わる世界ではないだろう…を詠唱し、それをネギが吸収する間、刹那はたっぷりと硬直していた…無理もない。

「い…今、何て…」

「神楽坂明日菜こと黄昏の姫御子、アスナ・ウェスペリーナ・テオタナシア・エンテオフュシアは…魔法世界救済計画の礎…言葉どおりの『礎』として墓守り人の宮殿にて100年の眠りにつくことになります。『神楽坂明日菜』はアスナ姫の代理人格です。彼女の自我は…100年の年月に耐えられず摩耗消滅してしまうでしょう」

「そんな…」

固まる刹那…そしてそんな背後でぶつかり合うエヴァとネギとアスナ…

「あっちは決着…かね」

ネギの突撃を迎撃するエヴァを眺めつつそう呟く…が。

「ふぇ…ふぁ…ハックシュン」

…ネギがくしゃみをして武装解除魔法が暴発、全てを霧散させた。衣服込みで…台無しである。

 

 

 

「いててて…ん?ぶッ」

「おや」

「…!」

愉快な体勢…あえて詳細描写は避ける…になっている三人、そしてお約束が始まった。

「なんでそこでクシャミが出るのよー!?」

「いや、そのっマスターの呪文装填したらなんか超寒くてーっ」

「ん?」

そんなドタバタ劇に乱入するモノがいた…刹那である。

「え…え…」

そして困惑するアスナに歩み寄るとビンタをかました。

「あ…せ…刹那さん?」

「何で…何で…何で言ってくれなかったんですか…」

そう、涙と共に刹那が告げた。

「何で…黙ってたんです!?私達…友達じゃなかったんですか!?アスナさんが消えてしまうなんてそんなの…ヒドすぎます!」

「ごめん…ごめんね、刹那さん。でも大丈夫、大丈夫だから」

「何がっ何が大丈夫なんですかっクウネルさんだってどうしようもないとっ…!

……に、にげ…逃げましょう」

「え…」

「逃げるんです!!お嬢様とネギ先生と4人で!誰も敵いません!私が全て切り伏せます!!私が守りますから!!だからッ…アスナさん…」

「刹那さん…ありがとう…でもダメだよ。全部思い出したんだ、私のためにナギさんや…たくさんの人たちがしてくれたこと。だから私、行かなきゃ…あの人達のために」

「だからってアスナさんには関係ない話じゃないですか!アスナさん一人が犠牲になるなんて。ナギさんの願いだってアスナ姫に幸せになってもらいたいってことだったハズです!」

「ちょ、ちょっと待って刹那さん、勘違いしないで!」

「え…」

「大丈夫、私、消える気なんかないから!また刹那さんにも絶対会える!私を信じて!」

出た。アスナの無根拠な自信である。まあ、本当にやり遂げそうと思わせる謎の力はあるのだが。

「な…ま…また…あなたはそんなメチャクチャ…根拠なんてないんでしょう!」

「いや…まーそれはー」

「100年ですよ!?たとえ生きてても私もお嬢様もすごいお婆ちゃんで…」

 

「いやー青春ですねぇ…お二人はまざらなくていいんですか?」

刹那とアスナの会話を見守っているとクウネルが私達に声をかけてきた。

「イヤ…私はアスナを見捨てる側だ…到底まじれねぇよ」

聡美も私の言葉を無言で首肯する。

「そうですか?あの議論の場での言動から、何としても救いたいという情熱は感じられましたが」

「…情熱だけで救えればどれだけ良い事か…結局、私は魔法世界と引き換えにアスナを見捨てたんだ…違うか?」

「…そうですね、ですがその罪はむしろ私達大人の罪です、ね?」

と、クウネルに視線を向けられたゲーデル総督が気まずそうにする。

「いや、私の罪だ。私が魔法世界の維持方法なんて思いついたからだ」

「ですが、そうでなければ魔法世界は完全なる世界として魔法世界は封じられていたかもしれないのですよ?」

「だからといって…その為に仲間の一人が…アスナが犠牲になった事に変わりはない…違うか?」

「千雨さん…」

「…まあ、貴女がそうしたいというのであればそういう事にしましょう…あなたにはその権利がある…ですが背負ったものに押しつぶされては元も子もありませんよ」

「わかっているさ…」

そうして下の会話に意識を戻すとちょうど私達の名前が出る所だった。

 

「それに100年後に目を覚ましてもさ、きっとネギだっているし、エヴァちゃんもいるんでしょ?場合によっては千雨ちゃんとハカセも!」

「アスナ…さん…」

「……フン…会いになど行ってはやらんぞ、千雨たちは知らんがな」

「なッ…何でそんな風に笑っているんですか、おっオカシイですよ、アスナさん…ッ」

「刹那さん…あーあー…こんなに泣くなんて刹那さんらしくない…でも…私のことであの刹那さんがこんなに泣いてくれるなんて…嬉しいよ」

そう言ってアスナは泣く刹那を抱きしめた。

「なかなか良い友人を持ったようですね、我らが姫は」

そう微笑むゲーデル総督とは対照的に高畑先生は難しい顔をして沈黙を保っていた。

「あ…当たり前じゃないですかっバカですかあなたはっ」

「へへ…このかに自慢できちゃうね」

「バカッ、バカバカ…ッ」

「へへへ…」

そして刹那とアスナは抱き締め合うのであった…と、ここで終われば単純に感動話で終われたのであるが…

「って、ちょっと刹那さん?あのーそろそろ服着たいんだけど」

と、落ちがついた。

「…マスターとアスナ、ついでにネギの着替え用意してくれ」

私はそう、従者人形に頼むのであった。

 

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