例えばこんな長谷川千雨の生きる道   作:紅シズク

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118 モラトリアム編 第7話 モラトリアムの終わり

アスナが100年の眠りについた日の午後…私は3-Aの面子…全員魔法バレしているので実質関係者である…を集めて上映会を行った…アスナが残した…というか、私がアスナに残させたビデオレターの。せめて、仲間には自分で別れを告げろ、別れを告げなくてもいいが事情を説明する役を自分でやれ、と言って。

皆の反応は…それはもう酷いものではあった。アスナと恐らくもう会えないのだとわかり、ほぼ全員が泣き出して…どうして言ってくれなかったのだと悲嘆にくれた。

「せめてみんなとはいつも通りの日常を過ごしたかったから、だとよ、言わなかった理由はな」

「千雨ちゃん…知っていたの?」

「…詳しくは言えんが、アスナが100年の眠りについた責任の一端は私にある…アスナが言っていた世界一つを…魔法世界を救うための計画、発案者は私ってことになっている、極秘だけれどな」

「…本当…なのね?」

美砂が、私を睨みつけながら言った。

「ああ」

 

パシィン

 

直後、私は思いっきりひっぱたかれた。

「っ…あんたの…あんたのせいでっ…」

「ち、違うんです柿崎さん!千雨の、先生たちの計画ではアスナさんが犠牲になる筈ではなかったんです!ただ、時間が足りなくて、どうしようもなくて…それでアスナさんがっ…」

罵倒されかけた私を刹那が庇う…が、庇い方が下手である。

「ッ!桜咲っあんたコイツを庇うわけ!?」

「…柿崎さん、落ち着いて…詳しい事情は私も聞いています。千雨さんの露悪的な言い方がよろしくないですが、千雨さん自身は悪くありません」

「っ!委員長まで!あんた達アスナの親友でしょ!なのに…もう知らないッ」

そう言って美砂が教室を飛び出して行き…円と桜子が後を追った…その後、委員長が残った皆に説明を行い、それで私達に責を負わせるのは酷であるとの総意は頂戴し、美砂達も後に同意見となり、謝罪まで貰ってしまったのだが…やはり、わずかな亀裂はクラスに生じてしまった…ように私は感じる…私のミスである。

そうして迎えたアスナ不在の卒業式…その打ち上げは3-Aらしいバカ騒ぎではあったもののどこか影を纏ったものであった。そして、卒業時に告白の答えをと言っていた夕映とノドカはネギに本契約を乞うて…本格的に計画参入を決めたのであった。

 

春休み…予定通り委員長のインドの別荘に招待されたクラス一同…そんな中、ネギと私とハカセと茶々丸と朝倉、それに委員長は宇宙開発に関する国際会議の会場にやってきていた。そして、色々とコネ…主にメガロメセンブリア経由での各国魔法協会の…を駆使した結果、そこには日本の総理大臣などの首脳…多くの国は科学技術担当閣僚や担当省庁のお偉いさんが代理出席…が来賓として招かれて参加する割と例年にない大規模な会議となっていた。

そしてその場である全体講演が予定されており…私たちはそれに参加する事になっていた。

「それでは、次の講演に移りたいと思います、次の講演は連続講演となっており、総合演題は『火星テラフォーミング計画試案』、前半は『軌道エレベータ建造計画試案と実現にあたっての技術的諸問題の検討』講演者はDr.サトミ・ハカセ、後半は『火星開発計画シミュレーション』講演者はDr.チサメ・ハセガワ、よろしくお願いいたします」

座長に呼ばれ、私達は演台へと進み出る…こればかりは完全に魔法使いで学位も科学界での実績もないネギにゃ任せられない…そう言う私達も、この5カ月で共に関係する学術論文をばらまいたとはいえ、本来格が足りていないのではあるが…まあ、ネギよりかはましである。

…場内、主にアジア系の参加者の顔がこわばる…そりゃそうだ、他人種からは童顔の若者にも見えるかもしれないが、アジア人から見ればどーみてもティーンエイジャーの私達である。

「それでは慣例に従いまして簡単ですが演者のご略歴を紹介させて頂きます。葉加瀬博士は初等学校4年次より現所属の麻帆良大学工学部のロボット工学研究室に飛び級で所属し人型ロボットの開発に尽力されました。そしてその派生から材料工学・ジェット推進などの関連技術を手広く研究、各分野で目覚ましい成果を上げておられます。そして今月中等学校卒業と同時に博士号を取得しております」

その紹介に場がざわつくる…そりゃあそうだ、こんな場で、それもそーいう企画ではなくガチで中学生に講演させるとか正気の沙汰ではないからだ、本来は。

「続きまして、長谷川博士のご紹介もさせて頂きます。長谷川博士も初等学校4年次より現所属の麻帆良大学工学部のロボット工学研究室に飛び級で所属し人型ロボットの開発に尽力、主に人工知能を担当されました。そしてその派生からシミュレーション担当で多くの共同研究をこなすと共に自身でも数々のコンピュータ・シミュレーション分野での論文を出されております。そして同様に今月中等学校卒業と同時に博士号を取得しております」

…そして、場は完全に凍った。何のつもりだ、と。いつからこの権威ある国際会議は中学生に大それたタイトルで講演をさせるようになったのだ、と…誰かが口を開くより早く、聡美が綺麗なクイーンイングリッシュで口を開いた。

「ご過分なご紹介、ありがとうございます。ご紹介にあずかりました葉加瀬です。本日は連続講演『火星テラフォーミング計画試案』の前半といたしまして、『軌道エレベータ建造計画試案と実現にあたっての諸問題検討』というタイトルで講演をさせて頂きます」

その堂々とした口調に会場の空気は一変し、とりあえずは話を聞いてみよう、という空気になった…コレでもロボット工学関係の国際学会で似た経験は済ませているので無問題…とまではいかないが慣れてはいる。

 

そして約2時間後…質疑応答込みで1時間ずつの講演である…には会場内に私達をティーンエイジャーと侮るものは誰もいなくなっていた。同時に、私の講演の最後に付け加えた『knowledge of magi(マギの知識)』の活用の示唆は各国のお偉方をざわつかせた。と、同時に雪広コンツェルン・那波重工の内諾を宣言し、この講演は夢想などではなく私達は本気であると言う事をその場の皆に示した…予定では、日本帰還後、雪広コンツェルンと那波重工が共同で火星開発計画の為の組織…火星開拓準備機構の立ち上げを記者会見でぶち上げる事になっている。

その後の質疑応答…技術面や国際法上の諸問題を問われたが、それは想定質問の範囲であり、私達の覚悟を示すものになった。ただ…火星の原生物調査関係では非常に答えに窮し、開発の本格化の前に出来る限りの調査をする、と答えるしかなかったのではあるが…

 

 

 

「お疲れ様でした、千雨さん、ハカセさん。見事な講演でしたよ」

「いやーぶち上げたねぇ…予定通りだけれどもさ。私もこのあと少し加筆して麻帆良に記事送らないとね」

「さすがですわ、ハカセさん、千雨さん…それでこそ私のプロジェクトの要たる研究者にふさわしいですわよ」

と、講演後の休憩時間に口々にネギ達が誉め言葉を送ってくれる。

「まー予定通りとはいえやっちゃいましたねーコレで私達も世界が注目する科学者…モラトリアムもお終いですかー」

「そうだな…アスナが眠りについたんだ、アスナの分も私達は頑張らにゃならん」

「お二人とも…本当にスイマセン、矢面に立たせるような事をして…本当なら僕が矢面に立てればよかったのですが…」

「しゃーねーだろ?私達がこうすることで地球側の計画の立ち上がりは確実に早くなるんだから」

「そーですねー、弁舌と頭の出来という意味ではネギ先生でも良かったのですがー表の博士号が最低条件ですからねーこの学会の講演者資格ーもっとも、あなたと共に行くと決めていますし、これくらいはー」

なお、実際に講演をするには各国の宇宙開発機関(NASAとかJAXAとか)の推薦がいる。この推薦は日本の総理大臣に面会に行った時にネギが取った。

「…本当にごめんなさい、あなた達の青春を頂く事になってしまい…」

「気にすんな、ブルーマーズ計画の計画書に署名した身だ…身を粉にする覚悟はしたよ」

「それにー元々私達は科学の使徒ですからーこれくらいは屁でもありませんよー」

謝罪するネギに私と聡美はそう答えて微笑む。

「さ、いつまでも身内でくっちゃぺってないで社交の時間だ、周りに集まっている連中の相手をするぞ?」

その後、周囲に集まってきていた学者や政府高官の応対をすると共に、バンケットやエクスカーションにも出席して私達は社交に努めた。

そして、学会が終わり、クラスの連中とのインド卒業旅行に合流、日本へと帰還し…私達の中学生活は終わりを告げた。

 

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