例えばこんな長谷川千雨の生きる道   作:紅シズク

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人生編
119 人生編 第1話 チサメandハカセのアトリエ


進学は規模の大きなクラス替えというのが麻帆良の常識…であるハズなのだが、麻帆良学園本校女子高等部に進学した私達元3-Aの面々の殆ど…親の意向とやらで悲しそうに聖ウルスラに進学した美空と秘書業に専念する事になった茶々丸以外…は一つのクラスに纏められていた。

考えてみればそりゃあそうである、元々問題児をまとめて収容していたに近いのに、そこに魔法バレという要素が加わったのだから…という訳で、私たちは改めて本校女子高等部1-Aとして編成された、当然担任は魔法先生である。エヴァは…ネギと私と聡美とで呪いを再解析してみた結果、麻帆良学園内のどの学校に通うかは後から追加されていた為か比較的簡単に…といってもダイオラマ球内部で1週間かかったが…書き換えられる事が判明したので一緒に進学という事になった。

尚、寮の部屋も多少シャッフルされたものの、学園長に火星開発の研究を進めるにあたって有用だからとしておいたおねだりが通って聡美と2人部屋である。え?恋人宣言しているけれどいいの?マジで?とは思ったが学園側がいいって言っているんだから良い事にしておく。

そうして始まった高校生活…も1カ月過ぎたゴールデンウイークのある日の事、スポンサー殿…委員長に聡美と二人で自宅に呼び出され、お茶をごちそうになっていた。

「さて…そろそろ本題に入りますわね、千雨さん、ハカセさん」

そう言って委員長が指を鳴らすと使用人が書類を持って現れる。

「これは…私達の先月の提出した研究成果だな?」

そこには私達が4月の内に投稿した論文と出願した特許と火星開拓準備機構へ提出した秘密研究の成果がまとめられていた。

「そのようですねー」

「ええ、そして…こちらが魔法世界に提出された貴女方の研究成果になります」

そういうと、今度は魔法世界側で発表した研究成果や特許に類するものが出てきた。

「あ、うん…ってなんでそれを委員長が!?」

「我が雪広コンツェルンの調査力を舐めないで頂きたいですわ…まあ火星開拓に協力するということで新たに拡張された情報網ではありますけれども…コレを見て何か思う事はありません?」

「イヤ…別に?」

「特には…?」

「いや、おかしいでしょう、この量!?貴女方がいくら天才でも時間的に不可能な量の成果ですわよ!?授業に出席されていることは承知していますし、残りの時間を考えたら超一流の研究者の基準でも、いつ寝ていますの?と聞くレベルですらない位に!」

そう言って委員長は机をバンッと叩いた。

「あーそーいう事ですかぁー」

「ダイオラマ球使っているからなぁ…」

「ダイオラマ球…ですの?」

そう言って委員長は首を傾げた。

「外の1時間がその中では1日になる魔法のアイテムだよ、端的にいえば竜宮城みたいなやつ」

「…なるほど、で、それをあなた方はどの程度お使いに?」

「んー用途で分けずに平均して4日分くらいかな、私は」

「私は千雨さんよりは多少短いですがー先月に限って言えば平均3日分を切る事はないかとー」

「まあ、この前のウェールズ行き前は平均6-7日分くらい使っていたからそれに比べれば少ないな」

「…一応聞いておきますが、週に、ですの?」

「…いや、日に」

雰囲気的に怒られるんだろうなーという予感をしつつ私はそう答えた。

「日に、ってそんなのあっという間にお婆ちゃんじゃないですか、使い過ぎですわ!」

「でも、私達のアトリエ…魔法使いとしての研究室、その中の城に間借りしているし…」

「そのアトリエとやらはダイオラマ球とやらの中でないといけませんの!?」

「イヤ…別にMustではないかな…」

「では、私が代わりの建物を用意して差し上げますし、機材なんかも無利子で資金をお貸しします、ですからダイオラマ球とやらの乱用はおやめになってください!」

「いや、なんで委員長がそんなこと決める権利が!?」

「アスナさんを理由に貴女達が無茶をしているからです!」

「それは…」

急に出てきたアスナの名に私は答えに窮する…なぜなら比較的過密なスケジュールの理由という意味では図星ではあるからである、無茶という自覚はないが。研究や修行自体は楽しいし。

「貴女方がアスナさんの事に責任を感じている事はわかっています、ですが私の調べた限りでは貴女方はむしろアスナさんを守ろうとしていらしたのでは?それとも、アスナさんがあなた方の事を責めた事が?」

「…ねぇよ…でも…私の責任だ、私の思いつきが切っ掛けでアスナを100年の眠りにつかせちまったんだ」

「では、千雨さん、あなたは魔法世界が完全なる世界に沈めばよかった、とそうおっしゃるので?」

「いや、そういう事じゃない。そういう事じゃない、違うんだ、委員長」

「何が違うとおっしゃるんですの、千雨さんのおっしゃっているのはそういう事にしか聞こえませんわ!」

「それでも!私は!アスナを、アスナを犠牲になんてしたくなかった!」

「あくまでもアスナさんの事はご自身に責任がある…と?」

「…全て、ではなくとも一部は、確実に…」

「でしたら、その責任を果たせばいいじゃありませんの」

「だからこうして!」

「未来を、命を削るような真似をして贖罪している、と?」

「え…あ…」

そうして気づく、傍から見ると、どう見えているのか、ということに…実際は不老不死化のあて…というか賭けるに値するだけの可能性があるので気軽に寿命を削っているだけなのだが。

「そんな事をしても、アスナさんは喜びません…むしろ100年後に再会する事をこそ願っている筈ですわ」

かといって、委員長に自分が人外化しようとしている事を白状するわけにもいかず…

「…分かったよ、乱用は控える。でも、一部の修行や実験は外でするわけにはいかないから多少は使う」

「どの程度ですの?」

「…外にアトリエを用意して貰えるならば平常時で週に2-3日程度…かな、後予算は計算してみないとわからないけれども、建物の魔法的改修費込みで9桁行くと思う」

「それでも…いえ、魔法使いは長生きするのでしたね…わかりました、ではそのように致しましょう。資金は死ぬまでに返して頂ければ結構ですので」

「いや待て、高い機材も買えるようにと吹っ掛けたけど億だぞ、億。それを気軽に…」

「貴女達にはそれだけの資金を投資するに値するだけの才能があると思っているからこそですわ」

そう言って、委員長は微笑んだ。

こうして、私は委員長のお節介でダイオラマ球の使用を制限する約束を結ばされてしまうと共に、高校生にして億単位の借金を背負う事まで決定するのであった…いやまあ、こちら側の条件がべらぼうにいいのはわかっているけれども。

 

「良かったんですかぁー?千雨さん」

委員長宅からの帰り道、聡美がそう問うて来た。

「んー?ダイオラマ球の方か?まあ、マギア・エレベアの研究と中でしかできない修行に絞ればなんとかなるだろ…アスナを理由に命を削っている様に見えるとまで言われたら無視はできねぇよ」

「それはそうですけれども…諸々の計画に影響出ません?」

「出なくはないけれども…精神取り込み型幻想空間スクロールで裏の研究の研究時間は確保するよ、表の諸々は…まあ要点だけ抑えて後は世界中から招聘されるであろう人材に期待…って所じゃないかな」

「アーやっぱりそういう抜け道考えてる…」

「…?寿命削らなきゃいいんだろ?」

「まーいいですけれどね…私は。委員長さんにバレないようにしてくださいよー?」

そんな会話をしながら私達は麻帆良へと帰還していった。

 

そして後日、学園側というか関東魔法協会の許可を取り、麻帆良内部に許される範囲で要塞化した拠点…卒業後に二人で住む事も考慮してある…を整備する事になった…委員長から借りた金で。

尚、委員長の言葉に甘えて、土地建物、当面の施設維持費込々で総額9桁の金額を費やして割と良い機材をそろえたのでネギが自身の研究用にと入り浸る事となり、委員長が悔しそうにしていた…まあ、後にネギも同じ条件で委員長から融資を受けて自身のアトリエ第一号…京都のナギから相続した奴は除く…を開設するのではあるが。

 

 

 

そんなこんなで麻帆良祭…私的な研究費に費やす為に大会荒らしと洒落込む…どころか、私達は賞金を支払う側になっていた…超が統合したまほら武道大会のせいである。とは言っても支払うのは、私たちが経営する超包子という組織であるし、五月が超から管理を引き継いでいるので私達はお手伝い…監査だとか幹部会だとかだが…なお、少しずつ飲食関連以外の部分は独立させていったりしているがまだまだ未整理である。

本年も無差別級の大会として開催されたまほら武道大会…今年は超のやったような電子的措置は行わずに単に規則としての撮影禁止とした上で意識誘導の結界を張って対処する事とし、『魔法関係者は』無詠唱で行える身体強化系のみ可とした。一部、一般生徒の気弾は野放しとする事になったが…まあ藪蛇という言葉もあるので放置である。

総合すると、『武器有りでのウルティマホラ』みたいなものだと思えばよい。つまり、私であれば、ルール上は咸卦の呪法状態までアリで鉄扇ないし木剣装備で出場となる…なお、クーは全力で戦えて、かつ事前にアデアットしておけば神珍鉄自在棍もアリである。そして本大会にはコタローと、コタローに誘われたネギとフェイトも出場し、それなりに盛り上がった…結果?当然のようにクーの優勝である。

 

 

 

「ここが千雨ちゃんとハカセの愛の巣ね!」

夏休み…完成した私達のアトリエのお披露目会をする事になり、アトリエを訪れたハルナの最初の台詞がこれである。

「マテや、ハルナ」

「え?違った?」

「ここはアトリエだよ、私達の魔法学者としての研究所!」

「それはわかっているって。でも高校卒業したら二人でここで暮らすんでしょ?」

「火星開拓準備機構のお仕事次第ですがー一応はその予定ですねー」

「ほら、やっぱり!」

そう、ハルナはドヤ顔で行った。

 

「わぁ…すごい書斎ですね…」

「こちらも書斎の様ですよ?」

ノドカと夕映が一階の向かい合わせの扉…書斎への扉を開いて言う。

「ああ、それはこっちが私の書斎で…」

「こっちが私の書斎ですよー今はまだ本棚がほとんど空からですけれどもー」

「成程、確かにお二人の場合はそれぞれに必要ですね」

 

「ここは応接室…いえ会議室でしょうか、小さな給湯室付きのようですが」

茶々丸が言った。

「ああ、主にいつもの面子で会議とか打ち合わせをする用にな、一応応接室でもある」

「おや、僕たち用かい?」

と、フェイト。

「ええーメンバーが増えても良い様に少し広めにしてありますがー」

普段は無用の長物となりかねないが、まあせっかくなので作っておいた…プロジェクターを大画面テレビの代わりとかいう使い方もできるが。

 

「2階は生活スペースだな、家具はまだ何も入れてないけれど」

「おーさすがに広いねぇ…ってアレ?この間取り…個室が3つ?」

「ええ、千雨さんの部屋とハカセさんの部屋と寝室だそうですわよ」

「…やっぱ愛の巣じゃん」

「うっせー」

「ちなみにー寝室は千雨さん設計の強力な魔法的守護が施してあって簡単なシェルターにもなるんですよー」

 

「では、いよいよ本命の研究設備ですわよ」

なぜか、委員長の先導で地下室への階段を下りていくと左右に2つずつ計4つの小部屋があった。

「おろ?この部屋と向かいの部屋は空?」

「流石に欲しい機器全部買ったら桁一つ繰り上がるからな、もっと稼げるようになるか研究費獲得して装置を追加する予定だ」

「こっちには不思議な機械があります」

「あっ、これって!」

とネギが興奮した様子でその部屋を覗き込む。そりゃあ割と高価な魔素関係の測定機器だからな。

「魔法世界の大学でも大抵はいくつかの研究室で共同所有するような機器だからな、ネギが興奮するのも無理はない」

「…これ、1台で億行くんじゃなかったかい?」

「そうだね、フェイト、維持費も年間百万位はかかる筈…でもすごい!メルディアナにも数台しかなかったのに!」

なお、恐らくその理由は価格の割に必要頻度が低いからである…エヴァが持っていたのもかなり原始的なもっと手間のかかるタイプであるし…ちなみに、麻帆良にはエヴァ所有の城に固定されてあるものを除けばこの系統の測定装置は一台しかなく、利用状態も飽和気味らしかったので買った。学園長に交渉して依頼分析を引き受ける代わりに維持費に充足する予定の報酬を貰う話も進んでいる。

もう一部屋で数百万から数千万円する機器をいくつか並べてある光景でひと騒ぎした後、研究室本体の部屋に移った。

「さあ、いよいよ大本命ですわ…千雨さんかハカセさん、よろしくお願いします」

そう、委員長に言われて魔力パターン認証の扉の鍵を開いて皆を中に入れる。

「うわぁ…メルディアナの各研究室よりもすごい設備ですよ、コレ」

「よくわからないのですが、それほどですか?」

一部の驚く組と大半の首をかしげる組に分かれ、後者の代表として刹那が問うた。

「君にはわからないかもしれないけれど、確かにこれはすごい…各機材は手堅いレベルに抑えてあるけれども大抵の魔法分野の研究はこの研究室で出来そうに思えるね…それに科学系統の機器もまじっている様だ…」

「それは私のですねー科学寄りの研究は大学でさせて頂いていますがー魔法よりの科学まじりの研究はお城のアトリエでしていましたのでー」

「まあ、大魔法使いたるエヴァの城に間借りしてたアトリエの代替だからな…がんばった、というか委員長の財力に甘えて大金借りて整備した」

「私もよくはわかりませんが、明石教授に機器のリストを見て頂いた所、特別な機器を要する一部分野を除けば大体の研究はこの部屋で出来るそうですわよ」

「そうですね、分析機器と言い、この部屋と言い、時々お借りしたいくらいですよ」

「んー?別に構わんぞ?入り浸るなら維持費と消耗品費の分担してもらうけど」

「本当ですか!是非!」

私の言葉にネギはそう言って瞳を輝かせるのであった。

 




莫大な借金を背負った千雨さん達。もっとも、特許とかで返済するあてはないわけではないというか計画が本格始動すればあっという間に返せるし、委員長側も私的なお願いと称して割のいい研究やらなんやらの仕事を割り振って無理せずに借金返済してもらうつもりだった。
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