例えばこんな長谷川千雨の生きる道   作:紅シズク

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失禁表現があります


12 進路選択編 第4話 悪魔の囁き

寮で結成式(と、言う名のどんちゃん騒ぎ)をした次の日、

 

別荘内での訓練の後、結成式の場では言えなかった事をエヴァ…もといマスターに報告していた。

 

「…で、達人クラスとはいえ、曲がりなりにも一般人のクーフェイに負けた上、

 

格上だと認識した長瀬 楓と腹の探り合いをして、にらみ合いにびびってあわや戦闘になりかけた…と?」

 

不機嫌そうにマスターが言う。

 

「はい」

 

「弟子の恥は師たる私の恥だ、お仕置きの上、一から鍛えなおしてやる!と、言いたいところだが…

 

丁度良い機会だから私とお前の立場…いや関係を整理しておこうか」

 

そういってマスター・・・エヴァは神妙な顔をする。

 

「まず、第一の関係として、私とお前らはギブアンドテイクの『契約』関係だ。

 

知識に財貨を添え、私は茶々丸を得た。

 

また、第二の関係として私達は『相互に師弟』であると言えよう。

 

私は学問としての魔法の師であり、同時に科学の生徒である。

 

加えて私達は『共同研究者』でもあり、研究設備の融通なんかもしているな」

 

一呼吸置いてエヴァンジェリンが続ける

 

「さて、ならば私が貴様に稽古をつけているのはいかなる関係によるものだ?

 

はじめは茶々丸を得るための対価、従者としての戦い方の実習だった。

 

が、今は私の研鑽と茶々丸の調整のついでに…ああ、一応友好的な関係を結んでいる者への贈り物とも言えるか。

 

どちらにしても私の戯れと好意…義務や権利が生じるものではない。

 

まあ、乗り掛かった船だからな、よほど私を失望させることがなければ、ある程度のきりがつくまでは面倒を見てやろう。

 

『授業料』の味も気に入っているからな」

 

エヴァが私の首筋をみてニヤリとわらう。

 

「貴様の学者としての才能は認めよう、科学の事は専門外だが、私はお前を師と認める。

 

また、魔法の方に関しては既に一人前・・・かはともかく学者と呼ばれるに足ると言えようか。

 

発想力、論理的思考力、観察力…それぞれ単体は突出しているわけではないが、だがそれがかみ合ってうまく回っているな。

 

武の才能も天才と呼ぶには足りぬが、素晴らしい。あの程度の鍛錬で今のレベルに達する事ができるものは早々いまい。

 

気の才能…いや鍛錬の機会にも恵まれ、魔力の方も魔力量こそ純粋魔法使いを目指すならば不満が残るレベルだが、

回復速度は並み以上、得意属性はないが苦手属性も無し、術式構築のセンスも悪くない…

 

学徒の道をあきらめ、かつ茨の道を突き進めば『もしかすれば』完全な状態の私にすら届くやもしれん。

 

逆に、戦いの道を現在の力量の維持程度に抑え、その才能を学問に捧げるのであれば

 

科学、魔法、双方で歴史に名を刻む事ができる可能性がある…と、私は評価している。

 

が、貴様は当然、万能ではない。ましてや四方八方に手を伸ばして『本物』を相手にできるレベルの才能ではない」

 

すっとエヴァは目を細めて続ける

 

「そもそも力を求めるのは何故だ?

 

貴様の実力は既に『表』のヤクザ程度一蹴できるし、

 

『裏』でも平均的な魔法生徒や戦闘を専門としない魔法教師どもならばお前の頭があれば対抗出来るだろう。

 

貴様の生きがいは知の探求だったはず…で、貴様はどう『したい』んだ?

 

いや、どう『なりたい』んだと聞くべきだな、長谷川千雨?」

 

エヴァはギロリと私を睨みつける。

 

「私は…私は……」

 

そこからうまく言葉を紡げない。

 

「ふん、やはり答えられんか…その理由程度の事は自分でもわかっているだろうな?

 

本来なら貴様のような子供にそこまで求めるのは酷かも知れん…が私は許さん。

 

貴様らは私が才能を認め、対等の契約者とし、かつ私が師とも仰ぐ人間だ。

 

ハカセは既に科学に魂をささげたと公言しているし、超 鈴音も確固たる目的があってここ麻帆良にいる。

 

どちらも私に言わせれば『青二才』だが、現時点でアレならば上出来だ。

 

…それに対して千雨、いや長谷川千雨、貴様はどうだ?」

 

「…流されるままに目の前の選択肢から答えたい選択肢だけにこたえ、目の前にある欲しいものに手を伸ばしてきた…」

 

私は今まで流されて生きてきた。

 

目の前の選択肢だけを見て『マシ』だと思うモノを選択し、『欲しい』と思うモノに手を伸ばしてきた。

 

最終的に『どうなりたいか』なんて考えたことがなかった。

 

きっと今までのように聡美や超と研究して、エヴァと修行して、仲間たちと馬鹿やって…

 

そんな風にしか考えたことがなかった。

 

エヴァがふん、と鼻を鳴らしたかと思うと続ける。

 

「安心したぞ、貴様を買いかぶりすぎていたか…とな。

 

自覚があるのであれば一カ月時間をやる、5月の連休が始まる前に答えをだせ。

 

それまでは現状維持で稽古もつけてやる。」

 

私はエヴァの…いや、マスターの言葉にただうなずくしかなかった。

 

「さて、では今週分の『授業料』を徴収するとしようか、千雨?」

 

マスターが獲物を前にしたような瞳で私を見つめる。

 

「…痛くしないでくれよ…」

 

それに対してシャツの袖をまくりあげ、二の腕を露出させ、差し出す。

 

「…そうだ、仕置きと相談料も兼ねておこうか。」

 

そう言うが早いか糸が私を拘束した。

 

「なっ」

 

「何、腑抜けた答えを用意してきた場合の末路を垣間見せておいてやろうと思ってな。

 

千雨、座れ」

 

そう言ってエヴァは私を(動かないと糸が肉に食い込むようにして強制的に)ベッドに座らせ、私と目線を会わせる。

 

「エヴァ…?」

 

「『食事』には雰囲気も大切だ、と言うことだ。わかるな、千雨」

 

エヴァが『獲物』の反応を楽しもうとしている事を理解する。

 

「では…味あわせて貰おうか」

 

マスターの唇が私の首筋に触れ、血管を探る様に暖かいものが皮膚をなでる。

 

「んっ…」

 

暫くすると良い場所を見つけたのか、尖ったモノが触れた。

 

雰囲気にのまれ、恐怖から気で防御してしまう。

 

直後、エヴァの牙が私の皮膚を強く押すが、食い破るには至らない。

 

あ…やっちまった。

 

そう思っていると髪に何かが触れる。

 

それはエヴァの手で、『大丈夫だ、私に身を委ねろ』とでも言いたげに私を撫でる。

 

それに従って徐々に力を抜く、エヴァに…マスターに血を差し出す為に。

 

優しく触れた牙・・・鈍い痛みと流れ出る感覚と吸われる感覚を感じる。

 

少しするとマスターは首筋から口を外す。

 

やけに早い。何時もならもっと吸う筈だ。

 

もはや嗅ぎ慣れた鉄の匂いが鼻に届く。

 

エヴァは何時ものように流れ出る血液を舌でなめとり…治癒魔法をかけ…てくれない。

 

「ただ無味乾燥に飲むよりもはるかにこちらの方が『旨い』

 

さらに羞恥、恐怖、背徳…そう言った感情が与える味の違いを楽しめるのも良い」

 

マスターが私の瞳を見つめ、優しげに、かついじめっ子の様に微笑む。

 

「今日は楽しませて貰おう…」

 

それはまるで悪魔の囁きに聞こえた…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すまん、やり過ぎた」

 

気付くと私はベッドに寝ており、エヴァにそう謝罪されてた。

 

状況が飲み込めず、記憶をたどる…

 

そして私は布団を引っ付かんでそのまま丸くなる。

 

エヴァの顔を見れない。

 

きっと今の私は茹でダコ状態だ。

 

「あー取りあえず出てきて薬を飲め。

 

前倒しで下僕になりたくはないだろう?」

 

何があったか、の半分はその言葉で語られる。

 

興が乗ったマスターに魔力を注がれて私はいま半吸血鬼状態にある、

 

それがマスターの言う『やり過ぎた』事の全てだったら良かったんだがな…

 

そう思いながらマスターから吸血鬼化の中和薬を受け取り、飲み干す。

 

相変わらず酷い味だ。

 

「失礼します、千雨様の服のクリーニングが終了いたしました」

 

魔法人形のメイドが部屋に入って来た。

 

「おや、早いな」

 

「はい、血液と異なり尿は簡単に洗浄できますので」

 

…と、言うことだ。

 

失禁するまでエヴァに虐められたんだよ。

 

「…まあ、機嫌をなおせ。千雨も昨日はあれだけ喜んでいたじゃないか」

 

「そうだな、喜んでただろうよ、早々に眷族化されてたからな。

 

あんだけ愛すべきマスターが楽しそうなら大喜びして当然だ」

 

「そうか、それは何よりだ」

 

「皮肉だよ!ってお仕置きで私が喜んでいいのかよ!

 

うぅ…もう嫁に行けない」

 

「安心しろ、その場合は私が下僕として引き取ってやる」

 

「余計安心できねぇよ!それ!」

 

気付けばエヴァとそんな馬鹿な漫才を始めていた。

 

「こほん、まあ、とにかくあまり心配はしていないが…

 

万一、あまりにも腑抜けた答えを持って来た場合はあれよりも手酷く辱しめ、血袋として飽くまで飼い、最期は吸い尽くす。

 

胆に銘ぜよ、長谷川千雨」

 

私はただ蒼白な顔で頷いた。

 

「それと…貴様が欲しがっていた書を用意した」

 

服を持って来たのとは別のメイドが一冊の分厚く真新しい本を盆にのせて持ってくる。

 

『アルティメットスキル』

 

それがその本の題名だった。

 

そう、これは究極技法と呼ばれる咸卦法についての書だ

 

「私の蔵書を写本させた。

 

理論と応用、双方に役立つだろう、受けとれ」

 

思い付いたある研究テーマで咸卦法についての理論を調べたいとエヴァにお願いしていたのだ。

 

「あー代金はどうすれば?」

 

「吸いすぎた分だ、少し多いがとっておけ」

 

「…ならありがたく貰うよエヴァ、ありがとう」

 

「ふん…貴様の答え次第では本当に下僕にするからな」

 

その言葉は確かに本気なのだろうが、同時に照れ隠しである事も私は理解した。

 

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