局長就任早々の理事会で機構内の科学者相手に『科学的魔法解析概論』と魔法の存在を拡散して良いと許可を取った後、私、聡美、ネギ、茶々丸、コタロー、フェイトは組織再編と魔法教育についての相談をしていた。
「とりあえず、研究者連中相手に『科学的魔法解析概論』を配布するのは確定として、後はどうする?」
「警備部としては、俺達レベルとまでは無理にせよ魔法騎士団員クラスには育てたいなぁ」
「それは厳しいだろうね、魔法戦闘にソコソコ才能がある人物を選抜して編成しているからこそ、魔法騎士団は魔法騎士団としての強さを誇るのだから…魔法科学融合武装で武装させれば話は別だが機構の研究開発力をそちらに回す余力も武装生産の予算も今は手が回らないよ…でも、ハカセ君の強化服だったか、アレを安価に量産できるなら生存性と身体能力補助の面で悪くはないと思う」
「あーアレは超さんの未来技術の流用が入っていますので直接量産は勘弁いただきたいですねー今度、宇宙服やパワードスーツの研究をしているグループに助言しておきますのでその技術を基に警備部員用の制服を開発しましょう」
「ふむ…ではその方向で開発してみようか」
「せやったら俺らや魔法協会からの出向人員が動きやすいように再配置して、銃を装備できる国に配属されている連中に対障壁弾の配布、あと選抜人員に魔法戦闘の訓練…位やな、当分は…よっしゃ、早速、魔力や気の才能あるやつ探さなあかんな…予算がつくんならいずれ宇宙艦隊とかも作りたいけどな」
そう、コタローが嬉しそうに言う。
「いずれはコルベットやフリゲートクラス中心とした警備艦隊は自前で持ちたいけれど大分先の話だな」
「話がそれましたがー魔法教育と言ってもー正規教育で一人前の魔法使いになるのに7年かかるんですよねー?私は変則的な習得をしていますけれどもー」
「アレは一般教育込みだし、研究者としては『科学的魔法解析概論』に加えて各自関連分野の魔法理論を習得してもらった方が良くないか?魔法学者になって欲しいんであって、魔法使いになってもらう必要はないんだし」
「それもそうですね、でしたら魔法概論的なテキストを作成して魔法の研究分野を紹介、その後各々の研究に役立ちそうな分野を勉強して頂くと言う事で…一時的に研究速度は落ちますが最終的にはその方が良いはずです」
「じゃあ、その辺りは僕が担当しよう…どうせ学会関係でそう言ったテキストは作った方が便利だからね。機構外にもテキストを販売して学会の資金にしたい所だね」
と、早速理事長に就任予定の学会の利益を考えるフェイトである。
「各分野の初学者向けのテキストも魔法協会に連絡して入手・翻訳したいね、茶々丸さん、手配をお願いできますか?」
「了解しました、近衛学園長に依頼を出しておきますね」
「それと、軽くネギに演説頼めないかな、魔法の存在を機構内に知らしめる意味でも」
「まあ事務局長としてやるべき事ではありますけれども…千雨さんとコタロー君も自分の部署宛てのメッセージは出してくださいよ?」
「わかっているって」
「了解や」
といった方針になり、詳細を詰めつつ、最終的には何時もの情報交換会になった。
「諸君、本日は皆に重大な発表がある。この発表は理事会の決定に基づくもので諸君らが所属時にサインした秘密保持契約の対象となる事を再確認しておく」
その日、機構内ネットワークのみで閲覧できる事務局長講話としてネギの短い演説が公開され、私は各研究所を繋げた集会でそれを視聴していた。
「機構に所属する者であれば皆知っているだろうが、1年半前に公開された『マナの科学』という文書がある。実はこれはある文書から抜粋したもので、底本となった文書のタイトルは『科学的魔法解析概論』という…つまり、魔法と呼ばれる技術を科学的に解析した結果を記したものだ。言い換えればこの世の中には魔法が存在する…それを見せよう」
そう言って画面の中のネギは無詠唱で火よ灯れを行使し、指先に火を灯した。
「この魔法は最初等魔法であり、手品ではないかと疑う者もいるかもしれないが事実、魔法である。最上級攻撃魔法の中には地形を変化させるほど強力な物も存在するが、この場で見せるには強力すぎる故に割愛する。話を戻そう…我々国際太陽系開発機構は宇宙開発の為に組織されたが、その手段として魔法技術を活用する事を前提とされていた。今日までその事は秘されていたが、理事会は遂に諸君らに対し魔法の存在を公開することに同意した。よってここに私、ネギ・スプリングフィールドは諸君らに魔法の存在を知らしめると共に、魔法技術を活用して諸君らがより一層、人類の為に貢献してくれることを期待するものである」
ネギがそう述べると動画は終了した。
「さて諸君、本日の集会の目的は今し方視聴してもらった事務局長の講話の通りである。しかしながら実際に研究開発にあたる研究局所属の諸君らにはもう少し詳しい話をする必要があるだろう。まず私についてだが…まあ、事務局長と同じで魔法使いである…このように」
そう言って私は雷の招来を無詠唱で行使、雷属性の魔力球を作り出してみせる。
「そして、安心してほしい、同時に科学者であり、魔法学者でもある…魔法と言ってもきちんと体系づけられた技術なのだ。科学者だった私はそれを研究する為に魔法使いとなり、そして葉加瀬博士と共に魔法を科学的に研究した結果、得られた成果が『科学的魔法解析概論』であり、その抜粋『マナの科学』である。諸君らの多くは既に『マナの科学』を読んでいるものと信ずるが、その完全版である『科学的魔法解析概論』を改めて読んでほしい。そしてアーウェルンクス顧問が作成した魔法分野を網羅した解説本を諸君らに配布予定である。それに基づいて申請を出してくれれば各分野の初等教本を支給するし、不足であれば専門書の購入も許可する…大いに学び、議論し、各々の研究に役立てて欲しい。私からは以上だ」
そう、私は短く演説を締めた。
機構内への魔法公開から1週間、研究者連中からの反響は中々いいものであった…が、その大半は思い思いの初等教本と共に電子精霊の支給…マホネットへのアクセス権を求めてきた。考えてみればそうである、電子精霊があれば各国魔法協会が発行している学会誌も読めるし…何より魔法使い達の生の声が聴ける。
「…って事なんだけれども…どうしようか」
「あー機構内の掲示板やチャットで出回っていましたねー電子精霊便利だって情報…アーウェルンクス顧問からの情報として」
「…何かまずかったかい?」
「まあ、想定外ってだけだな…全研究者ではないがそれに近い規模の予算がかかるけど、大丈夫か?ネギ」
「それは予算的にちょっと難しい額になりますよ…茶々丸さん」
「はい、かなり予算オーバーになるかと思われます」
「なら、とりあえず研究グループ毎に1群ずつ配布してその後は各研究室の予算で購入させるか」
「それが妥当な所かとーそれとー『初めてのマホネット』と『初等電子精霊行使術』の最新版も各グループ1冊ずつ支給しましょうかー」
「それくらいであれば今回の魔法教育用臨時予算で何とかなるかと…電子精霊の質は最低限のモノになりますが」
「…まあ、各自PCは支給されているはずだし、カギになる電子精霊だけいれば行けるだろ…念のためマホネット使用前にセキリティーとかマナーとかの講習をするか」
という事で電子精霊の配布が決定されたのであった。後日、研究予算や場合によってはポケットマネーでの加速機能付きダイブ型PC…市販の最新ハイエンドモデルで2.5倍加速、私が一部パテントを握っている…の購入申請が殺到し、これまた会議を開く事になるのであるがそれはまた別の話…と言うか加速機能付きダイブ型PCの話は他部署にも広まり、加速空間で仕事をしても勤務時間は実時間換算でするという総務部門の決定が出ても根強く導入要請が来るのであった。
「中々ご活躍の様ですわね」
アポを取ってではあるが、私達のアトリエ兼自宅を訪ねてきた委員長がそう口を開いた。
「ああ、おかげさまで…今日は何の用だ、委員長」
「あら、気まぐれに友人宅を訪ねただけ…ではいけませんか?」
「別にそれでもかまわんが…それなら情報交換会の時を狙って訪ねてくるだろう?ネギにも会えるし」
「公私ともにネギ先生とはお会いできていますし、必要であればこのような訪問も致します」
「という事は何か目的がおありなのですねー」
「…その通りです。単刀直入に伺います、前回の機構の理事会の件ですが…魔法開発競争はともかく、魔法軍拡競争を煽って何がしたいのです?」
「別に煽ってはいないさ、単に各国がやっているであろう行為を機構もする権利を確認したかっただけさ」
そう私は嘯いた。
「嘘ですわね、ネギ先生やコタローから貴女達が公然の秘密だった各国の技術開発と人材育成を追認し、機構の警備部門を魔法対応型に再編する事に拘ったと聞いておりますわ」
「おや、ネギ達がゲロったのか…まあ口止めしてないからまあいいけれど…そうさ、私は結果的に魔法軍拡も煽るだろうとわかって前回の理事会での仕込みをした」
「なぜですの!?おかげで各国軍部は軍内部での魔力検査や魔法戦用特殊部隊編成準備などの動きを加速させていますわよ!その為にちょっと調査力のある組織であれば何かあると気づく程度には秘匿に鈍感になっています!」
「それが目的さ、委員長…と言うか中3の学園祭の一件、委員長は掴んでないのか?」
「中学3年の学園祭と言いますと…超さんが転校していった時のですわね、何かあるので?」
「…その学園祭で超と聡美と私は全世界への魔法バレを画策したのさ、ネギ達に阻止されたけれどな。今はソレを合法闘争でやっている」
「つまりー各国が他国に負けない為に人材を確保するという行為で魔法について知る人口を増やしーそのスカウトの過程が大胆になる事で調査力のある組織に対してなし崩し的に魔法の存在を察知させる事が今回の目的ですねー」
「何と…なんと大それたことを…」
「雪広コンツェルンだってマナ科学の範疇でしか製品化・特許化できないとはいえ魔法の解析には力を入れているはずだ…違うか?私達がそうなるように社会を煽ってきた…構造材とかの特許申請だってマナ科学、ひいては魔法科学融合技術は宝の山だと知らしめることが主目的でパテント料はおまけだよ」
「…そのオマケで億単位の資金を集めているようですが…まあいいでしょう…ネギ先生はこの事はご存じで?」
「正式には知らせていない。いざという時に責任がネギにも及ぶとまずいからな」
「ですがー私達が魔法の一般公開…科学と魔法の融合を悲願としていることはご存知ですしー恐らく黙認してくださっているのかとー」
「わかりました、ネギ先生には確認を取らせて頂きますが、私もあなた方の意図を黙認しましょう…どのみち、こちら側の各国政府も時期はともかく魔法公開自体に反対ではないようですし」
委員長はそう言って深くため息をつき…その後は思い出や未来について語り合う楽しいお茶会となった。
トップダウン型魔法技術拡散を狙っている千雨さん達。
というかマナの科学事件で十分にuqホルダーで語られる原作後の歴史とは乖離している気がする今日この頃。