さて、少し時間は進んで学会についてだが…表で結成される予定の国際マナ科学学会の秘密部会扱いで結成される事となった。様々な理由はあるが、主な理由は理事会メンバーの大半が表裏で一致する公算が高いからと私の暗躍の成果である。相変わらずヘラス帝国はいずれ統合される前提にしか見えないこの措置に難色を示したが多勢に無勢で最終的には決議に応じていた。
「では、定刻となりましたのでマナ科学学会の設立準備委員会を始めたいと思います」
機構の麻帆良研究所の会議室にてフェイトがそう言って委員会開会を宣言した。
この場には、まあ案の定というかフェイトのほかにネギ、茶々丸、聡美、私がいて、その他に各国の政治的バランスを考慮して選ばれた11名の科学者たちが集結していた。この15名の研究者たち…茶々丸は書記である…が国際マナ科学学会の設立委員会メンバーである…秘密部会について議論する必要上、委員は科学者かつ魔法バレしていないといけないのだが、各国に提出させた条件に合致する委員候補者リストから読み取るに、既に国立研究機関、場合によっては国立大学の研究者たちにも魔法バレを実施し始めている様であり、私としては非常に良い傾向であると言える。
「まずは発起人を代表して長谷川博士に挨拶をお願いします」
「あー長谷川千雨です。『マナの科学』並びに『科学的魔法解析概論』の著者です。その縁から今回は本委員会の発起人に名を連ねる事となりました。国際太陽系開発機構の職務との兼ね合いで委員長はアーウェルンクス氏にお願いしましたが、アーウェルンクス氏もマナ科学の専門家と呼べるだけの知識があります事は私が保証いたします。そしてマナ科学は新分野であり、従来の科学とは一線を画した対象を扱う学問ではあるものの、現状は従来の各科学分野において研究発表がなされております。本会はこういった現状を踏まえ、マナ科学について統一的に発表を行い、また研究者同士の交流を行う為の場を提供するという極めて意義深いものになるのではないかと私は考えております。本委員会にご参集頂いた諸賢のお力をお借りして本会をより良い形で設立できる事を心より願っております、以上簡単ではありますが、私の挨拶とさせていただきます」
「では、続いて皆さんに簡単に自己紹介をお願いしたいと思います、まず私から…フェイト・アーウェルンクスです、国際太陽系開発機構の顧問を務めています。マナ科学以外の専門は魔法全般ではありますが、科学側も興味深く勉強させて頂いています。長谷川博士と葉加瀬博士の『科学的魔法解析概論』により、両分野が橋渡しされた事は非常にうれしく思っています。以上です。では着席順に時計回りにいきましょうか、スプリングフィールド氏、お願いします」
「はい、ネギ・スプリングフィールドです、国際太陽系開発機構で事務局長をさせて頂いております。マナ科学以外の専門は魔法全般ではありますが、科学分野も大変興味深く勉強させて頂いている所です。『マナの科学』の講義動画も担当させて頂きましてマナ科学者としては長谷川博士、葉加瀬博士の一番弟子にあたるのではないかと自負しております。以上です」
その様に科学者たちの自己紹介が続き…ぐるっと回って聡美の番になった。
「葉加瀬聡美です、現在は国際太陽系開発機構麻帆良研究所の所長を務めさせていただいています。本来の専門はロボット工学とジェット推進ですが魔法側を含めた関連分野でも長谷川博士と共同研究をさせて頂いております。若輩者ではありますが、皆様よろしくお願いいたします、以上です」
「改めまして、長谷川千雨です。現在は国際太陽系開発機構の研究局局長を務めさせていただいています。本来の専門はロボット工学に人工知能やコンピュータ関連、シミュレーション関係となります。魔法側を含めた関連分野でも葉加瀬博士と共同研究をさせて頂いております。若輩者ではありますが、皆様よろしくお願いいたします、以上です」
そして私が締めて自己紹介まで終わりとなった。
「皆様、自己紹介ありがとうございました。では議論に移りたいと思います。まず、会則に関しまして事前配布の草案を基に議論を行っていきたいと思います」
そうして、本格的に委員会が始まるのであった。
「以上で表の学会に関する議題は終了となります…続いて秘密部会に関する議論に移りたいと思います」
そうして始まった議論であるが、大体の結論をまとめると以下の通り。会員資格はマホネット経由、各国魔法協会経由、あるいは各国政府経由で部会参加登録を行った者とした。これであれば確実に魔法バレしている人物のみが部会参加者となる。学会誌はマホネット上で有償公開の上、紙媒体での販売も部会員に対してのみ行う事とする。そして学会開催は表の学会に合わせて実施し、特別参加者証を所持する者だけが入れる人払い結界内部で行う事となった。
概ね良好に終わった委員会の会合ではあったが、唯一、初代理事は委員会メンバーがそのまま就任する事になったのはあまりうれしくない事態である。
「さーて久しぶりのバトル用ニューボディーだよ、茶々丸」
「あの、ニューボディーは良いのですが、これはどう言った仕様なのでしょう、ハカセ」
「ふふー全般的にアップデートされているけれどねぇ…一番の目玉は茶々丸が魔法を使える様になる事だよ!」
聡美の研究チームの研究成果をフィードバックし、さらには私達の秘匿技術をも盛り込んだ新ボディーである。
「えっ…マジですか?ハカセさん、千雨さん」
「おう、マジだぞネギ。とは言っても現状は魔法障壁と兵装用の収納魔法だけだけれどもな」
「原理はどうなっているんですか?」
「原理的には私の糸の魔法陣技術の発展形だな。茶々丸の体内に専用の魔力タンクを設けてあって、その周りに精密積層記述した魔法陣が茶々丸の意志に連動して魔法を発動する…まー結果だけ見れば携帯式の魔導具を腹に仕込んだのと同じだけれどな」
「ええと、それは茶々丸さんの体内に仕込まれたその機構が茶々丸さんの意志に応じて起動する、という事ですか?」
「おっ、流石だな、ネギ。そー言うタイプならもっと前から作れたんだが内蔵する意味はねぇ…今回のはあくまでも、茶々丸の意志と直接連動だ」
「違いがよくわからないのですが…そこがそんなに重要なのですか?私という機械的仕掛けで魔導具の起動ボタンを押しているのとは何が違うのでしょうか」
茶々丸が首をかしげながら問うてくる。
「すごく違いますよ、茶々丸さん!こう言っては何ですが、分類上茶々丸さんは無生物です。無生物がその自意識で魔法を選択・行使するというのはとてもすごい技術なんです!いうなれば、科学的な魔法の再現ですよ!その技術、魂を持つ茶々丸さんだけでなく妹さん…量産型のダッシュさん達や極論すればただのコンピュータプログラムでも実施可能ですよね!?」
「ああ、電子精霊や遠隔操作のコンピュータプログラムでも同様の事ができる事は確認済みだ。ちなみに現在はコンピュータで例えると機械式計算機の段階で、いずれは汎用電子式計算機に相当する汎用積層魔法陣で任意の魔法を使える様にする段階まで行きたいな」
「すごい夢ですね、千雨さん!僕もぜひお手伝いさせてください!」
「おう、そう言うと思っていた。まー実現…特に量産化にはマナ科学の発達が必要だろうが基礎研究はしておいて損はないだろう」
「ふふー久しぶりにネギ先生と共同研究ですねー楽しみですー」
「あの…秘書の私と致しましてはあまりネギ先生に無理をさせないでいただきたいのですが…」
「激務の合間を縫って重要論文を量産している事務局長殿がどうしたって?」
「あ、はい、今と変わりませんでしたね…むしろダイオラマ球を使って頂けるなら時間的にはゆとりができるとも言えますでしょうか」
「そうだね、茶々丸…さ、話がそれたけれどもボディー換装行っちゃうよー千雨さん、お願いします」
という事で、茶々丸のボディー換装作業に取り掛かるのであった。
後半の茶々丸の新機能はそれ自体では大した事がないけれども、将来魔法アプリの開発につながる超重要な技術革新という感じですね。なお、全体的に機能向上が図られるとともに装甲板強度とか防御力上昇にも手がかけられていたりする。