例えばこんな長谷川千雨の生きる道   作:紅シズク

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14 進路選択編 第6話 答えが生み出すもの

さて、5月の連休も終わり、あっという間に中間テストの時期がやってきた。

 

まあ、英語と理数系は問題ない、本来どこまで習っているかを忘れず、ミスがなければ満点余裕だ。

 

(とっくに大学レベルまで終わっているし)

 

他も少し復習すれば8~9割は取れる…私達は。

 

「えーココの表現がよくわからないアル」

 

「ここはこういう解釈でよろしいのでしょうか?」

 

まあ、私達はともかく他はそうでもないわけだ。

 

クーは元々脳筋な上に日本語の習得自体が終わってないし、

 

茶々丸も人工頭脳ゆえの問題の理解と記述面の補強が必要だ、特に国語。

 

ここまではわかる。

 

茶々丸は私達の娘だし、クーも超をはじめ、多少なりとも中国語のわかる面子(私と聡美)がいると何かと便利だ。

 

うん、ここまではわかるんだ。

 

「うーわかんないよ…」

 

「千雨殿、回答を確認してほしいでゴザル」

 

「千雨ちゃん、ごめんここよくわからないんだけどさ…」

 

気付けば、教える面子が増えて、持ち回りで勉強会の教師役をする羽目になっていた。

 

まぁ、問題集から抜粋した問題を解かせる形式だからたいした手間ではないし、

 

一応、実験協力は対価として要求してあるが…(長瀬以外は)おもに体力(無自覚な気による身体強化に関する研究)測定を。

 

そんなこんなで中学初の中間テストは無事に終了した。

 

テストのでき?

 

うちのクラスは超、ハカセ、いいんちょが上位3位を独占、私が9位となった。

 

あと、宮崎が20位代だった筈で、他は掲示公開される50位までにはいない。

 

加えて那波、近衛、朝倉も100位基準点前後だったらしいが…他がよろしくなかったらしくブービー賞だ。

 

まあ、クラスの順位なんてどうでもいいが24クラスで、4人が上位十位に入っておいてこのありさまって…と思わんでもない。

 

 

 

そして中間テストが終われば麻帆良祭だ。

 

ロボ研ではパレードへの恐竜ロボットの出展とその展示、

 

さらに、この前超と相談したように資金調達のためにお料理研究会との共同で、

 

飲茶兼休憩所である超包子(クーが言い出した名称を超以外の主要メンバー全員一致で決定した)の運営、

 

保険で大会に出るための準備(一般人の前で戦えるレベルの確認や大会調査等)

 

そして、クラスの出し物。

 

恐ろしい事に、私達1-Aは超包子と協力でやる中華飯店になった。

 

意図していた事ではないが、五月の料理が食べたいと言い出した双子の発言から、

 

紆余曲折し、超が介入した結果気付けばこんな決定が下された。

 

大規模仕入れによる原価抑制、統一感を出しつつも異なるコンセプトの姉妹店…

 

 

 

一応、双方にメリットがあるwin-winの関係ではあるか。

 

私達に割り当てられた役割は

 

超は総指揮、聡美が設備主任、クーがウエイトレス兼用心棒、五月が総料理長だ。

 

私?クラスの方は仕込みがメインで当日は殆どシフトから外してもらったよ。

 

…超包子でこき使われることが確定していたからな!

 

まあ、そんな感じのハードスケジュールの合間に聡美と遊びに回れる時間は確保できそうでうれしい。

 

 

それはさておき、新規事業の宣伝はなんだって苦労がつきものだ。

 

そこで私たちがやったのはべたな手段ではあるがお試し価格での販売だ。

 

宣伝費と割り切って原価割れぎりぎりの値段で文化祭準備期間の夕方、

 

小腹がすく時間帯に協力してサークル単位でいるところに肉まんを売りに行く。

 

できれば雑談してクラスの中華飯店と超包子の宣伝をし、チラシを渡す。

 

味に自信があれば有効な手段だと私も思う。

 

手前味噌ながら、麻帆良内で売っている中華まんのランキングを作ったら上位五位くらいには入るであろう、

 

私も試作から(主に味見で)協力している超包子自慢の一品だ。

 

そこに、空腹という最高の調味料が加わってさらに高評価となるわけだ。

 

麻帆良祭当日もその肉まんはテイクアウトありで販売する予定である。

 

まあ、若干薄利多売ぎみではあるが、肉まんだけでも利益は出る計算になっている。

看板商品というやつである。

 

 

 

 

 

 

そして・・・私は、エヴァに示した答えと向き合う事になっていた。

 

「さて、正式な話し合いの場を設ける前に意思確認・・・というか進路相談をしようか。長谷川君」

 

「はい、高畑先生」

 

そう、高畑先生との進路相談である。

 

私はマスター、エヴァにより魔法を深く研究するために多くの資料にアクセスしたい・・・と申し出た結果でもある。

より端的に言えば、より深く魔法を研究するためにはあちら側に身を寄せる必要がある・・・それだけの事である。

 

「まずは現状の意思確認なんだけれども、もっと魔法について深く研究する為にこちら側・・・魔法使い側に所属したい、という進路相談でいいんだよね」

 

「そうです」

 

私はそう言ってうなずいた。

 

「僕自身は良くわからないけれども、確かに君たちの提出した論文の評判は良いし・・・まあ、エヴァもなんだかんだ言って、学園長の信用はあるから彼女の口添えがあれば、君を魔法使いとして迎え入れる事自体は問題ないとは思う。でも・・・」

 

そういって高畑先生は真剣な顔をして続けた

 

「本当に良いのかい?二人・・・葉加瀬君と超君を置いて、君だけこちら側に来ると言うのは」

 

「はい」

 

そうだ。私が、私だけがあちら側に身を投げる。私は、知りたいのだ。

例え、二人と道を違える事になろうとも。

 

そう、私たちは決めたのだ。

 

 

 

 

 

「本気か、千雨サン。というかエヴァンジェリン相手にそんな事をしたとか正気か貴女は」

 

若干の怒りをも含んだ困惑・・・を主とする複雑な感情を湛えた表情で超がそう言ったのはあの選択の夜から生きて帰った翌晩の事だった。

 

あの日、身辺整理を済ませて出立し、エヴァンジェリン邸から朝帰りをした私は、同じく研究室から朝帰りして開封された私からの手紙を抱きしめて泣きそうになっていた聡美に迎えられ、しこたま怒られた。うん、エヴァ相手にちょっと意地張ってくる、死んだらごめん。なんて内容の手紙を見つけたら私だってそうする。

 

それから昼前まで二人で散々思い出話を交えて話し合った結果、一つの事実の確認と、合意に至った。【聡美は『魔法の工学的応用』に、私は『魔法の理学的解釈』に興味がある】という事実と、だからこそ【聡美は科学側に、私は魔法側に身を寄せるべきである】という合意に。

 

「ああ、本気だ。正気かは・・・すまん、わからん」

 

「っ!ハカセもいいのか!千雨サンがあっちに行ってしまっても!」

ああ、流石は超、良くわかっている。私のこの決断を翻意させ得るのは唯一聡美だけである。

 

「・・・良くは無いですし、納得もしていません」

「なら!」

「ですが・・・ですが私には止められませんし、もう止めません・・・だって、理解してしまったから・・・それが私たちのあり方です、超さん」

 

聡美が食いしばるように、そう言葉を吐いた。

だからこそ、ずるいとわかってはいても、三人で話し合う前に二人だけでしっかりと話し合ったのだ、決意が揺るがぬように・・・ちゃんと話せば仕方の無い事だと理解はしてくれると信じていたから

 

「すまん、としか言えない。でも、私はもっと魔法を研究したいんだ・・・わかってくれ・・・それに、茶々丸のアップデートや妹たちの開発、ほかのロボ研の活動から引退するわけじゃないし、機密度の低い魔法の研究なんかは今までどおり一緒にできるんだから・・・な?」

 

というか、むしろ超がここまで反対するとは思わなかった・・・そうか、聡美の態度から予測していた最悪の予想、あたりかな。

 

「それが・・・それが私と・・・いや、私とハカセと敵対する道だとしても…か?」

 

縋り付く様に、そして搾り出すように、超はそう言った。

 

「ああ。と言うか、麻帆良の最高頭脳の名が泣くぞ、超。ソレ、魔法使い側に与えたらまずいパズルの一ピースだろうが。

 

私が所属を変えただけで敵になりうる事って一つしかないわけだし…まあ、ダチを売るほど私も薄情じゃねぇし、売らせるほど魔法使いたち…いや、学園長たちの一派は外道でもねぇだろうけどさ」

 

私が所属の違いで例え義務的にでも敵対せざるを得ない事…それは魔法の秘匿位である。

 

「それでも…それでも貴女には味方でいて欲しいという事ヨ、千雨さん…ハカセの為にも…せめて後、三年、待てないか?」

 

三年…つまり、この前の話の最短計画である2005年の麻帆良祭か

 

「無理。それができるなら小4からロボ研に所属したりしてねぇよ、私も聡美も。

 

もちろん、明らかな違反行為でなければ協力はするし、不自然な資金・物資の流れも見逃すし、茶々丸や妹達の強化も手伝う…それが何に流用されようとも、だ。

それに、能動的に二人の邪魔もしないし、極力中立を保てるようにも振る舞うし、無理矢理巻き込んでくれても…まあ、怒るかもしんねぇけど、恨みはしねぇよ、オコジョにされても…例え死んじまうはめになってもな」

 

そういってエヴァから分けてもらったギアスペーパーを取り出す

 

「これで私を縛れ。それで妥協してくれねぇか?超」

「…いらないヨ。そんなもので出来る限りの協力は惜しまないと言ってくれる友を縛らねば成功しない計画など失敗すればいい」

「待て。袂を分かとうっていう元仲間相手にそれは緩すぎるだろう。

時を超えてまでかなえたい願いがあるんだろうが、躊躇うな!超鈴音」

「違う、違うよ、千雨さん…計画が成功した後にこそ、貴女とハカセの力が必要なのだよ…最悪、代替の手段が無いわけではないが、しなければいけない綱渡りの難度が大きく変わる…だから、貴女との友情に賭ける…そして約束してほしい。計画が成功すればその時は私と共に来て欲しい」

「まったく…わかったよ、魔法の暴露…かな?その計画が成功したと私が確信した時は、お前と共に行く事を誓う、超。まあ、目的次第ではその後裏切らねぇとは言わないが…そうならないと思っているから誘っているんだろう?」

「ああ、本当ならば今すぐ全てを話して説得したい位だが…きっと聞いてくれないだろうからネ…ならばお互いの安全の為にもこれ以上は話すべきではないヨ…な、ハカセ」

「ええ…千雨さんなら、そこまで進んだ後であれば協力してくれると信じています。だから…一度、お別れですね、再び道が交わるまでは…たとえそれが平行な道だとしても」

 

そう、私達は決めたのだ…私は、超の計画の第一段階とやらと距離を取る、と

 

 

 

 

 

 

「…意志は固いようだね、わかった。ならば学園長との面会の場は用意しよう。求める立場はできるだけ自由に魔法の研究ができる立場…一応外様の魔法関係者扱いとかになるとは思うけれども希望はあるかな?」

 

「できれば…機密度の低いものに関しては聡美…いえ、葉加瀬さんや超さんと今迄みたいに研究ができればうれしいと言えばうれしいです」

「うーん…気持ちはわかるけれども、この前の論文も協力者扱いの派生って事で許された感じがあるものだし…でも相談はしておくよ」

 

そうした経緯での交渉の果てに、私は外様の(非関東魔法協会所属の)魔法関係者と言う立場を手に入れる事が出来た…後見というか後ろ盾がもろエヴァなんで、学園長や高畑先生以外からは警戒される事となったが。

 

 




今回はルート分岐の明示回です。

そして千雨さんは一応クラスに馴染んじゃっているので千雨ちゃんと呼ばれています。

勉強会に参加したのは自覚があって曲がりなりにも勉強する気のある面子です。

…よって夕映や刹那は来ていません。

千雨の料理の腕前は『一般人としては上手い、経験が少し足りないけどセンスは磨けばプロでやっていけるかも?』くらい。

クーが超包子の名称出したというのは完全捏造です。
そもそも『包子』は『具入りの中華まんじゅう』の事を指すので飲茶店の屋号としては不正確なので、この肉まん、スーパー肉まんだよね、位の気持ちで発した言葉が拾われた感じです、実は。

超一味だと思っていた?残念、袂を分かつのだ…というのは元々のプロット通り。
まあ袂を分かつと言うよりは当人のやりたい事をやる為に魔法使い側に接近するので計画中枢から外れる、と言うのが正しいですが。本気で魔法戦闘だとか研究だとかをするのに協力者扱いのままというのもあれなので。まあ外様扱いであんまり中枢には近づけないわけですが、魔法界で共有されるような知識には触れられるようになるわけですね…もろエヴァンジェリン子飼いなんで、一般魔法生徒・魔法先生からの警戒度はMaxですが。そういう意味で超・ハカセへの警戒は相対的に下がっています。

そして超は何割か打算でああしています。千雨さんをより強く縛れるのは契約などではなく、情であるという理解ですね。そういう打算の部分がなければ、友を信じたいと思いつつも最低限はギアスペーパーを使った事でしょう。
また、計画成就の後にこそ千雨さんとハカセが必要、とは単純に信頼できる仲間と言う意味と、電子戦・ネット世論操作の技量、技術開発面での能力等々です。何より、科学と魔法と双方に通じた人物が欲しいというのもありますね。
(ええ、必要ですとも、ネギ君が一度失敗した世界線の方の超さんにとっては)
千雨ちゃん、計画とやらの中枢が魔法の秘匿を打ち破る事、そしてハカセは魔法の工学的応用の成果共有の為に(茶々丸ちゃんの魔力動力炉技術のデットコピーだけで世界は大きく変わります)協力しているんだという理解です。たぶん、原作でもハカセはその辺りが友の為系以外では主な理由でしょうし。

えっ、千雨さん、ソッコー裏切っているやんって?
一応、超の告白からは一カ月たっていますし、本来の本年度計画分では協力継続していますし、そもそも、背中差すつもりはゼロなんで裏切りではないですよ? 割愛予定ですが、馬車馬の如く働きましたし、麻帆良祭でも。

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