「聡美、いまいけるか?」
「はいはい~なんですか?千雨さん」
「ネギ先生連れてきた」
「あ〜いらっしゃいませ、ネギ先生」
「お邪魔します、ハカセさん」
丁度手が空いていたのか、呼びかけに応じて聡美が奥から顔を出してきた。
「おや、ネギ坊主か。いらっしゃい、奥には色々危ない物もあるから入るのダメね」
「はい、わかりました。超さん、お邪魔します」
「ええっと、長谷川さんが千雨さんって事はお二人も千雨さんの共同研究者のサトミ・ハカセさんとリンシェン・チャオさんって事で良いんですよね…?」
「ああ、この二人と、もう一人…うちのクラスのエヴァンジェリンが共同研究者だ…まあ、エヴァンジェリンは気難しいから無理に絡むなよ」
まあ、大丈夫だとは思うが釘をさしておく…これ又聞いていないが、エヴァがネギを見る目が少し気にはなっているので…
「はい。葉加瀬さん、超さん、千雨さんからお二人の事を聞いて、是非お話してみたいと思っていました。お二人はどういった研究をなさっているんですか?」
その後、ネギ先生…いや、ネギ少年との楽しい楽しい研究談義(魔法込み、科学分野中心、聡美の表向きの魔法の工学的応用メイン…ネギには二人はあくまで関係者扱いではないとの釘は刺したがたぶん、覚えていない)が続くのであった
結局、7時少し前にアスナ達にネギを引き渡した私達は、寮生食堂で感想戦をしていた。
「で、どうだった?ネギ少年と話してみた感想は」
「んー科学分野での知識は足りませんが…研究者としては間違いなく天才ですね〜ネギ先生」
「ウム、と言うか、どっぷり魔法社会で生きてきて私達の論文の価値を正確に理解できているだけでも頭の柔軟性は見るべきものがあると違うカ?」
「だろ?…まあ、ちょっと社会常識とかは要勉強って感じだけれども…」
「ハッハッハ…その辺りは外様どころか関係者扱いではない私達にはフォロー範囲外ネ…愚痴は聞くが」
「はい、千雨さん貯めこむと爆発が酷いタイプなんですから貯めこんじゃだめですよ? 愚痴なら聞いてあげますから」
「ハッハッハ…まあ…うん、本人にぶつけたから今日は大丈夫だよ…さすがに違法薬物生成する宣言はぶん殴りたかったけれども、本人、違法だってわかってなかったし…」
「うむ、それは酷い」
「ですね~」
認識阻害を張っているとはいえ、割とギリギリの愚痴を二人にぶちまける私であった。
「サテ、せっかく寮に戻ってきた事だし、大浴場でも堪能するカ」
「いいですね~行きましょうか」
「そうしようか」
食事と愚痴も終わり、一度部屋に帰って大浴場へと向かうのであった。
「お、エヴァも風呂か」
珍しく…(とはいっても月に指折り数える程度は利用している)エヴァが大浴場の更衣室にいた。
「ああ、千雨にハカセ、超か…珍しく早いな」
「アア、ちょっとネギ坊主と研究談義をしていたら研究のキリが悪くてネ」
「なので、早めに切り上げてこっちで夕食とお風呂なんです」
「…それと、ネギ先生が共著論文の件でぜひお話してみたい、との事なんで…もしかしたらそっちにも飛び火するかもしれない」
「…わかった、覚悟はしておこう」
そんな話をしながら脱衣を済ませて浴室に入ると時間のわりに混んでいて…そしてその殆どが2-Aの生徒だった。
…そして、なぜかネギ先生争奪スタイル比べとかがはじまっていた…相変わらずうちのクラスのノリは解せん…
「あーそういやさ、千雨ちゃん、今日、やけにネギ先生と親しげにお話していたって証言があるんだけどさ…内容は流暢な英語過ぎてよく解らなかったらしいけれど」
そのノリを無視して風呂を堪能していると朝倉がそんな話を振ってきた
「あ~風呂は良いよなぁ…」
「はい…疲れが抜けだして、代わりにアイデアの元が体に染み渡るようです」
「ちょっと、無視しないでよ千雨ちゃん!」
「悪い悪い…まあ風呂を堪能したいのも本当だけどさ」
そういって手をひらひらと降って誤魔化す。
「ま、ちょっと世間話をしていたら先生がロボ研での私らの研究に興味を持ってさ、研究室に招待して4人で少しティータイムを楽しんだだけだって…断じて、あっちのバカ騒ぎに参加する様な理由や内容じゃあないよ」
一応、これが先生と打ち合わせてあるカバーストーリーであるし、嘘でもない。
まあ、超はクーと合流した為か、楽しげにバカ騒ぎの方に加わっているが。
「で、あんたらの話についていけずにネギ先生が煙を上げた、と」
朝倉が茶化すようにそう言った
「いいえ?知識不足はどうしようもないですが、その辺りを説明してあげれば概略くらいは理解していましたよ、ネギ先生」
「えっ…うそでしょ?精神攻撃ともいわれる麻帆良三賢者の研究談義についてきたの?」
一度、ガチで三人だけでのディスカッションの取材テープが録音され、ロボ研のエース級の人間でもリアルタイムではついてこられないような代物が仕上がった事は、まああるが、それだけをもってそういわれると遺憾ではある。
「…あれは、好きに話せって言われたからそうしただけで…相手の理解度に合わせた話し方もできるからな?私達も」
隣でうんうんと聡美も頷いている。
ビターン
そんな音がしてそちらを向くと、腰にタオルを巻いたネギが水着姿のアスナに押し倒されている姿があった…オイ
一応、木乃香からネギとアスナが先に入って先に上がったらしいという話は聞いていたが、曲がりなりにも男…いや、まだ9才なのは知っているが…が女湯に入んなよ、英国紳士
「はぁ…まだ9才とは言え、ネギ先生を女湯に入れんなよ、馬鹿アスナめ…しかもちゃっかり自分だけ水着きやがって」
私はそう悪態をついて湯船に深く体を沈めた…一応、学者としては概ね対等な関係を結んでいるつもりの相手に裸を見られるのは勘弁願いたい。
「アレ?ネギ君って10才じゃなかったっけ?」
「数え年で、らしいぞ…いや待てよ?数えで10才って満年齢で8才じゃなかったっけ」
「えっと…誕生日がまだならそうですね」
「…ネギ先生って牡牛座らしいから誕生日はまだだよね…えっ…8歳なの?ネギ先生」
「まて、たしか1993年生まれって言っていた筈だから…単に周年と数え年を間違えているだけじゃないか?」
「あーうん…って事は、ネギ先生、どっちにせよ、まだティーンエイジャーですらないわけか…」
朝倉を交えて三人でそんな話をしていると、ネギがパニックを起こした様子で杖をひっつかんだのが目に留まった
オイ、魔法の行使は慎重にしろって言っただろうが、あのアホが
仕方なく、私は弱い気弾を、指をはじく動作でネギに放った
すると、ネギはパニックか何かは収まったようで、とんでもない事を言い出した。
「ボク、アスナさんと一緒の部屋がいいです!」
いや、私は被害対象外なのでどうでもいいが。
ネギ先生の燃料投下により、これまた盛り上がった祭りではあったが、結局は学園長の指示が優先という事で現状維持…ネギは当座、アスナと木乃香の部屋に住むという事が確定した