例えばこんな長谷川千雨の生きる道   作:紅シズク

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20 ネギ着任編 第5話 期末テストと春休み

「みんな大変だよ!ネギ先生とバカレンジャーが行方不明に!」

テスト開始前最後の授業日、土日の前に2-Aが期末テストで最下位を脱出しないとネギ先生がクビに…という話題で教室がもちきりになっていた時、そんな叫びと共にハルナとのどかが教室に飛び込んできた。

「ハルカ、のどか、いったい何があったんだ?」

 

 

 

話を聞いてみると、図書館島に眠ると言われる頭の良くなる魔法の本とやらを探しにバカレンジャーと木乃香、ネギが図書館島にもぐったらしいのだが、目的地に到達、最後の試練…ツイスターゲームらしい…を受けていた所、轟音が響き音信不通になってしまった、との事だ

「…うちのクラスの最下位脱出は放課後にもう一度協議しよう。一応、一年の中間テストだけではブービー取った事も有るから…あいつ等が帰還してくれれば土日に勉強させて…まあ、何とかなるかもしれない。ネギ先生たちは…昼休みまでに帰還しない様ならば何か考えよう…これでどうだ、委員長」

「え、ええ。バカレンジャーの皆さんを土日勉強漬けにして、普段まじめにやっていない組の皆さんもまじめに勉強していただければなんとかなりますものね…ええ、皆さん、まずは各自の勉学に励みましょう…土日にはわたくしも講師を務めますので勉強会も開く方向で…」

 

という事でその朝は話が付いた。

 

 

 

二限目前の休み時間、私は刹那を呼び出した。

「なんだ、千雨」

「あーその態度で想像はつくけれども木乃香が行方不明なのにお前が落ち着いているって事は、今回のは何かしらの学園側の仕込みって事でいいんだよな?」

「ああ、その事か。詳細は私も聞いていないが、直接学園長先生からうかがっているから間違いない、お嬢様たちは無事だ。それと、もし千雨がそれを私に聞くようならば源先生経由で学園長に連絡を取るように、との事だ」

「了解、ありがとう」

「ああ、問題ない」

 

 

 

そして、源先生に学園長先生へのアポを取ると、昼休みに呼び出される事となった。

「2年A組、長谷川千雨です」

「うむ、入りなさい」

入室すると今日は源先生だけが学園長の脇に控えていた…高畑先生出張だしなぁ…

「早速じゃが、ネギ君も行方不明の2-A生徒も無事じゃ」

「詳しくは…うかがえないですよね?」

木乃香の護衛役であるはずの刹那が聞いて無いらしい事から、無理だとは思いつつ一応聞く。

「うむ。長谷川君にたいして…と言うか一部魔法先生を除き、この件の詳細は秘匿事項じゃ、すまんが、地上に残っている皆に勉強を教えてやって欲しい、としか言えんの」

「わかりました、図書館島での捜索もNG…と言うか無駄という事ですね。では真面目にテスト勉強をしながらネギ先生たちの帰還を祈っておきます」

「うむ、できるだけテストには間に合うようには手配する。おっと、これは秘密じゃぞ」

学園長が悪戯っぽく笑う。

「心得ています、一般生徒には学園長が捜索を手配してくれているから私たちは先生たちの無事を信じて勉強を頑張る様に、と伝えます」

「よろしく頼むよ、長谷川君」

「はい、それでは失礼します」

 

そうして、私はクラスの世論を誘導すると共に、土日を潰して勉強会の手伝いをして過ごすのであった。

 

 

 

 

 

そして日曜日夕方、各自最後は公式や暗記物を復習してしっかり休息を取るようにと解散させた頃の事だった。

「千雨サン、クーから連絡が入ったね、無事帰還したそうヨ。図書館島の地下で一応勉強もしていたが、できれば仕上げを手伝って欲しいとの事ネ」

「今から?」

「今からネ」

「まあいいけれど…とりあえず、飯まだなら飯食わせて風呂ぶち込んで、遅くとも12時には寝かすぞ、初日は英語や数学あるのにあいつらが徹夜とかした日にゃどうしようもならん…応用全部捨てさせるレベルでパーな状態ならどうしようもないけどな」

「アーやりそうですね、一夜漬けと称した徹夜…最低限の基礎ができているなら寝た方がまだ良いんですが」

と、言うわけで、私達麻帆良の三賢者は、焦る図書館遭難組を落ち着けて消化の良い食事をさせ(脳にカロリーは必要だ)、風呂にぶち込んで(ここ数日風呂に入ってないはずだし、水浴びしかしてないと言っていたのですっきりさせるために)、初日の科目の基礎だけ数時間面倒を見て、無理矢理に寝かせる事となった。

 

そして翌日も…一応悪くない手ごたえだったとか…同様にテスト二日目に備えて徹底的に基礎だけを再確認させた…図書館島で缶詰めになっていた間に大分基礎は出来ていた。

 

そして、結果発表日、なんと驚くべきことに、私達2年A組は学年トップに躍り出たのであった。

こうして無事に正式に教師となったネギ先生は、3学期の終了式で正式に紹介されたのである。

 

 

 

 

 

そして春休み…ついに恐れていた日が来てしまった。

ネギから正式にエヴァの紹介を頼まれてしまったのである…

「と、いう事で連れてきてもいいかな?」

「いや、待て。この前、坊やを私とあまりかかわらせない方向で、となっただろうが」

「それが…直接押し掛けたい位だけれども、それは礼に反するからって言われてな…クラス名簿で住所は把握しているはずだし、ほっとくと休み中に押しかけてくるぞ?」

「それは…困る」

「なら、私もいる時に会談した方がマシじゃないか?」

「それも…そうか、まあ基礎魔法について軽く雑談する位だしな」

「よし、ならば明日でいいか?」

「まあ仕方あるまい。茶々丸、わかっていると思うが、一応来客だ、もてなしてやれ」

「はい、マスター」

と、言うわけで、ネギ先生のエヴァンジェリン邸訪問が決まったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんだあれは」

それが、和やかに終わったはずのネギ少年との魔法談義後のマスターの感想だった。

「だから、あれが天才少年、ネギ・スプリングフィールドさ」

「くっくっく…何がマギステル・マギ(実働戦力)候補生だ…どこかの魔法研究室にでも放り込んだ方がそんな下らんものになるよりも何千倍もの人間を救うだろうに、あの坊やは…魔法学校の教員どもはそろいもそろって目が曇っているのか?」

「あるいは、ナギ・スプリングフィールドの息子にしか見えていないか、だなぁ…何より、持ち前の才能と魔力で、恐らくどんな生徒よりも優秀なマギステル・マギ候補生にも見えるだろうし…望んでいるのか望まされているのか…あるいは心の棘か…そう言った何かで、マギステル・マギを神格化しているかのような嫌いがあってなぁ…もったいない…ま、そっちの経験を積んでからって言うのも十二分にありだろうけどな」

「坊や自身も父の影を追っている、と言うのもあるんだろうがな…」

二人してしみじみと頷き合う

 

「で、お前の望みはあの原石を打ち砕いてしまうな、かな?千雨」

「ま、理不尽に抗う為に力を求めるって言うのもアリだと思うし…色々かな?

少なくとも、あんたが先生相手に【事故】を起こす確率が下がるならばそれでいいよ」

「ふん、才能が有ろうと坊やは坊やだ…【事故】には気を付けるさ」

こうして、まあ、ネギ少年の命の危機を減ずる為を兼ねた、ネギ先生ではない天才少年ネギ・スプリングフィールドの紹介は成功裏に終わったのであった。

 

 

 

 

 

 

「さてと」

あんまり人の事だけをやっていてもいられない

部屋に戻った私は、自慢の3画面PC…麻帆良内の研究用最先端には劣るが、外の世界では一般向けハイエンドモデルをはるかに凌駕するモノ…を元に工学部の伝手で手に入れたパーツを用いてチューンナップし、魔法使い側技術も含めて色々いじくった…の前に座り、これまた自作の専用ゴーグルをつける。

そして精神取り込み型幻想空間の技術を応用したシステムを起動した…本当はクッソ高いプレジデントチェアなんて買わずにベッドで、でも構わんのだけれども、気分である。作業用と休息用の場所は分離したい。

「おかえりなさいませ、ちうさま」

私と聡美…と帰ってこないザジの自室を模した…と言うか自動的に更新させるようにしてある…加速空間で私に仕える電子精霊たちが私を迎えた。

「ただいま。お前ら、特に問題はないか」

「はい、【ちうの部屋】はブログやチャットに荒らしもわいていませんし、相談コーナーも特段緊急の必要な内容はございません。まほネット側の方からも同様です」

「現実のお部屋のセキリティーも特に問題ないです」

「ちうさまが特段興味を引きそうな新着のニュースや論文なども発見しておりません。関連度検索結果はリスト化してございますので必要でしたらご覧ください」

「呪紋の検算は全て予定通り終了しています」

「ちうさま…の件ですが…」

口々に、しかし秩序だって順番に電子精霊たちが報告をする…特段問題はないか。

「よし、いつも通り、【ちうの部屋】片付けて、その後、呪紋回路のテストから行くぞ」

「はい、ちうさま」

 

【ちうの部屋】…まあ可愛らしい名前ではあるが、内容は自作PC含めたガッチガチのコンピュータ系と時事ネタが7割、オタクネタとコスプレ系3割である。加えて、まほネットからのみアクセスできるページでは電子精霊系のサイト、裏の時事ブログもやっている。

超特急で仕上げた内容を担当電子精霊が妥当な速度で現実側のPC、サーバーに転送し、アップデートしてくれる。

「ちうさま、こことここ、誤字でいいですよね」

…誤字確認とかもしてくれるのでとても助かる。

「どれ…ああ、修正頼む」

 

こうして趣味…ブログ順位争い…の方の手札を整え、呪紋の検算の内容を見る。

 

「あー…確かに出力を理論値まで改善できるけど、やっぱり補助陣の魔力と相反して来るか…」

「ちうさまが施術時並みの痛みに耐えながら魔法戦闘できるのでしたら使えますが…」

「…まあ、最悪の時はこれ使うしかないだろうけど…一応この設計も保存しておいて、通常のベースは現行のままで」

「はい、では次の詠唱補佐の呪紋ですが…」

 

埋め込んでいるモノの開発は割とこういう地道な設計と検算である…現実でトライアンドエラーするのは、程度にもよるが大規模な改修だと一日仕事な上に死にそうになることも有るので。

 

 

 

「超様の資金と物資の流れ、超包子の事業に関してですが…」

「…うむ…まあ、そんなもんだよな、多重プロテクトかけて極秘サーバーに」

「はい、心得ています」

 

 

 

「世界樹発光の監視と大規模発光に関しての未来予測は…」

「あーついに今年の大発光確率、8割行っちまったか…」

「はい、と言うか観測データの精度の問題ですので、ほぼ確実とみてよいかと」

「覚悟は決めたつもりでも、一年の猶予(モラトリアム)がなくなっているんだって突き付けられると辛いもんがあるわなぁ…」

「ちうさま…」

 

 

 

 

 

 

「ふぅ…一度、飯食って風呂入ってくる。戻ってきたら魔法戦闘のシミュレートするから用意しておいてくれ」

「お疲れ様です、ちうさま」

私は、幻想空間から実空間に帰還し、バイザーを外した。

 

 




図書館島編はバッサリカット。千雨さんの介入余地ほぼゼロですし。ただし、過去にお勉強見ていた伝手から教師役をする事に。おかげで無理な徹夜もせず、ネギ君の眠気取り?の魔法も行使されたという事実はありません。テスト日程に関しては、まあフツーは分けてやるもんですし、描写的に一日集中くさいですが、まあ月曜日『から』と言うセリフもあるので二日間と設定しました。
そして、マスターに研究者の卵として認められるネギ君。いや、まだまだその才能を使うための経験が足りてないんですが、魔法理論の方はぴか一と言う設定をそのままスライドして…ぶっ飛ばしたです(参考資料ないので)ただしナギさんのお話はなし。

・自慢の3画面PC
現在、画面は飾りですがダイブ先はそのPCを核にした幻想空間なんでただの飾りではないです。まあ、電子精霊とか、色々も研究ツールとして欲しかったのでこっち来た感もあるので、きっちり手に入れております。
呪紋は…幕間でエヴァに見せていた糸での補助魔法陣の発展で、現段階では全身に施術済みですがまだまだ改良中です。
現在の千雨さんは強さ評価では外法無しだと250~300程度、アリアリなら…まあ、秘密。代わりに機動力は優れ目に設定してありますので生存力は強いです…年単位でエヴァちんにしごかれてますんで…

後、シレっとちうの部屋やってるちうたんでした。

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