例えばこんな長谷川千雨の生きる道   作:紅シズク

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22 桜通りの吸血鬼編 第2話 事件の始まり

新学期初日、身体測定をしていると桜通りの吸血鬼の噂の話になった。

丁度、昨日今日が満月の頃であるし、欠席しているまき絵が吸血鬼に襲われたんじゃないかと言う方向になり…エヴァの方を見るとニヤリと笑った…チュパカブラの話になっていた。

 

そして、その後、まき絵が大変だと叫びながら戻ってきた亜子に皆は扉や窓を開けた…ネギ先生、外にいるのに…。

 

なんやかんやあった後、身体測定を済ませ、ネギ先生とクラスの一部はまき絵の様子を見に保健室に向かっていった。

「行かなくていいんですか?」

「…大体わかっているし…請われん限り手は出さないつもりだからな…

まあ、私の事は学者だとしかまだ知らんはずだし、大丈夫だろう…めんどいし」

「だといいんですけどね~」

と、思っていた。その時は。

 

 

 

『千雨さん、この街に魔法使いの知り合いはいらっしゃいませんか?』

こう、ネギに尋ねられるまでは。

『…まき絵の件か?』

英語で話しかけられたときは、魔法使い同士、学徒同士という事で私からは敬語はなしという事になっている。

『ええ…まき絵さんから魔法の力を感じまして…もしかしたら、魔法使いの仕業なのかも、と』

『あーそういう事か』

 

マスターめ、大方半吸血鬼化でもしてあるんだろう。

 

『悪いけれども、私はこの街では来訪者扱いでな…あまり知らんし、知っていても教えちゃならない事になっているんだ。高畑先生か学園長にでも聞いてくれ』

『タカミチは明日まで出張ですし、学園長先生はお忙しいみたいで…』

ネギがしゅんとする

『と言うか私は疑わないのか?』

 

割と疑問ではある、信頼されているんではあろうが。

 

『だって、千雨さんはしないでしょう?あんな事』

『…いや?魔法を見られたら眠らせて記憶を消すくらいならするぞ?クラスメイトでも…まあ、まき絵は私じゃないが』

『あ…そういう可能性もあるのか…でもそれだとなかなか目覚めないのもおかしいし…あ、ありがとうございます。とりあえず張り込みでもしてみます』

『あ、うん…気をつけてな』

ソッコー罠にかかっとるじゃないか、ネギ坊主め…一応、様子だけ見ておいた方が良いかな…?

 

 

 

といった事のあったその夜。日課を早めに済ませ仮眠を取った私は、桜通りを観察できる地点に待機していた…毛布と共に。

「なんかあったら起こしてくれ」

電子精霊群を一セット監視役に連れてきた私は、壁にもたれかかって休んでいようと思っていた…が。

「ちうさま、もう起きました」

「なにっ」

 

桜通りを見ると、ネギの魔法の射手を触媒による魔法ではじき返す人影…エヴァがいた。

 

「あ、ネギ少年、困惑している」

「そりゃあ、知り合いでもありますしね…ちうさまを挟んだ」

あっ…その観点はすっぽり抜け落ちていた…今日、決着がつかないとまずいかな。

 

会話は聞こえないが、様子をうかがっているとエヴァが何かの魔法…恐らく氷系の武装解除を使い、獲物だったのどかが脱げた。そして、アスナと木乃香が現れた。

 

「…まったく…明日また、一悶着あるかもなぁ…」

逃走したエヴァとそれを追跡するネギ先生たち…魔法戦をやらかしている…を追跡しながら、私はそうつぶやいた。

 

 

 

「おっと…」

遊んでいたマスターが武装解除を直撃された。まあ、アレくらいレジストしている様ではある…ネギ先生の魔法で服が蝙蝠になって散って行ってたまるか。

…と言うか、アスナ、きっちり追跡してきているし、茶々丸が屋上にいるな…よし。

 

シュッル タッ タッ トン

 

と言う訳で私は虚空瞬動擬き(糸術で足場を作って補佐している)で同じ建物の茶々丸たちとは反対側の屋根に上った。

 

「茶々丸さんがあなたのパートナー!?」

 

ネギ先生の叫び声が聞こえる。様子をうかがうと、ミニステル・マギの存在意義を説明している様ではある。もう少し近づこうとしたが…アスナが階段を駆け上っている気配がある…目の前の扉から飛び出してくるはずだ。

 

と言う訳で距離を取って身を隠すと、ちょうどアスナが飛び出してきて、茶々丸たちに飛び蹴りをかましていた…いや、ここ、8階…まあ、だが、なんだかんだでアスナの介入でエヴァたちは逃亡していった…あっ、これ茶番か制限付きの闘争じゃねぇか(エヴァが今、扱える程度の魔力で扱える糸術でも、茶々丸がいれば余裕である)。

 

とりあえず、とネギとアスナが屋上から降りていくのを確認した私は、エヴァンジェリン邸を訪ねるのであった。

 

 

 

「で、なんだったんだ、あの茶番は」

席について、茶を出された私は開口一番そう聞いた。

「ん?やはりあの視線は貴様か…一応、まじめにやったぞ?魔法使いとして、はな」

「…つまり、糸術だとか鉄扇術だとかの今の主力スキル使ってねーじゃねーか」

「あほか、そんなもん使えば坊やなんぞ瞬殺してしまうだろうに」

「…つまり、アレか?学園長あたりから、ネギに魔法使いとしての戦いを見せてやってくれ、とか言われたのを拡大解釈して今回の凶行に及んでいるわけか?」

「ふん、それは貴様には知る必要のない事…ではあるが、まあそんなところだ」

酷いネタバレである。

「なら、まき絵のもわざとだな?」

「もちろん。次までに気付かねば、坊やに対する伏兵として使うのさ…ばらすなよ?」

「わかっているよ…じゃあ帰るわ」

「待て…せっかく来た事であるし、少し献血していけ」

「はぁ…わかったよ…」

まあ、満月の夜中に吸血鬼の真祖を訪ねた代償なら安いものではある。

 

 

 

もっと怖いマスターを知っている身としては、昨日のエヴァは完全にお遊び…あのレベルなら、私でも…それこそ切り札まで持ち出せば茶々丸を入れて1対2でも…勝てるが、さすがにネギ先生には恐怖であったらしく、登校拒否に陥ってアスナに担がれて登校していた。

『千雨さぁぁん助けてください』

「わっ、こら、ネギ先生、ストップ」

その場面を廊下で目撃した私に英語で…魔法の事を話す時は認識阻害して英語で、という約束にしてある…助けを求めてきたネギ先生…いや、少年を制止する。

「あ…すいません…また後でお願いします」

そして、教室に入ったネギはエヴァの不在にほっとし、茶々丸に恐怖していた…。

 

 

 

気の抜けた授業をしていた先生は概ね鬱状態と言わざるを得ない状態であった。

「パートナーを選ぶとして10歳の年下の男の子なんて嫌ですよねー…」

…だからなのか、唐突にこんなことを言い出したのは。魔法の秘匿、何処に行った。いや、この前の騒動もあって、恋愛的な意味でとらえられてはいたが。そして、その話を何人かに振り始めて…授業の終鐘をきいて死にそうな顔をして出て行った。

しかも、ネギを追いかけたアスナがパートナーを見つけられなくて困っており、見つけられないとヤバい事になる、発言を残して。

 

当然のように、教室は狂騒に包まれるのであった。

 





桜通りの吸血鬼編、本格始動でございます。まあ、学祭とかの色々考えると明らかにエヴァさん手加減している事になるので、本作では詳細ぼかして学園長からの指示を過大解釈したお遊び(賞品:ネギ・スプリングフィールドの血)という事にしてあります。
後、シレっと千雨ちゃん虚空瞬動擬きを使っていますが、本物の虚空瞬動はたまに成功するレベルの練習中です。最も、糸術と組み合わせて立体機動とかしてくるので糸自体を見切れない限りはすでに機動力だけなら割と厄介だったりします。今なら龍宮隊長相手でも目がある…かも?(あくまでTRPGでのクリティカルのみとか言う意味合いで、ですが。)
まあ進路選択編の頃は絶対無理、だったので大分マシではあります。

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