例えばこんな長谷川千雨の生きる道   作:紅シズク

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24 桜通りの吸血鬼編 第4話 大停電の夜とその結末

私は幻想空間で呪紋の設計をいじりながら考え事をしていた。

 

さて、今回のエヴァとネギの件はどうするべきか、と。

 

ネギの知らない色んな事を勘案すると、私がネギ側に付いた所で、マスターと茶々丸が行使する力の制限を緩めて事故の危険が増える事になりかねない。

かと言って、エヴァ側での参戦は無意味かつあり得ない…。

 

では、無関係を貫くのかと言うと…見届け位はしておきたくはある…が、恐らくネギが弄られる展開になる可能性が高いので…衝動的にやらかさないかが心配だったりもする。

 

…そして、だ。そう推理すべき断片知識はエヴァから与えられていたので自明だと思っていたのだが…この前、やっとエヴァは登校地獄の呪い以外にも自身を縛っているものがあると気付いた様なのだ(ネギを交えた時ではない)。ディスカッションの時の反応が本物であれば。

 いや、茶々丸の動力炉開発の頃に麻帆良に巨大な電気的な力を用いた結界が張られていると言っていたので、てっきりそういう事だと私の方が思い込んでいたのだが、脅威の力を阻害する結界も張られているものだと私は考えていた。

しかし、エヴァは警備結界と思い込んでおり…詳しく調べてみると、電力をかなり使用して魔に属する存在を阻害する結界が張られているらしい事が先日、判明したらしい(茶々丸がエヴァの命令でやったので、私には伝聞情報である)のである。

 当然、予備システムの類いもあるらしいが…予備システムだけなら茶々丸が停止させられる範囲…らしい。私としては、そーいうシステムは正・副・予備と三系統は用意する事が多いので釣りじゃないかと怪しんでいるが、多分その辺りも学園長の掌の上っぽいので黙っておく事にする。そして、エヴァ達がそれを喜んでいるという事は、次の満月ではなく、三日後の大停電に動く予定…と言う事か。

 

 と、諸々の情報・状況を整理して、どうすれば後悔しないか、と考えているのである。

 

 

 

…と言うのが土曜日の朝の事で、今は日曜日の昼過ぎ、関東魔法協会の野外射撃場の一つとして用いられているという施設に、私は呼び出されていた。

そこには、私と同じ本校女子中等部の制服に身を包んだ二年生の少女と、元々関係者と目星をつけていた葛葉先生が待っていた。

「本日は、よろしくお願いいたします。葛葉先生と…佐倉さんですよね、初めまして」

「佐倉 愛依と申します。はじめまして、本日はよろしくお願いします、長谷川先輩」

「よろしくお願いします、長谷川さん」

 

どうしてこうなったかと言うと…それは土曜日の昼過ぎ、刹那経由で学園長からの呼び出しがかかったからである。

 

 

 

「さて、今日来てもらったのは他でもない。そろそろ長谷川君にも関東魔法協会員との交流を深めてもらってもよいかと思っての」

「交流…ですか?」

突拍子のない言葉に思わずオウム返ししてしまう。

「そうじゃ。外様の関係者にはあまり内情は見せんのじゃが、ある程度長期に滞在しておる関係者…特に学生の関係者には簡単な仕事などを通して交流を深め、信頼醸成に努めてもらっておるんじゃよ。

まあ、たまに、エヴァンジェリンとしてもらっているバイトみたいなのを違う組み合わせでやってもらうと思えばよいかの」

…確かに見回りや雑用をめんどくさそうなマスターとする事はたまにあったが…このタイミングは…。

「そういう事でしたら、断る理由はありませんが…いつ頃、どなたと何をすればよいのでしょうか」

「大停電の日の夜に、電気と科学を用いたシステムが手薄になるのでの、念のため、見回りを頼みたいんじゃ。組む相手はこちらの葛葉君ともう一人、佐倉君と言う魔法生徒が付く予定じゃな」

学園長がそういうと、そばに控えていた葛葉先生がお辞儀をした。私もそれにこたえてお辞儀をする。

「…なにか大事な用事があれば断ってくれても構わんが、何かあるかの?」

あーあ、完全にバレテーラと言う奴であるな、これ。

「いえ、問題ありません」

「うむ、では当日前に一度顔合わせを葛葉君と調整しておくれ」

と、言った具合の事があって、こうなっているわけである。

 

 

 

「では、早速ですが、長谷川さんの実力を見させていただきます」

「はい」

「とはいっても、最低限の動きが分かれば大丈夫ですので…軽く魔法などでの攻撃を的あてで行った後、私と模擬戦をしましょう。当然、手加減はしますので。佐倉さんは見学していてください」

「「はい」」

私と佐倉は同時にそう答えたのであった。

 

「では、早速…」

 

と、言いつつ、何を使うか考える…まじめにやるべきと考えつつも、何処まで本気を出すべきかと考え、魔法の射手を連弾と短縮詠唱でそれぞれ、加えて白き雷程度でいいかと考える。

「いきます」

と、宣言して連続で魔法を放つ。

「ノイマン・バベッジ・チューリング 雷の精霊23柱 集い来たりて敵を撃て 魔法の射手・散弾・雷の23矢」

まずは、足を止める麻痺効果の付いた雷の矢を少し広めに散弾で

「ノイマン・バベッジ・チューリング 魔法の射手・収束・光の3矢」

続けて破壊力に優れた光の矢、短縮詠唱で足を止めた敵に速攻をかけ

「ノイマン・バベッジ・チューリング 闇夜切り裂く一条の光 わが手に宿りて敵を喰らえ 白き雷」

そこそこな威力の白き雷…ずる無しだと雷の斧は発動の速さと言う利点が消え、戦闘では使えないので…を一応、止めで撃っておく。

まあ、当然、ただの的は木っ端みじんである。

「なるほど…なかなかですね、佐倉さん、何か感想は」

「はい、対戦士魔法戦闘の基本形の一つ、足止め、追撃、止めの三連打に忠実で、威力・速度共に十分かと思います」

「ありがとうございます」

ぺこりと頭を下げる。まあ、この年にしては、と枕詞が付くのは重々承知の上ではある。

 

「では、続いて模擬戦と行きましょうか」

「はい、では…」

私は袖口から鉄扇を抜き、それを構え、気を練った。

 

 

 

 

 

 

私の長谷川先輩への印象は、頭の良い人、でした。だって、麻帆良の三賢者なんて呼ばれる天才女子中学生3人組の一角ですし、あまりそれ以上は知りませんでしたから、実は外様の魔法関係者だと言われても、実感なんてありませんでしたし。

的あて後の魔法使いとしての印象は…なかなかやる人、でした。と、同時に、的あてであれば、自分も同じ事をするのはさほど難しくない、と思える程度でしたから…。

そして、模擬戦が始まってからは…すごい人、に変わりました。いえ、とっても強いと言う訳ではないのですが、先生方と比べるに値する程度には強いと思いますし、魔法だけじゃなくて気も使えるとかもありますが、何より、すごくすばしっこいんです、長谷川先輩。

ある程度手加減されているようですが、始まってから一度も直撃を貰っていませんし、窮地からの脱出が上手いですし、何より虚空瞬動(後で、ちょっとズルをしている、と聞きましたが)まで使いこなす、機動力だけなら一流を名乗って差し支えない戦闘者でした。

…反面、攻撃は上手いとはいえ、火力不足で攻め手にかけると言った感じでしょうか…いえ、実戦形式が苦手な私よりは攻め手だけでも十分上手なんですけれども…。

「これ位にしておきましょうか、長谷川さん」

「はい、葛葉先生」

あ、模擬戦が終わったようです。

「佐倉さん、何か感想はありますか?」

「はい、長谷川さん、とてもすごかったです。機動力に関していえば、私が見た事のある範囲ですが、機動戦闘が得意な先生方の中でも最上位に比肩していると思います。ですが…攻撃は威力・手数不足で少し決め手に欠ける…と言った感じでしょうか、少しアンバランスな感じでした」

「そうですね、私も同様の感想です、よければ理由をうかがっても?」

「あ~元々、私は護身・逃走術の系統から魔法戦闘に入っていますので、どうしても避ける事を重視してしまって…そのまま鍛えていたらこの通りです。位置取り次第ではもう少しやれるかと思っていましたが、手加減して頂いていても、さすが魔法先生と言った所でしょうか」

そういって、長谷川さんはにこりと笑いました。

 

 

 

 

 

 

「疲れた…と言うか、なんで神鳴流剣士ってあんな目がいいわけ?」

「ちうさま、神鳴流は見切りの流派でもあるので…」

「わかっているよ、飛来する弾丸見切れる連中が、油断してなきゃ糸を見られないわけがないだろうからなぁ…やっぱり、本物の虚空瞬動と縮地使えるようにならないと厳しいなぁ…」

色んな意味で誰にも話せない愚痴を電子精霊相手にぶちまける私だった。

と言うか、縮地と呼べるレベルの瞬動を決めたと思った時でさえ、きっちり追跡して来るとか、さすが魔法先生は化け物である。

 

 

 

そうして、大停電の夜…私達の見回りは、外出禁止を破る生徒の姿さえ見つからず、軽い雑談による交流だけを成果として終了し、その間にエヴァとネギとの決闘は全てが終わっていたのであった。

 

 

 

「と、言う訳で、ネギ先生の御父上が生存されている事を知ってマスターはご機嫌です」

「なるほど…それと、すまなかったな、見届けに行くつもりだったんだが」

「ふんっ、お前が来ると話が余計ややこしくなっていたわ…と言うかお前の話からすると、全てはジジイの掌の上という事ではないかっ」

「まあ、何処までかはともかく、大停電の間私を拘束しておきたくてああなったのは確実だろうな…あれが偶然なら、それはそれで天運と言う奴かね」

「…まあ良い、ナギのやつの情報も入り、空手形だが坊やが呪いを解いてくれるという約束も得たし…結果オーライという事にしておこう」

うんうん、と頷き紅茶を口にするエヴァに倣い、私もそうする事とした…結果オーライと考える、という点を含めて。

 




ちうたんはすばしっこい。糸術による足場を見切れなければ虚空瞬動使えるのとほぼ同じ、年単位でエヴァ一味にポッコにされているのは伊達じゃないです。まあ、回避をメインで磨きすぎたおかげで、アンバランスに育ちましたが。もっとも、色々と『ズル』と言う名の半外法でドーピングしていれば攻め手ももうちょいマシにはなります。

ま、学園長が盤上に不確定要素が乗るのを嫌って締め出された感じっすね、今回は。
模擬戦を愛依視点にしたのは、本人視点だと非常に駆け引きが書きにくかったので…ちなみに、ちうたんの悪癖で、カエデとやった時みたいに、相手に合わせてついついギアを上げちゃう癖があり、外法無しの全力は出していました。

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