25 修学旅行編 第1話 修学旅行 ≦1日目、夕刻
修学旅行前の土日、私はマスターの別荘に『5時間』ほど、缶詰になっていた。
普段は水曜日と土曜又は日曜日で連休などに+αする別荘使用のスケジュールがこの前の一件で崩れていた分と、修学旅行で使えない分の調整と、いつぞや楓相手にやらかした『手加減されている状態でも変にギアを上げていって本気を出して、相手にも出させてしまう(本気に到達しているとは言っていない)』、と言う悪癖が再発したので、お仕置きを兼ねていつも以上にハードな鍛錬である。
「相変わらずすばしっこさだけ上達しおってからに!もっと強力な魔法も使え!」
「無茶言うな!これ以上ギア上げたら、マスターへの献血分と合わせて失神する!」
「だから、失神するまでやれと言っているんだよ!ちゃんと増血剤投与してファンタスマゴリアに放り込んでしごいてやるから安心しろ!」
「ただでさえ加速空間なのにさらに体感時間加速させる巻物の使用前提にされても困る、マスター!」
「失血死したいならそう言え!私が納得するまで続けるからな!」
こんな感じで、言い合いをしながら(ただの売り言葉に買い言葉であるが)空中機動戦闘+無詠唱魔法の打ち合いとか言う苦行である、今やっているのは。
というか、冗談抜きで血が足らん…もういっそ白き雷二連でもやればマスターも満足するだろうか…。
超包子に呼び出された私は、仕事をしながら愚痴を言っていた。
「これ、私が手伝う必要あるのか…?荷物持ちとかはともかくさ…」
「ほら、千雨サン、無駄口叩いてないで肉まん包むヨ…お料理研究会は通常営業分で手一杯ネ、それを考えたら皮と餡を用意してもらただけでも感謝するヨ」
「はいはい」
と、修学旅行中の販売分の肉まんを包むヘルプに入る事になっていたりもした…販売と運搬はたまにヘルプに入っていたが、包むのは最近してなかったなぁ…とか感慨にふけりながら私は肉まんを包んでいく。聡美は自動化しようとするし、クーは割とすぐ飽きるし、なので私と超と五月の三人で…。
「で、そう言えば、班行動って大阪観光に行くんだっけか」
「すいません、私の我儘を聞いていただいて…」
「気にするな、五月。私も是非、肉まん界における関西の雄と、そしてそれと源流を同じくする中華飯店を訪ねてみたかったネ。クーもノリノリだったし、あくまでお昼とおやつだけの事ヨ」
「そうだな、聡美や私は特に希望もなかったし、五月のスキルアップにつながれば私らも恩恵受けられる。それにザジも楽しみそうだったし」
「超さん…千雨さん…」
と言う訳で、私達第二班は修学旅行で難波近くの大阪観光をする予定となっていたりする。京都奈良の筈が大丈夫なのか、とも思ったが、第4班はUSJまで行く計画を出してOKを貰っていたので、特に問題は無いらしい。
そうして迎えた修学旅行初日、朝ご飯としての肉まん販売員のヘルプ(麻帆良駅から売っていたので京都以外を含めた他のクラス相手にも)を済ませた私は、超包子関係の仕事は荷物持ち以外からは解放され、聡美と並んで新幹線の発車を待っていた。
「楽しみですね、関西観光」
「そうだな、関西の食にも興味はあるし…マスターのしごきはきつかったけど」
「あーエヴァンジェリンさん、修学旅行と言うか校外学習は参加できませんからねぇ…八つ当たりでもされました?」
「私怨が混じってないとは思…いたい。一応名目はいつぞや楓相手にやらかした事だし」
「長瀬さんと言うと…格上相手に対応を誤ったとかいうあれですか?」
「まあ、そんな感じだな…おかげで血が足らんよ…」
と、つい不用意な言葉も漏らしてしまう。まあ献血の方は聡美も知る所なのではあるが
「ならば、ハイ、肉まんです、私のおやつ分ですが、一緒に食べちゃいましょう」
「ああ、ありがとうな…おっ、発車する様だな」
こうして、4泊5日の修学旅行は始まったのであった
「…良いのかコレは…秘匿的な意味で」
唐突に車内にあふれ出したカエルを一匹拘束して呟く。
あまり触りたくないので糸で後ろ脚を縛って、であるが
「これ、魔法ですか?」
「たぶん、符術か召喚獣だなあ…潰せばわかるんだが…」
「えー万一本物ならグロくないですか…」
「…エチケット袋の中でやろうか」
で、エチケット袋の中でカエルを切り裂いてみると、消え去った…召喚獣だったらしい。
「関西と関東では組織が違うはずだから、何かの嫌がらせか…威力偵察か」
「嫌がらせはともかく、威力偵察ですか?」
聡美が首をかしげる。
「嫌がらせ、悪戯で済む程度の攻撃を仕掛けてこっち…と言うか関東側の対応力を探っている…とかな」
「へー成程…となると本命は?」
「対応次第では来るだろうなぁ…まあ、外様の私にゃ、火の粉がかからない限りはあんま関係ないけれども」
「確かにそうですが…これが起きているのがうちのクラスだけだと、狙いってうちのクラスって事になりません?」
「あ…その可能性は…高い」
陽動というのも無くはないが、まあ威力偵察説ならばその通りである。
「千雨も捕まえるの手伝うアルよ!」
クーから呼ばれる
「はいはい…じゃあちょっと行ってくる」
「頑張ってくださいね~」
聡美にそう言われながら、ビニール袋を手袋代わりにしてカエルの回収に参加する私であった…召喚獣でも、カエルを素手は、できれば避けたい
「終わったか?」
「そのようアルね…」
と言っていると、ツバメの様な何かがネギ先生が懐から出した封書を奪って飛び去って行った。
…あれが狙いか。
一瞬、私も追いかけていこうかと思ったが、ネギ先生に預けられる程度の何かであれば、奪われた所で、(私に火の粉が降りかかってくるような)大事はないかとこちらの対応を優先する事とした。
「クー、カエルは私が処分する」
「千雨、お願いできるアルか」
そうしてクーからカエルを受け取った私は、先生が出て行ったのと逆の扉からデッキに出ると、低級な召喚獣を送り返す魔法を唱えた…よし、無事に送り返せたようである。
一匹一匹潰すのは面倒であるし…
カエルを捕まえていた袋と手袋にしていた袋を合わせて捨てて車両に戻ると、不満そうな刹那が、そして何かを悩んでいる様子のネギ先生がちょうど戻ってくる所だった。
それから特に何事もなく、最初の目的地である清水寺に到着した私達は、記念撮影を行った後、夕映の清水寺解説を聞いていた。しかし、内容が地主神社と音羽の滝になると、恋愛・縁結びと言う単語に反応した連中が騒がしくなり、駆け出した先発組を追いかけるようにクラス全体も移動する事となった。
「やれやれ…そんなに良いもんかね、恋愛」
「一般には、私達位の年頃だと興味津々らしいですからね〜」
その最後尾を、私は聡美とのんびりついていく。
「ま、心を許せるパートナーっていう意味なら、私は聡美がいるからそれで十分だけどな」
「私も、好きにさせてくれて、研究に理解がある人ってのは必須だと思うので、私も千雨さんで十分ですね…もっとも、今は互いに色々秘密や話せない事は抱えていますが」
「アーうん…まあ…な」
そんな話をしながら石段を登りきると、ちょうどのどかが恋占いの石にタッチを成功させている所だった…が、手前で委員長とまき絵が落とし穴から救出されている所だった。
「また、ですか?」
「たぶん、また、だなぁ…」
色々と前途多難である。
気を取り直して音羽の滝、当然のようにクラスの半数近くが縁結びの滝に群がっては何杯も飲んでいた。
「…一種類、一杯が正式な作法じゃなかったか?しかも作法を外すと効果が弱まるとか何とか…」
「まあ、気分の問題ですしいいんじゃないですか。私達も、健康の水、いただきましょうか」
「ん?学業じゃなくていいのか?」
「いやだなぁ…学業は自分で何とでもできますし、縁結びは、既に良縁に恵まれていますが…健康だけは自力ではどうしようもないですし」
「聡美は研究でよく夜更かししたり、睡眠時間確保のために研究室で寝たりとかしたりしているしな」
「千雨さんもエヴァンジェリンさんの下で無茶していますしね」
くすくすと笑いながら、私達は健康祈願の水を、一杯ずつ飲むのであった。
「…なんか、みんな酔いつぶれてないか」
「…そうですね…縁結びの滝の水から希釈したエタノールの匂いもします」
様子のおかしい連中からとったひしゃくの水をかぎながら聡美が言う
「健康の滝は普通だったって事は…」
「なっ…滝の上にお酒が!いったい誰が…!?」
ネギ先生の声が上から聞こえる。
「…って事だな、まあ今回のは魔法関係ないから悪戯って事で処理すりゃいいだろう」
…と、思っていたのだが、ネギ先生、特に報告もせずにそのまま隠蔽する事を選んだようである。
となると、相手がこっちの魔法組織であるという認識で、手段の如何に問わず、魔法の隠蔽という事で話を大きくしたくない、と言う訳かな…?
どちらにせよ、すでに私達にも火の粉が及びかかっているわけではある。
「ちょっとネギ少年、問い詰めてくる」
「よろしくお願いします〜。でも無理はしないでくださいね、私も千雨さん達との修学旅行楽しみにしていたんですから…離脱されると困ります」
「おう、わかっている。極力はネギ先生に任せる方向で行くよ、私も旅行は楽しみたいし」
「あっ、アスナ、ネギ先生何処にいるか知らねぇか?今日の事、問い詰めにゃならん」
「あ、千雨ちゃんも?浴場前にいるらしいから一緒に行きましょ」
遭遇したアスナと共に浴場前に向かうと、カモと何かを話しているネギ先生を見つけた。
「ちょっと、ネギ」
「あ、アスナさん、千雨さん」
「とりあえず、酔っている皆は部屋で休んでいるって言ってごまかせたけど…いったい何があったって言うのよ」
「新幹線でも、なんか封書を鳥の形をした何かにすられていましたよね」
「じ、実はその…」
「言っちまえよ、兄貴!」
先生が言いよどむのをカモが煽る
「実は、関西の魔法団体に僕たちが狙われている様で…」
「えーっ私達3-Aが変な関西の魔法団体に狙われている!?」
「はい、関西呪術協会っていう…」
いや、ヘンな魔法団体って言うが、関西呪術協会の方がこの国では土着の古い組織だぞ、関東魔法協会よりも…と言うか、西洋魔法の普及に伴って広い意味合いでは呪術などを含む今の名称に改名しただけで、元々は関東も呪術協会だったはずである、確か。まあ、話の本質には関係ないし、私達が巻き添えだとしても、狙われているのは事実であるし。
「で、カエルも、落とし穴も、酒樽もそいつらの嫌がらせらしい、と」
「どうりで…変だと思ったのよ。また魔法の厄介事か」
そういってアスナがため息をつく
「すいません、アスナさん」
「ふふっ…どーせまた助けて欲しいって言うんでしょ? いいよ、ちょっとだけなら力貸してあげるから」
「まあ、私も今回はしがらみもねぇし、降りかかる火の粉を払う分くらいは手伝うよ」
「あ…アスナさん、千雨さん」
ネギ先生が感動している
「そうだ、姐さん、学者の姉さん、クラスの桜咲刹那ってやつが敵のスパイらしいんだよ!何か知らねーか」
「えっ、刹那のやつが?」
公私共に、木乃香を守る事一筋のやつだと思うんだが…
「え~~っ!? スパイって…桜咲さんが?そんな突然
そ、そうね…このかの昔の幼馴染だって聞いた事あるけれど…ん〜〜そういえばあの二人がしゃべっているところ見た事ないな…」
と言ったアスナのセリフから、カモとネギは刹那が関西の刺客だという結論に至ろうとする。
「あ~マテマテ、私からは詳しくは話せんが、刹那は木乃香の護衛だと本人からは聞いている。
一応、木乃香に危害が及ばない範囲なら、何かしらの命令が下りてきているならば敵対する可能性は否定できんが…少なくとも木乃香の側に居られなくなるような事をするやつじゃないぞ」
木乃香も刹那も関西呪術協会の大物の娘とその親から派遣された護衛としか知らんが、木乃香が学園長の孫でもあるって事は、親関東派のはずだし。
「でも、学者の姉さん、それは本人の自己申告なんだろう?」
「だが、学園長が木乃香の周りをウロチョロするのを認めている、と言うのも事実だな」
と言う話をしていると、源先生がネギ先生に風呂を済ませる様にと言いに来て、話の続きは夜の自由時間に、という事で一度解散となった。
自由時間、木乃香と引きはがせる雰囲気ではなかったネギとアスナに就寝時間後にロビーで、と伝えて一度部屋に戻って待ち合わせに来てみると、刹那が入口に符を張ろうとしているのに出くわした。
「よ、刹那。直接動く事にしたのか」
私は近くのソファーに腰かけながらそう言った。
「千雨か。まだ小手調べと言った雰囲気だがこのかお嬢様に被害が及びそうになったのでな」
「そうか。それはそうと、ここでネギ先生達と待ち合わせをしていてな、会いたくなければ少し離れていて欲しい」
「いや、むしろそれは好都合だ」
と、言った所でネギ先生とアスナ(とカモ)が登場した
「な、なにをやっているんですか?桜咲さん」
「これは式神返しの結界です…」
「へぇーところで、千雨さんとここで待ち合わせをしていたんですが…」
「ここだよ、ネギ先生」
丁度、柱の陰になっていて見えなかったらしいので、顔を出してそう言った私だった。
行動の描写が無い2班の皆さんの自由行動は五月さんの希望で東の肉まん王者をおやつに、それと源流を同じくする中華飯店でお昼を、と言うプランになりました。ぶっちゃけ蓬莱ですね。
つまり、ちうたん、夕方まで、また舞台の外だよ、やったね!(待ちなさい
いや、晩はちゃんと参戦しますが、多分
なお、割と本気で自分とハカセに火の粉が降ってこなければどうでも良いと千雨さんは思っています。さすがに頼られたり、誘拐とかシャレにならない状況を見つけたりしたら手助けしますがよくわからない封書を狙っていて嫌がらせしかけられているという認識なので、まだ。
班分けについて
千雨さんとザジさんが美空と楓と入れ替わっただけです。
たぶん、原作の班分けでは千雨も美空も楓もザジも仲良しグループが集まった後に割り振られた組ですし(酷い
なので、同室の千雨さんとハカセにザジさんが割り振られて、6班の楓が委員長に引き取られて、という班構成です。
いや、シネマ村が過剰戦力になりますが、まあ、楓さんは百鬼夜行相手に遊んでいるという
事になるんじゃないかな(
追記
感想ありがとうございます。
それと、誤字報告もありがたいのですが、ページ上部の誤字報告機能からお願いします。
ちなみにぽーやはうちのPCが濁点と半濁点を入れ替える変換をかます事があって、それが原因ですね。