例えばこんな長谷川千雨の生きる道   作:紅シズク

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26 修学旅行編 第2話 修学旅行 1日目 晩

「…えっと、桜咲さんもその…日本の魔法を使えるんですか?」

刹那が私の隣に、ネギとアスナが斜めの前のソファーに座った後に、最初に口を開いたのはネギ先生だった。

「ええ、剣術の補助程度ですが…えっと、神楽坂さんには話しても大丈夫なんですね?」

「はい、大丈夫です」

「あはは、もう思いっきり巻き込まれちゃっているからね」

 

「では…早速ですが、敵の嫌がらせがかなりエスカレートしてきたのは理解されているかと思います。そして、先ほどは本腰を入れた行動ではないにせよ、木乃香お嬢様を誘拐しようとする動きにまで至っています。よって、それなりの対策を講じなければならないかと…」

「げっ、先生の持っている手紙だけじゃなくてそこまでかよ」

私は新情報に思わず口を開いた。

「ええ…最初は親書が主目的だったのでしょう…ネギ先生は優秀な西洋魔導師と聞いていましたのでうまく対処してくれると思ったのですが…意外と対応がふがいなかったので敵も調子に乗ったようです」

「あうっ…ス、スミマセンまだ未熟なもので」

「じゃあ、やっぱりあんたは味方…!」

おいエロガモ、さっきは私の刹那に関する証言でも意見かえなかったくせに。まあいいけど

「ええ、そう言ったでしょう」

そう言った刹那に、カモが敵と疑った事を謝罪し、ネギ先生の求めに応じて刹那は今回の敵について説明する。呪符使いと式神について。

「付け加えておくと、一般に符術は用意が必要な代わりに威力と発動速度では西洋魔術に勝る傾向がある…んだよな?」

「はい、まあ術者の力量次第ではありますが」

 

続けて、刹那は刹那自身も属する京都神鳴流についても説明した。

「じゃ、じゃあ神鳴流って言うのはやっぱり敵じゃないですか」

「いや、どうしてそうなる。あくまでも敵は関西呪術協会の一部なんだろう?

ならば流派自体が敵になる事はねぇ…それとも、神鳴流も反西洋魔法派が主流なのか?」

ネギの早合点に釘をさし、刹那に尋ねた

「いえ、確かに、流派総出で襲撃をかけてくると言った事はないでしょうが…神鳴流等を含めた広い意味での関西呪術協会全体の空気としては敵対が主流とまではいかなくとも、長年の確執がありますので…少なくとも、西を抜けて東についた私が公然と裏切り者呼ばわりされる程度には…」

刹那が寂しそうな、しかしこれでいいんだ、と言う顔をする

「でも、私の望みは木乃香お嬢様をお守りする事で、その為ならば仕方のない事です。

私は…お嬢様を守れれば満足なんです」

私ならば仲良くもしたいし、守る為にそばにいる事を選ぶとは思うが、それは刹那の決断次第である。

「刹那さん…」

「……よーし、わかったよ、桜咲さん。

あんたが木乃香の事嫌ってなくてよかった、それが分かれば十分、

友達の友達は友達だからね、私も協力するわよ」

「か。神楽坂さん…」

「よし、じゃあ決まりですね。

3-A防衛隊(ガーディアンエンジェルス)結成ですよ!」

「えー!?何その名前…」

「せめてガーディアンズにしねぇか?」

私とアスナが名前にケチをつける。ネギ的には守護天使的なノリで言っているんだろうが、恥ずかしい。

とはいえ、四人で手を重ね、上にカモが乗る。

「えー…まあ、名前はともかく、関西呪術協会からクラスのみんなを守りましょう!」

「おう」

 

「今夜、また敵が来るかもしれません、早速、僕、外に見回りに行ってきます」

ネギはそう言って走って行ってしまった。

「さて、見回りは私もするが、木乃香の警護は二人に頼む。

うちの部屋の連中の事もあるし、先に3時間休憩貰って良いか?

その後、ネギ先生と交代しながら朝まで見回りするから」

「ええ、ではそのように…神楽坂さん、私は一通りホテル内を確認した後、消灯まで見回りをしますので先に木乃香お嬢様についていていただけますか」

「わかったわ、じゃあそういうことで行きましょう」

という事になり、私は一度部屋に戻る事となった。

 

 

 

「「で、結局どうなったカ」んですか」

部屋に戻ると聡美と超が待ち構えていた。

「…とりあえず、嫌がらせの下手人はこっちの魔法団体の一派らしい。

一応交代で朝まで警戒態勢をとる事になって最初に休憩貰ってきた。

まあ、うちの班は巻き添え以外で被害は出そうにはない、とだけ言っておくが…それ以上はコレだ」

そう言って私は唇に立てた人差し指をあてた。

「むむ…私達はぐっすり眠って問題なさそうなのは有難いガ…」

「千雨さん、朝まで警戒って…無理しちゃ駄目だって言いましたよね?」

「いや、私、コレでも気も魔力も使えて眠らずに三日間以上余裕で活動できるからな?」

マスターの下での実体験である。まあ、小休止は挟んでいたし、全力で活動すればその限りでもないが。

「むー…これ以上言っても千雨さんの休息を削るだけなので引きますが…本当に無理はしないでくださいね?」

「ああ、余裕もって仮眠時間も貰っているし、明日以降も移動時間に体を休めていれば大丈夫だよ」

 

と、言っていると私の携帯が震えた…アスナからだ

「すまん、出る。あーもしもし、どうしたアスナ」

『千雨ちゃん、大変なの、木乃香がおサルにさらわれて…今、追いかけているんだけど駅の方にこられる?』

「分かった、すぐ行く…悪い、早速しかけて来たみたいだ、ちょっと出てくる」

「万一、此方が本命でそっちが陽動だったら電話入れるネ」

「もう…分かりました、気をつけて…無事に帰ってきてくださいね」

「おう、じゃあ行って来る」

そう二人に返し、私は窓から文字通り、空へと躍り出るのであった。

 

 

 

「あれか」

そのまま、駅の方に駆けると木乃香を抱えた猿の着ぐるみと、それを追うネギ達が見えた。

合流しようとしていると、猿とネギ達の間に目掛けて放たれた短刀のようなモノを捉えた。

「ちっ」

強く地を蹴り、軌道を修正した私は鉄扇でその短刀を全てはじく。

「「「千雨!」さん!?」ちゃん!?」

突然現れた私と金属音に足を止めかけるネギ一行。

「こっちは私が引き受ける、いけっ!」

しかし、それでは木乃香がさらわれてしまうと追跡続行を促す。

「すまん、恩に着る。行きますよ、ネギ先生!」

刹那が追跡速度を戻し、ためらいつつも、ネギとアスナもそれに続く。

それを狙うようにまた短刀が飛来するが、此方も跳躍し、同様に防いだ

 

「なかなかやるやんか、姉ちゃん」

射線から推定した敵の方から突然に…恐らく瞬動で現れたのは、犬耳を生やした学ラン姿の少年だった。

「さっきのはお前か、犬耳の少年。犬猿の仲というけど、サルに犬が協力するのか」

「まあ、別に俺も姉ちゃんも犬でもサルでもあらへんしな…引いてくれるんやったら痛い目みいひんで済むで」

「はっはっは…今引いたら、向こうに合流するだろうが…瞬動を使えるならまだ間に合う」

丁度、先生達が猿の飛び込んだ列車に乗れたのが見えた。

「せやな、でもそれは姉ちゃんも一緒やろ?

やから…女を殴るんは趣味やないけど少し付き合うてもらうで」

「はっ、殴れるもんなら殴って見やがれ」

こうして私と犬耳少年の戦いが始まった。

 

 

 

「なかなかやるな」

少年の猛攻を凌ぎながら私は言った…直情的な攻めに見えて案外隙のない攻撃である。

「ほざけ!涼しい顔して全部受け流しとる癖に何言うとんねん…ギア上げてくで!」

「勘弁してくれ、疲れる」

とは言え、そろそろ仕込みは良いか。

宣言通り気の密度を上げて攻撃の手を強める少年に、私は少しバックステップを多めに受けに回る。

 

そして…私は少しバランスを崩した。

「貰うた!」

できた隙目掛けて攻撃をかけてくる少年。

 

魔法の射手 戒めの風矢

 

…に、わずか3本であるが無詠唱で発動した魔法の矢が襲いかかる。

 

「なっ」

「ノイマン・バベッジ・チューリング 魔法の射手 闇の7矢」

 

跳躍して距離をとりながら追撃に放った魔法の射手は…護符で戒めの風矢を防いでいたらしい少年を捉えきる事はできず、一本が掠めただけだった。

 

「へぇ…それが護符か。少し想定外だ…知っていれば雷にしたんだがな」

興味深げに呟いた私に少年が返す。

「姉ちゃん西洋魔術師かいな!っちゅうか杖もってへんやん!」

「そういえば言ってなかったな、ちなみに発動媒体は秘密だが身に着けているアクセサリーのどれかだとだけ言っておこうか。

だが、まあ神鳴流剣士だって陰陽術を使えるんだ、それくらい想定しておくべきじゃねぇか?」

と、挑発してみるが、まあ意図的に接近戦闘者だと思わせての奇襲的無詠唱魔法という、割と有効な手を用いたのは私である。

 

「へっ、それもそうやな、せやったらこっちも、もうちょい本気だすわ!」

「それは面倒くさい…というか、本隊は十分離れたし、もう良いんじゃないか?お互い」

「そういうわけにも行かへんわ、姉ちゃんみたいなすばしっこいの放置したら追いついてまうやろ」

「ならばもう少し相手をするか…」

「ほな、いくでっ」

 

少年の影が蠢き、犬の姿をした使い魔が現れる。

「なるほど、召還術師でもあるわけか」

「おう、狗神使いや」

私は、ぺしぺしと鉄扇で犬たちをいなしながら下がりつつ、詠唱に入る。

「ノイマン・バベッジ・チューリング 雷の精霊23柱 集い来たりて敵を射て」

そして、発動の瞬間、後ろに跳ぶ。

「魔法の射手・散弾・雷の23矢」

少年を中心軸に放射状に放たれた魔法の矢が近くの犬を消し去り、離れた犬にも手傷を負わせる。

 

しかし、発動の瞬間少年が掻き消えた…ミスったか。

「もろうた」

着地までの瞬間を狙い、大きく回り込んだ少年がそう呟く。

しかし、私は空を蹴ってさらに大きく跳躍し、着地する…。

まだ糸なしだと成功率6割と言った所だが、糸を編む間もなかったので挑戦した結果、成功して良かった。

「おしい」

回り込めないように犬の分布ではなく少年を中心の散弾にしたんだが…うまくいくかもわからない虚空瞬動を使わせられてしまった。

 

「なっ…姉ちゃん、虚空瞬動まで使えるんかいな」

「まあ、まだまだ拙いけれどな」

と、さも予定通りと言った顔で、しかし内心冷や汗で少年と対峙しながら言う。

正直、ちょっとアレな技術なしの底は見せてしまった。

まあ、必要とあらば使うが、痛いし、体にも負担なので、少年がこの範囲で対処できる範囲だとよいのだが。

 

「はぁ~西洋魔術師の癖に武術で達人クラスって何やねん…

っちゅうか、ソレできるんやったら、俺の事無視して向こうの追跡できたんちゃうん?」

あきれたように少年が言う。

「一般生徒を狙うとは思わないが、ホテルの傍に敵を放置してソレはちょっとな…万一があると困るんでな」

「そんなことするかいな」

「まあ、一応という奴だよ…だから引いてくれるなら今夜は追わないでホテルで大人しく事の顛末を見届けるけど、どうだ?」

正直、私個人としては木乃香より聡美である。まあ、この少年が現れていなければホテルが襲撃されるとか考えずに追いかけていただろうが。

「っちゅうてもなぁ…おっ…丁度撤収の合図が来たから今日は帰るわ」

「おう、じゃあな…まあ結果の如何によらず、また会うだろうが」

木乃香がさらわれたなら奪還作戦で、刹那達が奪還に成功していれば次の襲撃で会う事になるはずである…が、まあ木乃香を守り切って修学旅行を終えられればこちらの勝ちなので逃がしても良いだろう、このまま戦闘を続けるのは私にとっても大きなリスクであるし。

「せやな…ま、それじゃあまた」

そう言って少年は帰っていった。

 

少年を見送った私はホテルに戻り、周囲に糸術で鳴子のように働く結界(物理)を構築してホテルの屋上で先生達の帰りを待つのであった。

 

 

 

「お帰り、刹那。木乃香は先生と一緒か?」

「ただいま、千雨。お嬢様は先生に任せて戻ってきた…ああ…明日はお嬢様達と班行動だ…どんな顔をして会えばいいんだ…」

刹那が困った顔で言う

「いや、嬉しいんだろ?ならニコニコしてればいいじゃないか」

「いや、だが私は本来お嬢様の護衛という立場さえおこがましい身分なんだぞ」

「前も言ったが、関東に鞍替えしているんだから関西での地位とか気にせんでいいだろう、

魔法の秘匿的な意味で傍にいられないと言っていたのは理解するが…まあもうばれただろうし」

こいつ、木乃香に本気で問い詰められたらどの程度抵抗できるかはともかく、魔法の事をゲロるのは確実である。

「というかだな、少なくとも護衛の件は親公認というか、親からの依頼なんだろう?

関西の某大物だって言う木乃香の親の」

「まあ…そうなんだが、だからといって身分も弁えずに御学友として親しく振る舞っても良い訳では…」

 

「はぁ…まあ、この話は置いておいて…情報交換だ、どんな敵だった?

こっちは犬耳の狗神使いの少年だった、腕は…私と近いくらいだな。

お互い底は見せてないが、あちらが完全に遊んでいたのでなければ私もお前も負ける事はないと思う。私が勝てるかは別として」

何度か話して既に結論が出ない(刹那の決断でしか結論の出しようがない)事が分かっている話題を打ち切り、実務の話題に入る。

「ふむ…犬耳の狗神使いと言う事は狗族の血を引いている可能性が高いか…獣化は使ったか?」

「いや…と言う事はまだ強化の余地はあったって事か?」

「血の濃さにもよるが、犬耳だったのならば程度はともかく獣化は使えるだろう」

「ん~単純に身体能力の強化だけなら…たぶん対応できるな」

女を殴るのは趣味ではない、と言うのが思いのほか本気で、すごく手加減していたとかならともかく。

 

「此方は猿の着ぐるみの女がやはり呪符使い、特段特徴はないが技量は…並よりは上だな。

そして…敵にも神鳴流剣士がついていた。大小二本の小太刀による二刀流で対人戦を得意としているようだ…技量は同格か少し下、得物の相性で不利、といった所か」

「うげっ…刹那と同格程度で対人特化の神鳴流剣士とか、最悪じゃねぇか…」

「まあ、お前なら一方的にやられる事はないだろう。今日見た程度から多少伸びた所でお前なら捌き切れるし、お前には虚空瞬動モドキと魔法があるだろう」

「…糸術の足場を見切ってくる近接戦闘の達人という時点で相性悪いんだよ」

ふてくされながら言う。私の機動力は不可視…とまではいえないが見えにくい空中の足場を糸術で自在に展開できる事が大きなアドバンテージである。

「あ~確かに、一本一本はともかく足場にできるほど纏まった地点は見切れるだろうなぁ…ある程度以上の神鳴流剣士なら」

もう少し虚空瞬動が使い物になればそれもフェイントにできるのだが、今はまだ見切られると機動が読まれるだけである。

 

「で、どうする?私はさほど疲れていないから、後で3時間ほど仮眠をもらえるならばこのまま見張りを続けられるが」

まあ、全く疲れていないといえば嘘になるが。

「すまんが、先に休ませてもらいたい」

「おう、わかった。お休み、刹那」

「お休み、千雨」

こうして、刹那を見送った私だったが、暫くしてから戻ってきた結局ネギ先生達も後片付けなどで疲れており、結局、私が仮眠を取れたのは空が白み始めた頃の事だった。

 




小太郎君が前倒しで登場しました。小太郎君が手札として使えるなら月詠さんが到着駅にいたように、逃走支援に配置しておくべきなんすよね。フェイトの見張りとか子供は夜は寝とけと千草さんが寝かせたとか、思いの外、手ごわかったので呼び寄せられたとかいろいろ説もありますが(
ちなみに、小太郎君を千雨さんが引き受けると言って刹那はとっとと行って、ネギ君とアスナさんが躊躇ったのは、千雨さんが割と戦えるのを知っていたか否かの差です(実はネギ君の前で戦った事ないどころか、戦えるとも言った事なかったはずです、千雨さん(厳密には茶々丸の相手位、とは言っていますが)まあ、せっちゃんはお嬢様優先思考も無いとは言い切れませんが
なお、投擲武器を弾いた辺りで女なんで殴りたくないけどそんな事言っていられる相手ではないとみなされています、千雨さん。

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