例えばこんな長谷川千雨の生きる道   作:紅シズク

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27 修学旅行編 第3話 修学旅行 2日目

「千雨さん、そろそろ準備しないと朝ご飯に遅れますよ」

聡美に起こされ、目を覚ます。時計を確認するとギリギリ3時間は睡眠をとれたようではある。

「わかった、すぐ身支度する」

私は、急いで制服に着替え、最低限の身支度で朝食会場に向かうのであった。

 

 

 

朝食を済ませ、ロビーに出ると、ちょうどネギ先生の争奪戦をしていた。

「別に、班別で動けってだけなんだから複数班で先生を囲めばいいのにな」

「あ〜そう言う手もありますねぇ…でも意見調整が大変なのでは?」

「…それもそうか」

なお、うちの班の行動の基本は現地の美味しい店を探して食べる、であり、観光はその合間に行う事としてある。よって今日のメインは三輪素麺と柿の葉寿司であり、大仏はおまけである。

そして、ネギ先生争奪戦はのどかの5班が勝利した。

まあ、そりゃあ、そうなるわな…木乃香の守りを固めにゃならんのだし。

というか、本来は巡回しながら生徒達を監督するはずだが…まあいいか。

 

しかし、毎日宿をかえるのが大変だとは言え、よくもまあ、嵐山のホテルから奈良に観光に行く計画を立てたものである。…まあ、バスの移動なので、その間ぐっすり眠らせてもらえてこっちとしては助かるが。

 奈良では特に敵の襲撃などはなく、とても楽しい時間が過ごせたし、昼食に選んだ店は大当たりだったと言っておこう。

 

 

 

そして、事件は夕方、ホテルで起こった。

夜に備えて部屋で体を休めながらのんびりパソコンをいじっていると、ネギの大泣き声が聞こえ、同時に魔力の発動を感じ取った…ヤバい。

「む…ネギ坊主の泣き声カ、今の」

「たぶんそうですね…」

「うん、ちょっと様子を見てくるわ…これ案件だ」

と、コンコンと発動体であると聡美と超は知っている腕輪を叩いて言った。

 

 

 

泣き声の方向からどうも露天風呂から聞こえてきたらしく、そちらに向かうと同じ目的であろうアスナや委員長と遭遇した。

「あ、千雨ちゃんもさっきの泣き声を調べに?」

「ああ…たぶんあれ、ネギ先生だよな」

「たぶん…」

ひそひそとアスナと合意を取る。そして、露天風呂を調べると…そこには裸のネギと朝倉がいた…。

 

あ、ヤバくね?と言うか、オコジョルート入ってないかい、ネギ先生…?

 

それが、まず何より最初に私の脳裏によぎった言葉だった。

とはいえ、周囲はそれよりもネギと朝倉が裸で向かい合っていた事の方が重要で、その隙に刹那を呼びに行くのであった。

 

 

 

混乱もおさまり、ネギに服を着せて、まずは状況確認をしてみると、案の定、朝倉に魔法バレしたらしい、よりによって、パパラッチ娘の朝倉に、である。

「もーダメね。アンタ、世界中に正体ばれてオコジョにされて強制送還だわ」

そんなアスナのセリフも、まあ仕方のない事である、魔法バレ対策機関の存在を知らなければ。

「まあ、ぶっちゃけ、世界にばらす前に魔法使いの組織が介入して情報操作と記憶処理に入るだろうが…まあ、ネギ先生の運命は…うん、朝倉の影響力考えるとオコジョルートだわな」

聞いた限り、重過失付きの大規模漏洩であるのでどう考えてもアウトである。

「そんなぁ…一緒に朝倉さんを説得してくださいよ、アスナさん、千雨さん、刹那さん」

ネギが泣き顔で懇願して来る。

「…正直、説得してみてもいいが、記憶消して証拠も破棄するのが一番ではあるがな、ネギ先生の保身的には」

というか、それが正しい魔法の機密保持の筈であるが。

といった話をしていると、カモを肩に乗せた朝倉がやってきて、ネギの秘密を守る為のエージェントとして働くとのたまった…朝倉が?と言うか、ネガなり元データなり破棄させないと写真だけ渡されても何の意味もないんだが…。

 

一度解散した後、私は朝倉(と、カモ)を問い詰める事にした。

「オイ、朝倉…カモと一体どんな取引しやがった」

「いやだなぁ…千雨ちゃん…ちょっとした対価はもらうけれども、秘密はちゃんと守るよ?」

朝倉がうさん臭い笑顔でそう言った。

「と言うか、麻帆良の三賢者とまで呼ばれる天才女子中学生科学者の一角が魔法使いだったなんて…お釈迦様でも気がつくまい…ってやつ?」

おい、態度で関係者だと気付くのは良いが…

「オイ、エロガモ、てめぇ私の事までばらしやがったな?」

朝倉からカモをひったくってギュっとする。

「が、学者の姉さん、だ、駄目…それ駄目だ、あんこ出ちまう」

「学者?そういえば、カモ君、さっきも千雨ちゃんの事、学者の姉さんって言っていたよね」

朝倉が疑問符を出す

「ったく…魔法も単なる不思議な力ってわけじゃなくて学問として系統立てられていてね…私は、魔法に関しても研究者なんだよ…それで学者の姉さんってわけだ。ちなみに、賢者(マギ)と魔法使い(メイジ)は同一の語源…と言うかラテン語じゃあどっちもマギだったりするから、朝倉の言うほど変な事でもなかったりするぞ、実は」

そういって大きくため息をつく。

「ま、ネギ先生が朝倉を信じるって言うなら特に私からはなにもしねぇが…ネギ先生の信頼を裏切ってみろ、そん時は…わかってんな?」

少しだけ殺気を出して朝倉を威嚇しておく。まあどちらかと言うと、カモに一蓮托生にされてしまったからここまで怒っているのではあるが。

「大丈夫、10歳の少年をガチ泣きさせてまでスクープしたいとは思わないし」

朝倉は、恐怖をギリギリ読み取れる程度まで取り繕いながら、気丈にそう答えた。

 

 

 

朝倉を脅してから速攻部屋に戻った私は、とっとと布団に入り見回りのシフトに備えて睡眠をとろうとしたが、騒ぎまくるクラスメイトの騒音で体を休めるのが精いっぱいであった。そこに、鬼の新田のお説教が入ったらしく、一度は静かになった…。

のだが、朝倉の悪ふざけ、ネギ先生のくちびる争奪戦とやらに各班二人の参加を要請された…らしい(私は周りが静かになって寝入った所をクーに起こされた)。

仕方なく、私達はそのメンバー決めを行う事にした。

「で、2班からは誰が出る?」

「私、出たいアル」

「私はパスで」

「私も遠慮したいです」

フルフル(首を横に振っている)

クーがいち早く参加を宣言、聡美と五月、ザジは不参加…と。

一応、移動時間に仮眠を取ったので今晩は不眠に近くても大丈夫ではあるか、正直、私は見張りのシフトが来る前に少し寝たい。

不眠で活動できるというのと、睡眠欲が沸かないのは別問題なのである…今も寝ようとしていたのであるし。

 

「「私もパスで」ネ」

 

超と私が同時に宣言する…。

「いやぁ…私もできればこういうイベントは見学したいのダガ…千雨サン?」

「…すまんが、明日もあるし、少しは寝ておきたい」

「む?明日は大阪で食事だから多少寝不足でも問題ないと違うアルよ?」

「アーそれは…」

「なら、千雨、ウルティマホラ優勝・準優勝ペアで行くアル」

クーに突っ込みを貰い、畳み掛けられる…。

しまった、超との会話のつもりで、魔法と直接関連ないからミスったか…というか思ったより頭の回りが悪くなっているのか…眠気とる魔法使っておけばよかった。

「むっ…千雨さんが出るくらいならば私が出ますよ?」

「いや、ハカセ、委員長とかえでサンのペアとか出てくるだろうにそれは危険ヨ」

「でも千雨さんの睡眠時間が…」

「二人とも何の話アル?」

事情を知る聡美と超の会話にクーが疑問を挟む。

「…わかったネ、私が出よう…ただしクーのサポートだけヨ。ネギ坊主の唇に興味はないから、クーが離脱したら私は棄権するからナ」

「ありがとう、すまんが頼む」

という事になり、私はとっとと布団に入った。

 

そして、日が替わる頃に起きてアスナと刹那と警戒を交代したのだが、その日は特に襲撃などはなく、無事に過ごす事が出来た…が…。

 

 

さて、翌日の食事中に聞いた話ではあるが、くちびる争奪戦とやらの大まかな経過は以下の通り。

 

まず参加者は1班が鳴滝姉妹、我らが2班がクーと超、3班が委員長と楓、4班が裕奈とまき絵、そして5班が夕映とのどか。

まず、3班と4班の遭遇戦が勃発、3班が有利に戦闘を進めていたが、そこに我らが2班…というかクーが乱入し乱戦に突入。しばらく後、超による(中国語での)新田接近警告により、クーが裕奈を撃破して逃走、警告を理解できた委員長も楓と共に逃走した。

そして場に残されて裕奈と、彼女を介抱しようとしたまき絵が合わせて新田に捕獲され、4班が全滅した。

一方、1班は屋根裏を、5班は屋外、軒下を迂回して先生の部屋に接近するもバッティング、夕映が殿となり、のどかを部屋に突入させた。直後、2班、3班が到着し、乱戦の様相を呈するも、ネギ先生の逃亡により、5班の王手は解消されて振出しに戻った。

 各班散会してネギ先生を捜索し…各班の前にネギ先生が出現し…キスを求めた。1班が喧嘩している(史伽の方にキスを求めたので、姉妹喧嘩勃発)間に、2班のクーが照れている間に、3班のまき絵が失格しているけどいいのかなぁ…とか宣って相談している間に、4班の委員長が身支度と記録装置をセットしている間に…夕映がそのネギ先生が偽物と気付き、後頭部を本で強打して偽物を消し去った…身代わりの符術だろうな…

 すると、ネギ先生たちはロビーに集結し、状況は混乱。超のサポートの下、いち早くそのうち一体にキスをしたクーだが、偽物のネギ先生は爆発、クーは失神…という事で超が部屋に回収してきて2班はリタイア。同時に、爆発を聞きつけた新田を偽物のネギ先生達がノックアウト、後には引けない戦いとなった。(2班はちゃっかりリタイアして安全地帯に退避しているが)

 まず、残り3体のうち、1体を鳴滝姉妹が捕獲し、両頬にそれぞれキスをし、ハズレ、爆発し、1班全滅。次に委員長が1体を捕獲し、唇にキス、ハズレ、爆発。そして残るは3班楓と5班の夕映とのどか。のどかの前に現れたラスト1体がのどかにキスをしようとしたところで、夕映が後頭部を強打、のどかと引き離した直後に爆発した。

 そして、そこに見回りから戻ったネギ先生が登場。のどかと何かを話したのち、夕映に足を引っかけられたのどかが事故チュー、くちびる争奪戦の勝者となった…。

と言った所で終われば、一応めでたしめでたしであるのだが、参加者並びに主催者一同は撤退に成功した2班を除いて新田に捕獲され、朝までロビーで正座させられる事となったのであった(一応、空が白み始めた頃には解放され、3時間程度は寝られたらしい)。

 

 

 

と言う訳で、ネギ先生がロビーで正座させられていたせいでシフトがうまく回らず、睡眠時間はさほど長く取れなかった…朝倉め。

 

 

 




ネギ君のくちびる争奪戦の参加者は超さんルートと千雨ちゃんルートで悩んでいましたが、ハカセの千雨ちゃんの睡眠時間を確保したいという願いで超さんが出る事になりました。うちのコンセプト、休息はしっかりとろう、なので(魔法で眠気をごまかせるのと体に負担がかからないのは別問題。まあ最低限の睡眠というモノのラインは確かに短くなるのだけれども。
 ちなみに、電子精霊はノーパソで一部だけ連れてきているので監視は手伝わせております。ただ、最悪見逃してもいい、目立つ事象を監視させた桜通りの時とは違うので、本人も起きてしっかり警戒していなくてはならんので寝ていられるわけではございません。(と言うか、瀬流彦先生の存在しったら無駄な努力だったと逆切れかますやつです。

・朝倉の千雨さん紹介
25番 長谷川千雨
天才その3
文武両道の体現者
昨年ウルティマホラ準優勝
なんだかんだで面倒見もよい

と、言った所でカモ君が魔法使いだと口を滑らせちまったわけですね、学者の姉さん、魔法使いなのに格闘もできるのかよ、って。

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