例えばこんな長谷川千雨の生きる道   作:紅シズク

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微妙にグロいと言うか流血…?アリです


28 修学旅行編 第4話 修学旅行 3日目

三日目の朝食後、私とアスナは朝倉とカモ、ついでにネギを問い詰めていた。

「で、私は仮眠とっていたからまだ詳細は聞いてないが、魔法の秘匿と仮契約をなんだと思っているんだ、朝倉、カモ」

「そうよ、こんなに一杯カード作っちゃって、いったいどう責任とるつもりなのよ、ネギ」

「えうっ!?僕ですか!?」

「まあまあ、姐さん、学者の姉さん」

「そーだよ、アスナ、千雨ちゃん、もうかったって事でいいじゃん」

「朝倉とエロガモは黙ってて!」

「はい…」

「エロガモっ!?」

「…と言うか、この件が原因でクラスの連中に魔法バレしたら、確実にネギ巻き込んで、朝倉もオコジョルートだからな?」

「うげっ」

思い至っていなかったらしく、朝倉が悲鳴を上げる。

「本屋ちゃんは一般人なんだから、厄介事には巻き込んじゃだめだからね。

イベントの景品らしいからカードのコピー渡したのは仕方ないけど、マスターカードは使用禁止よ」

「魔法使いという事もバラさない方が良いでしょうね」

「そうですね、のどかさんにはすべて秘密にしておきます」

「…個人的にはコピーカード自体も渡したくないんだがなぁ…渡したの、正式な意味での複製カードだろ?」

「ああ…惜しいなぁ…あのカード強力そうなんだが」

カモが寝言をのたまう。やっぱこいつ、ネギをオコジョにしたいんじゃなかろうか、と邪推さえ湧いてくる。

「まあいいや、姐さんにもカードの複製を渡しておくぜ」

カモがそういって、複製カードの説明を始めた…。

「というか、アスナのアーティファクト、ハリセンなんだな…絵は刀剣なのに」

「うん…なぜかね。でもあんまり物騒じゃないからいいじゃない」

「アスナのそういう所を汲んでいるのかねぇ…あんまりそういう例は聞いた事が無いが…てか、そもそも研究の進んでない分野でもあるが」

「でも、破魔の剣としての対魔法・対召喚獣送還能力はハリセンでも健在だぜ、障壁破りとか」

「うっへ…陰陽術師泣くだろ…それ」

「まあ、当てられなきゃ意味ないんだけれどね」

「それもそうだな…さて、今日の自由行動だけれど、私の班、大阪観光なんだが…大丈夫か?」

「ええ、お嬢様の護衛はお任せください」

「はい、日の高いうちにアスナさんと親書を届けてしまう予定です、千雨さんは観光を楽しんできてください」

「それじゃあ頼む…どうしようもない事になりそうなら、メールか電話してくれ。移動に一時間ほどかかるが、急いで戻るから」

「うん、わかった。ネギの事は任せておいて」

こうして、私は大阪観光を楽しめる事となった。

 

 

 

「美味しいですね…濃厚な餡に、それを受け止められるほど皮もしっかりしていて…」

「むむ…さすがは肉まん界の西の王者ネ」

「美味しいアル」

「(コクコク)」

「人肌程度まで温くなったのも別の味わいがあっていいらしいぞ」

「へぇ~楽しみですねぇ…」

と言う訳で、私達2班は大阪に移動し、まずは肉まんを購入して食べていた。

五月もそうしているように、しっかりとした皮と濃厚な餡の組み合わせは極めて美味で、独特の強い匂いが嗅いだだけでお腹がすくと言われるのもよくわかった。

まあ、癖のある匂いではあるし、苦手な人は苦手なんだろうが。

 

 

 

美味しい昼食を堪能しているとアスナからメールが入った。

急いで確認すると目的地寸前で敵からの妨害にあったが、無事に脱出できた事…それとのどかに魔法がばれた事が書いてあった。

そしてどうやら、妨害してきた相手は一昨日の犬耳の少年らしい。

「千雨さん…向こうで何かありました?」

「ああ、だが、もう解決したらしいから急いで戻る必要はないそうだ」

心配そうに聞いてくる聡美に、私はそう返し、アスナからのメールに了解と返事をしておいた。

…犬耳の少年が『一昨日の姉ちゃんは楽しめたのに、何や男の癖に情けない』とか言っていたらしいが、気にしないでおく。

それがどうもネギの闘争心に火をつけたらしい事も。

 

 

 

京都への帰還途中、またもやアスナと刹那からメールがあった。

今度は割と深刻な事態ではあるが…同時に解決もしているようであった。

内容を統合すると、次のようになる。

 

 白昼堂々、木乃香に攻撃を仕掛けてきた敵に対して刹那は木乃香を連れてシネマ村に逃亡。

しかし、敵は突発劇に見せかけて木乃香の誘拐を強行し、結果刹那が肩を貫かれる大怪我を負い、屋根から落下した。

それを木乃香が追いかけて飛び降り、光と共に着地、しかも刹那の怪我が治っていた。

 この事態を受けて、刹那はアスナたちと合流、本山へ逃げ込む事にした…が。

なんと、刹那の荷物に放り込まれていたGPS付き携帯により朝倉ならびに他の5班メンバーが追跡に成功してしまった。

やむを得ずそのまま本山に逃げ込み、親書の手交と庇護下に入る事に成功したらしい。

しかも、そこは木乃香の実家だったと言うオチまでついていたらしい…。

 

ってつまり、木乃香の奴、関西の大物は大物でも、長の娘かよ…そりゃあ血統的にも人質的にも狙われるわけである…。

 加えて刹那からのメールには、もうクラスが狙われる事はないだろうが念のために警戒を頼む、と書いてあった。

「はぁ…それでそうなるわけか…まあ、今夜はちゃんと眠れそうだな」

「問題は解決したんですか?」

「ああ、そう言って良いだろう。狙われる要因が全てこっちの組織の庇護下に入ったから私達はもう安心だろうってさ」

「それはよかったネ…千雨サンが無茶するとハカセの機嫌が悪くなるヨ」

「ちょっと、超さん」

「ダガ、事実だろう?」

「むぅ…事実ではありますが」

「…すまん」

割と本気で、私は二人に謝った。

もっとも、次に同じような事があったとしても無茶の範囲(無理ではない範囲)で、同じような事をするだろうけれども。

 

 

 

そして…肩の荷が降りてホテルの温泉を堪能し、ロビーで聡美とクーとで寛いでいると、近くにいた楓の携帯に着信が入った。

…なんだろう、そこはかとなくいやな予感がする。

あー聞こえてくる会話はどう解釈しても夕映からの救援要請で…夕映は今、ネギ先生と本山にいるはずなのだ。

「あー真名、クー、それと千雨…ちょっと話が有るでござる」

そう言って、楓がちょいちょいと私とクーを招く。

「千雨さん…」

「…うん、すまない、聡美。問題は解決してなかったっぽい…」

「おろ。千雨とハカセは事情をつかんでいるでござるか?」

「うーん…とりあえず、場所を移すか」

そう言って、私は場所を移す事を提案した。

 

 

 

「あーとりあえず、楓から説明を頼むか?」

私達…私、聡美、楓、クー、真名の5名…は人気のない場所に移動し、楓に説明を求める。

「ウム…先ほどリーダー…夕映殿から救援要請があったのでござる。

リーダー達はどうやら木乃香殿の実家に泊まっていたらしいのだが、突然現れた少年に共に泊まっていた皆が石とされ、

何とか逃されたリーダーが救援を要請してきた…という事しかわからんでござる」

「やばいな…詳しい経緯は向かいながら説明するが…端的かつ私達的には、木乃香がさらわれて、さらにやばい事になりそう、位の理解でいい」

「まあ、大体状況は察した。依頼料は刹那なり木乃香の親なりから頂けそうであるし…私は参加で」

「よくわからないアルが、強い敵と戦えそうなら私も参加するアル」

楓と私の説明に、真名とクーが参戦を表明する。

「私も乗りかかった船なんでな…当然参戦だ。悪い、ちょっと出てくる、聡美」

「全く…状況が大変そうなんで、無茶まではしても良いですが…無理しちゃ駄目ですよ?千雨さん。

超さんと一緒に、何とか千雨さんと皆さんが抜け出した事がばれないように工作しておきますから」

聡美がため息をついて、そう言った。

「うん…善処はする」

とは言え、範囲石化魔法を使える相手がいる時点で交戦すれば無茶をする事は確定、無理も…たぶんする事になるだろう。

 

 

 

身支度を手早く整えた私達4人は電車で本山に向かっていた。その中で現在判明している敵情を説明する。

「ふむ…呪符使い、二刀流神鳴流剣士、狼男の狗神使いに、石化魔法を使った魔法使いの少年…か」

「ああ、それに加えて既に木乃香がさらわれていたら多分だが式や妖怪の類が大量召喚されると思う。

加えて、こっちの組織の総本部を襲撃したって事は、木乃香の魔力か血統で使える切り札的な何かを掌握しようとしていると推測できる」

「それは厄介でござるな」

「まあ、技量不明の魔法使いの少年以外はこの面子と刹那なら…一方的に負ける事はねぇと思う…クーは妖怪の相手な」

流石に、クーは技量はともかく気の出力的に他の面子の相手は無理である。

 

「さて…ちょっと私は無茶の準備をするから…少し集中するぞ…見苦しいだろうが気にするな」

そう言って私は無茶の用意をするため、皮下に埋め込んだ魔導糸を操作する。

 

ぐっあっ

 

痛みを必死にかみ殺しながら、無茶をする為に体中に仕込んである、とある呪紋回路をアクティブにしていく…

「ちょ、千雨!?皮膚の下で何か蠢いてるアルよ!」

「いつ見てもグロいな、それ」

「…痛そうでござるな」

とまあ、そんな感想通りの感覚に耐えながら切断してあった回路を繋ぐ…。

コレでいつでも無茶ができるようになったわけだ…コレをやっている事自体が無茶でもあるともいえるが…。

 

 

 

最初の目的地、関西呪術協会の総本山に到着した私達は石化した屋敷の人々と、少し遠くに渦巻く竜巻を見つけた。

「アレだな。楓、悪いが斥候を頼めるか?私達は警戒しながらあの竜巻に向かう」

真名が楓にそう言った。

「あい、わかったでござる」

楓の姿が掻き消えた。

「さて、千雨は木々の上のほうを移動して、ナビゲートを頼めるか?」

「ああ」

「では、行こう」

「応」

 

少し森の中を走っていると大きな音と共に竜巻が消え去ったのが確認できた。

「竜巻が消えて、雷の暴風らしき魔法の発動が確認できた、恐らく包囲の一点突破を試みている。

加えて、誰かが雷の暴風の射線方向に離脱、軌道から見て杖による飛行術、恐らくネギ先生だ」

「ならば、我々はその集団を相手にする公算が高いかな」

 

さらに少し行くと楓が戻ってきた。

「竜巻のあった地点で刹那とアスナ殿が化生の群れを足止め、ネギ坊主は奥の湖に向かったでござる」

「了解、私、クー、千雨は刹那達と合流し、状況を確認して妖怪たちの相手、楓は先生の支援と余力があれば綾瀬の捜索・回収を頼む」

「了解でござる」

「状況次第だが、まず私の狙撃で指揮官級を削る、千雨は一撃目の発砲にあわせて詠唱を開始してでかいのをぶち込め、【無茶】をしろ、それで後が楽になる」

「あいよ…しゃあねぇな…その後は自由でいいか?」

「ああ、わかっているとは思うが互いに射線には気をつけよう」

「私はどうするアル?」

「クーは…まあ、まずは私の傍にいてくれ」

 

 

 

真名の狙撃を合図に左右から十字砲火をかける事にした私達は別々の地点に移動した。

「さて…アスナがピンチか、となると初撃はあそこか」

中空糸で雷魔法と風魔法を増幅・補助する魔法陣を左右の手の甲にそれぞれ刻んだ私は、それぞれの一端を血管に突き刺す。

すると毛細管現象と血圧により、あっという間に血による魔法陣…呪血紋が出来上がり、反対側の端から血が滲み始める。

 

パスッ

 

それとほぼ同時にそんな音と共にアスナを捉えていた烏族の眉間が打ち抜かれ、次々に狙撃が行われる

「始まった…ノイマン・バベッジ・チューリング 来たれ雷精 風の精 雷を纏いて 吹きすさべ 南洋の嵐 雷の暴風」

味方(アスナと刹那)を射線から外す為、中央から外れたそれは、しかし10を超える敵を屠る事に成功したようだ。

…丁度、真名の登場と口上にかぶったので第二の奇襲となったのもある。

 

ドクン

 

魔法陣が鼓動して、魔力を失い、汚染された血を排出し、新たな血が補充される…

 

「ノイマン・バベッジ・チューリング 来れ 虚空の雷 薙ぎ払え」

 

それを感じながら私は次の詠唱に入りつつ敵集団に向けて跳躍した

 

「雷の斧」

 

発動した魔法は少し大きめの、小隊長クラスに思える鬼に直撃した。

 

「どこがもう大丈夫、だアスナ。ばっちり厄介ごとになっているじゃないか」

「千雨ちゃん!?あんた、そんな強そうな魔法使えたの!?」

のん気にもアスナがそんな事を聞いてくる。

「おう、ちょっとばかし無茶が必要だけれどもな」

そういいながら、私は流血量を減らすため、風魔法側の血管にさしていた糸を抜く。

 

「ふん、西洋魔術師が敵前に飛び込んできてからに」

 

そう言って烏族の戦士が一人切りかかってくる。

その斬撃を鉄扇で受け流した私は、そのままその戦士を投げ飛ばし、気…と魔力を先ほど繋ぎなおした呪紋回路…咸卦法を基にした類似の効果を持つ…に供給し、頭をふみ砕いた。

「残念、こっちも使えるんでね…さあ、向こうに帰りたい奴からかかって来い、来なけりゃまた魔法で薙ぎ払ってやる」

私は不敵に笑い、そう啖呵を切った…。

とは言え、この咸卦の呪法の呪紋回路を発動させていると魔法を使うたびに皮下の補助魔法陣(血液使用の呪血紋とは別の呪紋)がピリピリ痛むので、あまり大きな魔法は使いたくないのだが。

 

 

 

「えらいすばしっこいのう、嬢ちゃん」

鬼の指揮官らしき大きな個体が私に言う。

「どうも、ソレが自慢でね…雑兵どもならもうちょい、いけるぜ?」

 

魔法の射手 光の3矢

 

鬼の雑兵や戦士に半包囲されながら、隙を見つけては魔法の矢を無詠唱で打ち込む単純作業を私はこなしていた…神経は磨り減るが、幸い、まだ無傷である。

「はっはっは…ならば追加や、行け、お前ら」

その号令に合わせて私を囲むように鬼が追加される…狙い通りである。

一斉攻撃で宙に逃れざるを得なくなった私に槍の追撃、ソレを私はさらに糸の足場で跳躍してかわす。

「ノイマン・バベッジ・チューリング 雷の精霊47柱 集い来りて敵を射て 魔法の射手 連弾 雷の47矢」

上空から私を囲んでいた雑兵たちに雷の矢が降り注ぎ、その過半を送還した。

「おっと」

さらに、宙を蹴り、大鬼から距離をとる…しっかり落下点を狙って構えていたので…失敗すれば…まあ咸卦の呪法の出力なら受け切れただろう、という感じである。

「ほう…武術もいける西洋魔術師がこんなに厄介やとはおもうとらんかったわ…ならワシも楽しめそうやな!」

指揮官らしく、ドンと構えてくれればいいのに、その鬼は間合いを一気に詰めてその手に待った金棒を振り下ろしてくるのであった。

「勘弁してくれ」

そういいながら、私は鉄扇で金棒の軌道を払うようにして僅かにずらし、直撃を避けながら大鬼の懐にもぐりこみ、左膝に掌打を浴びせてすれ違う。

「うぉつとおぉぉぉぉ」

ほんの少しだけバランスを崩した鬼は私の糸で引っ張られてさらにバランスを崩し、前のめりにたたらをふむ。

 

魔法の射手 収束・光の3矢

 

大鬼に向き直った私は、詠唱魔法を叩き込む隙は無いと無詠唱魔法を肩にあて、深追いはせずにカバーに入った雑兵の残党を牽制する。

「何や、嬢ちゃん、まだ隠し玉もってたんかいな…右肩に力が入らん」

大鬼がのっそりと立ち上がる

「はっはっは…取って置きのタイミングで大物喰いするつもりだったんだがなぁ…」

本当は転ばせて雷の斧を叩き込む予定であった。

「まあ、流石にあっさりやられてまうと親分格としての面子が立たんもんでな…それにせっかく久しぶりに呼ばれたんや、しっかり楽しませてや」

大鬼はそう言って、楽しそうに笑った。

 

 

 

 大鬼たちと戯れつつ、雑兵たちを削り、ダメージを蓄積させていると、湖から立ち上る光が強くなり、頭の前後に顔があり、腕が4本生えた巨大な鬼が現れた。

「チッ…あれが敵の切り札かっ」

「ネギのやつ、間に合わなかったの!?」

「わかりません、でも助けに行かなければ」

確かに、状況は酷く悪化した。最悪撤退するにせよ、少なくともネギの回収を試みるべきか。

「大鬼のおっさん、わりいな、すこし席外すわ」

「おい、まちやっ…ぐっ」

大鬼は、まだまだ戦えるものの、機敏に戦場を駆ける事ができるほどの余力は残っていない様であった。

 

「刹那、アスナ、道を開く」

瞬動術で刹那とアスナの側に跳躍した私はそう言って詠唱を開始した。

「ノイマン・バベッジ・チューリング 闇夜切り裂く一条の光 わが手に宿りて敵を喰らえ 白き雷」

私が開いたのは細い道にすぎなかったが、刹那であれば、多少消耗するにせよ、十分にアスナと共に通れる道ではあった。

 

ドドンッ

 

「行けっ、刹那!あの可愛らしい先生を助けに!」

その道を真名の援護射撃が確かな道とした。

「しかし…」

私達を案じてか、一瞬ためらう刹那であった

「ここは私達に任せるアルよ!」

「大丈夫だ、仕事料ははずんでもらうがな!」

「迅速に全滅させろとでも言われなければ何とでもなる、行けっ」

「…すまない!行きましょう明日菜さん!」

刹那とアスナは身を翻し、再び閉じようとしている道を強引に突破し、湖の方へと向かった。

「センパイ~逃げるんどすかぁ~~」

それを二刀流神鳴流剣士が追撃しようとする。

 

ドドンッ ガィンガキン

 

「あや…あーん邪魔しはってー神鳴流に飛び道具は効きまへんえー」

「知っているよ…」

そういって銃を構える真名

「千雨!チェンジだ、こいつを押さえておいてくれ、お前が一番相性がマシだ!」

「って おい!」

既に刹那たちが置いていった鬼の一部と戦闘に入っていた私は思わず叫んだ

「倒せとは言わん、他が片付くまで相手をしていてくれればそれでいい!」

そう叫ぶ真名の援護射撃が私の周りの鬼の足を止める…早く来いと言わんばかりに…

招かれるままに跳躍し、真名と並んで二刀流の神鳴流剣士と対峙する。

「およ、そっちの鉄扇使い…と言うか西洋魔術師のお姉さんがお相手ですかーまあ、ウチとしては楽しめそうですし、構いまへんよ~?」

「いや、西洋魔術師の嬢ちゃんはワシが先約やろ?」

いつの間にか、先ほどの大鬼もやってきていた。

「あや、千雨、大人気アルね」

クーは私が少しだけ相手をしていた鬼達が刹那たちを追撃しないように相手をしつつのんきにいう

「悪いが、私も手一杯なんでな、頑張れ、お前なら何とかなる」

真名も大物の烏族やらと乱戦をしながら叫ぶ

「ええい、わかったよ、両方纏めて相手してやる、かかってこいや!」

私は、咸卦の呪法の出力を実用限界まで上げながらやけくそ気味にそう叫んだ。

「「なら…いくで、嬢ちゃん」いきますえ、お姉さん」

そうして、私は出来れば一人ずつかかってきて欲しい相手を二人同時に相手取る事になったのであった。

 

 

 

「ぐっ、ちょっ死ぬって、コレ!」

「それだけ喋れはるならまだまだいけますえ」

「そうそう、ちゅうかワシと手下ども同時に相手しとったやんか、嬢ちゃん」

神鳴流剣士と大鬼の二人の相手を始めて1分ほど、にわかとは言え二人の連携攻撃を必死に捌いてはいるものの、既に服には複数の傷が見られる。咸卦の呪法の防御を突破されるような攻撃を喰らい、傷を負うのも時間の問題と言った所であろうか。そうなれば戦況は次第に悪化していく…となれば呼吸を乱して賭けに出るべきであるか。

 

ぱしっ きぃん

 

今まで受け流してばかりいた神鳴流剣士の大刀での斬撃を鉄扇で受け、小刀の突きを発動体でもあるバンクルで流し…二の腕に浅い切り傷を貰ったが…腕を取って投げる。

 

「ありゃあ」

「おっ」

 

とはいえ、状況は1対2、当然のようにすぐ復帰して来るであろう彼女の隙を大鬼がフォローする様に殴りかかってくる…よし、乗ってきたと瞬動術による跳躍により、大鬼で剣士と互いが見えない位置取りとし、大鬼に向く。今だ。

 

魔法の射手 散弾・雷の7矢。

 

跳躍直後から溜め始めておいた無詠唱で放たれた雷の7矢はとっさに防御した大鬼に一本…こちらはたいして効いていない…と、大鬼の影から飛び出してきて、状況判断が一瞬おくれた剣士にあたった。

 

魔法の射手 光の3矢。

 

「くっ…やりはりますなぁ!」

追撃でさらに3矢、これは直撃の一矢が見事に切り払われ、他二本が服を焦がすように飛んで行った

 

「せやけど、甘いわ!」

その隙に接近した大鬼の横なぎ、しかし予測通りのそれを少し踏み込み、鉄扇で強打した

 

「むぉっ」

 

結果、回転力を支えきれず、大鬼の金棒は遠くに吹っ飛んでいった…

 

「そいやぁ」

 

そして案の定、切りかかってきた剣士の一撃は大鬼の脇を跳躍して回避した。

 

「さぁて…仕切り直しと行こうか」

と、まだまだ余裕があるかのように振る舞う私。正直、冷や汗ものであるし、本来、断罪の剣擬きで腕ごと切り落とす算段だったのだがタイミングを少しミスして強打、得物のみとなった…あの腕、まだ使えるよなぁ…

「いやはや、得物を失ってもうたか…まあ、まだ右肩痛むし、左の手首もジンジンするけどぶん殴るくらいは出来るかいの」

楽しそうに笑う大鬼

「おねぇさん、やっぱ面白い人やわぁ」

これまた楽しそうに笑う神鳴流剣士…これだから戦闘狂共は…

内心、あきれつつ、戦いを再開する私達であった。

 

 

 

今度は何とか拮抗状態と呼べる状態を創り出していると、湖に突然、巨大な魔力の気配が現れる…それはよく知ったマスター、エヴァの物であった。

「おやまあ、これまたごっつい気配のモンが来おったな」

大鬼がそういうと、直後、湖の巨躯の鬼を包むように結界が発動した…あ、これ茶々丸の武装に入れた覚えがあるな、と思い、戦い自体がもう終わるものとして大きく距離を取った。

大鬼と剣士も様子を見る事にしたらしく、対峙しながら湖の方の結果を待つ事とした。

 

…そして、巨躯の鬼は、マスターの【おわるせかい】によって砕け散ったのであった。

 

「ふむ…どうやら勝負あったみたいやな」

私と対峙していた大鬼が言う。

「あんたらの勝ちや、どないする?ねぇちゃん達」

真名と対峙していた烏族が続けた。

「できれば私は終わりにしたいな…正直、疲れた」

と、私。

「私達は助っ人なんでな。そっちが退くなら戦いを続ける理由はない…弾代もタダじゃないしな」

と、真名。

「も~終わりアルか―暴れ足りないアルね」

と、麻帆良の戦闘狂、クー

「…お前はどうなんだ?神鳴流剣士」

クーを無視して真名が言った。

「そうですねーお給料分は働きましたし、センパイと戦えへんかったのは残念ですけど…鉄扇使いのお姉さん…千雨はんでしたか?との戦いもまあまあ楽しめましたし、ウチも帰りますぅ〜。

刹那センパイによろしゅうお伝えくださいな」

そう言って神鳴流剣士は去って行った。

「ほななー嬢ちゃん達」

「なかなか楽しめたぞ、拳銃使い!」

「さっきの坊ちゃん嬢ちゃん達にもよろしゅうなー」

「久しぶりに愉快やったわ。今度会った時は酒でも飲もう」

それに合わせて召喚された鬼たち口々に別れの言葉を帰って行った。

「ふ…私達、まだ未成年なんだがな」

「結構いい人たちだたアルね」

「私は疲れた…と言うか死ぬかと思ったぞ」

私達も口々にそう言って笑い合う

「さて、マスターが来ているのに放置したら後が怖い…私はちょっと湖の方に行ってくるが、二人はどうする?」

「私も行くアルよ」

「私もだ」

「じゃあ行くか」

そういって私達は湖に向かった。

 

 

 

湖の祭壇?が見える位置まで来ると、どうも様子がおかしかった。ネギらしき人影が茶々丸に介抱され、みんながそれを囲んでいる

「どうした!」

駆けてそばに寄った私は、開口一番そう聞いた

「千雨ちゃん!ネギが大変なの!」

「…部分石化…か」

「ええ…危険な状態です」

そう言って茶々丸がネギの状態を皆に説明する。ネギの魔法抵抗力が高すぎる為に石化の進行が遅く、首が石化した時点で呼吸ができなくなり、窒息死する、と。

「…ど、どうにかならないの、エヴァちゃん!!千雨ちゃん!!」

アスナが懇願するように叫ぶ。

「わっ…わわ私は治癒系の魔法は苦手なんだよ…不死身だから」

「…私も、傷の治療と毒や病気の自然治癒力強化位しか使えない…刹那、そう言う符ってないのか?仮にもここは西の総本山なんだろ!?」

「いえ…私はわかりませんし…あったとしても、すぐに取り出せる場所にあったのであれば長がそのようにネギ先生に言った事でしょう…」

「そんな…」

「昼に着くっていう応援部隊なら治せるかもしれねぇが…間に合わねぇっ」

「マスターのゲート…はマスター以外の生命体の移動はできないし…

畜生、せめて石化魔法を使えれば重ねがけして窒息だけでも防げたのに」

もう打つ手がない…そんな空気になったとき、刹那に促され、木乃香が言った

「あんな…アスナ…ウチ…ネギ君にチューしてもええ?」

こんな時に何を言い出すのかと思ったが、話を聞いてみると仮契約によって木乃香がシネマ村で刹那に対して見せたという治癒力を引き出す事ができれば…という事らしい…確かに、賭けてみる価値はあるな

そう思って見守っていると、ネギと木乃香の仮契約と共に、まばゆい光が広がり…なんと、ネギの石化どころか、私達の負った傷まで治ってしまったのである。

さらに、西の本山戻ると、先ほどの光は本山全体にまで届いていたらしく、石化していた人たちもみんな元通りとなっていたのであった。

 

 




偶に、ですが千雨さんは人手ないし西洋魔術師が欲しい時は刹那さんや真名さんに呼ばれてお仕事しています。
が、この女、魔力量が超一流を目指すには心もとない(無理とまではいわない)ので砲台じゃなくて戦車なのか自走砲なのかよくわからない存在として動きます。
そして、描写してないですが、雷属性の魔法を使うたびに血が少しずつドピュドピュ流出しています…グロイネ!(千雨曰く、半分外法、エヴァ曰く、血が体内に戻すのを躊躇われるほど汚染される呪法のどこに外法でない余地があるのかわからん
なお、その出血が1対2始まった時点での千雨ちゃん唯一の負傷です。
 最後の1対2は、大鬼がすでに大分ダメージ溜まっているし、即興連携なので何とかなる…と良いな、くらい。少なくとも一蹴はされないと踏んで、真名は千雨に任せました。

・ピリピリ痛む
軽くやけどした皮膚を強く押された感じ。色々無茶な事をやっているので。
現在、出力は理論値の6~7割程度で、単純合算よりは高出力ではありますが改良中。体への負担ましましかつ魔法を使うと麻酔無しだと常人ならば失神しても不思議ではないくらいの痛みを受ける代わりに理論値通りの出力が出る設計は完成している。
なお、この咸卦の呪法はあくまで肉体強化・物理魔法防御に限った擬似的な再現というか、咸卦法を参考にした別の術式で、対毒・対寒などの追加効果は得られません。
また、千雨さんが咸卦の呪法を常時待機させない理由は自動で咸卦法モドキをサポートするという性質の呪紋回路なので、通常の気の単独運用時には邪魔になるから。

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