西の総本山で少し仮眠をとり、旅館に帰還して暴走していたネギたちの身代わり式の後始末を手伝った私は朝食までもう一度仮眠をとり、朝食の後に聡美と朝風呂を楽しんできた。
「もう一度聞くヨ、昨晩はどこで何をしていたネ? さ、吐くヨロシ」
…部屋に戻ると超がクーに歯型の付いた肉まんを突き付けながらそう問うていた。
「むぐんっ。それは言えないアルネ」
どうやら歯形の主はクーの様で、なぜか肉まんを食べさせるという方法で尋問をしている様だ
「というか、千雨、帰ってきたアルね、千雨に聞くアルよ」
「ふふ…千雨サンの口が堅いのは承知の上ヨ…クーに聞いた方が効率的ネ、ほらっ」
と、超がクーに突き付けていた肉まんを口に押し込んだ。
そんな光景を尻目に、ザジはおいしそうに見えなくもない、何時もの無表情で肉まんを頬張っていた。
「あ、おかえりなさい、千雨さん、ハカセさん。お二人も肉まん食べますか?」
そして、五月は蒸籠を抱えてザジと超・クーペアの間におり、私達にも肉まんをくれた。
肉まんを受け取った私達は、広縁で向き合って座った。
「今度こそ、本当に事件解決なんですね、千雨さん」
「…少なくとも、私達にとっては、な…」
関西呪術協会の応援部隊先発隊は既に到着したと聞くし、実行犯も直接の首謀者は捕縛済み、事件の裏側の政治的案件に首を突っ込む気がなければおしまいといって問題がないはずである。
「よかったです…千雨さんが怪我しなくて」
「あーうん…」
実はかすり傷は負ったんだけれどもう治った、というべきか否か。心配をかけるし言わない方が良いか。
「別に、私、強さとか戦いとかにはこれっぽっちも興味はないんですけれど…
千雨さんが無茶をしたって聞くと、ちょっとだけ悔しくなります…貴女と肩を並べて戦えない自分が」
「聡美…」
「でも、やっぱり、私は戦えないですし…だから…待つしかできないんですけれども…」
「うん…ごめんな、心配かけて。でも、同じ様な事があればきっと同じように無茶をするんだと思う」
「ええ、千雨さんはそういう人なのもわかっていますし…だから、無茶はしてもいいですけれど、ちゃんと無事に帰ってきてくださいね、私もそれだけは譲れませんよ?」
しんみりとそういう会話をしながらやんわりと微笑みあう…。
…肉まんを口に捩じ込み合っている超とクーを横目に見ながら。
「お、良いね、いただき」
「千雨!京都観光に行くぞ!」
そんな状況をぶち壊しにしたのは部屋の扉を開けて乱入してきた朝倉のカメラのフラッシュとマスター…エヴァの一喝だった。
「えっ…エヴァ、こっちの長との待ち合わせは…」
と言いかけて気づく。私は班で相談していた予定を優先し、合流できるようなら合流する、と言った様に、時間的余裕はあるのだ…そうか、時間まで、観光をする気か。
「…いや、今日も班で食事に出かける予定だし、人数を増やせる店でもないんで、すいませんが…」
「お前は私の弟子だろう、キャンセルして供回り位しても罰は当たらん」
申し訳なさそうに私が言っても、聞きやしない…というか断ると暫く根に持つやつだ。
「あー」
私も料亭の昼食は楽しみにしていたのだが…マスターの機嫌を損ねる事による今後の不利益を概算する…。
うん、仕方ない…料亭のほうも人数を減らす分には申し訳ないが対応してくれるだろう…予約しているコースの代金分、キャンセル料払う事になると思うが。
「わ」
「まってください、エヴァンジェリンさん」
わかった、そう言おうとした時、聡美が割って入った。
「む、何だ、ハカセ」
「千雨さんを連れて行くなら…私も連れて行ってください」
どうしてそうなる…かは薄々想像がつくが。
「うむ、かまわんぞ。よし決まりだ、千雨とハカセは借りていくぞ!次はぼーやたちだ」
そう言ってエヴァは5班の部屋に向かっていった…。
「あーすまん。なんか、そういう事になったらしい…悪いが4人で楽しんできてくれ」
「ウム…エヴァンジェリンの傍若無人は今に始まった事ではないネ…
まあ、はしゃぐエヴァンジェリンのお守はネギ坊主に任せて観光を楽しんでくるとよいヨ、二人とも」
と、言う事で私と聡美は修学旅行4日目…実質最終日をエヴァ達と過ごす事が決定したのであった。
「マスター、満足いきましたか?」
「うむ、いった」
「楽しかったですね、千雨さん」
「ああ、一回目は妨害とかいろいろあったし、今回は純粋に楽しめたよ」
5班+朝倉、エヴァ、茶々丸、それに私達で清水寺を筆頭に再度京都観光をした私達は西の長との待ち合わせ場所に向かっていた。
「やあ、皆さん、休めましたか」
「どうもー長さん!」
西の長と合流した私達は、ネギの父親の別荘だという場所に案内されながら今回の事件の顛末を説明された。そして到着した別荘とやらは天文台に似た外観の建物だった。
中に入ると、そこは、とても心地の良い空間だった。
そして、さも当然の如く、図書館探検部4人組は吹き抜けに設置された巨大本棚に手を伸ばした…と言うか、私も英雄の別荘の蔵書とか、速攻漁りたい。
という事で、私も図書館探検部に加わって本をあさる事にした。
「なあ、長さん、この本って全部ネギ先生の所有物…って事でいいんですよね?」
「ええ、ネギ君が相続したとみなして問題ない筈です」
「なら先生…ちょっとここの本、借りて帰ってもいいかな…ちょっと研究で読みたかったけどマスターの書庫や図書館島の私が入れてもらえる場所に蔵書が無い本を何冊か見つけたんだよ…ドマイナーだったり、完全版が出る時に肝心の記述が削られているのに絶版になったりしていてさ」
そういって、脇に抱えた『閉鎖系箱庭世界の循環』『究極技法と類似する世界の諸技法考察』『人造異界を活用した資源問題解決法試論』の3冊の本をネギ先生に指す。
…本当はもっと探せば読みたい本がありそうだが、すぐ調べられる場所にあったのはこれで全部である…はずした本に読みたい本がないというと嘘になるが。
「千雨さん…まあ、魔法研究は稀少本にあたる必要も多々あるとは聞いてはますけれども…」
聡美がそんな言葉を漏らす。確かに工学研究はマイナーな内容や、逆に金字塔的な内容に関して古い論文にあたる位であるし。
「えっと…お貸しするのはかまいませんけど…荷物に入ります?ソレ」
「でしたら、ネギ君の持って帰りたい本と合わせて麻帆良にお送りしましょうか?」
「いいんですか?長さん」
「はい、それくらいでしたら…まあ宅配便で、とは行きませんので梱包を合わせて一週間弱は見て頂かないといけませんが」
「わぁ…ありがとうございます。それなら僕も」
そういいながらネギ先生も嬉々として本棚から本を抜き取り始めた。
「あ、それはそうと長さん…あの…父さんの事、聞いてもいいですか?」
「…ふむ、そうですね…」
「私達は外した方が良さそうですね」
そう言って私は聡美と下に降りようとする。
「いえ、ネギ君さえよければ…」
「千雨さんもよろしければ…ハカセさんもご興味があれば」
しかし、遠慮はしなくてよいと引き止められた。
「では、せっかくですし…かまいませんよね、千雨さん」
まあ、珍しく聡美も興味を持っているようなので聞いていくか。
「では…遠慮せずに」
「ええ…このか、刹那君、こっちへ…明日菜君も。あなた達にも色々話しておいたほうがよいでしょう」
こうして私達は、ネギ先生の父親…サウザンド・マスターと呼ばれた英雄、ナギ・スプリングフィールドの話を聞くのであった。
「楽しめたかナ?二人とも」
班部屋に戻った私達を超が迎えた。
「ああ、清水寺とか二度目の場所も心配事無しで行けばまた楽しめるもんだな」
「ええ…ちょっといけない話も聞けちゃいましたし」
厳密には、ハカセは協力者扱いであって関係者ではないのでナギ・スプリングフィールド周りの話はグレーゾーンである。
「まあ、楽しめたならなによりヨ…こっちもなかなか美味だったネ」
そう言って、超は笑った。
「…超は楽しめたか?修学旅行」
「…ああ、いい思い出になったヨ」
「超さん…」
モラトリアムはあと僅かである…。
ハカセだって一緒にいられると思っていたのに連れて行かれるとなるとこれくらいはします。
そして、流れでハカセが話を聞いてしまった件…まあ仮に弟子入り編の別荘での話を聞いたところで躊躇わずマホラ祭編やらかしますが、この女も。チャチャゼロの言う所の悪人でもあるんで、ソレはソレ、これはこれの精神で(千雨と同じで傷ついたり罪悪感を覚えたりする心が無いとは言っていない
なお、記念写真のシーンは千雨とハカセは長と一緒に上の階にいました。
後、最後のシーンですが、魔法界の慣例として傭兵的な文化の問題から、首謀者格以外は色々な事に対して大分罪が軽いという設定だったりします。なので逆に首謀者の超は計画が成功しても失敗しても学園には残れないというのが共通認識だったりします。
まあ、普通に考えて、ハカセや茶々丸も共同正犯、千雨さんも現時点でも従犯になる位は協力しているんですが、原作準拠なんで(流石に本人達も無処罰とは考えていないですし、しばらく雲隠れはしますが
…学園長が全部なかった事にする、と言うのは別の話
で、そろそろ先行して書いているストックで投稿できる分(巻き戻して訂正入れる可能性の低い分)が残り少なくなってきたので更新速度は落ちます。と言うか、麻帆良祭準備編あたりの途中から、実質本編でもある麻帆良祭編書き上げるまで暫く投稿が止まるかも…
…後、試合・手合わせを除けば、麻帆良祭終了まで、ガチ戦闘って発生しない可能性すら湧いてきたんですが…まあいいか(