例えばこんな長谷川千雨の生きる道   作:紅シズク

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33 ねぎ弟子入り編 第4話 南国リゾート…?

「…マスター、暫く、毎日別荘を使用させてほしいんだけど」

翌日の朝、私は教室でマスターにそう声をかけた。

「ん?ぼーやの相手以外にもか?」

ネギの指導方針では、私も別荘にもぐる日は指導を手伝う事となってはいる。

「…ネギの相手であまり捗らなかったら頼むかもしれません」

「構わんぞ、追加使用分は相手をしてやらんと思うが、それで良ければな」

「いいのか?マスター、理由も聞かずに」

通るとは思っていたが、理由も聞かれないとは少し想定外である。

「構わん…と言うか、どーせ何かまた悪い想定に捕らわれているんだろう?

お前がそういう目をして修行を増やしたいという時はいつもそうだ…いちいち聞いていられるか…違うか?」

「あ…はい…その通りです」

「ふんっ…まあ、うじうじ悩むよりはそうやって修行に打ち込んで誤魔化せばいいさ…だが、未来の時間を前借りしている、という事だけは忘れるなよ」

「はい、心得ています」

実際、この体が追加で過ごした時は、半年は優に超えており…一年には届いていない位…の筈である。

「ならば好きにしろ、今回は期限も上限定めてやらん、納得するまで己の責任で好きにしろ」

こうして、私の追加修業が決まったのであった。

 

 

 

「さて、今日からぼーやの本格的な修行に入るわけではあるが…まずは場所を移すぞ」

「ハ、ハイ…」

アスナとの仲たがいが原因か、昨日の覇気はどこへやら、と言った状態のネギである。

そんなネギをマスターが先導して人形回廊を進み、私と茶々丸(と、頭上のチャチャゼロ)がそれに付き従う。

「開けろ、千雨」

たどり着いた扉の前で、マスターが私に命じた。

「はい」

閉じられた扉を、ゆっくりと開く…

「これは…ダイオラマ魔法球!?」

お、良い反応である…ほんの数回とはいえ、練習させられたかいがあるというモノである。

「ご名答、これは私が作ったダイオラマ魔法球で、別荘と呼んでいる。そこそこな高級品でな、現実時間の一時間がこの中では一日になる代物さ。

教職などの合間にちまちまと修行していても話にならんからな、都合のつく日はこれから当分の間、毎日この別荘を利用して修行をつけてやる。さ、中に入るぞ」

そういってマスターは術式を起動させ、私達5人は別荘の中へと入った。

 

「うわぁ…すごいですね、さすがはマスターです」

「そうだろうとも、知っての通り、ダイオラマ魔法球はそこらの魔法具職人には作れぬ逸品であるからな」

感動するネギに、マスターはご機嫌である。そういう意味では分かりやすいからな、マスター…よほどの地雷を踏んだ後でもなければ褒めとけば機嫌がよくなるし。

「さてぼーや、早速修業を始めようか、という所だが、まあ体感時間的にはもう夕刻ではある、よって夕食の用意をさせているので、それを食べながらしばらくの予定を話そうか」

そうして、私達は今日の修行のスケジュールを説明するのであった。

 

 

 

「では、始めろ」

まずは、邪流(身体強化を気でしている)とはいえ一定の域に達した魔法拳士と戦ってみろ、という事で私が相手をする事になった…要するに、私はネギをボコれ、という事だそうだ。

「行くぞ、ネギ」

「はい、千雨さん」

と、ネギが答えるが早いか、瞬動術でネギの懐に潜り込み、掬い上げるように掌打を放つ。

まー半分不意打ちであるし、さすがに反応できなかったネギは吹っ飛ぶわけで。

「ノイマン・バベッジ・チューリング 闇夜切り裂く一条の光 我が手に宿りて敵を喰らえ 白き雷」

で、追撃…まあ一応、障壁の追加展開で軽減くらいは出来たようではあるが…。

落下した所に喉元に鉄扇での突きを寸止めで入れ、そのまま突きつける。

「うむ、そこまで…ぼーや、これが魔法拳士だ、若干格闘寄りではあるがな」

「ほら、立てるか、ネギ」

鉄扇を外し、ネギに立つように促す。

「あっ…はい。千雨さんの最初の、瞬間移動みたいなのは…?」

「ん?ぼーやは瞬動術を見るのは初めてだったか?…まあ、魔法拳士を選ぶのであればいつかは学ぶ必要があるが…まだぼーやには早い。千雨、瞬動無しでもう一戦してやれ」

「了解」

という事で、もう一戦…と言うか、何戦も何戦も試合をする事になった。ただ、さすがと言うかなんというか、同じ手を使って見せると、何かしらの対応をして来るのには、感心した。

ま、流石に負けるどころかまともに反撃を喰らうという事もなかったが、マスターが瞬動を解禁するのも割とすぐではないかと、私は思った。

 

 

 

その後、軽く体力・魔力トレーニングをした後、献血を済ませ(ネギの分は別荘から出る前に吸うそうだ)、その日はネギは就寝となった…私は咸卦法の瞑想やマスターとのネギについての相談をしてから寝た。

翌日、私が起きると、既にネギは塔の外周階段ランニングを済ませて中国拳法の自主トレを始めていた。

「あ、おはようございます、千雨さん」

「おはよう、ネギ」

私も、ストレッチなどを済ませると体術の自主トレをして、最後は異流派間にはなるが組手を行い、朝食時間となった。

具沢山のスープとパンに卵が付いた朝食(いつもの別荘の朝食でもある)を済ませた私達は、マスターと合流して魔力・体力トレーニングを再ウォーミングアップ代わりに行い、基礎トレーニングに入った。俗にいう魔力の効率的運用だとか、詠唱・発動速度向上だとか、私の場合は加えて無詠唱魔法の訓練だとか、糸術やら人形術やら体術やらの訓練である。私はほぼ自主練状態ではあったが。

そうして朝食よりは豪華になった昼食を取り、午後の実戦形式の稽古となった…大体は、また私がネギをボコって、ネギがダウンしている間にマスターに弄られて…ネギが回復したら、またボコって…時々もらえる休みの間はマスターがネギをボコって…と言う流れである。

 

「うっへぇ…千雨姉さん、つええんだなぁ…昨日に続いて兄貴が手も足も出ねぇなんて…」

「ん?手も足も出るし、私が障壁張る場面も増えていい試合になる場合も出てきたじゃないか。まあ、こっちは瞬動無し縛りでやっているんだからそれ位してほしくはあるが…相変わらず伸び率がえげつねぇなぁ…ネギのやつ…」

カモとそんな会話をしたのは午後の初休憩の際であったか…ネギはマスターにもまれている。

「と言うか、アスナとの件、仲直りできてないのか?今朝の自主練なんかは微妙に身が入ってなかったっぽいし」

まあ、マスターの目が光っている間は時々叱責される程度で済んではいる様だが。

「あー姐さん、兄貴と口もきいてくれなくて…」

「続行中、と…今は何とか修行漬けでそれ所じゃないって感じではあるが…」

「ああ…エヴァンジェリンも千雨姉さんも容赦ねぇし…」

いや、これでも容赦しているのではあるが…あまり手を抜くと私が怒られるのでネギを圧倒はしているだけで。

 

 

 

「そうか、やはりぼーやは神楽坂明日菜と仲直りしていないのか」

ネギからマスターが血を吸って、増血剤を飲ませて帰した後、私とマスターはそんな話をしていた。

「マスターの目が届く範囲では身が入らないって事はないようだが…帰りも割とどうしようって顔していたよ」

「ふむ…まあ、修行をまじめにやっている分には放っておいてよかろう、めんどいし、仲裁してやる義理もないしな」

「そういうと思ったよ」

「で、どうだ?瞬動無しとはいえ初日からまともに一撃を喰らった姉弟子よ」

「…瞬動を前提に流れを組み立てていて、寸前に思い出して一瞬硬直して喰いました、面目ありません」

「だろうな、アレは。しかし、結局負けたとはいえ、それでもお前に一撃を入れるのは今週中に達成できれば悪くないと思っていたが、まさか初日とはな」

楽しそうにエヴァが笑う

「ま、今日はいきなりの事であるし勘弁してやるが、お前も同じ間違いを繰り返すなよ、千雨」

「はい」

こんな感じでネギの指導検討をしてから、私はもう一度、一人で別荘にもぐって自主練と研究をしてから帰途に就いた。

 

 

 

「南の島?」

「はい…委員長さんに誘われて断り切れず…一応保留という事にはなっているんですが、どうしましょう」

そんな話をネギからされたのは、金曜日、クーや刹那達との合同朝練の会場での事だった。

「どうしましょうって…せっかくだし行きたければ行って来ればいいじゃねぇか」

「え…でも、明日の修行が…」

「別に、都合がつかなきゃ一日二日休んだって問題ねぇよ…私もそうしているし。まあ、別の日に倍って事になるかもしれんが…それに」

ちらりと私はアスナの方を見る…

「それに?」

「アスナとの喧嘩が長引いてまいっているでしょう?少しくらいリフレッシュしてきても、ばちは当たらないですよ、先生」

そういって、私は笑った。

 

結果…マスターの了承は取れたものの、朝倉とハルナに情報が漏れてクラスの半数以上が参加する事となったのであるが…その流れでアスナも参加となり、向こうで仲直りできたそうなのでネギ的には結果オーライだろう

 

 

 

「で、いかなくてよかったんですか、南の島…私達に遠慮せずに行ってきてもよかったんですよ?」

まあ、聡美と超とがロボ研関係の仕事と恐らくは裏でやっている諸々で忙しくて行けなかったわけで…。

「…私もこっちの仕事片付けないといけないし…」

私もそういう事で欠席とした…半分嘘であるが。片付けるべき仕事はあるにはあったが、その殆どは自室で、ダイブした加速空間で済ませているので現地では現物の調整位である…それも一仕事ではあるが、納期を考えれば調整がつかないほどではない。

「ふふ〜そういう事にしておきましょうか、千雨さん」

そういって、聡美は嬉しそうに笑った。

 

 

 




発育おかしい組、と言うか年齢詐称疑惑組に紛れてこそいますが、千雨さんも一年弱分ほど余計に年取っていて、その分成長していたりします。安定期でも、週2回+αで、時々いろいろな理由で期間限定で利用時間を増やしていた感じなので。
 現在は、ネギ君の相手で足らんと思った日はもう一日、そうでなければそのまま帰宅みたいな使い方しています。え?南の島に行かなかった土日?もちろん、行っていますよ、別荘。
 魔法射撃戦でもやれば、既にネギ君そこそこやるけれども、格闘戦+魔法になるとスピードファイターかつ格闘術の技量差で千雨さんに一触鎧袖にされる感じ。

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