例えばこんな長谷川千雨の生きる道   作:紅シズク

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40 麻帆良祭準備編 第5話 警告

週が明け、授業のない完全な麻帆良祭準備期間に突入すると、いよいよ設営は本格的に始まった。

「千雨さーんルームランナー設置完了したので、動作チェック手伝ってくださいー」

「おーう、今行く」

私も、ロボ研の手伝い以外は概ね、朝から晩まで衣装作りと、教室の設営の手伝いと設置された仕掛けメカのチェックに明け暮れていた…二人きりの楽しさとはまた違うが、こういうのも悪くはない…

 

 

 

そして、麻帆良祭二日前の別荘での事。

「ふはは…モテる男は大変だな、ネギ」

「笑い事じゃないですよ…こんなの体が二つなきゃと無理ですよぉ…」

「そうだなー特に勉強会やツアー系は時間が決まっているし時間もかかるし…タイムテーブルは書いたのか?」

「いえ…これからです…」

「うん…まあ、デート系は最悪他の展示とか見て回るのに繰り入れちまえ…どうしようも無ければな…ごめんなさいするよかマシだろ」

「うーそうなんですけれど…」

大量の予定を詰め込む羽目になったネギはとても大変そうである。

…格闘大会、実はM&Aされていて、大規模かつ割と長時間の大規模イベントと化していると知ったら発狂するんじゃなかろうか、ネギは。

「ま、体力的に無茶する羽目になるだろうから、最悪、ここで休めよ?倒れたら元も子もないんだからな」

まー私も無茶をさせる側に一枚かんでいるんだが。

「そうそう、まほら武道会、私も出るからな」

「えぇーっ千雨さんもですか…どうしよう…別荘の外だとマスターよりも勝てる気が…」

「はっはっは…まあ、精々悩め…一応はルールのある試合だ、やりようはあるさ…瞬動くらいは多分は使うがな」

「魔法無しだと、僕が勝てる余地無くないですか?それ」

「んーまあ、最近は反応も良くなって来たし、いけるんじゃないか?それに練習しているんだろう?瞬動術」

「あ…はい…我流ですが…」

ネギがばつが悪そうにする。

「マスターから私はまだ教えんなって命令がでているけど、技を盗む分には問題ねーよ…ちょっと見せてみろ」

「はい」

ネギに披露させたそれは…まあ基本は間違っていないが瞬動術と呼ぶのは憚られる代物だった。

「…思いっきりがたりねぇなぁ…」

「でも、これ以上速くすると上手く着地できなくて…」

「その緩急こそが瞬動術の肝なんだよ、下の砂浜でも使って何度も吹き飛びながら練習すれば多少マシになるだろうさ…それで、ある程度できるようになったらクーにアドバイスでも貰え」

「クー老師にですか?」

ネギが首をかしげる。

「ああ、そうすると…コレが…コレになる」

そう言って、入りと抜きが露骨な瞬動と、歩法を意識した縮地を見せてやる…機動力メインで鍛えているので楓のような本物に比べるとまだまだではあるが。

「…中国拳法にもこういう技術があったはずだからな」

「はい!」

ネギが元気よく返事をする。

「ほう…楽しそうな話をしているじゃないか、千雨、ぼーや」

話し声と物音でバレたか、マスターが現れる。

「げっ、マスター」

「あ、あの…これは…」

「私は、まだぼーやへの瞬動術の教授を許した覚えは無いがな?千雨」

「あーネギの我流での練習成果を見て、ちょっと手本を見せただけですよ…?」

内心冷や汗をかきつつ答える。

「ふむ…まあそれなら構わんか…ではぼーや、学園祭明けの修行から組み手での使用を解禁するから自主練習しておくように…それまでは、千雨は手本を見せるのも禁止だ」

そう言って、マスターは笑いながら去って行った…

「…なんかすまん…まあ、がんばれ」

「いいえ…気になさらないでください…でも、またやる事が増えちゃいました…」

ネギがちょっとしょんぼりした様子で言った。

 

 

 

翌日、ある意味予想通りではあるが進行が遅れているため、本来禁止の泊り込みをして徹夜での作業となった…まあ、そういう事をしているのはうちだけではないのだが。なお、聡美は徹夜は無理と宣言して不参加である。私は…まあ、途中で別荘に逃げる以外はぶっ続けで作業をするつもり…だったのだが。

「龍宮さん、長瀬さん、長谷川さん、いる?」

昼前位にしずな先生に呼ばれ、学園長室に呼び出される事となった。

 

「…と、いうわけで、三人には告白阻止の仕事を頼みたいんじゃよ、どうしても学園の魔法先生と魔法生徒だけでは手が足らんでの」

学園側は大発光が一年繰り上がったのに数日前に気づいたのか、情報封鎖をしていたのか、麻帆良祭前日になって告白阻止作戦を周知し始めているようである。

「はい、報酬がいただけるのであればその分の仕事は致しましょう」

「了解でござる」

「私も、かまいませんが…クラスのシフトと…一日目の夜、ならびに二日目の午前ははずせない用事がありますので…」

「それで問題ないよ、長谷川君。君達には此方のシフトの穴を埋める予備人員の負担軽減を頼みたくての…一日目と二日目はこのシフトの範囲で入れるだけ入ってくれると助かる、三日目は可能な限り、該当地域でのパトロールを頼みたい」

「わかりました、では」

と、私達は相談と調整をして無理の無い範囲で告白阻止の仕事を入れていった。

 

「うむ、助かるよ。もし、急用などができた場合は明石君に連絡しておくれ、彼がこの件のシフト管理をしておるからの」

「「「了解しました」」でござる」

「うむ、では解散…と言いたいが、長谷川君は残っておくれ」

といわれ、私だけ残された。

 

「さて、長谷川君…非常に言いにくいんじゃがの…超君がまたやらかした…人払いの結界を抜いて会合を覗き見た現行犯じゃ」

「…はい」

いよいよ計画実行って言う段階で何やっているんだ、あいつは。

「ネギ君のとりなしで今回は処罰なしとなったが、長谷川君も知っての通り、人払いされた会合の場を覗き見る行為は魔法使いであっても処罰の対象になる行為じゃ…ワシは君らの研究を高くかっとるし、野外の簡易結界でやるような会合でそこまで目くじらを立てるつもりは無いが…規則は規則じゃ、あまり何度も警告済みの違反行為を繰り返されると庇えん、というのはわかってくれると思う」

「はい」

「長谷川君も、共同研究者を失いたくはないじゃろう…君からも超君に注意しておいてくれるかの」

「わかりました」

「うむ、では行ってよろしい」

そういわれ、私は解放された。

 

 

 

「って事なんだが、何処から何処までが計算ずくなのかな?超」

ネギから事情を聞き出した私は、超を掃除された会合場所の1つに呼び出してこう問い詰めていた。

「ナンノコトカナ、千雨サン」

「この時期に覗く価値が低いとわかっている会合を態々覗いてドジ踏んだ事、ネギに助けを求める展開、礼に渡した怪しげな懐中時計様のアレ…全部に決まってんだろ!」

「ハハハ…まあノーコメント、と言う事にしておいて欲しいネ、千雨サン」

「ったく…お前の事だから切り札の二、三枚伏せてあったからこそあんなまねしたんだろうが…巻き込んでいいとは言ったが怒らんわけじゃない、とも言ったの忘れてないだろうな」

「もちろん…そういう意味では武道会後はたっぷり怒られる覚悟は決めているヨ、全部終わった後にネ」

そう言って、超はにやりと笑う。

「はぁ…そっちは納得ずみだし取るべくして取っているリスクだって解っているから構わんよ…精々、友達思いの魔法使いとして弁明するさ」

「うむ、それは助かるネ」

「で、朝倉は落ちたのか?」

「いや、まだ悩んでいる様ネ…だが、まあ九分九厘落ちるだろう…駄目な時は頼むヨ」

「わかっている、アイツほどじゃないが最低限はこなして見せるよ…弁明がメンドイから朝倉に代わってほしいけどな」

「だろうネ…ではそろそろ」

「ああ、また明日な」

そうして私はクラスの準備に戻り、超は計画の詰めの作業に戻っていった…んだと思う。

 

 

その後、二日目の徹夜作業により、何とかクラスのお化け屋敷は完成し…運命の麻帆良祭が始まった。

 


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