例えばこんな長谷川千雨の生きる道   作:紅シズク

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42 麻帆良祭編 第2話 しばしの休息…?

「よう、ネギ、コタローこんな所で何やっているんだ…ってタイムマシンか、これからまだやってない予定をこなすわけだな」

カンパイもせずに一日目の打ち上げを抜け出したネギとコタローに声をかけ、そして事情を察する。

「ち、千雨さん、どうしてそれを!?」

「どうしてってさっき確認しただろう…ってもしかしたらお前らにとってはこれから、なのか?クラスのお化け屋敷の応援に来てくれたの」

私にとっては過去の出来事だが、ネギたちにとっては未来の出来事だ…ってやつだな。

「あーえっと…多分そうです…千雨さんも行きますか?忙しくて行けないってブログでおっしゃっていたイベントとかもあるでしょう?」

「いや、いいよ。準備もしてないし見学だけの為に時間逆行ってのも…って、まて、どうしてその事…と言うか私のブログを知っている?

別に隠してないが、公言している訳でもないし、お前にゃ教えた覚えはねぇぞ、第一お前、パソコン関係は苦手だろう」

別に見られて困るような内容でもないが、知っている面子には口止めしてある筈でもある。

「えっと…カモ君がマホネットでネットサーフィンって言うのをしている時に見つけてきて、これ千雨さんのHPじゃないかって…

それで、僕も毎日とは言いませんけど時々確認するようにしています、パソコンの方はよくわかりませんが、時事問題への勉強になりますし」

「ああ…カモ、てめぇか…」

ネギの方にいるカモをにらみつける

「おう、俺っちは技術系の方も楽しく読ませてもらっているぜ、千雨姉さん。それにまじめだがウィットに富んだ文章自体のレベルもさる事ながら、流行の話題だけじゃなくて話題性は低くても抑えておくべき渋い所も抑えているし、一度取り上げた問題のその後のフォロー精神も気に入っているぜ…あと、オタ系コンテンツもな」

「…一応聞いておくが、吹聴してないよな?私のHPの事」

カモのべた褒めに少し顔を赤くしつつ、問うた。

「はい、カモ君があまり広めるのは良くないって」

「おう、千雨姉さんはネットとリアルはある程度距離を置きたがるタイプかと思ってな」

「ならいいか…うん、まあこれからも秘密にしといてくれ、HPに来る事自体は構わないから」

 

「話、終わったか?」

暇そうにしていたコタローが話の終わりを感じ取り、ネギに声をかける

「うん、お待たせ、コタロー君。それじゃあ、いってきます、千雨さん」

「おう、いってらっしゃい、また後で…無理すんなよ」

「はい、いってきます!」

そういって、ネギはタイムマシンを操作し、その姿は掻き消えた…が

 

「あ、僕たち行きましたね、ただいま、千雨さん」

と、直後、薄々それっぽいなーと思っていたこちらの様子をうかがっていた気配が物陰から現れて私に言った。

「…と、私主観だとこうなるわけか…楽しかったか?学園祭」

「はい、とっても」

「ミニスカ風狐娘もか?」

「ぶふっ」

「ち、千雨さん!」

私のからかいにコタローが噴出し、ネギが顔を赤らめる

「俺っち的には兄貴が姉貴ならアリだが、無しだぜ、アレは…」

カモも、あまり趣味ではなかったらしく、そうつぶやくのであった…可愛かったがなぁ?

「それと、千雨姉さん、打ち上げの後、エヴァの別荘で休憩を取りたいんだが、貸してもらえると思うか?」

「特に機嫌が悪い時でなければ問題ないと思うぞ?私だって茶々丸に一言断って別荘に入るとかざらだしな…心配ならちょっと先に電話しとこうか」

と、エヴァに電話をし、事情を説明して許可を取る…試合に向けてコンディションを整える為、とだけ伝えて。まあエヴァはどうせ打ち上げに呼ばれて断り切れんかったんだろう、行って来いとだけ言って電話を切られたが。

 

「よっしゃ、それやったら思いっきり打ち上げ楽しめるで!」

「おーっ!」

と、いう事で、私達も打ち上げに戻る事となった。

 

 

 

「はは…さすがに疲れた」

聡美と超がいない分、クーと騒ぎの渦に飲まれ、まあ気使い・魔法使いとしての頑強さで誤魔化せる範囲ではあるが、少し疲れた…と言うか、中夜祭に強制連行からの4時までルートは想定外である。

「うーん…私も少し眠いアル…真名と戦うというのにエヴァにゃんの別荘と言うアテが無ければ愚の骨頂ネ」

「はい、老師…こっそり抜けようとしても察知して捕まえられちゃいましたし…」

という事で、私達一行はエヴァ宅を目指していた。

 

「お待ちしておりました、皆様」

マスターを起こしちゃ悪いと思い、メールで連絡を取っておいた茶々丸が私達を迎えてくれた。

「じゃあ…悪いが、頼む…」

「はい、ご案内いたします」

と、茶々丸に先導されて私達は別荘へと潜り、用意して貰っていたベッドで泥のように眠るのであった…

 

 

 

別荘内に日が登り始めた頃に目を覚ました私は、一風呂浴びた後、塔の屋上で自主練をしにやってきた。

其処には既に、ネギ、クー、刹那、アスナ、コタローが同様の目的で揃っていた。

「おや、私が最後か」

「せやな、千雨姉ちゃん…ってこれから汗かくのに風呂入ってたんかいな」

師弟関係上、余っていたらしいコタローが私に声をかけてくる。

「ああ、それで少し出遅れたみたいだな」

「…で、まさか今日もその着物で出るんか?」

「折角のダチが開いた祭だしな…多少は華になってやろうかなと思ってな…まあ中にゃ戦闘服着込んでるから、最悪脱いでやるがね」

「はぁ…華なぁ…武道大会なんやし、ガチでやる事が一番の華なんちゃうんか?」

コタローが呆れたように言う。

「まあ、私ら武闘家にとっては、な。だが大半の観客には見映えがいい方が受けるんだよ、私の得物はコレだし…私のガチだと、普段の制服だし」

そう言って愛用の鉄扇を取り出す。ま、着物もエヴァや茶々丸からお茶の席に御呼ばれした事からノリである程度戦闘練習してあり、慣れているので相応に動ける、と言うのは前提にあるが。

「そういうもんかね…まあええわ、ネギがフェイ部長にとられて余っとったし、相手してくれや」

「ああ、構わんぞ」

そうして、私はコタローと着物での動きを再確認しながら軽く組み手をして汗を流す事となった。

 

 

 

朝食を済ませた後、私を除いた全員が砂浜に降りていき、遊び始めた。私も用事が済んでその元気があれば、合流する事にはしているが。

「まったく…元気な事で…」

そう言いながら、私はコレ用に用意してもらっている寝台に全裸でうつぶせる。

「では、千雨様、始めさせていただきます」

そう言って、従者人形は私の背中にうっすらと麻酔薬入り軟膏を塗っていく。

逃亡生活に備えて色々と準備はしてきた呪紋回路ではあるが、今日はそのちょっとした総仕上げである。

 

「そろそろいいか…」

麻酔薬が馴染んできた頃、眼前と天井の二枚の鏡を通して背中を見る。施術してある糸の回路から、最終的に使用する事にした設計から不要となる経路、紋様を全て解く。そして、一つ、また一つとうなじから臀部まで糸の紋を埋め込み、必要に応じてそれらを繋いでいく…。

そしてそれが終われば体の前面、四肢と同様の施術を行ってゆき…私と言う作品は完成した…まあ、面積的な過半は咸卦の呪法ではあるのだが。

私の現在の咸卦法に対する理解からすれば一応の完成を見たと言っても良い咸卦の呪法の呪紋回路は、戦闘中でも若干の隙にはなるものの、簡便にオンオフができるように設計され、体への負荷をある程度まで抑えつつ、出力もかなり上がっている。これ以上の物を設計しろと言うのであれば、何か…心身や魂への負荷をはじめとしたトレードオフ、ないしはより深い咸卦法への理解、あるいは組み合わせるべき別の技術などを必要とする事であろう。

そして、他のスペースには私の多用する雷属性の魔法や、緊急時の障壁行使を補助する呪紋などを埋め込んであり、特に両腕にはそれぞれ特定の呪文特化で行使をサポートする呪紋を埋め込んだ…現在は、右腕に偽・断罪の剣(威力を抑えて消耗を軽減したモノ、それでもすさまじい威力を誇る)、左腕に白き雷をセットしてある。

 と、まあこう言った技法を発表する気はないが、同時に一代で途絶えさせてしまうのももったいないので、時々成果を纏めてエヴァに預かってもらっている。今回の計画にあたっても、咸卦の呪法・受血紋を含めた一応の成果を纏めた本、『糸の呪紋・2003年版』をエヴァに預けてある…まあ、効果を最大限に引き出すには個々人の魔力の質・体質に合わせた設計が必要なので活用するには使用者自身の研究が必須とはなっているが、学者として、一応の義務は果たしたつもりである。

 

「ああ…疲れた…」

私はそう呟いて、その場で眠りに落ちた…これ、割と体力使うのである、施術する方もされる方も…。

 

 

 

仮眠から目覚めると、私は施術でかいた嫌な汗を流す為にシャワーを浴び、施術と寝落ちで食べそびれて居たらしい昼食を食べ、砂浜へと降りて行った…

 

砂浜に着くと、そこではネギがクーとコタローにアドバイスをもらいながら瞬動術の練習をしており、刹那、アスナ、このかは水遊び、チャチャゼロとカモはネギたちを肴に一杯やっている様であった。

「よう、やっているな」

と、私はカモたちに声をかけた。

「オ、オキタカ」

「千雨姉さんは兄貴の方に加わらないんで?」

「私はマスターから、ネギに瞬動術を指導するなって命令が出ていてな…てか、お前も知っているだろう」

「アーそういえば…」

カモはすっかり忘れていた様子である。

 

 

 

夕刻、各々自己責任で仮眠を取り、外での朝食を兼ねた軽食を食べ、私達は別荘の外に出た。ネギたちは開門時間まで少し時間もあるからと一度寮に戻るとの事だったが、私は直接龍宮神社に向かった。

 

「やあ、おはよう、聡美、超」

「おはようございます、千雨さん」

「ニーツァオ、千雨サン…開場はまだアルよ?」

超が悪戯っぽく笑う。

「ははは…硬い事言うなよ…と言うかそこは選手の立ち入りはご遠慮願うネ、じゃねぇのか?」

「まあ、ジョークだからネ。で、どうした千雨サン」

「いやぁ…?特に理由はないぞ?しいて言うなら順調そうだなって話とか?ネットでの情報拡散」

「あはは…見つかっていたか」

「数日前、うちの電子精霊が交流チャットに紛れ込んだボットを見つけたって報告してきてな…調べてみたらまあ何とも…って状況だったんでね。ま、お前の書くプログラムは特徴的だからな、ちょっと末端指揮プログラムらしき奴とっ捕まえて解析したら一発さ」

「あははーそのクラスのプログラムを押さえて解析できるのはさすが千雨さんですねー」

聡美がどこか乾いた笑いで、そう言った。

 


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