例えばこんな長谷川千雨の生きる道   作:紅シズク

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45 麻帆良祭編 第5話 まほら武道会3 刹那の選択と千雨の奮闘

第十一試合、ネギ対グッドマン先輩、グッドマン先輩はネギの緩んだ勤務態度に愛の鞭を与えるつもりでの全力モードで挑んだ。確かに、打撃自動防御と影の手による攻撃は格闘家には無類の強さを誇るのだろうが…悲しきかな、ネギは魔法拳士であり…打撃を捨てたゼロ距離の魔法の射手でノックアウト…で、服まで丸っと使い魔だったらしいグッドマン先輩は脱げた、全裸まで…ネギからローブを受け取ったグッドマン先輩は、控室に籠ってしまった。

「コラーネギッ!あんた何やってんのよ、また脱がしちゃってーっ!」

「はわ、いえっ、脱げたのは僕のせいじゃ…」

「言い訳しないっ、大体女の人相手に本気出して、英国紳士はどこ行ったのよっ!」

「別に弄ったりオーバーキルかましたりしたわけじゃねーし良いじゃねえか、アスナ」

「むっ、千雨ちゃん!」

「そうだ、千雨の言う通り。それが私の教えだ、口出しするな、神楽坂明日菜。自ら戦う意思をもって戦いの場に立った以上、女も子供も男もない、それは等しく戦士だ。戦いの手を緩める理由は存在しない…それはお前も例外ではないぞ、神楽坂明日菜…こちらの世界に首を突っ込み続けるつもりならなおさらな」

「う…エヴァちゃん…そんな事言って…」

「しかし、確かにその通りですね」

「あ、刹那さんまで…」

「とにかく、女の子には優しくしなきゃダメッ!そこん所はコタロー君を見習いなさいっ」

まー日常の理論ではそうなんだが…

「は、はい」

「コラ、ソコのバカ、話を聞いていたのか。人の弟子に勝手なコトを吹き込むな」

まーそれでネギが重傷でも負ったらどんな顔するんだろうね、アスナの奴は。

 

 

 

第十二試合、エヴァ対刹那、緒戦はエヴァが合気鉄扇術と糸術とで押していたが何やら交わしていた会話内容にアスナがブチ切れて、恐らく外野がうるさいからと幻想空間に戦場を移した。ネギたちが覗き見に行くというので、私もネギの肩に手を乗せ、ご一緒させてもらう事にした。

 

 幻想空間の舞台はエヴァの別荘で、刹那は翼を出して必死そうに勝っていた…

「うっへ…マスター、全開モードじゃねーか…」

「ケケ…御主人タノシソーダナ」

「つーか、何だよこりゃ、まるで戦だよ」

そんな話をしながら戦いを続ける…マスターが遊んでいるにせよ、戦いが続いている…二人に私達は接近していった。

 

「刹那さん!」

「刹那さーん!」

「ネギ先生!アスナさん!?」

「やれやれ、ここまで追って来たか、手を出すなよ、ガキども!尋常の勝負だ!

今の一撃、よくぞ耐えたな、だが次は耐えられまい。これが最後だ、刹那!」

とのマスターの宣言、しかし刹那は見事に巨大な雷鳴剣でマスターを迎撃して見せた。

そして…刹那は私達…いや、ネギ達の方を見て、宣言した。

「…エヴァンジェリンさん、剣も…幸福も…どちらも選んではいけないでしょうか?」

あーいつぞや、マスターにやられた二択を迫られていたのか、刹那の奴…内容は私のより重いが。

「何?…どちらも…?」

「はい、私…剣も…幸福も…どちらもあきらめません!」

「フ…剣と…幸福…どちらもか」

「…はい、どちらも」

 

「ホザけ、ガキが!甘ったれの貴様にそれができるのか!」

 

マスターの一喝…私の時は最後通告のような殺気…とその後の地獄の扱き、だったかな?これに刹那は…

「…はい」

耐えた。耐えきって見せた。

「…ふっ…はっはっはっはっは…精神は肉体に影響を受ける…ガキの姿のまま不死となった私は他の化け物どもよりも若いつもりなんだがな…お前たちといると、本当に年を実感するよ」

そう言ってマスターはちらりと私の方を見た。

「…私の言霊にも動ぜん所を見れば口先だけではないようだな…そういえば、何で峰打ちなんだ、貴様」

「えっ…いえ、その、ルールですから…」

「フフ…それは面白いな…よかろう、お前の意志の力の程を見せてみろ」

それに刹那は一度瞳を閉じ、そして再び開いて答えた。

「はい」

そして…マスターの断罪の剣と刹那の奥義が激突した。

 

直後、私達は実空間に回帰、マスターの幻術が敗れたようだ。そして、刹那の一閃が決まり、マスターは吹っ飛ばされ、マスターは幻術を打ち破った事を褒め称えギブアップを宣言した。

で、刹那はマスターの言う所の非常にポジティブな勘違い…自分を導いてくれたという認識を示し、マスターに感謝の意まで示し始めた…いや、まあその結末もアリとは思っていただろうが、マスターのいう通り、何方かを捨てさせる事になるという見解の元やったんだと思うぞ?

そしてアスナが刹那の羽の意味も知っている事をマスターに伝え、ネギが追認した…そういえばしたな、修学旅行の後にそんな話。それにマスターは大笑いして…あばらが数本やられたらしいと言い出した…うん、今のその体だとヤバかろうに。

 

10分の休憩時間の間に、エヴァの診断と応急手当は終わり、ひびが入っているが折れてはいない様である、との事だった。

「マスター、ケガは大丈夫ですか?」

「心配いらん、放っておけ。世界樹の魔力が学園にあふれるからな、明日には完治する…グっ…あたたた」

「マスター!」

「自業自得よ」

「フン…」

「エヴァンジェリンさん、よろしいですか?」

と、やり取りをしていると、刹那が口を開き、舞台上ないし私達が追う前の幻想空間でしていたらしい会話の追及を始めた。曰く、生まれつき不幸を背負った刹那には共感を覚えると言った、つまりエヴァも不幸を背負っていたという事ではないのか、自らの境遇と刹那の境遇を重ねて、あんな形で助言をしたのではないか、と。アスナがそれに乗り、刹那に酷い事を言った(らしい)事は許していない、と言うがマスターはそれに対して自身は悪い魔法使いだ、許さんでいいと言うが…アスナとネギが過去話に興味を示し、刹那まで私が勝ったのだから昔話位…と言う流れになった。

「わかった、わかった、良いだろう…ただし、簡単にだぞ…ただし、ぼーやはダメだ」

と、ネギとカモは追い出されてしまった。

「さて、それじゃあ私も行くよ、次は試合だしな」

「えっ、千雨ちゃんは聞いて行かないの?」

「ん?エヴァが真祖になった経緯と略歴だろ?それは知っているし…私がいるといらん口を挟みそうだしな」

「ああ、貴様には晩酌の相手をさせた時に話してやった事があったな、色々と…まあ、長話をするつもりはないし、観戦にはいってやれると思うが、先に言っておこう、最善を尽くせ」

「はいよ、マスター…奇跡が起きて勝っちまったらごめんな?」

そう言って、私は臨時救護室を後にした。

 

 

 

第十三試合、私対クウネル…まあさっきはマスターにああ言ったが、楓との戦いを見るに、メール投票作戦で勝率3割と言った所だったのであるが…あのアーティファクトなしの場合で…うん、完全無理ゲー、しかし真面目にやれとの師匠命令も出ているので、まあ真面目にやろう。

『さあ、常識を超えた白熱の試合が繰り広げられております今大会!いよいよ準決勝を迎えます!長谷川千雨選手対クウネル・サンダース選手ー!』

朝倉のアナウンスの下、私とクウネルは開始線に向かい、歩いてゆく。

『古菲選手の棄権によって上がってきました長谷川選手、その実力は無手にてウルティマホラ準優勝という実績が示しております。しかも本日は本来の得物である鉄扇を携えての出場です!

対するは底知れぬ強さを見せつけるクウネル選手! 分身の使い手、長瀬選手を不思議な力で下してのベスト4進出、顔が見えないフードが未だ不気味だ!さあどんな試合になるのか!?』

「おや…着物のままでよかったのですか?」

「ええ…これより動きやすいとなると制服しか無くて…華が無いでしょう?」

「いえ、その着物も素敵ですが、やはり女子中学生は制服と言うのが王道では?」

「あはは…まあ、あなたならそう言いますか…勝てる気はしないですが…精々、奇跡を目指して足掻かせてもらいます!」

「はい、楽しみにしています」

『それでは…準決勝第13試合…』

と、咸卦の呪法に気と魔力を流し始める。

『Fight!』

「ほう…それが?」

「ええ…似て非なる物ですが…咸卦の呪法と呼ばせてもらっています」

「なるほど…では…行きますよっ」

重力魔法の発動寸前、縮地でクウネルを左に見る様に跳躍し、あいさつ代わりにと魔法の射手位の気弾を飛ばし、瞬動で離脱する。直後、私のいた位置を二発目の重力魔法が襲い、気弾はあっさりと弾かれる。さらに跳躍し、近接戦を挑んでみる。

「ふむ、気配の薄さはともかく、すばしっこいですね」

「ええ、それだけが取り柄でね!」

多少喰らいついては見せるが、やはり有効打が透過されると競り負けてしまうと、距離を取る。

「フフ…紛い物とは言いますが、アスナさんの物よりは遥かに高出力じゃないですか」

「あはは…素人…と言うか幼少期ぶりに思い出したっぽいアスナに負けるほどではないですよ…これでもマスターの別荘も併用して2年以上修行と開発をしてきている技法ですので」

「おや…貴女もエヴァンジェリンの弟子でしたか…」

「ええ…ネギの姉弟子にあたります」

と、会話をしながら糸術で操った両手の呪血紋の末端をそれぞれ血管に突き刺す

「しかし、なぜアスナさんが思い出した、と?」

「簡単な事ですよ、咸卦法はそんなに簡単な技法ではない、と身をもって知っているだけの事…です!」

と、咸卦の呪法に流す気と魔力の密度を上げ、咸卦の気を気弾の様に左手で練りながら瞬動で突貫する。

「おおっと…っ」

ある意味、意図的に暴走させた咸卦の気であるその気弾は放った瞬間目くらましの様に弾ける。私は虚空瞬動で軌道を変更し、クウネルを左手に見るようにして通り抜ける。

 

白き雷

 

ドクンと陣が鼓動し、血を空中にまき散らしながら左手は威力の上がった白き雷を放つ。

さらにそこから虚空舞踏で向きを変えながら虚空瞬動…クウネルの後ろをとる。

 

偽・断罪の剣・エンハンスド

 

右手の紋が鼓動し、真っ赤な断罪の剣が鉄扇から伸びて形成される…一閃…手ごたえは…ない

 

「なるほど、やりますね…その呪紋もなかなかに興味深い…外法の類いの様ですが」

煙の中から現れたクウネルは、やはり無傷で飄々としていた…

『おおっと、長谷川選手、手から雷を放ったぁぁぁそして鉄扇に纏うようにエネルギーソードか、これは!判定員の判定は…セーフ、刃物ではありません!』

「ふふっ…術式補助の魔法陣に、術者の血って割とよくある組み合わせでしょう?」

そう言いながら断罪の剣は解除しておく…ゆっくりとではあるが鼓動を続けるので、コレ。

「…そう言われると普通に思えますが、鼓動して次の血を自動供給するとなれば話は別ですよ?血もかなり魔素汚染されるようですし」

「あはは…で、どうでした?」

「ええ、ヒヤリとはしましたよ?直前まで魔法を一切使わなかったという点も含めて…エヴァンジェリンの弟子という事で糸術で何かをしていると気付かなければ、届いていたかもしれませんねぇ…まあ、予備も用意してありますが」

と、暗にこの分身を消されても問題ないと宣うクウネルであった。

「…残機有りですか」

「フフ…ではこちらから行きますよ!」

その言葉に、私は空に舞い、ランダム機動に入る。直後、私のいた場所が押しつぶされ、続いて機動の余地を潰すように小さめとはいえ、重力魔法の黒球が次々に出現しては降ってくる。

「ぐっ…」

 

収束・魔法の射手 光の7矢

 

虚空瞬動による機動を続けながら無詠唱の魔法の射手を溜めて放つが…展開された魔法障壁があっさりとそれを弾く…やっぱり不意を突くか至近でないと魔法の射手如きでは障壁すら無理か。

 

「おや、持ちますね、反撃の余地すらあるとは」

「そろそろ…きついんですけど…ねっ!」

 

拡散・白き雷

 

偽・断罪の剣・エンハンスド

 

白き雷を放って黒球に干渉し、できた回廊を断罪の剣を盾に一気に跳躍し…舞台上に着地した。

 

「ふむ…やはり、貴方もこれを使わねばなりませんかね」

そう言いながら空に舞うクウネルは仮契約カードを取り出した。

「…最初からそうしないという事は、やはり時間制限か何かが?」

「それは、ご想像にお任せします」

と、信用ならない笑顔でにこりと笑ってクウネルはアーティファクトを展開し…先ほどと同様に一冊の本を掴んで栞を挟み、引き抜いた…ならば逃げ切るまでと再び空に舞い、回避運動に入る私…だったが巧みな機動と無数の魔法の射手による射撃との組み合わせに追い詰められ…何十回目かの跳躍の直後、白き雷らしき…しかし白き雷らしからぬ強力な魔法の直撃を喰らって私の意識は僅かな間、途絶えた。

 

「がぁ」

私は蹴り降ろされた衝撃で意識を取り戻し、とっさに咸卦の気を最大出力で纏い、肘や背で空を弾いて落下速度を殺す…がそれでもなお強烈な衝撃で舞台に叩きつけられ…そこに、雷の斧らしき魔法が緊急展開した障壁を貫いて直撃…私は意識を完全に飛ばした。

 




幻想空間はチャチャゼロがついて行けた辺りから行けっだろうと千雨ちゃんもご一緒しました。
 まあ、さすがにクウネル相手に粘るのはともかく、ナギさん相手は無理って事で…生きているんですかね?これ(生きています

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