例えばこんな長谷川千雨の生きる道   作:紅シズク

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46 麻帆良祭編 第6話 まほら武道会終幕…そして逃走劇へ

…私が意識を取り戻したのは臨時救護室のベッドの上だった。

「あ…よかった…千雨さん」

私の側には聡美がいて、手を握ってくれていたようだ。

「聡美…えっと…ごめん、心配かけた」

「無理はしちゃダメって言いましたよねー」

「えっと…無理はしてないぞ?…無茶はいっぱいしたけど」

「むー、アレくらい千雨さん的には無茶で済むんでしょうけどーまあ、千雨さんの出場を押していた私の責任が無いとも言いませんしー複雑ですけれど、そっちはまあいいですーそれよりも何ですかぁ?この血の魔法陣」

と、いつの間にか血管からは外されているが、まだ中に血の残っている呪血紋をべしべしされる。

「あっ…これは…その…」

すっかり忘れていたが、呪血紋も咸卦の呪法も、と言うか糸の魔法陣埋め込んでいる事自体、聡美には秘密にしてあったんだ…

「もーうっかりさんですねぇ、千雨さん。こう…心配ですけれどーうぬぼれでなければ私を守りたくて開発した無茶、の一つなんでしょう?」

「うん…私の手が届く範囲を守りたくて作った…そして、その一番は聡美だよ」

「ですからあんまり怒れないなーって…エヴァさんから外法としか呼べない術式と聞いても」

「…個人的には、エヴァに吸血されている事に比べたら安全かつ合理的に設計したつもりなんだけどな…」

「…時間もないですしーその辺りの追及は全部終わってからにしますーと言う訳で…私はそろそろドロンしないといけませんので…失礼します」

 

そう言って、聡美は私のおでこにキスをした。

 

「ではまたー」

「うん、気をつけてな」

 

そう言って、私は聡美を見送った。

 

 

 

入れ替わりに入ってきた救護スタッフの人に状況を聞くと、気を失った私は気絶を確認されて私の負けが確定、救護室に運ばれた私は数十分ほど寝ていた様で…まもなく、決勝戦が始まるらしい。そして、私自身、怪我は…小さい傷や電撃の火傷はあるにせよ、大した怪我はしていないとの事だ…まあ、紛い物でも咸卦の気は伊達じゃない、という事だろうか。

いつでも出ていいが休みたければ休んでいても良いと言って救護スタッフの人が退出した後、ボロボロの着物を脱いで自身に治癒をかけて細かな傷と火傷を治療し、制服に着替えた。そして、簡易防音を突き抜けて聞こえてくる歓声が、決勝戦の開始を知らせてくる。

「っと、急がないと」

そう呟き、私は舞台へと急いだ。

 

 

 

そして舞台に着いた私が目撃したのは…サウザンドマスターらしき男にデコピンでふっ飛ばされるネギだった。

「…あれが…ネギの親父?」

「そうだ、あれがネギの父、ナギ・スプリングフィールド…の完全な再現だ、一度きりの…な」

「それがあのアーティファクトの能力…か?」

「そういう事だな…」

エヴァはそう言いながら、ものすごくソワソワしている。

「…で、試合が終わったらエヴァもお零れに与る、と」

「まあ…そういう事だ」

ふんっと鼻を鳴らすエヴァ…ネギはほっぺをムニムニと引き延ばされて可愛がられている。そして、ネギは頭を撫でられ、ナギが縮地で距離を取って構えを取り、続いてネギも構えをとった。そして戦い…と言うよりは稽古がはじまった…それでも、まあ並の使い手では一蹴されてしまうであろう位ではあるし、麻帆良湖に巨大な水柱が立つような一撃も放たれていたが…そして…10カウントと同時にナギはネギに手を差し伸べて、ネギを立ち上がらせた。

 

「…もうよかろう」

試合終了後も少しの間、親子の会話を黙って聞いていたらしいエヴァだが、そう呟いて立ち上がり、舞台に向かって歩み始める。

「ナギ!」

エヴァがそう叫ぶと、ナギも手を上げて反応を示した。そして少しの間会話を交わし…ナギはエヴァの頭を優しくなでた。そしてナギが光に包まれる…時間だろう。そして、ナギの姿が消え、クウネルに戻ると、エヴァは回し蹴りをかました…あばら、大丈夫だろうか。

そして涙を流すネギ…まあ…私にはかける言葉が無いし…その権利もない…と言うか、アスナのバカはどこに言った、こういう時に黙って抱きしめてやるか何かするのがてめぇの仕事だろうに…などと考えていると超が朝倉の隣に現れており、朝倉が授与式を始めると宣言した。

 

 

 

一応、3位タイである私も壇上に登り、超の言葉を聞く。超は個々の試合を上げて褒め称え、優勝者の技量は世界最強と言っても過言ではなく、大会主催者として非常に満足している旨を述べた…そしてこう締めくくった。

「尚、あまりに高レベルな…或いは非現実的な試合内容のため、大会側のやらせではないかとする向きもあるようだが…真偽の判断は皆様に任せるネ。選手及び観客の皆様、ありがとう!またの機会に会おう!」

そう、それでいい…真実であると主張するよりも、その様に仄めかす方が興味を引き…受け入れやすくもある。

 

そうしてクウネルに賞金授与のセレモニーが行われ…ている最中にマスコミたちが殺到してきた…せめて、授与式おわるまで待て、アホども。しかし、クウネルは賞金のシンボル板と共に消え去り、マスコミの矛先がネギに向く。それを朝倉が庇った隙にネギは逃亡した。

「刹那、私達も姿を消すぞ」

「そうだな…ではまた」

そう言い合って、次に矛先が向きかねない私達もその場を離脱した。

 

 

 

私は眼鏡を外して髪型を変えるという雑な変装をして適当な喫茶店に入り、この後、夕方のクラスの仕事まで暇なのでその間どうするかを考えていた。その結果、茶々丸がそろそろ当番の時間であるはずである茶道部の野点にでも参加して、その後は別荘に行って今日の反省点の検討などをすると決めた。そして喫茶店の支払いを済ませ、私は茶道部の野点会場である日本庭園に向かった。

 

 

 

「茶々丸ーいるかー」

顔見知りの茶道部員に茶々丸の居場所を聞いて、ここにいると言われた庵をノックし、扉を開けた。

「あ、千雨さん」

「おっと、ネギも来ていたのか」

扉を開けると、そこにはちょうど着付けを終えたらしいネギがいた。

「千雨さんも野点に参加しに?」

「ああ…すまんが着物貸してくれるか?茶々丸」

「はい、もちろんです、千雨さん」

という事で、私は茶々丸に貸してもらった着物に着替えた。

 

外に出ると、委員長をはじめとした3-Aの面子が10名ほど待っていた。

この面子で野点となると静粛に進むのだろうか…と心配していたが、ちゃんと静かに進んだ…柿崎が逆・光源氏計画とか言い出すまでは。

そこからは桜子を筆頭に、こぞってネギにお茶を飲ませ始めるわ、委員長がお茶をこぼして期せずして色仕掛けちっくになったのを真似していとして借り物の衣装にお茶をこぼしては色仕掛けをしかけ始めた。

「いー加減にしやがれ、てめーらーっ、それ借りもんの衣装だって忘れてねぇだろうな!」

「あ…そうだった」

「ごめん、茶々丸さん」

「あ…いえ…洗いやすい素材でできていますので…その、何とかなりますので」

と、とりあえずは暴走の雰囲気は収まりを見せた。

「それはそうと、ネギ君、これから大変かもよーあんなにすごい試合だったんだもん、取材とか沢山きちゃうかも」

「うんうん、おまけに天才子供先生だもんねー話題性たっぷり、ファンクラブとかできちゃったりして」

「マスコミ来たら逃げた方がいいよ」

「うん、学祭中に捕まったら何もできなくなっちゃうかも」

「ええっ、それはこまります」

「まーいざとなったら千雨ちゃんを盾にして逃げちゃえ」

「おい、マテコラ桜子」

流石に聞き捨てならんと突っ込みを入れる。

「そんな事よりも、大事なのは…お父様の事です、ネギ先生」

そう切り出し、委員長がネギの父親捜しへの助力を申し出て、他の連中もそれに続いた…ああ、そう言えば喫茶店で武道大会の記事を流し読みした時にそこらへんの記述もあったな…超の奴がその辺りバラしたんだろう。

 

「あっ、いたぞ!」「ネギ選手―ッ」「あ、長谷川選手もいるぞ!」

「げっ、マスコミ」

「マジで来た!?」

「逃げろ、ネギ君、ここは私達が食い止める」

「ハ、ハイ」

「ほら、千雨ちゃんも逃げて逃げて」

「ん、それじゃあお言葉に甘えて」

「ネギ先生、千雨さん、こっちです」

と、私とネギはクラスメイト達の尽力と茶々丸の導きにより、マスコミの追跡を振り切る事に成功した。

 

 

 

和装を解いた私達は暫しの間、一緒に学園祭を見て回る事にした。

「で、どうだったネギ、過去の記録とはいえ、親父に稽古つけてもらってさ」

「…はい、すごく嬉しかったですし…だからこそ、僕には父さんを追う事しか無いって思いこんでしまいました…さっきの皆さんやアスナさん達…もちろん千雨さんや茶々丸さん、マスターも含めて…僕の事を真剣に考えてくれる人がいるのに僕、また自分の事しか考えていなくて…」

いや、まあ、気にはかけてはいるつもりだが、さっきの委員長やアスナと同列扱いされると…こう、心が痛む。

「…僕にはみんながいるし、先生の仕事だってある。先生の仕事もしっかりやって、マギステル・マギになる!そう決めていたんでした、強くなるだけじゃなく…」

そして、ネギは顔を上げて宣言した。

「そうして…その上でやっぱり…僕はあなたの跡を追わせてもらいます、父さん」

 

そして、ネギが手洗いから帰ってくるのを、私と茶々丸はカフェで待っていた。

「さて、この後どうするかだが…せっかくだし、約束していた髪飾りでも見に行くか?バザーの方に行って」

「はい、千雨さんとネギ先生がよろしければ…ええと、それと…その、千雨さんのされているペンダントですが…ハカセもされていましたよね?」

「ああ、この前、二人で別荘を借りた日にお揃いで買った、なかなか綺麗だろう?」

「ええ…素敵で…お二人にはお似合いだとは思います…紫のスミレ」

「ありがとう、茶々丸…そうだ、せっかくだし、お前も髪飾り以外にも何かアクセサリーでも買ったらどうだ?ネギとお揃いで」

と、いらぬおせっかいと言うか、親心を出してしまう。

「ね、ネギ先生とですか!?」

「ああ、今日の記念にって言えば乗ってくれるんじゃないかね、ネギの奴も」

「僕がどうかしましたか?」

ひょこりと戻ってきたネギが顔を出す。

「あーいや、バザーにでも行って、茶々丸の髪飾りでも買おうかって話をしていてな。それで、他のアクセサリーも見るなら今日の記念にお揃いの何かを買ってもいいかなって話をしていたんだ」

「なるほど、気に入ったものがあれば良いかもしれませんね、記念の品を買うと言うのも。あ…そういえばいいんちょさん達、大丈夫かな?僕たちを逃がしてくれて…」

「まあ、大丈夫だろう、マスコミたちもあいつ等にかかわっているより、私達を追うだろうし」

「そうですね、じゃあ行きましょう、バザーですよね」

「ああ、そうだけど…適当に気持ちを整理する時間はとれよ?マスターの別荘やタイムマシンでも使って…なんなら私達は【次】でもいいぞ?」

「あ…ありがとうございます、千雨さん。でも、大丈夫ですよ、みんなのおかげでちょっと…吹っ切れましたから」

「吹っ切れたって…親父さんの事か?」

「はい」

そんなわけあるか、と思った私はネギに拳骨をかます。そして、混乱するネギに言った。

「やかましい、んな簡単に吹っ切れる分けねぇだろ、特に、お前が親父さん関係の事で。ただでさえ、吹っ切れた、悟ったなんてのは大抵が勘違いだ、人間そんなに簡単に変われるもんじゃねぇ。しかも…お前にとって親父さんの事は人生の最大の目標…の一つだ、少なくともな、違うか?…そーいうデカイ悩みなら吹っ切るな、胸に抱えて進め…以上だ」

ネギが衝撃を受けたような顔をしている…いや、研究だってそうだぞ?曖昧な事柄を曖昧なまま受け入れ、かつそれを思索対象にし続けるという態度は。

「…なんだ、茶々丸」

「い、いえ、何でもありません」

「ま、そういう事だから…ちゃんと自分と向き合う時間はとる様に」

「は、はい、ちうさん」

ちう呼びかよ、と突っ込みを入れようとした時にマスコミ達が追い付いてきた。

「ネギ選手発見―ッ!」

「げっ…出入口あそこだけだってのに…」

そしてあれよあれよという間にマスコミに取り囲まれてしまった。

 

「ネギ先生、行きますよ!」

マスコミの怒涛の質問で答える暇もなく煽られているが、すぐに餌食になると、私はネギの手を掴み、バルコニーの際に連れてくる。

「いくぞ」

と、二人に声をかけて手すりを飛び越え、ネギと茶々丸がそれに続く…この喫茶店が先払いの店でよかった。

 

その後も、サインを求める一般人、弟子入り志願して来る格闘家、そしてマスコミ達から逃げ回り続けた。

「はぁ…思っていたより話題になっているな」

「はううう…学園中、どこにもいる場所が無いですよー」

「と、とりあえず、アレに乗って休むか」

観覧車を指して私はそう言った。

「な、なるほど、あそこまではマスコミさん達も追ってこられませんね」

と、ネギも同意をした。

 

「ふーこれでようやく一息つけたな」

「ええ」

「あの、さっきの千雨さんの言葉の意味なんですが…」

「ん?」

「いえ、さっき【デカイ悩みなら吹っ切るな】って」

「あ、ああ。別に大したことじゃねぇよ…ネギにとって大きな問題なら慌てて答えを出す必要はない…ってだけの事だよ…一応の、仮の答えでもあるいは答えを出さなくても前には進める、そうして進みながら考え続けるといいさ」

「なるほど…そうですね。そっか…さすがちうさんです…」

と、ネギが急にふらふらとし始めた。

「一息ついて魔力の使い過ぎの症状が出てきたか…少し休め、ネギ」

「そうですね、大会で限界近くまで魔力を使ったのです、少し休まれた方が良いかと」

「ハ、ハイ」

私と茶々丸の勧めにそう答えたネギは電池が切れたように茶々丸の膝に倒れこみ、眠り始めた。

「随分あっさりぶっ倒れたな…まあ無理もないか」

「ええそうですね…今日は先生、とっても頑張りましたから…少し寝かせてあげましょう」

「ああ…」

 

「お母様は…中立でしたよね、今回の計画」

「ああ、そうだな…そういうお前は…電子戦担当で参加って所か?」

「はい…その通りです」

そう答えて、茶々丸はネギの頭を優しくなでた。

「…私が言うのもなんだが…それでいいのか?それはネギと対立する道になるぞ」

「…いいのです…ハカセと超が望み…貴女も陰ながら協力する計画…そして私自身もコレが世界の為になると計算します…それに、ハカセも超も命令してくださいましたから」

「…そっか…なら…私から言う事はないよ、茶々丸」

そして、私は茶々丸に微笑んだ。

 

「ん…?げっ、しくじった、下見ろ下!」

「んー…?どうされました…」

私の上げた声にネギが眼を擦りながら起きてくる。

「マスコミの山だぞ、バレてたんだ…こりゃ降りたらもみくちゃで今日一日丸つぶれかもなー」

「わわ?」

「考えてみると観覧車は袋のネズミでしたね」

「ち、千雨さんが乗ろうって言ったんですよ、どうするんですかーっ」

「…私一人なら縮地で逃げるがネギ連れてとなると…」

「わ、私が蹴散らしましょうか?ビームで」

「やめろ!くっ…エヴァみたいな幻術が使えたら…」

「ぼ、僕も幻術はまだ使えませんよぉ…あ…そうだ、年齢詐称飴」

そう言ってネギは赤い飴と青い飴の入った瓶を取り出した。

「この飴の赤い方を食べれば、マスターの幻術みたいに大人に、青い方を食べれば子供になれます!」

「よし、それで行こう!ネギは赤、私は青だな」

と、私達は飴を食べる。するとネギは青年くらいまで成長し、私は初等部低学年くらいに縮んだ…が

「って、これ服どうなってんだ!」

ネギは服ごと適切に変化したにもかかわらず、私の服はそのままで酷い事になった。

「あ…変身の時に服装をイメージしないと服はそのままで…」

「先に言えーっ!」

「とりあえず赤い飴で中和しましょう!」

と、赤い飴を受け取って私は元の姿に戻り、服を直した。そしてまた失敗すれば目も当てられんと、眼鏡をはずして両側に垂らした前髪ごと髪をポニーテールに結いなおした。

「マスコミの狙い、メインはネギだ。私はこれで誤魔化す」

と、おまけに認識阻害をかける…まあ、私を長谷川千雨だと思ってみればバレる代物ではあるが。

 

「あれ、皆さんどうかしましたか?」

ネギは群がるマスコミ相手にこうとぼけてみせる。そしてそのままマスコミの間をすり抜けた直後…

「次のにもいないぞ!」

「いや、まて、今の男、ネギ選手に似てないか?親族…いや兄弟じゃ…」

「と言うか、連れの一人、眼鏡外して雰囲気違ったけど長谷川さんじゃ…?」

「逃げましょう!」

「あ、逃げたぞ!追え!」

そこから、また私達の逃走劇は始まった。

 

 

 




安全かつ合理的な設計:血を失う事にはなれているので、多少血を失っても問題ないから汚染された血は戻さずに捨てちゃおう、捨てるなら徹底的に搾り取って汚染させちゃえ

年齢詐称飴と服の問題ってなんかよーわからんのですが、コタ君が人前で飲もうとしているあたり、服装は意識していれば自動適応という事で

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