例えばこんな長谷川千雨の生きる道   作:紅シズク

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47 麻帆良祭編 第7話 ヘアピンと傷痕

「何とか振り切れたようだな」

「ええ、上手く行きました」

「しかし、千雨さんのそれで割と誤魔化せるものですね」

「ああ、割とな…認識阻害使っているのもあるが…で、大丈夫そうか?ネギ」

「え?あ、ハイ。ちょっと寝られましたから大丈夫です」

「バカ、体じゃねぇよ、自分自身と向き合う時間の方…親父さんの事の方だよ」

「ハ、ハイ大丈夫です、今度はホントに。千雨さんの助言も為になったし、何とか…ダメそうならばマスターの別荘とこれの力を借りる事になると思いますが」

今度はしっかりとした顔でそう言って、タイムマシンをちらりと見せた。

「…そうか、ならいい」

と、私はネギの自己判断を信じる事にした。

「でも、千雨さん、いろいろとありがとうございます」

「何?」

「いえ、僕のこと、色々と心配していただいて…ちうさんの言葉はとっても為になります」

「…一応聞いておくが、どうしてちう呼びなんだ?」

「えっと…なんか、いつもの千雨さんもかっこいいですけれども、さっきみたいな千雨さんは…なんか、ちうさんって感じがします」

ネギが純真な笑顔でそう言った…青年姿でそれは止めてくれ。

「はぁ…まあ良いか…他人の前ではあまりそう呼ぶなよ?」

「はい、わかりました」

「ん?おおっと」

と、とっさに私がその場を飛びのくとコタローがネギの背中にぶつかってきて、二人そろって倒れてしまった。

「ててて…悪い、ちょっと急いでて…ん?」

「え…あ?

「ネギ!?」

「コタローくん!?」

「…あ」

「…う」

と、沈黙が場を覆う。相手が悪かったとはいえ、一回戦負けしたのがきまりが悪いのだろうか、コタローは。それとも、決勝で会おうと言っていた大言壮語を守れなかった事だろうか?「わ…悪かったな、約束…守れんで」

「え…ううん」

「次は…次は…負けへん。次こそは…勝負や」

「うん!コタロー君!」

そう言って、ネギはうれしそうに笑った。

「へへ」

「んだよっ」

「ううん、一緒に修行、がんばろーね」

「アホ!一緒になんかするか!つかその大人顔で笑うな、気持ちワルイッ」

と、コタローがネギをポカポカ殴る。

「あはは、痛いって」

「ははは、よく言ったコタロー、次があれば私が壁だな、今回ほど理不尽じゃねーから頑張れ」

「…なんや姉ちゃん…って千雨姉ちゃんやんか!」

「ははは、今気づいたか…どうだった、私の試合は」

「ふん…健闘しとったとは思うけど…千雨姉ちゃんかて、クウネルの奴に負けたやんか」

「ああ、そうだな、だからこそ、私はまだ頑張れば手が届くと思えるだろう?」

そう言って私はニヤリと笑って見せた。

 

「おっ、いたぞ、村上選手だ!」

「げ、マズイ、逃げなっ」

「わわ!?マスコミ」

「とにかく逃げましょう!」

と、四人で再び逃走を始める。

「なんでコタロー君までマスコミに?」

「アホッ、お前らが逃げるからこっちまで回って来よるんやろ!」

「うっへ…コタローまで追われているって事は私も探されているな…この程度の変装じゃ足らん」

 

 

 

「ん、これでいいだろう」

と、言う訳で私達は年齢詐称飴の力を借り、さらに衣装を変える為に貸衣装屋に来ていた。

「なんで俺がチンピラみたいな恰好…」

「似合っているけど?コタロー君」

「確かに、マフィアの御曹司とボディガードの三下って感じに見えるな」

「うるさい、千雨姉ちゃんこそ、なんやその恰好は?」

「ん?昔していたオシャレのイメージでコーディネートしてみたんだが似合ってないか?」

と、白のワンピースにリボン付きの帽子、脱いだ服などを詰めたランドセル姿でくるりと回る。こうなると若干シルバーのネックレスが不釣り合いなのだがまあよかろう。

「…ちゃうわ…ノリノリ過ぎやからや」

「あの…どうでしょうか?」

と、工学部まで瞬動連打でひとっ走りして取ってきた悪魔の角風耳飾りに換装して幻術でロリモードになった茶々丸が着替えを終えて現れた。背中に翼もつけてロリ悪魔メイドにコーディネートしてみた…変装だけなら着ぐるみと言うのもアリではあったのだがまあ排熱とか色々と問題あるし。

「カワイイです、茶々丸さん、とっても」

「そ、そうですか?…ありがとうございます」

「じゃあ、予定通りバザーを見に行きましょう、千雨さん、茶々丸さん…コタロー君もそれでいい?」

「ああ、かまへんで」

と、こうしてやっとの事で私達はバザーに向かえる事となった。

 

 

 

「あ…コレ…」

バザーで露店を回っていると茶々丸が一本のヘアピンに目を止める。

「ん?気に入ったものでもあったか?茶々丸」

「あ…えっと…はい、このヘアピンが…綺麗だと…」

茶々丸が示したのは、ガラスの四葉のクローバーの飾りがついたヘアピンだった。

「これですか?茶々丸さん…よろしければ日頃の感謝の気持ちとして贈らせてください」

「えっ…よろしいのですか?」

「はい、いつも色々とお世話になっているお礼に…千雨さんもよろしければどうですか?」

と、ネギは話を私にも振ってくる。

「私はいらん、むしろエヴァになんか買ってやれ、日頃の感謝ならな」

と、私はネギの好意を無碍にする言葉で返す…。

「あーなら…すいません、これと…これをいただけますか?」

と、ネギは茶々丸の選んだヘアピンとライラックの飾りがついたバレッタを購入した。

「はい、茶々丸さん、どうぞ…いつもありがとうございます」

「あ、ありがとうございます、大切にさせていただきます…」

と、茶々丸は送られたヘアピンを早速つけてみる。

「ネギ先生…その…似合いますか?」

「はい、とっても素敵ですよ、茶々丸さん」

 

…と言うやり取りをしている二人と少し離れて眺めながら、

「…子供姿相手やっちゅうても、なんか女に現を抜かしとるみたいで気に入らんなぁ…」

「…まあ、良いじゃねぇか、あれ位…ただ、ネギの奴は将来、とんでもない女泣かせになりそうだな…」

と言う会話を私はコタローとしていた。

 

「ありがとうございます、お付き合い頂いて」

その後も何店舗か冷やかして回り、少し食べ物を摘まんで、バザーを通り抜けた。

「いえ、楽しんでいただけたようで何よりです」

「さて、私としてはもう満足なんだが…二人はその姿で柿崎たちのライブに行く約束をしているんだったよな?この周回で行くならば次の周回の逆行までご一緒させてもらってもいいか?」

と、たっぷり別荘を使う為にそう言う…このままだともうすぐパトロールのシフトからのそのままクラスの当番になりそうだったので。

「ええ、ではそうしましょうか、千雨さん…まだ時間も早いですし、一度、亜子さん達にご挨拶に伺いましょうか」

 

 

 

と、いう事でライブ会場…ここも要注意スポットだったな、確か…に私達はやってきた。

「あれ?あれはまき絵さん達。ちょっと亜子さん達の居場所を聞いてきます」

と、ネギがネギの従兄のナギとして聞き出した控室に私達は向かった。

 

「いいか、ネギ。わかっていると思うが、外見相応に振る舞えよ?あんまりガキっぽい事しないようにな」

「ハイ!紳士的に、という事なら任せてください」

と、先ほどまで若干無自覚に子供っぽい姿を見せていたネギに不安を覚えるが…まあ信じよう。

「失礼します、こちらに和泉亜子さんがいると伺ったのですが…」

と、ネギがノックの後にそう言って控室の扉を開けた。

 

しかし、そこには上半身裸の亜子がいて…

「キャアアアーッ!」

と、悲鳴を上げられた。まあ当然であるし…加えて亜子の場合は…

「ど、どうしましょう。い、いきなり着替えを覗いてしまって…」

「いやーそれも不味いがこの場合はそれよりも…」

と、言おうとした所で釘宮がかけてきた。

「どうしたの!?」

私達を見て、はっとした釘宮は控室に駆け込む。

「亜子!」

と、控室の中をのぞいた釘宮は振り返り、ネギとコタローにビンタをした。

…が、ネギはそれを甘んじて受け入れたがコタローはとっさに防いでしまい、グーで殴られていた。

「…ってーな…」

「るさいっ!何やってるの、あんた達!」

「ス、スイマセン、僕の不注意で…」

「何が不注意よ、馬鹿じゃない!?いい、あんた達、亜子はねぇ、亜子は…ッ」

と、荒ぶる釘宮を、服を着て出てきた亜子が止めに入る。

「釘宮やめてっ、ちやうねん、この人らなんも悪ないねん!」

「亜子!?」

「うちがカギ閉めてへんかったんがアカンねん!」

…いやぁ?入室許可貰う前に扉開けたネギの重過失だと思うぞ?と言う内心は飲み込んでおく。

「ナ…ナギさん、スイマセン、せっかく来ていただいたのにこんな…」

「あ…亜子…」

「い、いやっ、あの亜子さん、僕、ただ…」

「あのっ…そのっ…私…スイマセンッ」

と、叫んで亜子は逃げ出してしまう。

「亜子さん!」

「なんやあいつ…訳わからんわ…」

と、コタローが空気を読まん事を言い出す。

「…ッ…馬鹿ッ!亜子!」

釘宮がコタローにネクタイを投げつけ、亜子を追いかけていった。

「なんなんや、あの女も…あー…ったく…女は意味わからんからメンドイわー」

「バーカ、ガキめ。傷だよ、傷」

私の言葉にネギははっとした様であるがコタローは訳が分からんと言葉を返してくる。

「傷?傷って今の背中のか?あんなん別に大したことないやん、俺の周りじゃなんも珍しいことあらへんし、20年前の戦で…」

「アホ!お前や私みたいなのと一緒にすんな!あいつはごくフツーの女子中学生だぞ」

私を含めた覚悟の決まった武闘派連中はともかく、フツーはもっと細かな傷痕でも気にするのである。

「そういえば、亜子さんの傷の事は何も知りませんでした」

「私も詳しくは知らん…が、亜子も最初の頃はすごく気にしてコソコソ隅で着替えたりしてたよ…でも、うちのクラスはああだろう?私も知らない間にみんなの前では自然に着替えるようになっていたよ…うちのクラスは変人ぞろいの麻帆良の中でも変人を煮詰めたようなクラスだが…そーゆー所は他にはない評価すべき点だな…さ、私達も亜子を追いましょう」

「あ…はい!」

 

釘宮を追い、先行したネギは何とか追いつく事はできたが亜子は見失ってしまったようである。話し声は聞き取れないが何かを話しているのは見て取れる。

私達も一度合流しようとネギたちに近づいていくが…あれ?ネギが二人いる?それももう一人は亜子といて…うわぁータイムパラドクス―

「亜子!…!?…え!?」

「あ!?」

向こう…たぶん次のネギがしまったという顔をする。

「ちょっと待ったあーっ」

と、コタローと茶々丸、一拍遅れて私が降ってくる。

「おーい、ネギ」

と、こちらのコタローが釘宮といるネギに声をかけて…場には二組のロリボディの私と茶々丸、青年姿のネギとコタローが揃った…あーあ。

「え…えええええ!?な、ちょ、ちょちょちょ、な」

あ、釘宮が壊れた。事情をおおむね理解している私でもフリーズ状態なので当然ではあるが。

「何よこれ…あ!?」

「失礼します」

場を動かしたのは釘宮の混乱と、亜子と逃避行を始めた次のネギではあるが…それは悪手である…大混乱がはじまった…。

「待ちなさいよーっナギさん…いや、偽ナギさん!?亜子をどこ連れてくつもりー!?」

 

「オイ、なんやねん、またタイムマシン使たんか!?」

「うるせっ、話ややこしくなる、黙れ、前の俺!」

と、殴り合いながらネギたちを追うコタロー達

 

「ねえ君、未来のボクでしょ、何があったの!?待ってよ!?」

「わーバカバカ、ついてこないでよ、前の僕!後でちゃんと説明するからあっち行って―ッ」

と、事情を暴露しながら追いかけ合うネギたち…。

 

「で、お前は次の私だな?何がどうした」

「これからあんたらが亜子を見つけて逆行するんだ、がんばれ、私」

と、並走しながら事情説明を受ける私…とそれについてくる茶々丸たち…である。

 

釘宮を撒いて次のネギ達はライブ会場へと入って行った。今回の私達は事情を説明するからと隠れて待っていた。まもなくライブがはじまるという頃…。

「お待たせしました、僕達」

と、次のネギがやってきて事情を説明する…とはいっても、亜子が今いる大まかな場所と、亜子を眠らせて夢落ちだった事にして時間までデートで潰していたという事情を聴いただけだが。

「詳しくはお話するよりも、亜子さんに自分自身で向き合ってください」

「はい、わかりました…それじゃあ、行ってきます、次の僕」

「はい、亜子さんをよろしくお願いします、前の僕」

と、いう事で私達は次のネギに教わった辺りで倒れている亜子を見つけ、自然に目覚めるのを待った後、芝居がかった仕草でネギがあなたに魔法をかけて差し上げますと言って文字通り眠りの魔法をかけた。

「ではいきましょう、千雨さん、茶々丸さん、コタロー君」

亜子をお姫様抱っこしたネギがそう宣言する…呼び出しブッチしちまったけど次の次でいいかな?私は心の中でそう呟いて過去へと跳躍した。

 

 

 

過去…午後一時に戻り、私達は世界樹前広場で亜子を椅子に座らせた。そしてネギが声をかけて起こすと亜子は全てを夢だと思い込んでくれたようである。そして、ネギがおはようと声をかけて席に着き、亜子をデートに誘いだした。

その後、着替えて待ち合わせたネギと亜子は麻帆良遊園地を訪れ、乗馬体験やカフェを楽しみ…ベストカップルコンテストというイベントに捕まった。

「あーあ」

「ええんか?アレ」

「ほっとけ、祭りだからな」

「あの手の強制勧誘は学祭名物で…」

 

で、なんだかんだで準優勝を掻っ攫い、上位三位までに送られるペアブレスレットを貰っていた。

その後、リハーサルに行こうとする亜子を大丈夫と誤魔化して廃校舎でネギは亜子の演奏を聴く事になった…そして…。

 

「わ…私、あの、あ…あなたの事が…す…すっ…」

なんと、亜子が告白体勢に入りやがった。いや、一目惚れに近い雰囲気なのは理解していたが、そこから迅速に告白に至るとは思っていなかった。デートも普通に遊んでいただけに見えたし…ベストカップルコンテストであてられたか?

「何なんや、あの女さっきからすっすすっす言ーて?」

「バカッ、告白だよ、告白!」

と、私が言うと茶々丸とコタローがはっとする…やはり、ネギは女泣かせという事で確定でいいかな…。

 

「するめいかはお好きですか?」

と、結局、亜子はヘタレてこう言った。それにネギは日本の食べ物ではヤキトリのねぎまが好きだと言って、亜子にスルメイカが好きなのかと聞き返した。

「今のが告白か?」

「違うわボケ!」

「ネギまがお好き…」

と、茶々丸は食べ物の好みを知れてうれしいという様子である。学祭後に修行の機会がまだあるようならば焼き鳥でも食事に出てくるだろうか。

そして、ネギは亜子にベースの演奏をねだり、亜子はちゃんとベースを弾ききった。

 

「すごいじゃないですか!これならライブも絶対大丈夫ですよ」

廃校舎から移動しながらネギはそう言った…私達はネギに付けてある通信用の術式でその会話を聞いていた。

「い、いえっ、本番も同じようにできるかどうか…」

と、ネギの方を向いた亜子にネギが笑いかけると亜子が顔を赤くする…完全にほの字だな、亜子の奴。

「あ、あのー、ナギさん、お仕事は…」

「お仕事?」

「あ、すみません、もしかして学生ですか?大人びて見えるので…」

まあ、社会人だが、仕様上、15, 6歳くらいの筈である、あれで。

「え、あーはい!イギリスの学校で…」

そして、将来はNGOに参加して世界中の困っている人を助ける仕事に就きたい、と続けた。そして、今更亜子がナギの年齢を聞き、ネギは16歳と回答した。それからネギはネギの親父に憧れて、その人みたいになりたいと続けた。

 

「ナギさん、うち…やっぱり脇役やと思います」

ネギから受け取ったアイスを食べていた亜子は、少し考えてそう、言葉を紡いだ。

曰く、ネギの親父が行方不明だと知って、心配すると同時に羨ましいと酷い事を思ってしまった、と。行方不明の父を探してあんなに努力して、強くてかっこよくて…まるで物語の主人公みたいだと思ってしまったのだ、と。物語の主人公が持つマイナスな部分…それが力になって主人公を主人公たらしめる…でもそれは本人には辛い事で…ネギにとっては現実で…そう考える事自体が酷いとは思うけれども…それでも…自分には夢や目標も勇気もなくて…なにより自分の抱えるマイナスはただマイナスなだけで何の力も与えてくれないのに、と。

…そうだな、私のマイナス…知るべきではない事を知ってしまう事、そして異端なまでの知識欲は私に色々な物を与えてくれたが…亜子の傷は…ただのマイナスと言われればその通りである。

そして笑ってごまかすように亜子が続ける。

「と、とにかく、ほんと、ウチ、ダメなんですよー脇役なんです、とりえもないし、フツーやし。ううっ、やっぱライブ心配になってきたなー」

そういう亜子にネギは拳骨を落とした。

「ナ、ナナナギさん?」

「そんな事言っちゃダメです!」

「ネギ君ならこういうでしょうね、僕のクラスにダメな人なんていません、って。たとえ亜子さんが自分を脇役だと感じていても…それでもやっぱりあなたは主役なんだと思います。だって、亜子さんの物語の主人公は…亜子さんしかいないじゃないですか」

 

「おーおー、わかったような事言うなぁ…10歳のガキのくせして」

「明日菜さんによるとわかったような事を言うのは最初からだったようですが…」

「ですが…?」

「いえ…あ!?」

と、茶々丸が私達のいる橋門から下を指さす

「アレは…過去のネギ先生です!」

「何ィ!?しもた!これはあの時のアレかいな!?この後、もう一組の俺達も現れてメタメタに…止めな!」

「ハ、ハイ」

「あ、バカ」

と、コタローと茶々丸が私の静止を聞かずに飛び降り…私もやむをえずそれに続く。

そして…大混乱がはじまった…

 

「オイ、なんやねん、またタイムマシン使たんか!?」

「うるせっ、話ややこしくなる、黙れ、前の俺!」

と、殴り合いながらネギたちを追うコタロー達

 

「ねえ君、未来のボクでしょ、何があったの!?待ってよ!?」

「わーバカバカ、ついてこないでよ、前の僕!後でちゃんと説明するからあっち行って―ッ」

と、事情を暴露しながら追いかけ合うネギたち…

 

「で、お前は次の私だな?何がどうした」

「これからあんたらが亜子を見つけて逆行するんだ、がんばれ、私」

と、並走しながら事情説明をする私…とそれについてくる茶々丸たち…である。

 

役割を入れ替えて同じ事をやり、控室に入り込んだ私達は無事に諸々をごまかし、亜子たち【でこぴんロケット】の出番となった。そしてそのトークにて…

「あ、あの、その私…え、えーっと…今日は、今日…と、とてもお世話になった人に伝えたい事があり…あります」

うげ…ここ、告白阻止地域なんだがとネギたちの隣から少し離れて糸でマイクでも取り落とさせようかと構える…が真名らしき気配が私がいる、邪魔をするなと言わんばかりに現れたので糸を回収し、成り行きを見守る事にした。

「あ、あの、私っ…そのっ…私…す、好…すっ…すごく楽しかったでーす、メールアドレス教えてくださーいっ!」

と、また亜子はヘタれ、撃たれる事はなかったし、柿崎、釘宮、桜子はずっこけた。

「へ…僕ですか?」

とネギは呆けた後、叫んで返した。

「はーい、良いですよー後で送っておきまーす!」

そして会場は笑いに包まれた…そりゃあそうである…が、舞台で亜子が麻痺弾で打たれるよりはましなオチではあるか。

 

 

 

「なかなかおもろかったなーライブゆーんも」

「うん!亜子さんも上手くできていたしね!」

「皆さん、お疲れ様です」

「それじゃあ、解散と行こうか…ネギ、私も逆行頼むぞ」

「はい、それじゃあ、参りましょう、千雨さん!茶々丸さん、コタロー君、行ってきます!」

「マスコミにお気をつけて…」

「先生っつうのも大変やなぁ…ま、がんばってこいや」

 

そうして、私とネギは、三度目の今日の午後一時頃に跳躍したのであった。

 

 

 


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