例えばこんな長谷川千雨の生きる道   作:紅シズク

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48 麻帆良祭編 第8話 尋問とお別れ会

「さて…私は別荘で少し武道大会の反省点を検討して来る、その後はパトロールを済ませてクラスの当番だな」

「はい、僕は図書館島のツアーに行ってきます」

「ん、とりあえず顔を隠せるパーカーでもかぶってれば大分違うだろうからそんなノリでコーディネートしてみな」

「あ、ありがとうございます、千雨さん…それでは」

「ああ」

と、私は三度目の麻帆良祭二日目午後一時にネギと別れ、エヴァ宅に向かった。

 

 

 

「お邪魔します」

「む、千雨か、アル相手に中々の奮戦だったぞ、よくやったな」

「ケケケ…ナカナカタノシイショーダッタゼ」

「…負けたのはいいのかよ」

「ハッハッハ…アル相手にあれだけ奮闘し、ナギの幻影相手にあれだけ持たせられたならば上出来さ…今はまだ、な。それに反省会をするんだろ?」

「ああ…数時間、借りていいかな?」

「構わんぞ、まあ精々励む事だ…お前も私の弟子なのだからな、いずれ私達の領域に来る事を期待しているぞ…ま、お前の場合は相応の対価が必要だろうがな」

と、暗にナニカを対価に捧げねばエヴァ達の領域には達せられないと言われる…例えば魂への負荷とか…人ならざるモノへの変異とか。

「…そうだな…検討だけはしているよ、そーいうのも」

「くっくっく…まあ、そうしてでも力が必要だと思えばそうすればいい、千雨…きっとハカセはそれでも受け入れてくれるさ」

「…はい、マスター」

そう返して、私は別荘に潜った。

 

もっと速く、もっと鋭く、もっと静かに…クウネルの化けたナギ・スプリングフィールドを仮想敵に、私は機動力を鍛えなおす事にただひたすら時間をつぎ込み、その合間の休息を咸卦法の理解に充てた…まほら武道会で見えたさらなる理想を目指して。

 

「ただいま」

「おかえり、千雨すぐ出るのか?」

「ああ、ちょっと仕事…とお呼び出しがな」

「超の巻き添えか?」

「まーそんなもんだな…それじゃあ」

「お邪魔します、別荘をお借りしに来ました…あ、千雨さん」

と、エヴァ宅を辞そうとすると丁度ネギがやってきた。

「む、ぼーや、どうした」

「あ、すいません、マスター、別荘をちょっと貸していただいても良いですか?少し瞑想がしたくて…」

ネギはどうやらこの集会で色々と溢れそうになったのか、自分に向き合いに来たようである。

「ん、構わんぞ、そこの姉弟子も一時頃からずっと潜っていたしな」

「え、千雨さん、あれからずっと!?」

「折角最高峰クラスの機動を垣間見られたんでな、ちょっと自主練を」

「うわぁ…頑張りますね…僕も、少し瞬動のおさらい、しておこうかな」

「おう、励め励め、ガキども。鍛錬に励むのは良い事だぞ?」

そう言ってマスターは楽しそうに笑った。

 

 

 

で…エヴァ宅を辞した私は少しだけパトロールに入った後、前々回に届いていたメールに従って、呼び出されていた学園長室に向かい、そして重要参考人として尋問を受ける事となった。

 

「もう一度聞く、超鈴音は一体何を企んでいる?」

「お答えできません、お答えできる事は全てお話しました」

「超鈴音は今どこにいる?心当たりは?」

「恐らく、学園内のどこかに潜伏しているのかと。現在地の心当たりは超包子や他の所属の関連施設でなければわかりません」

このやり取り、何度目だろうか。

 

既に状況証拠からばれているであろう事…陽動でなければ魔法バレ系の何かを狙っている事、何かやらかすとして、数的主力はロボットになるであろう事、そのロボット達が恐らくはロボ研で私も手がけた子達の量産型であろう事、それに、私が予め武道大会への出場を依頼されていた事…位は認めたのであるが。と言うか、私から確定情報として絞れるのはそこまでだぞ?

 

「もうよい、ガンドルフィーニ君…大方ギアスペーパーか何かでも使ったんじゃろうて…どのタイミングかは知らんが」

「超も私が一応魔法使い側なのは承知の上ですので、漏れた秘密が拡散しないように、普通はそれくらいするかと私も思います、学園長先生」

実際は使っていないが、普通はそうするだろうし、私もそう提案した。

「重ねて聞くが、長谷川君は超君から計画への協力を頼まれておらんし、協力する気もないんじゃな?」

「はい、麻帆良祭期間中は、試合への出場と超包子の助っ人だけですし、魔法バレに関して協力するつもりはありません」

コレも本当である、後の事は兎も角。魔法バレへの協力にも麻帆良祭期間中がかかっているのがみそだったりするが。

「うむ、嘘は言っておらんな…長谷川君、超君の計画に関して、どう思うかの?」

「魔法バレですか?…学究の徒としては、学問…少なくとも科学は集合知ですのでその発展に資するという意味で歓迎しますが、魔法の秘匿を誓って皆さんに魔法使いとして迎えて頂いた身としては、自身の矜持に誓って、超の魔法バレ計画への参加はいたしかねます」

「…なるほど…協力ありがとう、よくわかったよ、長谷川君。麻帆良祭を楽しんでおいで」

「いえ、お役に立てなかった様で申し訳ございません、それでは失礼いたします」

そう言って、私は学園長室を辞した。

後ろで重要参考人の私をそう簡単に返して良いのか、と言う魔法先生の叫びを聞きながら。

 

既に日は傾き、空は赤く染まっていた。

「さーて…ってそろそろ当番の時間じゃねぇか」

私はその足でクラスに向かった。

 

 

 

「ハ?超のお別れ会?」

クラスの仕事…と言ってもザジが連れてきた助っ人で割と楽な仕事ではあったが…を終え、二日目のクラスの中夜祭パーティーの準備を手伝っていると、委員長がやって来て、超が退学届けを出したから超のお別れパーティーをすると言い出した。

「…千雨さんも何も聞いていないんですの?」

「…ああ、思い当たるふしが無いとは言わんけど…流石に退学届を出すような話だとは聞いていない」

正直、何考えてんだ超の奴、という状態であるし、どのみち麻帆良には居られなくなるからとのケジメと受け取れなくもないではあるが…。

「とにかく!中夜祭パーティーは超さんとのお別れパーティーとします、これは委員長としての命令です!」

そう、命じた委員長に従い、私はパーティーの準備を手伝う事にした。

 

聡美にメールでこの件の事を問い合わせた所、計画失敗時に生存していれば未来に帰って本来の戦いに戻るし、成功すれば学生生活を望める状態ではなくなる、という事で、ケジメとしてしたためたそうだ。…本来、学祭後に渡すように頼んでクーに託したらしいのだが。

 

「ん?超を迎えに行く係?」

「ああ、若干手荒な真似をする事になるやもしれん…すまんがお前にも手伝って欲しい、千雨」

と、刹那が楓と共にやって来て私に言った。

「サプライズパーティーになる様に、超殿には内緒で…との事でござるからな」

「…事情話さずにやるなら私は不参加で…予備としてコッソリついて行く位は良いけどさ」

「む…それは…」

「それで構わぬ、千雨殿…超の企みの件もあり話が変な方に拗れる可能性も相応にあるからな」

「りょーかい、それじゃそれで…私が出るのはネタばらしして連れていく位拗れた時だけって事で良いな?」

…その企み、バリバリ私も参画しているので色々とややこしい事になるのである、私が超と戦うと…下手するとその場で超が何口走るかわかったもんじゃないという。

 

 

 

丁度準備が終わった頃、カモが応援を呼びに来て、私は姿を隠した。そして楓と刹那がカモからのネギへの応援要請に答える形で超とネギの下に向かい、私はそれを尾行する形で同行する事とした。

 

打ち合わせ通り、刹那の持つ通信符で会話を聞きながら追跡を続けると、どうやらネギは超に一対一での話し合いを求めたらしい…まあタイムマシンの戦闘応用等の切り札が超側になければ妥当な判断ではあるのだが…うん。

そして、私達が超たちを捉える位置まで来ると、戦闘痕と座り込むネギ、それに迫る超が見えた。

「やべぇ」

「待てぇっ」

との、カモの声に応えるように刹那は静止の叫びをあげながら超に攻撃を仕掛け、楓と共に割って入った。

「ネギ先生の信頼を裏切れば私の剣が黙っていないと言ったハズだ、超鈴音」

「あ…!刹那さん!楓さん!」

「やあ、せつなサン、かえでサン」

刹那の怒りなどどこ吹く風と超が言う。

「どういうつもりだ、超鈴音。ネギ先生にヒドイことはしないんじゃなかったのか?」

「…ヒドイことではないヨ、せつなサン。これは両者合意の上での試合ネ」

「ふざけるなっ!」

…いや、事実だと思うぞ?おそらく超がなし崩し的にそう持ち込んだんだろうけれど…と、私は少し離れた場所に待機しつつ内心思った。

「だからこうなるっつったろ兄貴」

「か、カモ君が二人を…?ダ、ダメだよ一対一の話し合いだったのに…」

「バカッお人好しにもほどがあるぜ」

まあ、護衛くらい伏せておいて欲しくはあるだろうな、カモの立場としては。

「怪しげな計画を進めて、何を企むかは知らぬが、ネギ先生の友人として、貴様のクラスメイトとして、阻止させてもらうぞ!」

「刹那、あの自信、何かあるでござるよ」

楓が刹那に警告する。

「ああ」

「刹那さん、あのっ…」

「わかっています、先生。ケガなどはさせません」

「いえっその…」

この期に及んでネギは一対一といった条件を自分達から破る事を気にしているように見える。

「気にするでないヨ、ネギ坊主…さて、どうするかナ、せつなサン?」

との超の言葉に刹那は素晴らしい入りの瞬動で超の腕をキメて制圧して見せた。

「生半な腕では我等から逃れる事、叶わぬぞ。つまらぬ企みはあきらめるがいい、超鈴音」

「さすが、せつなサンネ。この時代の使い手は最新式の軍用強化服を生身で軽く凌駕する」

「何?」

「いやーホントに驚き…ネ」

と、超が掻き消えて刹那の背後に出現し、電撃を纏った一撃を刹那にお見舞いした…やっぱり実用化していたか、タイムマシンの戦闘への応用。

その後も超を捕らえ、楓も参戦しての同時攻撃まで仕掛けたが、超は同様の跳躍で逃れて見せた…と言うか、タイムマシンを持っているネギの前でそんなもん何度も見せてんじゃねぇよ、超…ネギの持っているタイムマシンも反応しているだろうに…と言う思考がやっぱり、ネギを勝たせるルートと言うのも超の計画には織り込み済みか…?という疑念へとつながり、私の中で膨れ上がってくる。

「フフフ…遊びはそろそろ終わりネ。ちょうどいい、懸念材料だた君達二人にもしばらく眠ていてもらおうカ」

と、超が宣言する。

「うむ!これは敵わぬでござるな!退くでござるよ」

「ネギ先生!」

「え、あっ」

と、ネギを含めた3人と一匹は撤退戦に入った。

「すまん、ネギ先生の方を優先し過ぎた…出番だ、千雨」

「いや?大丈夫だろ?それに、せっかくのサプライズパーティーだしな」

楓が先導する大体の逃走方向から楓の意図を察して私は通信符に答える。

「なにっ」

「その通りでござる、第三廃校舎に向かうでござるよ」

「何!?いいのか、超を捕らえてからでは…」

「捕らえられぬ故、致し方なし。大丈夫でござるよ」

 

「か…楓さん!こんなところに逃げてどうするんです!?あの超さんには僕らじゃ…」

「まあまあネギ坊主」

と、慌てるネギを楓がなだめる。

「ここが決戦の場ということでヨロシイカ?多勢に無勢では私も大変ネ、こちらも応援を呼ばせてもらおう」

…と、会談の場に伏せていた護衛…茶々丸と真名が出現する…ちなみに追跡劇の途中で互いの存在は認知している…と言うか二人にはサプライズパーティーのメール、行っている筈なので、もはや壮大な茶番と化している。少なくとも私の眼には。

「やあ、ネギ先生」

「龍宮隊長!?茶々丸さん!?な、なんで!?」

「楓、刹那…お前たちとは一度戦ッてみたかったよ」

ネギの言葉に茶々丸は沈黙を返し、真名はある種の黙殺を返した。

「ま…待ってください、ダメですッ変ですよ。クラスメイト同士で戦うなんていけませんっダメですよ!」

と、ネギが寝ぼけた事を言い始める。

「さっきの勝負は僕の負けでいいです!ぼ…僕、超さんの仲間になりますからっ…だから…だからもうこんな事はやめてください!」

「フフ…人がいいね、ネギ坊主。だが…やめることはできない」

と、超は返す。おや、受け入れて刹那と楓が受け入れるなら、くらいは言うかと思ったが、そう返すか。

「ちゃ…超さんっ」

「ネギ坊主、案ずるでない。まだこちらには奥の手があるでござる」

と、楓が紐を引き…超とのお別れパーティーの用意を隠していた衝立を倒した。

 

「「「「「ようこそ、超りんお別れ会へ!」」」」」

 

と、クラッカーが鳴らされ、超もあっという間にクラスメイト達に囲まれていく…そして私も、シレっと会場に紛れ込むのであった。

 

「ふふー超さんのお迎えお疲れ様でしたー」

と、しれっと紛れ込んでいる…いや別段おかしくはないのだが…聡美が私に声をかけてくる。

「…いいのかよ、こんな所に出てきても」

「大丈夫ですよー?私はまだ超さんの協力者と目されているだけですし―」

「…ア?」

「アレー気付いてなかったんですかー?今の所、対魔法先生達の矢面には超さんが立ってくれているのでー、私はまだ重要参考人程度の扱いですよ?」

「…あっ…そういやさっきの尋問でも聡美の事はロボ関係以外では聞かれなかったな…」

「尋問ですかー?」

少し心配そうな声色で聡美が言った。

「ああ、さっきちょっと武道大会の件で色々と…まあ学園側の連中が無茶苦茶目立つ真似してくれたおかげで私はその件は無罪放免だけどな」

「それはよかったですー」

「…で…ちょっと聞きたい事がある」

「なんですかー?」

と、聡美を連れて二人、会場から少し離れた。

 

 

 


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