例えばこんな長谷川千雨の生きる道   作:紅シズク

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第一計画編
50 第1計画編 第1話 運命の夜


ネギ達を見かけない、ネギについて行った面子が当番やパトロールに来ない、という話に心当たりを聞かれる度に知らないと誤魔化しつつ、時刻は夕刻となり、私は寮の部屋に戻ってきていた。部屋を見回すと当座の生活に必要な荷物を纏めてあったスーツケースがなくなっている。

「さて…聡美はもう発ったか…」

と、私も魔法を駆使して荷造りの仕上げ…主にPC周りの梱包…を済ませ、食卓でサブのノートPCを開いて物思いにふける…ネギ達はいつ頃に飛ばされたのか、超の計画は問題なく進行しているだろうか、マスターも中立とは言っていたがどのように過ごす気だろうか、いくつか考えている咸卦の呪法の発展方向をどれに主軸を置いて研究すべきか、どういった隠れ家だろうか…等々と。

 

日も沈みはじめた頃、私の様な外様扱いを含めた魔法関係者に一斉送信されるメーリスで麻帆良湖湖岸からロボ軍団が出現したというメールが入る…始まったか。私も荷物を持つと窓から外に飛び出し、寮の屋上から戦況を観察し始めた。

 

暫くすると、私の携帯に明石教授からの電話がかかった…状況からしてこの状況を解決する為の召喚だろうと無視をして寮の屋上を離れ、混迷極まるエリアへと突入した。

 

 

 

映画の撮影か何かだと認識しているらしい群集に紛れて私はロボたちにある程度近づき、その上空を舞う一機に糸術で接触し…電子精霊を流し込んでジャックし、その個体を物陰に降ろした。

「手はず通りに」

「はい、ちう様」

その個体…をジャックした電子精霊にそう命じると、指揮系統を遡って移動用に飛行型を数機借りる旨を超たちというか恐らくは茶々丸に一方的に通告させて、他にも数機をジャックさせて私のもとに降ろした。私は飛行用の箒を一応取り出して抱きかかえると茶々丸型の空戦機体に抱えられ、また田中飛行型の一機に生活用品を詰めたトランクを持たせて空に舞った。

 

 

 

「やあ、エヴァ」

空中からチャチャゼロと地上を眺め、一人酒に興じていたエヴァを見つけて声をかけた。

「千雨か、どうしたそんな恰好で」

と、茶々丸型に抱っこされた状態を指して言われた。

「この状況なら、途中まではこっちの方が目立たないかなと思ってね…よっ」

と、箒での飛行に切り替えてふわりとエヴァの隣に浮く。

「ん、お前ら、茶々丸型と荷物持ちを残して解放していいぞ」

と、電子精霊たちに護衛を兼ねて随伴させていた田中飛行型の解放を命じた。

すると、田中飛行型は元々いた魔力溜まりに戻って行った。

「お前も文字通り高みの見物か」

「ああ、地上にいると学園側に見つかってメンドクサイ事になりそうだし…ここまで上がっておけば起きるかもしれないクライマックスを見届けるのも楽だしな」

と、肩掛けカバンからペットボトルを取り出して一口飲む。

「なるほど…奴らは上か」

そう言ってエヴァは上空の飛行船をちらりと見る。

「ああ、さすがに途中でばれるだろうし…高畑先生と学園長が上がればロボ軍団で構成できる程度の迎撃網は突破されるだろうからな」

「ふむ…まあジジイは上がってこんだろう、来るとすればタカミチさ」

「高畑先生なぁ…タイムマシンのほかにもう一枚切り札がいるが…超はどうするかね」

「おや、アレの事は聞いていなかったのか」

と、エヴァは地上を指さす。望遠の術式を用いてその先を見ると弾丸を断ち切って、それに込められていた強制転移魔法らしきものに飲み込まれる葛葉先生の姿があった。

「アレは…強制転移魔法…?でもあんなもので…あ…時間跳躍か…あいつ、死傷者ゼロで作戦完遂させる気か」

と、超のした事に思い至る。確かに、儀式完了まで無力化すればよいのであれば、全てが終わった後まで時間跳躍させればいいのである。

「おそらくは、な」

と、エヴァはちびりと酒を飲んだ。

 

「ん…高畑先生、上がってきたな」

エヴァと思い出話をしながら戦況…とはいっても、あとから現れた機械で制御された鬼神らしき大型個体がロボ達の露払いした魔力溜まりを占拠しただけだが…を見守っていると、地上から高速で飛び上がってきた人影が聡美たちが乗っているであろう上空の飛行船に向かっていく。

「行くのだな」

「ああ…世話になった…いつ戻れるか…そもそも戻れるかもわからんけど…今までありがとう、マスター」

「ふん…どーせすぐに戻ってこられるとは思うが…一応言っておこう…達者でな、わが弟子よ」

「ケケ…カエッテコイヨ、オマエトボウズガソロッテイナクナルト御主人ガヒマニナルカラナ」

「はい…行ってきます」

と、私は箒をしまい、自身の浮遊術と虚空瞬動で空に舞い、高畑先生を追った。

 

 

 

「長谷川君…君もかい?」

と、一通り超と口上の述べ合いを終えたらしい高畑先生が、飛行船上、超と聡美の間、高畑先生に相対する様に着地した私に問うた。

「…ある意味はい、ある意味いいえです、高畑先生。私は見届け…と流れ弾が聡美に行かないように来ました。そういう意味ではお邪魔はしますが…聡美に手荒な真似をしなければ手出しはしません」

「あはは…できれば生徒にそんな事をしたくないけれど…超君と戦いながら隙を見て、という事をしようとすると邪魔はされるんだね」

「はい、そう言った状況で可能な手荒な手段で止めるとおっしゃるならば」

「そうか…ならばまずは君だね、超君…その後に、できるだけ紳士的に葉加瀬君を止めろ、と」

「そうなるネ、高畑先生…まあ私が負けて、その後にハカセの下にたどり着ければ降伏する手筈になっているから頑張って欲しいネ」

と、私の前に立つ超は、恐らくにやりと笑った。

 

 

 

「やっぱすげーな…高畑先生」

背中で聡美の詠唱を聞きながら超と高畑先生から聡美への射線を遮るように、燃費のいい障壁を展開しつつ小刻みに移動を続けながら私はそう呟いた。

超の切り札…時間跳躍弾とタイムマシン…カシオペアの戦闘への応用をもってしても、超は若干劣勢気味の拮抗状態を維持するので精一杯の様子である…これが圧倒的戦闘経験という奴だろう。

 

そしてその拮抗の終幕は突然だった。高畑先生の一撃が超の戦闘服の背中に取り付けられたカシオペアを破壊…切り札を破壊された超は拮抗状態を維持できなくなり、あっという間に追い詰められてしまった。

「さすが高畑先生ネ…これが戦闘経験の違い…いや踏んできた場数の違いカ」

「ああ…そうだね、超君…残念だがここまでだ」

「そのようネ…だが最後に聞いておこう…この世界の不正と歪みと不均衡を正すには私のようなやり方しかなく…コレが一番マシな方法だと貴方のような仕事をしている人間にはわかるハズネ…それでも…私を止めるカ?私の手を取る気は…一欠片も無いカ?高畑先生」

「っ!!」

超の言葉によって生じた高畑先生のほんの一瞬の、並の方法では突く事はかなわぬ隙…それを縫うように飛来した弾丸が高畑先生を捕らえ、黒球が先生を飲み込んだ…真名か。

「…真名がやってくれたカ…負けたかと思ったヨ」

「おめでとう…と言うには少し早いかね、超」

「うむ…だが…まもなくヨ…千雨サン」

 

そして数分後、強制認識魔法は発動し、上空へと打ち上げられた…

 

「これで…第一計画の山場は完了ですねー」

詠唱を終えた聡美がその場に座り込んでいった。

「お疲れさま、聡美…頑張ったな」

と、私は聡美の後ろに座り、包み込むように抱きしめる。

「はい…高畑先生にカシオペアを破壊された時はもう駄目かと思いましたけど…千雨さんがいてくれて…最後まで諦めずに頑張れました」

「高畑先生相手にあれだけ持たせられたのも千雨さんがハカセを護ってくれていたからネ…あと少し、高畑先生の精神を削れていなければ…結果は違っていたかもしれないネ…さあ、時間ヨ…我が悲願が遂に叶うネ」

 

と、超が世界樹の魔力を吸い上げて同期していた世界12か所の聖地と共鳴を始めるのを見て言った。

 

「はい…でも、本番はここからですよー」

「フフ…そうネ…この計画を始めた責任はとらねばならんネ…二人とも、これからもよろしく頼むヨ」

「ああ…私でよければ存分に使ってくれ」

そう言って、私は聡美の肩越しに超に微笑んだ。

 


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